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2020 J2リーグ第11節 ギラヴァンツ北九州 VS ツエーゲン金沢 破綻

DAZNの映像を見ているだけでも一度は訪れたいスタジアム、ミクスタ。スタジアムだけで客を呼べるというのは強みである。歴史も大事だが日本のサッカー文化は元々歴史が浅い。今から後世に残るスタジアムを考え、造っていくべきだと考えている。ミクスタはその狙いがあるスタジアムだと思う。

だって、今の日本のスタジアムではカンプ・ノウやオールド・トラフォード、そこまで大きくなくてもエランド・ロードなどには勝てないもの。

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昨今スタジアムのあるべき姿も見直されつつあり、コストがかかるだけでは維持が難しい。試合の無い時でも活用できる「日常にある光景」がスタジアムに求められている。4年後に新しく出来る金沢の新サッカースタジアムにはどんな日常が待っているのか。

スタメン、ターンオーバーというより金沢シフト

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北九州は8人の変更。特に内藤・藤原・永野・斧澤はこれまで2試合3~40分の出場しか出来ていなかった。金沢戦に向けて仕込んできた陣容といっていいかもしれない。どちらにしてもターンオーバーは完了。負けたとしても傷は深くはならない。したたかなり、コバ将。

金沢は3人変更。廣井→作田、高安→渡邊、加藤→杉浦恭。下川くんは右のSHでスタート。この起用からしてヤナ将の中でルカオ・下川が、替えの効かない選手である事はわかる。しかし、危機はすぐそこに来てしまっていた。

試合開始

入りは上手くいっていた。中央にボールを入れさせない金沢の守備。サイドでボールを動かして金沢ディフェンスを動かし、空いたところへパスを出す北九州の狙いだったが、しっかり攻撃の芽を摘んでいた。

攻撃になっても、ルカオさんと恭平くんが近いポジションをとっていたが、ルカオさんが囮になる動きで恭平くんを生かしていた。

が、まさかの出来事が起こってしまった。

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数分前に軽い交錯で痛がっていたルカオさん。起き上がったので大丈夫だと思っていたら、右サイド深くで相手との接触なしで倒れこんだ。

こんな早く、ルカオさんが戦線離脱する事になろうとは。とてもすぐに戦列復帰するとは思えない状態だった。ようやくFWの加藤陸次樹くんとの息があってきたと思った矢先の事態。

しかし今まで縦横無尽に走り回ってきたルカオさん。前節に相手と激しく交錯したシーンも影響しているのではないかと思ったが、休ませる事も出来ない台所事情。そんな時こそ破綻する。

見ていて辛かった。ルカオさんの身体の事を思えばもちろんなのだが、それだけに止まらない状況。怪我はつきものかもしれないが、金子・ルカオの「次」を作らない方法を模索して欲しい。このまま今の状態が続けばまさしく破綻だ。(8・14公式発表で左大腿二頭筋肉離れ、全治6週間)

用意周到なコバ将

ルカオさんがOUTで加藤くんがINしたのちも、展開は同じだった。北九州の攻撃時の振る舞いは以下の通りだ。(北九州のGKの名前が全部岡本になっていますが、もちろん永井の間違いです。ごめんなさい)

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金沢としてはサイドで囲んで奪い取る、という基本的なタスクはこなせていた。しかし、北九州の最終ラインから「一つ飛ばしのパス」が何度か出ていた。要するに隣の味方にパスするのではなく、一人飛ばしてパスを出すやり方。「一つ飛ばしのパス」をすると

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FWは上下動を繰り返しギャップを作るが、金沢戦の為に仕込まれてきたであろう4人が走る為に、そこまでスタミナ消費はしなかったのでは。

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ギャップを作っては、はめ込んで、はめ込まれたらまたギャップを作りにいく。そんなせめぎあいが続き、対応に追われていた金沢だったが、その隙をついてチャンスを作る。

タギリストのイチ推しGK永井くん

試合時間31分01秒。白井くんから加藤陸次樹くんへ高いパントキック。そのセカンドボールを下川くんが左足で相手の逆を突くトラップ。PA前の半円の左側にいた恭平くんにスルーパスを通し、北九州GK永井くんと1対1になるがシュートはナイスセーブに阻まれる。

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32分20秒、北九州がボール回しを早まり、大橋がパスカット。島津→恭平とボールをつなぎゴール前の下川くんへ。振り向きざまの難しいシュートだったが、これもGK永井くんの左足に止められてしまう。足元のシュートはバンバン止める永井くん。しっかりとしたポジショニングの修正が出来ている事と反応の良さ。一見、これだけ足の反応が良いと又抜きされそうにも感じるが、それをさせないくらい柔軟な身体をもっている。

何度となく聞いた言葉、それが待った無しのところまで来ている

「奪ったあともチャンスは相手よりも作れているので、あとは決めきる力をつけていくということかなと思います。」(試合後柳下監督コメント、J‘Goalより抜粋)

上記のチャンスを決めきれなかった事が、この試合の敗因だったと思う。何度となく聞いているコメントのこのフレーズ。総得点はリーグ2位と一見あるように見える。が、このコメントが昨年から繰り返されている現実。

指揮官も大事なところで決める力に欠けている事を認めている、と感じる。(新潟・群馬・愛媛の3戦で総得点19得点のうち14得点。他の8試合で計5得点。1試合平均すると0.625得点)FWだけで点を取るわけでは無いが、ルカオさんがいないとなると、加藤・杉浦恭しかしない。杉浦力くんは常に帯同出来るわけでは無いし、永遠くんは将軍の構想外。

崩している場面は多いかもしれないが、圧倒的な持ち駒不足の上に負傷&構想外。しかもリーグ戦は中3~2日。決める力のある選手が(いたとして)調子良く日程をこなせるほうが奇跡に近い。

先制をされた試合も勝率が悪い。先行されて勝ったのは新潟・愛媛の2試合。負けたのはこの試合で7敗目だ。金沢にとって先制点を取るというのはかなり難しいミッションになりつつある。ルカオさんが抜けた今、それはより一層高いハードル。

駆け引きの末に先制を許す

38分08秒、北九州CB川上くんから精度の高いサイドチェンジ(敵ながら眼を丸くした)。永田くんがワントラップで内藤くんへ。スライドが間に合ってない金沢ディフェンスがさらにボールに吸い寄せられる。そして簡単に見える池元くんへのパス。ノートラップでゴール右隅にシュート。

たぶん、石尾くんは池元くんの姿をちらちら感じながらゴール前まで下がってきていた。付いたり離れたりを繰り返している池元くんに圧力をかけられなかったのは、池元くんの駆け引きの妙だった。

ゴールが決まった瞬間、長谷川・大橋・石尾といった相手の駆け引きをギリギリのところで持ちこたえていた面々が下を向いた。北九州はずっと試合序盤からしてきた駆け引きが実った瞬間だった。

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針に糸を通すようなゴール

しかしその3分後、恭平くんがここしかないというアーリークロスを出し、陸次樹くんがここしかないというところにゴールを決め同点に。金沢としてはいつも狙っているパターンの攻撃ではあったが、角度的にかなり難易度が高かった為、マジか!?と思った同点弾だった。

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普通ならここで追撃だ!と思いたいところだ。しかし陸次樹くんのシュートがこの日2本だった事からもわかる通り、やはりルカオさんがいなくなった事は大きかった。難易度の高いゴールはなかなか続けて決める事はできない。

北九州との駆け引きによる神経的な疲労も、金沢全体にかなりあるように思えた。FWの動きで、相手の脅威となれる「違い」を、後半は生み出す事が出来なかった。

具体的に言うと、囮となれるようなルカオさんのスペースを作り出す動き、前線でタメを作り出し味方の動きを促すキープ力、味方がボールを持ったらすぐに動き出してターゲットとなれる高さ、などである。

スコア以上の力の差、理由を探して納得するな

北九州の2点目に関しては、思い切り打った北九州の高橋くんのシュートがゴラッソだったというしかないが、この時間帯まで主力を温存し、一騎に仕留めにいった北九州のチーム力が出たといってもいいのではないだろうか。

失点した後はゲームを終わらせられたという印象が強い。それが出来るのが今の北九州。強さはまぐれでは無さそうだ。

クラブの総合的な力でいうと北九州は金沢と同等かそれより下。しかし、今の力の差は大きいと感じてしまった。ゲームプラン、組織力、交代カードの切り方。「負けた」という気にさせられてしまった。

千葉戦でも感じたスコア以上の圧倒的敗北。去年は負けを引き分けに出来る粘りがあったが、今年は先制され力及ばず、となってしまった。ヤナ将5年目への続投が規定路線となっているように感じるが、それは破綻したとしてもその規定路線のままなのか。

まだリーグは3/4残っている。どうかこれ以上怪我人が出る事のないように。そして殻を破るが如く成長する若手と、頼れるベテランが相乗効果を生み出し、上位争いを繰り広げるような、そんなサッカーをして初めて来年が見えてくる。

今、我々が現実を見ずに、あれこれ理由を見つけて「仕方ない」と思ってしまってはクラブは強くならない。

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