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2021 J2リーグ第11節 ヴァンフォーレ甲府 VS ツエーゲン金沢 レビュー   先出しジャンケンの限界

オウンゴールは必然、解決策は誰かのせいにしない事

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前半19分、オウンゴールで失点してしまうシーンの直前の配置である。甲府の後ろと金沢の前線のところはDAZNで確認出来なかったので勘弁して頂きたいが、ミドルゾーンから金沢サイドはこんな感じだった。関口くんが走り込んだところに大石くんが付くが間に合っておらず、結果オウンゴールに。

相手がワントップの場合、相手FWの位置によってCBどちらかがマークにつく事になるが、片方がフリーになってしまう事によるギャップを埋める事がいつも出来ていない。しかしこれはCBが悪いという訳ではなく金沢の守備の弱点と捉えた方が良い。誰かに責任を擦り付けたところで解決しない。だって、それは昨シーズン、いやそれ以前から同じ問題を抱えているからだ。

その問題とはスライド意識の薄さだ。

ボールとマーカーを同一視野に捉える事で反応・予測が可能になる。そうすれば自然と金沢左サイドへの対応ももう少しスムーズに行えるはずだ。図の状態では金沢右サイドだけに意識が行っている守備陣が多すぎる。金沢のディフェンスが一人フリーになる事で油断が生まれている。そこを逆サイドへの意識へと転換できるようにはなかなかならない。サイドを変えられてスライドが追い付かない失点は何度も目にした状況だ。数的優位になっている事に少し安心しているのかも知れないが、他の優位性でそんな状況はすぐにひっくり返される(質的優位と位置的優位によって)。

ちなみに、リラさんは合流したばかりなのにこの場面でボールをスルー出来るのは、8年で15クラブを渡り歩いている経験からか。

持ち味を殺された金沢

失点シーンに言及したが、金沢が3バックの相手と対戦する時にいつも目にするのが、誰に誰が付くのかというギャップ。特に甲府は3センターバックの真ん中(野澤→北谷)が前に出て中盤から前線にかけて一人フリーマンを作り出すようにしていたので(野津田)、甲府のWBには金沢のSHが、甲府のIHには金沢のSBが対応する形を取っていたのだが、中盤のギャップを埋める事には最後まで着手出来なかった。さらにはWBにSH、IHにSBが対応する事によって金沢の持ち味である前線へのプレッシングをする事が出来なかった。

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甲府のビルドアップは3CBの脇の二人で始まる。そこにGK岡西くんも加わり3人になる事も。サイドは甲府WBとIHに金沢のSHとSBをマッチアップさせればいいのだが、中央に数的不利が生まれる。中盤に山田(山本)くん、前線に野津田くんを押し出す事による効果はかなり大きかった。

ハッキリ言って、金沢の攻撃でチャンスだったと思えるものを思い出すのが難しいくらい印象にない。下に張り付けたハイライトでも、金沢の攻撃が取り上げられているのは試合終了間際の力安くんのシュートのみ。

悪循環を救えないベンチ

特に後半開始から15分くらいを見てもらえば分かり易いのだが、5バック化した甲府に対してWBとCBの間を広げるでもなくCBの裏を狙う訳でもない、いや実際は狙っていたのだが単調な攻撃。それは結果的に疲労→失敗→疲労の悪循環を生んでいた。攻撃のアイディアが無い事で下がり過ぎてしまう金沢の選手達。それはこのパスソナーを見ていただければ一目瞭然だ。(画像はSPORTERIAより)

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後ろとボランチでボールを回していてほとんど前にパスを通せていない。その原因となったのは、ほぼ同スピードで前線へと移動する金沢のSHとFWだ。金沢の前線は意図的に2FWとSHが1枚、合わせて3人程度が並んでクロスやロングボールを待っている事が多い。これはターゲットとなる枚数を増やす事によって的を絞らせない狙いがある。しかし、ある程度エリアが限定されてしまう為、スペースが生まれていてもそのスペースを生かした攻撃が出来ないデメリットもある。

甲府はそんな金沢の攻撃の特性を利用して5-4ブロックの中に3枚、もしくは4枚で同じようなスピードで動く攻撃陣を封じ込めた。封じ込めたというか、そこに居なさいと(ヤナ将に)言われているのだから相手(金沢)から入ってくれているのだ。もともとポゼッション時の攻撃の打開策を持たない金沢は攻め手が無くなった。

それでも前を向く選手達

58分11秒の松田くんのインターセプトから嶋田→丹羽→松田と渡って甲府PA脇からクロスを入れるシーンなどはシュートで終われないのが不思議なくらい。

さらに61分48秒の藤村くんの嶋田くんへのキラーパス。大谷くんがシュートして枠を外してしまうのだが、そこに至るまでに攻撃の歯車が合っていないと感じる場面が2度あった(嶋田くんが瀬沼くんの要求した足元にボールを出せず、瀬沼くんが突っ込んでくる藤村くんを感じられずに大谷くんへパスを出す)

2失点目に見る絶望感

そんな悪循環の中で迎えた2失点目のシーン。完全に金沢のゴール右側がすっぽり空いていた。仕事でリアルタイムで見ていた訳では無かったのだが「空いてるよ、空いてるよ、使われる、使われる」と思って見ていたら案の定失点した。

僕のような素人が画面を見てわかるのに、現場の選手が状況をわかっていないのだからコーチスタッフが導いてあげるしかないのだ。5年やってまだ選手に気づきを求めるのなら、それが意味の無い事だと「気づく」べきだ。選手に気づきを促すのに勝ち点3が失われるサッカーを行う事は、選手の成長や思考を止めてしまう。実際、試合で失敗すれば試合後コメントで名前を出されかねない。監督が負けを選手のせいにする。選手のコメントも短い(Jリーグ公式HP参照)

今が底、しかし底だから上がるとは限らない。

今が一番、底の状態だろう。ただ、底がどれだけ続くのかはわからない。今はまだ7位(第11節終了時)だが、底がひと月続けば降格圏まで真っ逆さまだ。何故「まだ開幕してしばらくしか立たないうちにこんな事を言うのか」と思われるかも知れないが、それだけ今年に賭けていたヤナ将のプランが早いうちに対策されてしまったという事と次の一手が見えないという2点に尽きる。

僕の考えではオリンピックの為の中断期間までなんとか降格圏に落ちないでくれれば、と思っている。悲しい事だが、町田戦以降ポジティブな感想を持てない僕の偽らざる気持ちだ。もちろん、僕の想像を裏切ってくれる事を願って止まない。

先出しジャンケンの限界

ヤナ将は3年目まで先出しジャンケン、例えば「グー」を確立した。そして4年目はその「グー」にスタミナ、相手を上回る持続性を持たせる為に、若さに特化したチーム作りを行った。しかし若さに限界を感じたのも確かだろう。そして5年目、今年のヤナ将はクリエイティブな選手を補強し、相手の想像を超える「グー」を出そうとしてきた。しかし、シーズン4分の1を迎えたところで正念場を迎えている。ここから対戦相手を上回る何かがある、と思いたい。ただ、このままだとヤナ将は自分の信念と共に最後を迎える可能性が高い。

伸びシロは選手だけがあるわけでは無い。還暦過ぎてもバージョンアップ出来るところを見せてくれ。

スタッツ

ハイライト



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