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ラ・リーガ第21節 セルタ・デ・ヴィーゴ VS エイバル(26.JAN.20)


トータル・フットボールの遺伝子、オスカル・ガルシア

高さ2.44m、幅7.32m。この世界中統一された大きさの「かご」の中にボールを入れる事を目的としたスポーツ。ただ、そこに到達するまでにいくつものドラマがあるから人々は狂喜乱舞する。この試合はそんなあらゆる感情の中でも驚きと落胆の連続だった。こと、ホームのセルタに関してだが。

エイバルは前節、勝利したことの無いA・マドリーを相手にホームのイプルーアで2-0で退けお祭り騒ぎ。ちょっとしたジャイアント・キリングを起こした。しかしエイバル、セルタ両チーム共に金曜日のコパ・デル・レイにて敗戦。どちらも2部相手だったが、このラ・リーガの2部ともなると、岡崎や香川が所属している事からも察する通り高いレベルにある。どちらもあまり良い心情ではないはずだ。

さらにエイバルは相変わらず、チームの心臓CHエスカランテ、エース的存在のFWキケ・ガルシア、SBアルビージャ、CBラミスなどが怪我でCHディオプがベンチと怪我で行ったりきたり。ようやくレンタルで入ったクリストフォロをチーム合流後即起用し、試合をこなしながらチームにフィットさせなければいけない状況。

ちなみに前回対戦は、ホームのイプルーアでエイバルが2-0と勝利。前日の会見でもエイバルのメンディリバル監督はチームとしてのプレーを強調。日本でいう所の「ONE TEAM」という感じか。

一方のセルタは、昨シーズンチームを残留させたフラン・エスクリバ監督を成績不振の為に11月に解任し、オスカル・ガルシアを新しく監督として迎えたが、リーグ戦で挙げられたのはわずか1勝。

オスカル・ガルシア氏自身はそんなに悪くはない監督だとは思うのだが。というのも選手としてバルセロナ・アルバセテ・バレンシアなどでプレーし、代表としてもU16~U23までプレー。監督としてはカタルーニャ州のユースアシスタントを始めとしてバルサユース、ワトフォード、ブライトン、そして日本の方に分かりやすいところと言えば、ザルツブルグで国内リーグとカップの2冠を南野と果たしている監督です。

ヨハン・クライフ監督時代のバルサ選手であるが故に、その意思を継いだ「トータル・フットボール」の片鱗が見られるらしく、そこもこの試合の楽しみの一つだった。

スタメン

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(写真はエイバル公式Twitterより)エイバルはスタメンの変更は無し。キケ・ガルシアが欠場してから4-2-3-1の陣形を続けている。ディオプが一応の復帰。オリベイラが出場停止明けから戻ってきたが、今回はアトレティコを封じ込めたブルゴスが起用された。乾はここの所ずっとスタメンで出場。完全にメンディリバル監督の欠かせないピースとなっている。

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(写真は365scoreより)一方のセルタはメンデス→シストの変更。要注意はデンマーク代表のシスト。快足ドリブルでサイドを切り裂く、もはや反則に近いバネの持ち主。そしてスペイン代表やリバプールでも活躍したイアゴ・アスパス。GKのブランコも各年代のスペイン代表に選ばれた実力者だ。名の知れた選手を上げるとまだいるが、後で出てきたら説明します。4-1-4-1になっていますが試合中はミナとシストがアスパスとならんで4-1-2-3に見えました。

ちなみにこの日の審判は名物審判、ホセ・ルイス・ゴンサレス・ゴンサレスさん。実況の方が何度も言いたくなるのもわかるネーミング。スペイン独特ですね。全く関係ないですがホセ・エルナンデス・エルナンデスという審判の方もいらっしゃいます(笑)

試合開始

やはりこの日もエイバルの攻撃は、ロングボールをエンリク、エンリクまたエンリク。そのセカンドボールをオレジャーナが拾い、右のP・レオンや左の乾へと渡すのだが、今回は右に流れる事が多かった。いつもの事ですが、エンリクの運動量には恐れ入る。

ガンガン空中戦を仕掛けて、決してフィジカルが強い方ではないと思うが、五分五分くらいの勝率でマイボールにする。しかも、エンリクがファールをもらった時こそがチャンス。エイバルはセットプレーから得点が多い。あれ?やっぱり金沢と似ている(笑)

エンリクが今シーズン1得点しかしていないのにファーストチョイスの理由は、苦しい台所事情もあるが、なぜかタフであるという点だ。

開始5分でFKを得たエイバルはP・レオンがフリーのオレジャーナにピンポイントで合わせるがゴールならず。

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その後はほぼセルタペースで試合が流れる。下の図のようにエイバルの4-2-3-1に対して中央を絞って対応してきた為だと思われる。(すいません、アスパスがボール持ってますが気にしないでください)

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そして攻撃の際は、エイバルの4-4-2の守備ブロックに対してDHのオカイがCBの間に降りてサリー(サリーダ・ラボルビアーナ)の状態になり、どちらかのサイドにボールを運びそのサイドに最前列のアスパスが近づき菱形を作るような形でパスを送りサイドからボールを前進させていく。

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その4人で縦に動きながらパスコースを作り最終的にミナかシストがサイドに抜け出しサイドをえぐる形が多かった。しかもトータル・フットボールよろしく前の5人のポジションが目まぐるしく変わる事が多かったので、マンマーク気味にプレッシャーをかけにいくエイバルにしたら、守りにくかった事でしょう。

15分くらいからシストとミナの位置が逆になりシストがデュエルを仕掛ける事で乾のサイドからの攻撃も難しくなってくる。

エンリクの仕事と同様に大事なのは、乾がドリブルで仕掛けてファールを貰う事なのだが、なかなかそれもさせて貰えない。乾も守備に奔走。中盤から後方でファールで止める事が多くなってきたエイバル。

35分すぎからは危なっかしいというか、ギリギリの所でゴールを防ぐシーンの連発。下のシーンはビガスがヒールでボールを弾き危機一髪。

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前半終了間際、エイバルのCBブルゴスがヘディングをパスミスしそのボールをシストがミドルシュート。

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エイバルGKドミトロビッチの前に飛んだので助かったが、エイバルのロングパスは、セルタの188センチのアラウホと190センチのオカウに弾かれまくる状況で、181センチのエンリクも30分過ぎたあたりから疲れが見え始めた。

前半終了

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データはsofa scoreより。前半のデータでエイバルが上回っていたのは、図には無いがインターセプトとクリア数だけでした。ボール支配率を気にしないエイバルではありますが、アウェーという事もあってかなり一方的にやられている。後半巻き返しなるか。

後半

後半開始から、勝率の悪くなった空中戦から、地上戦に切り替えたエイバル。主に左サイドを主戦場にシストが攻め上がり、薄くなった所を突く狙い。

50分ごろには乾が思い切り良く、得意のタッチライン際へ突入するドリブルでゴール前に迫るが、惜しくもボールは線からはみ出す。

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その後すぐ、アルバレスが左太ももの違和感からクリストフォロと交代。負傷から帰ってきて間もないだけに大事に至らないといいが。

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52' Out: Sergio Álvarez In: Sebastián Cristóforo


セルタも早々に動きの衰えてきたシストを諦め交代。アスパスが左に移る。


62' In:Gabriel Fernández Out: Pione Sisto

異なるパスコースの作り方

後半になり、バルサでもプレーしていたセルタのラフィーニャと二十歳のベルトランが運動量を増やし、先ほどとは少し違う形でパスコースを創出。

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こうする事で生まれたオーバーロード(密集状態)とアイソレーション(分離・独立)を生み出しアスパスがミドルシュートを放ちますが、ドミトロビッチがナイスセーブ。

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Out: Takashi Inui In: Pablo De Blasis 67'

攻め手を欠いたエイバルは乾を諦めデ・ブラシスを投入し状況の打開を図る。そのデ・ブラシスに絡んでオレジャーナとアンヘルがインナーラップして変化をつけてゴールを狙うがシュートまで持っていけない。

アイドルは世界中の好物


73’In: Denis Suárez Out: Santi Mina

地元の女子のお待ちかね、デニス・スアレスの登場に沸き上がる歓声。シティ・バルサ・アーセナルでもプレー経験があるため日本のファンにもおなじみだろう。セルタのカンテラ出身のスアレス。夏に8年ぶりに地元に戻ってきたのだ。

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可愛らしいボーイが頼もしいヒーローになって帰ってきた。

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イケメン人気は万国共通。クラブにお金を落としてくれる大事なお客様なのだ。


Out: Pedro León In: Papakouli Diop 75'

怪我明けのディオプがボランチに入りクリストフォロがトップ下、オレジャーナが右サイドへ移動。

75' In: Hugo Mallo  Out:  Kevin Vazquez

こちらはそのままの交代。エイバルは顔を変えたが攻勢に転じる事は出来ず、ディオプの動きも決して良いものとは言えなかった。その後もゴールバーに当たるFKや惜しいシュートを打たれながらも90分間耐え抜いたエイバル。

試合終了と考察

http://www.sdeibar.com/ja/notice/el-eibar-suma-un-trabajado-punto-ante-el-celta-0-0

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スコアの下のグラフを見てもらえばわかるが、先日のバルサ対グラナダ戦ほどでは無いにしろほぼセルタのペースだった事が分かる。

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セルタのビッグチャンスが1というのは、カウント基準に問題があると思う(笑)運と粘りで、なんとか勝ち点1を掴みとったエイバル。何もかもが上回っているように見えるセルタだったが、もたらされた勝ち点は相手と同じ1だった。

186cmのキケ・ガルシアがいないというのがターゲットとしては痛いです。エンリクも運動量は凄いですが、後半は五分五分という訳にはいきませんでした。

全体的に右からの攻撃が多かったセルタは、乾の攻撃を抑えたかった意図があったと思います。エイバルの両ボランチも守備に奔走していて攻撃に関与したり、前方でインターセプトする事が出来ていませんでした。ラインコントロールを高く保てなかった事も要因の一つだと思います。

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下の順位の星取りを見てもこの一点は大きいエイバル。次節はホームでベティスを迎える。ここ5試合直接対決では、2勝2分け1敗と悪い相性では無い。僕の好きなホアキンがいるけど、ここはエイバルに勝ってもらってアトレティコの時くらいフィーバーして欲しい!もちろん乾の活躍にも期待!




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