見出し画像

不労所得の代表例 収益不動産(アパート・マンション)投資の注意点

こんにちは。
T&Aフィナンシャルマネジメントのさいとうです。

先日の投稿で、豊かな老後を手に入れるために「不労所得」を確保しよう、という点について書きました。

また、昨今話題となっているFIRE(Financial Independence, Retire Early)実現の前提としても「不労所得」の獲得は重要な論点だと思っています。

私自身、メガバンクで個人向けの融資業務に携わったことがあると同時に、収益不動産の開発・販売を行う不動産ディベロッパーに勤務した経験もあることから、資金の出し手、物件の売り手サイドから、不労所得の代表例ともいえる、アパート、マンションなどといった、収益不動産投資の注意点について書いてみたいと思います。

不労所得の種類

不労所得とは読んで字のごとく、労働をしないで得ることのできる収入・所得です。

企業に勤務したり、自分で事業を起こしてそれを運営するとなると、少なからず自分自身の労働力を提供し、その対価として収入を得ます。

一方で不労所得は、そのような労働力の提供をせずに、投資という手段で収入をえることとなります。

一般的には投資は株式や投資信託、債券といった金融商品への投資と、今回ご説明する収益不動産への投資というものが思い浮かぶかと思います。

銀行預金などで得られる利子も不労所得といえば不労所得ですが、しかし現在の金融環境においては、元本保証で得られる利息は極めて少なく、それで生活しようと考えると、そもそもの元本が巨額に必要となります。

投資は銀行預金などのように元本が保証されているものではない(これをハイリスクといいます)一方で、リスクを立った分だけリターン(反対に損失)も大きくなるというものです。

従って、株式投資においても投資信託投資においても元本割れするリスクは十分にありますし、不動産投資においても想定以上に物件の価格が下落したり、もしくは賃貸していたアパート・マンションに空室が出たりして、想定外の損失を被ることも想定されます。

投資

収益不動産の最大のメリットは借金ができること

金融商品投資と不動産投資の大きな違いは「借金ができること」だといえます。

好き好んで借金をする人はいませんので、「借金ができること」と書いてしまうとなんか違和感を感じる人も多いかと思いますが、借金というのは信用力の裏付けが必要であり、そう簡単にできるものではないということも念頭に置いておいていただきたいです。

金融商品投資においても「信用取引」などで、一部自分の信用力を担保に資金の借り入れをすることはできますが、金額が証拠金のレベルによって限定されていることと、中長期的な期間で安定的に資金を借りることはできません。

一方で不動産投資の場合、不動産購入資金として、借りる人の属性や物件の価値にもよりますが、個人でも数千万円から数億円といった多額の資金を長期的に低利で借りることもできます。

というのも、銀行などの金融機関が資金を貸し出すときには、「資金使途」とよばれる、「何のために使う資金か?」という点が重要です。

企業や事業を営むためであれば、「運転資金」として多額の資金使途が説明できますが、一般的なサラリーマンでは資金使途フリーの消費性ローンでも、どんなに多くても500万円~1,000万円が最大となるのではないでしょうか。

ただ、不動産を購入するという大義名分があると、個人であっても明確な資金使途ができるので、金融機関から資金を調達することができます。

銀行窓口

借金をすることのメリット

企業金融では、借金をして事業を行うことを「レバレッジをかける」といいます。

レバレッジとは「テコ」のことで、テコの原理のように、少ない元手で多額の資金を運用し、多くの収益を得ることです。

具体的に説明すると以下のとおりです。

手元資金1,000万円を持ち、目の前に年6%の収益が見込めるプロジェクトが存在し、3年後に売却する場合

【借金をしないで投資する場合】
(投資時) 1,000万円
(年間収益)1,000万円×6%×3年=180万円
(精算時) 1,000万円+180万円=1,180万円返ってくる

【2,000万円の借金をして投資する場合】
(投資時) 1,000万円+2,000万円=3,000万円
(年間収益)3,000万円×6%×3年=540万円
(精算時) 3,000万円+540万円-2,000万円=1,540万円戻ってくる

このように、手元資金しか投下しない場合に得られる収益と、借金をして投資する場合の収益には大きな違いがあることがわかります。

もちろん借金は借り方によっては毎月返済が求められたりしますが、借金をして投資をするということは、「他人のフンドシを借りて相撲をとる」ことでもあり、手元資金だけで投資をすることに比べ、数倍ものレバレッジを効かせることができるのです。

個人がなかなかできない借金ですが、不動産投資は多額の借金をすることのできる数少ない手段ですので、レバレッジを効かせた投資をしたい人にとっては借金は非常に魅力的な手段であるといえます。

不動産投資で失敗する人

うまく借金をして不動産投資で多くの富を得られる人も数多く存在するのに対し、逆に大失敗する人も多く見てきました。

かぼちゃの馬車事件のような組織ぐるみの詐欺行為にひっかかってしまうことは特殊な事例だとしても、しっかりと不動産投資したつもりが、結果的に個人破産に陥ってしまった、というケースは多く存在します。

今回は不動産投資で注意したい4つのポイントをご紹介したいと思います。

①フルローンはやめて1/3は手元キャッシュを投下すべき
②サブリース契約に全面的に依存しない
③物件価値が下がらない立地・条件を選択する
④物件選びの際は、空室や保守費用も含めて検討する

フルローンはご法度!1/3は手元キャッシュを投下すべき

収益不動産業者から、「上場企業にお勤めの●●様であれば、手元の持ち出しなく、フルローンで銀行からお借入れしてこの収益不動産を購入できます。」と持ち掛けられることも多いです。

フルローンは、自己資金なしで全額借入で対象物件を購入することです。

普通に考えたら、持ち出しなく賃料収入が得られ、借入の返済を差し引いた金額が収入として手元に残る、「夢のような」プランかと思います。

ただ気を付けなくてはならないのは、アパートやマンションといった不動産投資は貸し出し直後から入居者が入る保証はありませんし、一般的に24カ月更新の契約では、更新前に退去されてしまう可能性もあり、想定していた収入が得られないこともあります。

加えて、家主負担の修繕などの費用が出る可能性もあり、思わぬ出費が想定していた収支を狂わせる可能性もあります。

そういった場合、やむなく不動産を売却せざるを得ないことも考えられますが、フルローンだと、想定していた価格で不動産が売却できない場合、借金返済のため、売却価格に一部手元資金を充当して返済を行う必要がでてくることから、自由がきかなくなる可能性があります。

1/3というのはあくまでも目安ですが、フルローンではなく1/3程度の自己資金を使って不動産投資を始めた人であれば、身動き取れなくなるようなことはなく、フレキシブルに保有継続や売却を選択することができます。

不動産は建物は築年数が古くなれば価値は下がりますし、土地についても市況によって大きく価格が変動します。

自分自身の投資に余裕を持たせる意味でも、フルローンはやめて、一定量の自己資金を使って余裕のある投資をすることをおすすめします。

サブリース契約に全面的に依存しない!

不動産会社から、「弊社が賃料保証しますので、毎月の収入は安定します。借り入れの返済を差し引いた金額が手元に残ります」と、また「夢のような話」をされることがあります。

不動産のサブリースとは、不動産会社が借り上げ、オーナーに家賃収入の80-90%を「保証して」支払うものです。

オーナーは空室リスクなく、安定的な収入が得られるメリットがあり、不動産会社も空室でもオーナーに賃料を支払わなくてはならない一方で、頑張って入居率を高めれば一定の収入が得られるといったメリットがあります。

ただ気を付けなくてはならないのは、サブリース契約は永久に同じ条件でなされるものではない点です。

一般的にサブリース契約は2年ごとに賃料の見直しがなされます。

不動産会社にとっては賃料水準が下がった物件のオーナーへの支払いを当初のまま固定していては利益が圧迫されますし、空室が続く物件では大幅にオーナー支払を減らさないと赤字になってしまいます。

また、免責期間といって、新築直後や入居者の退去後に一定期間家賃保証をしない定めをしている契約も見られます。

当初の保証賃料を前提に借入計画を立ててしまうと、思わぬ赤字が出てしまう可能性もあります。

実際に私が銀行員時代に厳しい状況に陥ってしまったアパートオーナーは、当初の賃料保証を前提に借入を行ってしまい、賃料改定のタイミングで大幅に保証賃料が削減されてしまい、借入の返済が困難になってしまたというケースです。

不動産投資は立地条件が命!

投資するアパートやマンションの立地条件は命といってもよいほど重要です。

最近の賃貸不動産を借りようとする人は、基本的に不動産情報サイトで情報収集を行います。

そこでは、「駅から徒歩10分以内」などといった検索条件が設けられており、徒歩11分の物件では、正直10分の物件と大きな違いがないように見えますが、一気に検索ヒットの可能性が減ってしまいます。

不動産タイプにもよりますが、ワンルームの単身世帯用物件であれば駅から近いことが必須ですし、不動産価格の下落が少ないといわれている都心3区(港区、中央区、千代田区)に物件を持つなど、需要がしっかりと見込める場所の物件を取得することが非常に重要だと思います。

思わぬランニングコストを収支計画に織り込む

先ほども書きましたが、収益不動産経営においては思わぬ出費や空室リスクはつきものです。

私自身も経験がありますが、急に給湯設備が不具合になったり、排水管がおかしくなったり、生活に使っていると建物はどうしても劣化します。

家主負担となっている住設設備の修繕などのコストも初期的な収支計画に織り込んでおく必要があります。

また、空室リスクも大きな負担です。

ちなみに銀行の物件査定は、1年12カ月のうち、10カ月が稼働し、2か月空室と仮定して保守的な査定を行います。

不人気物件となってしまっては1年以上空室である可能性もあるので、相当期間の空室にも耐えうる計画を立てる必要があります(少子高齢化で空き家問題も社会問題となっている現在、不動産を持ったからと言って、必ず稼働するといった甘い考えはNGです)。

収益不動産

まとめ

いかがでしたでしょうか?

不動産投資は「借金をしてレバレッジをかけた投資ができる」という大きなメリットがある一方で、中長期的な投資となるため、不測の事態も起こりやすい投資です。

また、金融商品と違って、売りたいときにすぐに買い手がつくといった流動性は不動産にはなく、基本的に売り手と買い手が相対で交渉する流動性に欠けてしまう資産であるともいえます。

不動産業者の甘い言葉に乗らずに、ある程度の余裕をもって、じっくり自分で理解して投資しないと痛い目にあいます。

不動産投資の魅力(メリット)とデメリットをしっかりと把握して検討してみてください。



いいなと思ったら応援しよう!