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2020 J2リーグ第33節 ツエーゲン金沢 VS ザスパクサツ群馬 レビュー「夢のかけら」

寒いはずだよ。本当ならもうリーグ戦は終わる頃。しかし、今年はまだサッカーが見られる。サッカーは過酷なスポーツだ。雪が降ってもやる事だってある。今年のホーム最終戦も、もしかしたら雪が積もっていても不思議ではない。いつの間にやら、五連戦をいくつも終えて夏が過ぎ秋もあと少し。もう少し、レビューにもお付き合いくださいな。

スタメン

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最近の金沢は前節からいつも5枚替え。少し前の怪我人多数の時からは信じられない状態。ルカオさんが警告累積出場停止。で、FWは加藤・山根の7K17コンビ(れいちゃんが言ってた)となった。

他にはいつもの廣井→作田。そして窪田→ホドルフォで上の図のような配置に。窪田きゅんは今回はお休みを与えられた様子。北九州戦でかなりの相性の悪さを露呈してしまった本塚・長谷川の両名が再びコンビとなった。

そして白井→石井。著者は昨年ほど白井くんに絶対的な安定は無いと感じているが、だからといってすぐに正守護神が石井くんに替わるほどとは思えない。ただ、今のままの白井くんなら、石井くんにも十分チャンスはあると思われる。その話はまた別の機会に。とにかく石井くんは与えられる少ないチャンスを確実にモノにしていく必要がある。

そして、前節久々にベンチ入りし途中出場途中交代となった渡邊泰基くんは再び名前が消えた。負傷のアナウンスは無いが心配だ。さらにルカオさんの代わりといってはナンだが、杉浦力斗くんが久々に帰ってきた。

群馬の前節からの変更は2点。川上→渡辺、加藤→進。去年まで金沢サポを震え上がらせていた「金沢キラー」林くんはベンチスタート。なんと言っても去年金沢に所属した小島雅也くんが、前回対戦後からスタメンとして定着しているのが嬉しい限り。群馬で欠かせない選手となっているが、アシストが無いのが少し寂しい。

試合開始

前回は群馬65%に対して金沢35%だったボール支配率。今回は群馬55%、金沢45%となりました。これはボールポゼッションにそこまで固執せずに、ロングパスやロングフィードでサイドにボールを供給する事を選んでいたからだと解釈。パス数も前回群馬が695本あったのに対して今回は565本と130本減少。ボール保持率を高めてショートパス・クロスをつないでゴールを目指していくというやり方は、選手の質が伴っていないと難しいので若干の軌道修正をしたものと察する。

ただすごく惜しく感じたのが、群馬のボール保持時にボランチの岩上くんがディフェンスラインに下がってサリーを行っているのだが、岡村・岩上・渡辺の距離感が近すぎて金沢のプレスから逃れられていない事。これは、金沢のプレスのかけ方も良かったのだが、一方のFW(山根)がボールホルダーへプレスをかければもう一方のFW(加藤)が群馬ボランチの内田くんに付いてパスコースを切り、群馬のCBに対しては金沢のSHが距離を詰めながらSBへのパスコースを切っていた。

群馬はわざわざボランチが一列下がってSBを押し上げて攻めたいはずなのだが、CBが広がっていない(幅をとっていない)為に相手のプレッシャーから逃げる事があまり出来ていなかった。(図の廣井は作田の間違いです)

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該当シーンは数あるが28分23秒~のシーンを見れば一番良くお分かりいただけるかも知れない。その為、どうしてもボールを受けた選手が金沢のプレッシャーを掻い潜り、早くボールを出そうとしてミスが誘発される事が散見された。前半最大の決定機、40分22秒mの飯野くんからのグラウンダークロスを田中くんが合わせるも枠を捉えられず。

一方の金沢は普段はスロースターターなのだが、相性の良い相手という事もあるのか序盤から主導権を握る。1分50秒に藤村くんから山根くんへのロングボールが出るが、ゴール前でボールとの距離が合わず惜しい場面となったが、期待の持てる試合の入り方となった。

その後も11分ちょうどのチットがCBの間を上手く抜ける加藤くんに絶妙のロングフィードを送りGK清水くんとの1対1になるが惜しくもシュートを阻まれたり、19分44秒の右サイドからの藤村くんのクロスに山根くんがヘディングで合わせたシーンや、26分40秒の山根くんのミドルシュートがクロスバーを直撃するシーンなど、ゴールの臭いがプンプンするものの得点が奪えない金沢。

群馬の試合を沢山観れているわけでは無いので分からないが、福岡・北九州・徳島・長崎と上位チーム相手に惜しい試合をしているというのも、あと一歩のところでなかなか得点を与えずに、粘り強く相手の綻びを待つ一体感というか気持ちの表れではないだろうか。少なくともこの試合からはそれが感じられた。

しかし、金沢も勝ちたい気持ちは同じ。チャンスは何度もあった。だが、前半は0-0で終了する。このまま得点出来ないのではないか、と頭をよぎった。

後半、ボール保持せずに支配率高め

だがそれは徒労に終わった。スコアだけ見れば1-0。辛勝だったと言われるかも知れない。しかし、この組み合わせによる化学変化を見られたかも知れない、と思う時間帯があった。

後半は入りこそ少し群馬にゴール前までボールを運ばれてしまったが、53分ごろから金沢の最終ラインがハーフェーラインを超えてコンパクトな状態に。

そうする事で、大橋くんもしくは藤村くんのどちらかの中盤の底と前線までの距離を出来るだけコンパクトにしてショートパス・ワンタッチパスを繋いでシュートまでたどり着く。ボールが奪われると加藤陸次樹くんが戻ってチェイシング。その空いた場所を本塚くんが埋めて群馬のディフェンスラインを上げさせまいとする。

群馬相手だったから出来たのかもしれないが、なんとも言えない連携がそこにはあった。後半開始15分、決してボール保持を目的とするわけでは無く、コンパクトにパスを速くつなぐ事だけでボール支配率が群馬を上回った。

この試合唯一の得点は「夢のかけら」

得点シーンは、金沢右サイドのディフェンシブサードとミドルサードの境目あたりから。

長谷川くんのスローインを陸次樹くんが戻って受けて本塚くんへ。本塚くんから右サイドハーフスペースまでボールを受けにきた下川くんへ。その間にするするっと上がっていく陸次樹くん。群馬の田中くんに身体を引っ張られながらもボールをキープし中央レーンへ移動。

山根くんは群馬ディフェンスと駆け引きしながら下川くんの様子を伺い、下川くんがパスを出せる状態になったのを見て相手の裏を取る。スルーパスが出てGK清水くんとの1対1に一瞬なるが、清水くんと正対する前に陸次樹くんの位置を確認。

山根くんの右側から3人の群馬ディフェンスが戻ってきていたが、清水くんのポジショニングが自分に不利と見るや3人の向こうにいる陸次樹くんにパス。見事に逆を突いてゴールを奪ってみせた。

EURO2008≒群馬戦

大袈裟かも知れないが(大袈裟も大袈裟)EURO2008を制したスペイン代表のクワトロ・フゴーネスのパスサッカーを観ているかのような、いやもちろんクワトロ・フゴーネスは信じられないような針に糸を通すようなパスを何度も見せてくれたが、金沢のサッカーがカウンターから一歩前進するのではないかという期待を抱かせてくれるようなシーンであった。

大袈裟なのはわかっている。しかしスピード&テクニックを備えたF・トーレス(加藤)、セカンドトップ的なD・シルバ(山根)、本職がCHの右SHイニエスタ(本塚)、パスセンス抜群のセスクとシャビ(下川と藤村)、精力的なカバーリングを行い、攻撃の起点にもなるM・セナ(大橋)と特徴が類似している事も興味深い。

試合終了

ハイライト

確かに、群馬にもチャンスはあった。少しの歯車の狂いで勝者と敗者は入れ替わっていたかも知れない。しかし、金沢は勝った。「内容より結果」と6試合勝利から遠ざかっていた選手達は口をそろえて言った。では次は内容も伴うようにして欲しい。勝ちたい気持ちを出して勝った。残り試合も少ない。無駄に出来ない残りの試合で進化を見せて来年に繋げて欲しい。次節、大宮戦。対戦成績は7戦して4分3敗勝ち無しだ。

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