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ホームインスペクターのつぶやき2

「0、耐震」
B、耐震等級と耐震診断・耐震補強
今回の能登沖地震を経験して、多くの方がわが家の耐震性は大丈夫なのかと不安に感じていると思います。

よく耐震性として用いられているものに「耐震等級」と「耐震診断」があります。
「耐震等級3」とか「耐震診断評点1.0」という表示が分かりにくいと思います。
「耐震等級」は新築を建てる際に品格法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づいて1から3が定められています。
「耐震等級1」は建築基準法で定められた最低限のレベルで、震度6~7の大地震が来ても倒壊はしないという数値となっています。これも大地震が来ても命だけは最低限守りましょうというレベルです。
「耐震等級2」は耐震等級1の1.25倍の地震に耐えられる性能で、災害時の避難所として指定される学校などの公共施設は、「耐震等級2」以上の強度を持つようになります。
「耐震等級3」は「耐震等級1」の1.5倍の地震に耐えられる性能で、地震後も住み続けられ、大きな余震が来てもより安全です。災害時の救護活動・災害復興の拠点となる消防署・警察署は、多くが「耐震等級3」で建設されています。
一方、既存の住宅では「耐震診断」を行い、耐震のレベルを評点で表します。多くの自治体では耐震診断に補助金を出して診断を促進しています。
評点は1.0を中心として、1.0以上~1.5未満あれば大地震(数百年に一度程度起こる「震度6強」クラスの地震)があっても「一応に倒壊しない」とされ、1.5以上あれば「倒壊しない」とされています。逆に0.7以上1.0未満では倒壊する可能性がある。0.7未満では倒壊する可能性が高いとされています。

しかし、この耐震診断は多くの不確定要素を抱えながら診断する事が多く、実際に診断をしていても、本当に正しい評価なのかと疑問を持つ事もあります。
不確定要素が多ければどうしても評点の変動幅が大きくなります。(耐震診断には一般診断法と精密診断法があり、一般診断法の方が厳しい数値になりやすいです)
耐震は壁の量で計算する事になりますが、古い家の場合は図面が無く、あっても筋交や耐力壁などの情報が記載されていない事が多く、その場合は床下や小屋裏に侵入して筋交の位置や大きさを調べたり、赤外線センサーカメラや筋交センサーといった機材で調査しますが、完全には把握しきれません。

筋交センサー

把握しきれない部分は建築士の経験と判断で計算されますが、実施する人によって大きなばらつきが出てしまうのが現実です。
耐震診断をする事自体は否定もしませんし、実施すべきであると思いますが、不確定要素を診断者が想定して出したものであるという認識を持って見る事が重要です。
又、耐震診断で一応に倒壊しないと判定が出たら安心してしまうかもしれませんが、あくまでも大地震から命を守れるかという評価であって、住み続けられるぐらいの強度を有しているかどうかではありません。その点をしっかりと理解しなくてはいけません。
耐震診断を実施する事が目的ではなく、耐震補強計画を作成して地震に耐えられる補強を行ってはじめて意味があります。耐震補強でも多くの自治体が補助金を出しているので、これを使って補強する事は有意義であると思います。


耐震補強計画

上記ように曖昧な要素を含んだ耐震診断に対し、前回のブログでも触れた、「微動地盤探査」を応用した「微動建物探査」というものがあります。
海の波、川の流れ、自動車の動きなどの常時発生している人間には感じない微動を使い、建物の揺れ具合を判定する診断方法です。全国古民家再生協会の伝統耐震診断もこの微動探査方法のひとつです。
機械で測定した数値を解析する為、耐震評価がブレません。
「微動地盤探査」と併用する事でその土地の状況に合わせた地震対策、耐震補強が行えます。

耐震診断と微動探査

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