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2020 J2リーグ第4節 ヴァンフォーレ甲府 VS ツエーゲン金沢 レビュー

前節、新潟戦では強力な攻撃陣を相手に3失点。5点取って勝ち点3は得たものの守備に大きな課題を残した。快勝をずっと喜んでいられるほどJの2部リーグは甘くない。課題にすぐ直面するようなタレントがそろう甲府。無観客から有観客へ。土曜の試合とは思えない1500人の観衆が選手たちを温かく迎える。

スタメン

金沢のメンバーは変更無し。今年のリーグは総力戦だと思っていたが、実はそうではないのかもしれない。ディフェンス陣の修正は出来たのか。

ベンチメンバーは山根永遠くんが抜けて島津頼盛くんが今期初IN。

甲府は前節の1トップの形から2トップ寄りの形になったが、ハーフナーさんとバホスさんがどちらかが前に出る縦の関係。去年、長谷川くんを退場させたドゥドゥさんは高安くんとマッチアップ。松田くんとルーキー中村くんがOUTで野澤くんと太田くんがIN。僕のお気に入り泉澤くんはベンチ。注目していた宮崎くんは見られず。しょぼん。

金沢が上手くいっている??

試合開始から甲府がコーナーキックから一点を入れるまでの間、解説の方は金沢の攻撃が上手くいっていると言っていたが、実際シュートが打てたのは加藤くんの1回だけで、下川くんのPAの深い位置での切り返しからのクロスはルカオさんにスレスレ届かず。これが一番のチャンスだった。

ゴールの近くで仕事が出来なければ、新潟戦のようにミドルシュートが狙えれば良かったのだが、甲府ディフェンスはMF-DFのライン間(2ライン間)を前節の松本戦より狭く絞り、金沢の攻撃に対応。DFライン裏への意識が強すぎる金沢の攻撃は読みやすく、パス精度も高くない。甲府としては金沢のサイドに追い込みボールを狩るディフェンスに手を焼いていたものの、ヒヤッとするまでには至らなかっただろう。

得点の前のバホスさんが左に抜け出すシーンでも、しっかりと石尾くんを誘導して、身長差のあるハーフナーさんには廣井くんがつくように仕向けていた。

それにしても我らとしては、悔しい1点であり嬉しくもある1点であった。3バックの右もSBも出来る小柳くん。うーん、素直に「欲しい」と思ってしまった。

山根と加藤と杉浦力と

2点目が入れられる直前の34分の金沢のコーナーキックからのシーン。大橋くんのアウトサイドのパスが加藤くんの頭にドンピシャだったと思ったのだが、これが入らず。

ヤナ将は「J1でも活躍できる」と太鼓判を押す陸次樹くん。確かに期待は大きいしセンスも感じるのだが、さすがにここまで外しまくっていると、起用に対して疑問を持ってしまうところがある。

点が入ってしまえばケチャドバなのかもしれないが、一度ベンチからスタートさせてもいいのではないだろうか。なぜ永遠くんを外したのか、なぜ他のメンバーを入れずに杉浦力くんを入れるのか。指揮官の胸の内はわからないが、選ばれないメンバーは求めるレベルに達していないのだろう。突然、永遠くんがSNSを止めてしまったのも気になる。

うちには「バホス」はいない、の本意は?

本気でそう言ったのであれば、疑いたくなる言葉だ。確かにスピードに乗らせたら手強い相手だ。しかし、マネ出来ないプレーだとは思わない。実際、ちゃんとした連携が出来ていたからだ。

①サリー(ボランチがCBの間に下りてきて、相手FWに対して数的有利の状況を作りパスを回す方法の略)の為に下がってきた武田くんが金沢FWの間に入ろうとすると同時に野澤くんが前へ。金沢FW加藤くんが追うも大橋くんにマークを渡そうとする。同時に甲府の太田くんが右へ移動、スペースを空ける。

②甲府CB今津くんの縦パスをハーフナーさんが下りて受ける

③ハーフナーさんが野澤くんへパス。金沢CB廣井くんがついていくとそこにスペースが。野澤くんにはこの円の位置くらいにくると、金沢MF大橋くんがマークにつくがちょうど受け渡すタイミングのところを狙われている。

④空いたところにバホスさんが走りこんで勝負あり。

という具合でチームの連携がとれたマンツーマンの崩し方で、甲府の6人がこのゴールに関与している。金沢の再三にわたりDFの裏を取ろうとしていた攻撃はボールの受け手と出し手の二人、もしくはその間に入るもう一人の三人、といったところ。

うちにバホスさんがいても同じ事が出来るだろうか。ぜひ次節は快勝して「うちにはルカオがいる」と言ってもらいたい。

敗戦の悔しさを和らげる頼盛のゴール

後半、変更無しの甲府に対して、金沢は金子→窪田と西田→島津の2枚替え。ビハインドを迎えた時への作戦要員としての投入となった。

窪田きゅん(筆者の推しメンの為、こう呼ばせてもらっている)は金子くんより速い持続力のあるスピードを持っている(金子くんは瞬発力的なスピード)し、ここのところアーリークロスも武器にしている。

島津頼盛くんはウイングストライカーの西田くんとは全然違い、PAの周囲での仕事を得意としており、サイドのプレーヤという感じではないが、練習ではサイドにも使われていたようなので、てっきりSHとして覚醒したのかと思っていた。試合に出せるレベルじゃないとメンバー入りさせないのがヤナ将だ(まあ、当たり前っちゃぁ当たり前か)。

少し話は逸れるが、ヤナ将はゲームの設計図を作り、そこに選手を当てはめていく監督だと思っている。だからヤナ将の描いた図面に当てはまらない頼盛くんは2年間あまり日の目を見なかった。

しかし、頑ななヤナ将を動かす事となった頼盛くん。説明はあとでするとして、思いっきり振りぬいたグラウンダーのミドルシュートは、雨で滑る芝に乗ってポストを弾きゴールに吸い込まれた

我らが2年と数か月待ち望んだゴール。嬉しさが爆発するのは当然だ。もしこれが西部緑地だったら、大声で喜んで出禁になる観客が大勢出ていたかも知れない。ありがとう頼盛くん、アウェーでゴールしてくれて。

喜びが凄すぎてブレまくりです(笑)

後半の作戦、疑似3トップ。それはヤンツー苦肉の策?

後半から金沢は今までに無かった策に打って出る。それはSHを内側に絞る事でボールサイドと反対側のSHがFWのようになる疑似3トップだ。

完全に甲府の最終ラインに3枚並んでいる。決してずーっと張り付いているわけではなく状況に応じてスペースを見つけ頼盛くんが2列目に移動したり、窪田きゅんが中央やサイドにながれる。CBがハーフェーラインまで上がり藤村くんがサリーでSBを押し上げ、尚且つボランチが早めに相手ボールを狩り取る。まるでポゼッションサッカーに方向転換したような時間帯だった。

いつも金沢のパス本数は300そこそこなのに、この試合では516という数字をたたき出した(甲府487)。金沢のボール支配率は49%。数字だけ見てもかなりいつもとは違うのがわかる。さらに高安・下川のディフェンシブサードプレー比率は15~16%で、ゲーム全体を通してかなり攻撃を意識したポジショニングだった事がわかる(甲府SBは35~38%)。

ただ、これはヤナ将の変化がもたらしたものかも知れない。あくまで僕の独断と偏見だが、先ほども言ったとおりヤナ将は、ゲームの設計図を作り、そこに選手を当てはめていく監督。J1クラブならまだ多くの資金でその設計図に合う選手を連れて来られるかもしれないが、ここはJ2。そこで自身の戦略と選手の特徴との整合性を図ったのだ。

そのカギとなるピースが頼盛くんだった、と思いたい。

しかし、やはり決定力やその一つ前のプレーの正確性はすぐには向上せず、押し込んでいる時間帯は続いたが、相手が3バックで対応してきたり、前線を活性化させる事で土俵いっぱいで踏みとどまり、藤村くんが足をひねったあたりで勝負あり。

甲府2―1金沢

感想

敗れはしたが頼盛くんが溜飲を幾らか下げてくれた。僕はボランチの二人のどちらかがリスクを冒してでも前に出るべきだと思っていたが、そうではなく、窪田・頼盛という新たなピースが変化をもたらしてくれた。

しかしまたこの策をしかけるとも限らないし、最後と一つ前のプレーの正確性はすぐには向上しないだろう。また、結局ルカオさんを攻撃の要として十分に使うことは出来なかったし、ボールを運べる選手が下川くんしかいないというのも迫力不足。そして藤村くんが次節以降、出場できるのかも気になる。

1勝1分2敗、他のクラブのサポーターから見たら前評判通りだろう。まだ先は長い。しかし、ゆっくりとはしていられない。

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