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2020 J2 第3節 アルビレックス新潟 VS ツエーゲン金沢 マッチレビュー 運を左右する要素

何事にもそれを構成する要素がある。サッカーで言えば、個々の選手の特徴・チームとしての狙い・天候・スタジアムの状況・試合展開・交代のタイミングなど。運が良かった悪かったと片づけられがちだが、その運を勝ちとる為の事前準備・心構えが勝敗を左右する。雨が強く打ちつけるデンカビッグスワンスタジアム。何が試合の勝敗を左右する要素だったのか。

スタメン

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新潟は前節より変更1点。高木→シルビーニョ。図では4-4-2の表記としたが、主に攻撃ではゴンサロ・ゴンザレスさんが(以下ゴンザさん)が最終ラインに降りる「サリーダ・ラボルピアーナ」(以下サリー)の形を取り両サイドバックを押し上げる5-1-3-1のような5-1-2-2のようにも見えるのであまり静的な図は参考にならない。日本のサッカー、J2もかなりポジションレスなものになってきた。

ディフェンス時は4-4-2だがボールが第1プレッシャーライン(FW)を超えるとゴンザさんが最終ラインに入り中央に鍵をかけようとする。GK藤田くんはU-18代表メンバーであり初のリーグ戦デビュー。

一方金沢の変更は山田→廣井。久々にスタメンに帰ってきたキャプテン。コロナ下のリーグ中断の状況でSNSやnoteで積極的に発信をしてクラブやスポンサー、サポーターの為に行動してきた男だが、本当に力を発揮するのはやはりピッチの上だ。

さらに松本戦ではレンタル元の為出場出来なかった下川くんが復帰。岡山戦では右SBだったので、ようやく慣れ親しんだ左での出場となった。そして山根→西田。左SHの選考に悩むヤナ将の今日のチョイスはメグちゃん。しかし、これは今後に大きく影響するテストだった。

サブには特別強化指定選手の17歳杉浦力斗くんと、何かとお世話になっている湘南から短期レンタルでやってきたGK堀田くんが名を連ねた。

前半、いきなりまた外国人のクオリティにやられる

開始早々、新潟が新井くんからシルビーニョさんへの右サイドへの長いフィード。金沢GK白井くんがクリアするが渡邉新くんにボールが渡ってしまいファビオさんとのワンツーでシュートという幕開け。石尾くんがシュートを弾くが、新潟の攻撃陣の好調が見て取れるシーン。

そして開始4分弱で早くも失点シーンが訪れる。新潟の左サイドの崩しが上手く行かないと見るや、CBまでボールをゆっくりと戻す。

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図の配置をしっかり見て欲しいのだが、マウロさんにボールが渡るまではゆっくり回していたが、縦パスでイッキにスイッチが入る。ボランチの秋山くんまでもを最終ラインに入らせて中盤をあえてカットし、油断を誘ってアッと言う間に仕留める。多分、練習でかなり仕上げてきた形であろう。マウロ・シルビ・ファビオの3人でやられてしまった。

昨シーズン、レオナルド・フランシス・シルビーニョで鮮やかに決められてしまったゴールを思い出させるような「やられた」感。だが、スロースターターの金沢には逆に良い刺激となったかも知れない。

金沢の反撃、始まる

今度は金沢が最終ラインからゆったり(?)と回したのちに右SB高安くんからワンタッチパスがルカオさんに入る。金子くんが中央に移動したのを見て高安くんが右に流れる。

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この二人の動きが結果、ルカオさんの切り替えしてのシュートを生んだ。田上くんにディフレクション(ハンド)してゴールとなったがルカオさんがチェイシングで疲弊した時間帯では、シュートまで持って行けなかったかも知れない。PA前からでも積極的に狙うという共通意識があったからこそ生まれたゴールと言えよう。

2点目のゴールも、下川くんの突破が目立った形となっているが、西田・ルカオが順に左に流れて囮になっている。それに気がついたゴンザさんが下川くんにアタックに行くがそれをも躱しシュート。1点目も同じだったが、しっかりゴール前には陸次樹くんが詰めていた事も付け加えておく。

さてこれから得点を全て列挙していくのもいいのだが、気になった点を挙げておく。

新潟は3点目を金沢に入れられてから、2列目の右にロメロさん、左に渡邉新くんと入れ替わった。ロメロさんに金沢の右サイドに入り込ませてキープ力を生かす意図があったのか。さらにはマンツーマンを躱す為か、意図的にワンタッチパスを中心に組み立ててきた。特に金沢の左の裏やディフェンスラインの裏が狙いだが、オーバーロード&アイソレーションで新潟の左に渡邉新を残しているような形。しかし、金沢もあえて「崚雅、前!」とリモートマッチならではのヤナ将の声がスタジアムに響き渡り、コンパクトに守る事で、新潟のワンタッチパスで出るミスタッチを見逃さず跳ね返していく。

その中で何度かあえて長いクリアボールを出し、睦次樹くんやルカオさんを走らせていたが、4点目はそれが功を奏した形となった。

やがて新潟の前線の選手達の動きが鈍くなって、上手くボールが回らなくなってきた。そして試合開始当初より雨足が強まってきた所で前半終了。後半の振る舞いを見ると、なぜ前半の最後に動きが鈍くなったか納得がいった。

後半、西田OUT

金沢は後半開始から西田くんがOUTで窪田くんがIN

試合後のヤナ将コメント:しんどい思い、苦しい場面で逃げている選手が何人かいたのは非常に残念。そういう選手は代えていって、チームとして責任持ってプレーができる選手を起用したいと思います。(抜粋)

このコメントの意味は重い。そう思って真っ先に西田くんを下げた理由は何か。

主に左サイドの裏が狙われていた事で、下川くんとの位置取りが難しかった事は仕方ない部分もあったか。しかし問題は、相手ボールになった時のプレッシャーの掛け方ではなかったか。

試合中に何度も周囲を確認している西田くんを見る事は出来た。だが迷って動けていない時が何度か見られた。

しかし、ヤナ将のトリガーを引いたのは、前半アディショナルタイムのルカオさんが相手ボールをカットした時の西田くんの動きだったのでは。

ルカオさんがすぐにGK藤田くんに詰めて、新潟右SB新井くんにパスを出させるがルカオさんの動きに連動していれば、そのパスをカット出来ていた可能性は高い。

自分がしんどい時は相手もしんどい。そこで上回らなければ勝てない。ヤナ将らしい交代だと言える。あくまでも私の見解であり、見ている皆さんは違うと思ってもらっても構わない。そこで替えるかどうかは監督にしか判断出来ない。

一方の新潟は田上OUTで本間IN

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また静的フォーメーション図で表すとこんな感じだが、秋山くんがサリーで最終ラインに降りる時はシルビーニョさんがボランチの位置へ。前半はやや下り気味のファビオ・シルビーニョの2トップだったが後半はファビオ・新太の並んだ2トップ。至恩くんは2列目の左に入った。

替わって入った窪田くんが右SH、金子くんが左SHに位置取る。

後半、耐え続けなければならなかった理由

新潟はやがてロメロさんが高木くんと、秋山くんとゴンザさんが島田くんと舞行龍さんと交代。そこで生まれたのは前半とは逆の左サイドでのオーバーロード。

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本間くんのドリブルに翻弄された感はあるが、明らかに前半は右サイドだった攻撃が後半は左に偏っていた。シルビーニョさんのユーティリティぶりには脱帽するが、効果的な4枚替えの交代とサイドを変える事によるスタミナの分散。あと1枚は何かあった時に備えてのもの。

左サイドだけに限定してしまえば長身の本格FWファビオさん、ドリブラー本間くん、パサーでもありボールキープにも長けている高木くん、上下動を高い次元で繰り返す堀米くんに、リンクマンのシルビーニョさんと島田くんが顔を出す。防戦一方になるのは必然だった。右で攻めて疲れた前半からの180°方向転換。アルベルト監督、日本での3試合目でこれが出来るとはおそるべし。

たらればだらけの試合

2-4だったのが幸いして後半は1失点でしのぎ切れたが、もう4-3だったら耐えきれなかっただろう。

新潟の左サイドオーバーロード作戦にヤナ将の出した答えはFWの杉浦ワンペア作戦だった。

これでGKが石井くんだったら、「リョウ」の3カードでフルハウスとなるところだ。

それは置いといて(笑)、とにかく前線をフレッシュにしてチェイシングしロングボールを出させてセカンドボールを奪うといったもの。

恭平くんのほうがPKを貰ったので逃げ切りに成功したが、あれがなかったら勝ち点3は獲れなかったと思う。(僕的にはあれはPK?と思うシーンだった)両チームにPKが与えられたのも去年のビッグスワンの試合と同じだ。

試合の分かれ目は29分

1-3で迎えた29分38秒。秋山くんから精度の高い縦パスがファビオさんに送られ、ワンタッチでシルビーニョさんへ。このシュートがゴールならず。

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後半にも多くのチャンスを作られてしまったが、ここで決められていたら負けていたのではないかと思うくらいホームの新潟は、点を離されても心が折れないポテンシャルがあった。結果的に勝てた事は、確かに運が良かったのかも知れないが、狙いが見事にハマったといえるのではないか。

3-5、結果オーライでは無い課題

今回は勝てた。しかし、去年は持ちこたえられない試合もあった。前節僕は4つの課題を上げた。

①決め事の整備、スペースの認知

②ボール非保持→ポジトラの切り替え

③ボールを前に運ぶ選手が必要

④ルカオさんの使い方

④に関しては前半はある程度出来ていたと思う。特にスタミナがあるうちにルカオさんにボールを集める事は得点に直結する。③も下川くんが証明して見せた。しかし①②はまだまだチームとして同じイメージを描けていない。

ギリギリ持ちこたえて勝ち点1を得る事が、ヤンツーの目指すサッカーでは無いと思う。攻め込まれる時間帯があるのは仕方無いとしても、反撃の為の策・交代のカードが乏しいのが現状。

我らがキャプテン廣井くんは、真面目で常に何がクラブの為になるのかを考え行動する男。今期初先発で3失点と課題は山積しているものの、自らヘディングで得点してカメラにポーズを撮って見せた(サムネ)。この試合に賭けるというポテンシャルを一人一人が持てるかどうか。今はまだ抜け出せない長いトンネルの中だ。

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