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【感想】映画『スカイ・クロラ』

*ネタバレ注意


毎日が変わり映えしなさすぎて、今思い出したことが昨日のことなのか、先月のことなのか、それよりもっと前のことなのか、分からなくなる。

そう気づいた時に、引きずり込まれるように作品に共感できた。


以前テレビ放送時に途中から見ちゃって、よく分からんと思ってた映画『スカイ・クロラ』を配信で見ました。
こりゃあ難しい。そして面白い。そして何より、清々しい夏の日に見るにはオススメしない。

とりあえず、知っておいた方がいい世界観は

  • 主人公たちパイロットはみんなギルドレ

  • ギルドレは不老。だが不死ではない。

  • 国同士の戦争は無くなり、その代行として民間の軍事会社が戦争をしている。

  • ギルドレたちは上記の軍事会社に雇われて、仕事として戦争をしている

  • 不老ではない、いわゆる普通の人間もいる。なんなら結構関わる

 
上記のめちゃくちゃ大事な設定は作中ではほぼ説明されません。見ている我々が、キャラクターの意味深な発言や眼差しから拾い上げていかなければならないので、ぼーっと見てられない。

ただ、そういう設定をもしも先に解説されてたとしたら、彼らのことをそういう目で見てしまって作品の意図とズレてしまうのかな、と今は思う。そのくらい、彼らの日常は戦争を除けばいたって平凡。

以下、ゆるっとあらすじ


戦闘機パイロットの優一が、とある民間軍事会社にやってくる。
そこには優一以外にも数人のパイロットと女性指揮官、草薙がいるが、みんな必要以上の関わりを持とうとしない。

戦闘機に乗って敵機を撃ち落として帰ってくる。新聞を読む。ダイナーでミートパイを食べる。娼館に行く。
同じ日常を延々と繰り返していたが、ある日同僚パイロットの湯田川が敵機に撃ち落とされて海に沈む。
優一はそれを同じ戦場で見ていたのだが、数日後会社に現れた新入りパイロットは湯田川そっくりの男だった。


というところまででやっと映画半分くらい。
もっのすごくジワジワ語ってくれるじゃないの!でも面白いから見ちゃう。
この湯田川そっくりの男が現れることで、今まで追いかけてきた設定のほかにもう一つ重すぎる設定があることが分かってしまうので、もう途中でやめられない。ずるい。

どうやら、彼らは不死ではないけど、死んだ後なんらかの工程を経て別名義で復活させられ、また戦場に送られるみたい。しかも戦闘技術はリセットされない。強くてニューゲームってやつか。こんな地獄があっていいのか。
 
多くの宗教で「生まれ変わり」ということを唱えているけど、それはあくまで違う世で違う人生を歩むことが前提になっている。
しかし『スカイ・クロラ』の世界では、おそらくギルドレだけがその生まれ変わりの輪の中に入れず、ギルドレだけの輪を回り続ける。草薙の部屋にある大きなオルゴールの円盤が、同じ曲を何度も繰り返し奏で続ける場面が、それこそ何度も出てくる。

多くのパイロットが「生まれ変わって」戻ってくる。そんな彼らに指揮官の草薙は何度自己紹介をしたのだろう。そう思うと草薙の変わらない表情や声色にとんでもない深さを感じて胸が苦しくなる。

絶対的な孤独のなかで、まだ死んでおらず過去の記憶がリセットされていない草薙がどうやってこの地獄のループを止めるのか。そもそも、そんなことが彼女1人でできるのか?というところで物語は終わる。押井監督ーー!!

救いがあるような、無いような。
草薙の戦いはこれからも続くぜ!という終わり方が辛すぎて、見終わってもずーっと彼らのことを考えてしまう。でも、こうやってキャラクターの未来を考えてしまう作品って名作だよね。

とりあえず、生まれ変わってきた新人のパイロットたちには日記をつけることをオススメしたい。

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