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2020 J2リーグ最終節 V・ファーレン長崎 VS ツエーゲン金沢 レビュー まぐれか否か?

遅い、と言われるのを覚悟で一週間以上空いてレビューを出す。ハッキリ言ってこの半年、がむしゃらにレビューを書いてきた。中2日であれば次の試合の前日未明までという事も少なくなかった。それでも納得いくものを出してきたつもりだが、もう一度原点に帰ってレビューというものに向き合いたいと思ってゆっくり考えた。年末の暇な時でいいので見られる方はゆっくりと見て下さい。

スタメン

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長崎は昇格の可能性を失って迎えた最終節。徳永くんが引退もベンチ入りせず、手倉森監督の退任も発表。さらに試合後のコメントで磯村くんの契約満了も発覚。昇格とはまた違うモチベーションで試合に臨む。

金沢は2位の福岡との激闘を再現すべき試合だったが、なぜこんなにも違う試合になってしまったのか。石尾くんが筋肉系のトラブルで、最後の最後で初の廣井・作田のCBコンビになった。そして前節退場となってしまった長谷川くんと替わって高安くんがIN。

石尾くんが怪我で居なくなった時の事を考え、廣井・作田のコンビを試しておかなかったのは何故だったのか、と試合前に考えていた。とにかくリーグを完走させたかったのかとも思ったが、そうでもなさそう。考えれば考えるほどわからなくなる。それが我が将軍。

最終節だからこそ、見つめなおすべき

最初の入りは良かった。2分13秒に島津頼盛くんがパスカット。山根→藤村→島津と繋いで30メートル付近からのミドルシュート。前節京都戦のスーパーゴールのイメージそのままで、ノッている事を感じさせた頼盛くん。

しかし3分5秒、チットさんが中央付近まで寄ってきているのを見逃さず、長崎CBフレイレさんが逆サイドのSB毎熊くんへ早いフィード。毎熊くんがSH名倉くんへボールを落とし、ゴール前までドリブル。簡単にチットさんのいなかったところの裏を突かれてピンチを招く。

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ここら辺から長崎に試合の主導権を握られる。長崎は焦る事なくボールを保持し、サイドで3人(三角形)、4人(四角形)と関わりながら前へとボールを運ぶ隙を伺い、隙が無ければ最終ラインへとボールを戻し、また一から組み立てる。

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試合後の手倉森監督のコメント(Jリーグ公式HPより抜粋)
ボールを持って、人もボールも動かせるような仕掛け。堅守速攻からのスタイル変更からすれば、持つだけでもハラハラするところもまだあると思いますけど、そのハラハラも結局はボールを握って主導権を取る。相手も動かすというのが長崎のスタイルに根づいてくれればいいなと思います。

それをまさしく見せつけられたボール運び。しかもテクニックのあるルアンさんが積極的に下りてきてボールを前進させにくる。長崎のボール運びは金沢のボール運びにも影響。

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最近お得意のヒートマップです(笑)。左が激戦ドローの福岡戦、右が長崎戦のもの。スタメンのFW2名、ボランチ2名、SH2名の比較です。ちらっと見ただけでわかるアナタは天才。もう私のクソ分析など見なくても良いです。しかし、違っているのは分かるけど何がどうなってるの?と思ったのなら話を聞いて損はない。

まず陸次樹くんですが、福岡戦ではヒートマップの濃い色の箇所がミドルサード付近にあるのに対して、長崎戦ではファイナルサードに多いのがわかります。しかし、福岡戦のボールタッチ位置はファイナルサードに、長崎戦のボールタッチ位置はヒートマップの濃い色の箇所とあまり違っていません。

要するに福岡戦では、相手の裏への抜け出しや相手を置き去りにするプレーなどが効果的に行え、ボールに触れていた事がわかります。

しかし長崎戦では前の方でボはールを待ってしまい、相手の裏のスペースに入り込めておらず、「元々居た場所でボールを受ける」状態になっていた事がわかります。福岡戦での濃い色の場所が、長崎戦では前に移動したと思うと手っ取り早いです。

陸次樹くんのコンビとなる選手の違いも明確です。FWはお互いが近くでプレーする事が金沢のプレー原則となっています。それはターゲットとなるFW2人が近くにいる事で敵に的をどちらか一方に絞らせない狙いと、こぼれ球を拾えるという利点があります。

杉浦恭平くん(福岡戦)は、比較的濃い色の範囲が少ない陸次樹くんの動きに合わせた動きになっていますが、永遠くん(長崎戦)はなかなかチャンスが来ない中で、何とか状況を打開しようと動く範囲が大きくなっている事がうかがえます。それに関しては追々。

そして、FW以外の4人の動きです。補足しておきますと福岡戦のアタッキングサイドは以下の通り。

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そして長崎戦のアタッキングサイドは以下の通りになります。

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上にスクロールするのがめんどくさいでしょうから、もう一度ヒートマップを貼っておきます。

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金沢側からすれば、福岡戦は左で攻めて右で守る、長崎戦は攻めも守りも右の展開が多かったはずです。そう考えると何となく福岡戦のヒートマップには納得がいきます。

しかし、長崎戦のヒートマップはどうでしょう。右が主戦場のわりには頼盛くんが後ろに下がっていませんし、チットは左に張り付いているように見えます。そしてボランチの二人は福岡戦に比べて長崎戦は重なりあう部分がそう多くはありません。これは4-0と大敗した山形戦の大橋・本塚にも見られた関係性です。

要するにこれは試合後にヤナ将が言っていた

「お互いの距離が遠くて、それぞれが準備できていない選手のほうが多くてミスが多かった。今までやってきたことが出せなかった。」

という事を表していると思います。てんでんばらばら。

最近、あまり試合写真を出したくないのですが、わかりやすいのでのせておきます。金沢の選手がいかに遠くて、長崎の選手がいかに近くでプレーしているかがすぐにわかります。一枚目は金沢の攻撃時、二枚目は長崎の攻撃時です。

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後半は少し修正して、盛り返すことができましたけど、最終的にこういう結果になったのはまだまだ基本的なところや細かいところができていなくて、やられたりしているところや得点チャンスまでいかない。そういうところが見られました。

とヤナ将が言うように、反撃はみられました。しかし距離感とはまた別の働きがありました。

この試合、前半でシュートが3本(廣井・渡邊・チット)、後半は残り30分になり9本を記録しています。FWが交代して力斗くんが1本シュートを打っていますから、交代するまでの25分間に8本打っている計算になります。

その原動力となったものはなんだったのか。それはこの男たちの思い切った行動だったのです。

一人は山根永遠くん。もう一度、陸次樹くんと一緒にヒートマップを出しますが

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後半になり陸次樹くんのそばにいるのではなく、ボールを貰いにいく動きや、外に動いて中の陸次樹くんを活かす動きが目立つようになります。福岡戦の恭平くんの動きとは違うヒートマップになっているのは、その為だったのです。

61分24秒のドリブルで持ち込んでシュートまでいくシーンや、72分ちょうどくらいの場面でも右サイドラインぎりぎりのところでパスを選択せず、ドリブルでボールをキープしながら前進し相手を引き付けていたり、ほかにも下がったり横に移動したりして味方のゴール前への進入を促す動きが何度も見られました。

そしてもう一人はこの人です。

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1試合で4~5回記録するのが普通の回数(それも大橋・藤村が主に記録)なのに、この試合で8回タックルをして成功率100%。しかもFootball labさんのボール奪取ポイントが自身のシーズン最高の25.35(2番目の記録が10月18日の対磐田戦の14.34でタックル4回)。これは石尾くんも記録していない高水準の記録です。

そのタックルの多くがこの後半で見られたのです。73分54秒に玉田くんの受けるボールをカットして永遠くんの決定的なシュートを生み出す場面や、79分43秒にはルアンさんと競り合ってボールを回収するところなど。両方の場面とも最終ラインからかなり前に出てのプレーでした。

しかし、両選手の頑張りもむなしくシュートはことごとく枠の外へ。そして89分に高安くんが磯村くんを倒してしまいPK。その後追加点を与え3-1に。

PKを与えた場面は仕方ないところはあります。高安くんは全く悪くありません。氣田くんをマークしていて後ろから磯村くんが出てきたので、アンラッキーでした。気にする事は無いと言っても気にするかもしれませんがね。

三失点目は秋野くんのマークを外してしまった大石くんの集中力が切れたのか。

ただ、疑問だったのは交代でした。残り5分で引き分けている状態で二人を替える。それも一人は高校生。力斗くんが悪いんじゃないんです。それが勝つための交代だったのかという点で疑問だったのです。しかもシーズンの終わり。一つでも順位を上げる事に意味は無いのでしょうか。

交代に関しては思うところが今シーズンも多々ありましたが、わからない事が多すぎる。大宮戦の本塚→陸次樹の交代もどう考えても納得のいくものではなかったが、目の前の勝ちに固執しない交代。しかも最終戦。とてつもなく後味の悪いシーズンの幕切れとなった。

まぐれか否か

J1に昇格した徳島・福岡に好勝負をしたのもつかの間、長崎に反撃こそしたものの敗れた。結果より内容を重視した終盤の僕のレビューだったが、「準備が出来ていない」というならば何故そうなるのか。今年最後の試合でさえ準備をさせられないほどのマネージメント能力しかないのか。その答えを来季まで待たなければいけない。

さあシーズンオフ、すぐに次のシーズンが来る。

2月27日、28日から来シーズンの幕が上がる。今から2ケ月。現時点で陸次樹くんと永遠くんが居なくなってしまった。二人にはもっともっと上のステージへ旅立って欲しい。僕たちも立ちどまっている暇はない。2ヶ月のうちに色々な検証や展望を行い、来シーズンを楽しむ準備をしておこうと思います。

タギリストはシーズンオフも休みません。とにかく2020シーズンを終え、レビューを見て下さった方々に感謝してもしきれません。ありがとうございました。そして今後ともよろしくお願いいたします。良いお年を。

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