「恋愛体質」第5話
恋愛体質:BBQ
『唯十と友也』
1.minute waltz
「ばーべきゅー?」
グラスを運ぶ友也の視線を遮るように、クルクルと後を追う唯十。
「なーに素っ頓狂な声出してんだよ」
「だぁって。ユウヤさんが変なこと言うから」
「なにも変なことは言ってない。BBQに行くって言っただけ」
唯十を避けるようにカウンターに入る。
「だれと!」
ここは、友也が深夜にバーテンダーのアルバイトをしているBAR。今は開店前で薄暗く、店内は前日の閉店後のまま散らかり放題だ。足元にはたくさんのピーナッツの殻が落ちている。それを踏み鳴らしながら、
「ねぇ、だれと?」
カウンターに手を置いて、奥でしゃがみ込む友也を覗き込むようにして何度もジャンプする。
「ガキかよ。転ぶぞ」
立ち上がり、呆れ顔の友也に、
「だ~か~ら~。だれと?」
「だ・か・ら。最近会ってる女の子たちと」
言い放ってすぐにまたカウンターを出る。
「なんで。なんでそこまでする必要あるの」
それを追う唯十は、
「そういう話になったから」
そう言って横切ろうとする友也にぶつかりそうになり、のけ反った反動で両手をあげた。ただじっと友也を見据え、次の言葉を待つ。
友也は観念したようにため息をつき、
「こないだ、ファミレスでサギに会ったんだよ」
言いながらテーブルにのっているグラスを、すべるように回収してはまたカウンター内のシンクに向かう。そのあとを子犬のようについて回る唯十。
「サギ? サギってあの、和音のガミガミお兄さん?」
足元の子犬はついに、カウンターから出てくる飼い主の真正面を捉えた。
「ガミガミお兄さん?」
友也は吹き出し、すぐさま唯十を肩で交わして次のグラスを取りにテーブルに向かう。
「おまえホンっと苦手な、サギ」
「苦手っていうか、嫌い……怖い」
再び子犬の追いかけっこが始まる。
「あいつ、そんなに悪いやつじゃない」
友也はシンクにグラスを運び終えると、カウンター越しに唯十を見据えた。
「知ってる。けど……ダメ」
「おまえらの好きなタイプだろ?」
蛇口を持ち上げ、水を出す。
「それは偏見! 僕はユウヤさんだけ!」
「それも偏見。おまえの偏食」
「はいはい」
「はいはい」
「じゃぁ、お前も来る? BBQ」
それは当然「拒絶」を想定しての言葉だった。
「行く! ひとりくらい増えたって問題ないでしょ」
待ってました、と満面の笑み。
「マジ、かよ?」
友也は再びため息をつきながら、カウンターにあるダスターを取り上げた。
2.relationship
「藍禾です」
「結子で~す。わたしたちは、ユウヤさんの顔を見に来ただけなのでお気になさらないでくださ~い」
(ま~た、めんどくさいギャラリーが増えた)
浮かれた様子の女の子たちに、心の中で舌打ちする。和音ひとりでも邪魔くさいのに野次馬まで、と疲弊する唯十。
興味もないBBQに参加したのにはそれなりの理由がある。
ひとつは、ただ単に友也の行くところに「ついて行きたかった」こと。もうひとつは、友也が連絡を取ったという街コンで出会った相手の「顔を拝む」ことだった。
即座に気になったのは、古賀雅水だ。
「あなたもホスト?」
自己紹介の後、直球のその言葉には少々面食らったが、女は「そういう生き物」と冷めた感情で受け流す。目的を果たすためには笑顔は欠かせない。
(こいつか?)
「ちょっと雅水、失礼よ」
「だぁって、仕事仲間って。今の仕事知らないし」
唯十は友也から「連絡を取った」としか聞かされておらずに、それが「誰か」ということまでは把握していなかった。それゆえ場の様子であたりをつけるしかない…と、普段よりも親しみやすい雰囲気を演出することに徹底した。しかし、慣れないことをすると墓穴を掘るものだ。
「今は、起業して移動販売……やってます」
それは皮肉の返しのつもりだった。だが、次の瞬間はっとしてユウヤの様子を窺う。そして、すぐあとの和音の反応に口を滑らせたことを後悔した。
「え? ユウヤも? どこで? なにやってるの?」
(かずねぇ~。どこまでも邪魔なヤツ)
表情筋をフルに使って笑顔を取り繕う。唯十にとって目下のライバルは和音だった。
明るくストレートにものをいう彼女は、唯十にとっていちばん苦手な相手なのだ。そこにまた直球を繰り出してくる雅水の存在が、本来の調子を狂わせた。
「アハハ。企業秘密でぇす」
(和音がユウヤさんにくっついてるうちはダメだ)
場を取り繕い、おとなしく様子を見ようとしばらく静観することにした。
(ガミガミお兄さん。なんで今日に限って和音を放置すんだよ~)
唯十のイライラがMAXに達したころ、重音が妹である和音と、その友人たちを送ると言い出した。
「え~なんで~」
案の定和音だけは駄々をこねる。
(よし! ナイス、ガミガミお兄さん)
心の中でガッツポーズをとる唯十。
「空気読んでよ」
「読めねーのはおまえだ」
(そうだ、そうだ。おこちゃまはさっさと帰れーっ)
表情筋を笑顔で保ちながらも心の中は百面相の唯十。
学生たちが帰ったあとは室内で静かに宴席が始まった。友也のLINEの相手が気になる唯十は、少々強引に話を進め、
「僕のこと狙ってもダメですよー。ユウヤさんに心酔してますから」
少々調子に乗り過ぎた。
「いい加減にしろよ、ユート」
結果、友也に叱責されることになる。
「はーい」
ちょこんと肩を竦め、やり過ぎたか…と反省。
唯十が友也を「ユウヤ」と呼ぶように、友也も同様に唯十を源氏名で呼んだ。「ユート」と呼ばれるたびに唯十は優越感に包まれた。だが、今日ばかりは胸がざわついて収まらない。
「実際どうなの?」
ホストクラブでのユウヤの接客は徹底していて、決して客に媚びることはなかった。ゆえに珍しく興味を示す彼の態度が気になって仕方がなかった。
「別に、たいしたことないわよ」
濁す雅水に、
「あ~だれからも連絡こなかったんだー」
つい口が動いてしまう。自分でも子どもじみている、と思いながらもどうにも止められない。
「じゃぁ教えてくれてもいいじゃないですかー」
「とことんヤなヤツね、あんた」
雅水に不快感を露わにされようが、もうどうすることもできない。
「砂羽さんは?」
話のついでで振ったつもりの唯十は、
「あたしは一件だけよ」
そう言って友也を小さく顎で指す仕草に衝撃を受ける。
「へぇ」
(こっちだったかー)
それが唯十にはますますを混乱を呼ぶことになる。
「むしろこっちが聞きたいわね。あなたたち、たくさん連絡きてるんじゃないの?」
そう言って切り返す雅水の言葉に、
(お、雅水ナイス、パス!)
心の声が漏れていたら忸怩たる思いではあるが、これは聞き逃せない。
「どうなんです? ユウヤさん」
ついつい自分から突っ込んでしまうが、
「どうだっていいだろ」
軽くあしらわれてしまい突っ込みどころを失う。
「まぁでも、人気だったことは事実じゃない? フリータイムの時女の子が群がってたし」
(よし毒女。もっと突っ込んでくれ~)
だが友也は「そうでもない」と涼しげに答えるだけだ。
「うそだぁ」
つい本音を漏らす唯十に、半ば不機嫌な視線を投げかける友也。
(あぁごめんなさいユウヤさん。こういうのメンドクサイですよね~)
唯十の心は汗だくだ。
「嘘じゃない。興味のない相手から連絡があったところで、なんの価値がある。時間の無駄だ」
(解ります。解ってます。だからこそ気になるんです!)
3.session
「ナンバーワン? ナンバーワンだったわけ?」
そう心底驚く砂羽に対し、
「当たり前じゃん」
どや顔で答えたのは唯十だった。
「なんであんたが得意げなわけ?」
(あ~だれか、オレの頭をハンマーで殴ってくれ)
アルコールを口にしてるわけでもないのに、すっかり酔っ払いの気分だった。
「ユート、おまえ今日おかしいぞ」
砂羽がトイレに立ったタイミングで、そう友也に指摘され、
「充分自覚してる。でもそれはユウヤさんのせいだ」
率直に答える。
「なんでついてきた」
「解ってるくせに」
普段通りの会話をしても気が晴れない。
『そもそもなんで?』
『興味もないのに?』
『いや、まさか本気で?』
聞きたいことは山ほどある。
だけどここで話せる内容でもない。
(もやもやする……!)
もう誰も余計なことは言わないで欲しい…そう思った矢先、
「興味がない相手に割く時間がないってことは、こいつらにはその価値があったわけだ」
重音の一投に、更なる不安が襲う。
「こいつらって言い方は聞き捨てならないわねー」
そもそも砂羽は重音の元カノだ。
「まぁ。そう、なるか」
皮肉ともとれる重音の問いかけに、ケンカを買うでもなく含み笑いで受ける友也に、
(なにー!?)
再びざわつく唯十。
「へぇ……珍しいこともあるもんだ」
意外にも重音はそれを笑顔でスルーした。
(ガミガミお兄さん、もっと突っ込んでー!)
普段の重音なら、更に嫌味のひとつやふたつ投げかけるはずだ、と次の言葉を待つもなんのリアクションもない。腑に落ちない唯十は、重音の様子を観察、異変に気付く。
(自分のことで手いっぱいってことかよっ)
どうやら重音にとっても、気忙しい事情ができたようだ。
「また行くんですか? 街コン」
仕方がないので「ターゲットを変えよう」と、今度は雅水と砂羽に質問を投げかける。すると、
「もう、ごちそうさん」
「当分はいいかな~」
「じゃぁそっちも、こいつらで手を打つんだ」
すかさず突っ込みを入れてくる重音に、
(手を打ってもらっちゃ困るんだよ!)
ついつい鋭い視線を向けてしまう。
「お兄さんは砂羽さんと元恋人なんですよね?」
半ばヤケクソの唯十は、重音が「焦ればいい」と思った。だが、
「なんで今その話!? 恋人って言い方、辞めてくれない?」
遮るように答えたのは砂羽の方だった。
「ぇ、いやぁ。サギさんは、おねぇさんに会いたくて来たのかな~と思って」
方向性は違うが、唯十は自分の気を落ち着かせたかった。
「え、そうなの?」
だが、そこに反応したのは意外にも友也の方だった。
「なんで?」
(なんでユウヤさんが気にするの~!)
唯十の「なんで」が自分に向けられたと思った重音は、
「いや。街コンなんか行くタイプじゃねーから『なんのつもりか』とは思ってたよ」
と、友也に向かって答えた。
「ひとは変わるのよ」
ここで雅水に流されただけ、とは答えたくない砂羽は小さく口ごもる。
それぞれの事情が交差する、街コンの延長のような攻防。
「ちなみに、オレ好みはいた? 街コン、オレも行ってみるかな~」
「よくいう」
重音を「悪いやつじゃない」という友也は、失笑気味につぶやいた。
「サギは、街コン参加してる時点で全員却下だろ」
唯十はその姿に若干の違和感を覚え、自分が思うほど重音に対して敵意を抱いているわけではないのか、と思い直す。
「見聞、見聞~」
「空気悪くなるからやめとけよ」
「おまえと行ったらそうなるかもな」
「鷺沢さんて、そういうタイプ?」
言葉を選んだところで、雅水のその表情からは、
「面倒臭いって顔に書いてあんぞ」
と、重音は目を細めた。
「え、そう?」
「まぁ『昭和』なんだな、オレは」
それを受け、砂羽は「やだ、おっさんくさ」と口元に手を当て、
「大人になったのかと思ってたら、歳くっただけか」
と、旧友らしい皮肉を述べた。
「うるせーわ」
そんなふたりのやり取りに、
「サギさんいたら、女の子たち泣いちゃいそう」
更なる唯十の地雷発言。
「あ~それ、解る~」
砂羽の合の手に「でしょ~」と言って笑った。
「なんだよ、オレだってよそ行きの顔するわ」
「ホントですかー?」
「じゃぁ一緒に行ってみるか?」
「やですよ。僕、嫌われたくないですもん」
そもそも、
「おまえ、女に興味ねーじゃん」
「余計なこと言わないでください」
『え、そうなの?』
重なる雅水と砂羽の視線は声にならない言葉を発していた。
4.conviction
「あなた、恋してるわね」
トイレに立った唯十を待ち構えていたのは、なにもかも見知ったような顔をした雅水の鋭い眼光だった。
「なんでっ!?」
意表を突く発言にのけ反る唯十は、答えてしまって目が泳ぐ。
「やっぱりねぇ」
雅水は勝ち誇ったように腕を組んで見せた。
「最初は和音ちゃんを見てるのかと思ってたのよね~。でも。あの目は好きな人を追うっていうより……敵を見るような感じだったわ」
そう言って顔を覗き込む。
「な、なんだよ」
「和音ちゃんじゃないとすると、答えはおのずと見えてくる」
そう言って雅水は、普段生徒の前でするように人差し指を立てて唯十を見据えた。
(毒女がポテンシャル発揮してきたー!)
即座に視線を逸らす唯十。
「でも、応援はできないわよ」
「別に、そんなの望んじゃ……」
顔をそむけたまま答えるが、
「なんで?」
すぐさま切り返す。
「なにが?」
とぼけているのか、唯十には雅水の真意が読めない。
「なんで応援? やっぱりおまえ、ユウヤさんのこと……!」
「違うわよ。おまえって、あんたね」
「だよ、な」
ひとまず安心。だが。
「じゃぁ」
他に「狙っているやつがいるのか」と、言おうとして雅水に遮られる。
「そういうことじゃないでしょ」
再び腕組をして首を振る。
「なんなんだよ、その態度」
「あぁ、癖なの。黒板の前に立つと」
言われて雅水のすぐ後ろの壁には、なるほどホワイトボードが掛けられていた。
(こいつ教師だって言ってたっけ。めんどくせぇ)
「偏見で言うわけじゃないわよ。職業柄、そういうことには敏感なの」
「それで?」
「見たまんまよ。あなたに勝ち目はないって思っただけ~」
「な…!」
「彼があなたの気持ちに気付いているかどうかは別として。彼からあなたに対する愛情は感じられないから。まぁ……信頼という意味では、絶大なんだろうけど?」
(鋭いじゃねーか、毒女)
眉をしかめて睨みつけるも、ぐうの音も出ない。
「解ってるよ。そんなの」
「そ。バカではないのね」
「おまえに言われたくない。それに、」
「それにー?」
「その喋り方やめろ、イライラする」
「そっちが本性なわけよね。『ぼく~』とか言っちゃって、うまく化けたもんね。さすがホスト」
「ぅうるさい!」
「なんだ、連れションか?」
そこにトイレに立った重音が姿を現した。
「それとも……」
「お兄さん、冗談やめてください」
唯十は雅水の肩にわざと自分の肩を当てつけ、そそくさとリビングに戻った。
「あらあら」
「あんまりいじめてやるなよ」
「別にそんなつもりは……ちょっと! ヘンな言い方しないでよ、人聞きが悪い」
「そうかぁ? 今にも食いつきそうだ」
そう言って高笑いでトイレに向かった。
「はぁ? どいつもこいつも、食えないヤツ」
5.motive
シャカシャカシャカ…と慣れた手つきでシェーカーを振り、優雅にグラスに注いでいく。そんな友也の凛とした姿に陶酔し、頬杖をついている唯十は、この時間がいちばん「好きだ」と思う。
「バイトなんかする必要ないのに。でもユウヤさんのカクテルは好き」
満足げな顔で見上げるが、虫の居所が悪そうな表情に視線を逸らす。
「これはオレの趣味」
仕事中は「話し掛けるな」モード全開の友也は、視線を落としたまま息をつくように答えた。
「そ、れ、で?」
カウンターにひとがいなくなったタイミングで手をつき、カクテルグラスのふちを指先でなぞる唯十に畳みかける友也。
「なにが?」
目の前の平穏なひとコマに酔いしれていた唯十は、無粋なひとことで現実に引き戻された。
「感想は?」
「感想って」
想定外の言葉に、グラスを持つ手がかすかにふるえた。
それは目の前に注がれた飲み物のことか、と一瞬考えたがそうでないことは友也の含んだ表情から想像できた。
「べつに」
そう言ったところで恐らく、友也にはこちらの意図が見て取れるのだろうと観念して次の言葉を待つ。
「BBQが目的だったわけじゃないだろ」
図星を突いたその言葉に、数日前の醜態が蘇る。
「ユウヤさん、なに考えてるの?」
「なにがって?」
「最初はタカさんの為だって言ってたのに、ユウヤさんの方が、なんだか楽しそうだった」
唇を尖らせ、拗ねた目で訴える。
「楽しんじゃだめか?」
「ダメ……じゃ、ないけど。なんかヤダ」
「言ったろ。もうお遊びは終わりにするって」
「そうだけど。別にすぐ女と付き合わなくたっていいじゃん」
「いつまでもフラフラしてるわけにいかないだろ。おまえだってそのつもりで仕事辞めたんだろ?」
「それは……! そうだけど」
(ユウヤさんと一緒にいたいだけだ)
そう言ったら、立場は変わるだろうか。
「オレ、子ども欲しいんだ。出来るか解んねーけど」
「子ども?」
「らしくねぇか?」
「そんなことないけど」
子ども好きなことは知っている。
「それはわかるけど。別に女相手にしなくたって、養子でも取ればいいじゃない」
「まぁそういう手段もあるけど。せっかくなら」
「まさか、結婚したいってこと? 似合わないよ」
「まぁな。そうかもな」
そう言って友也は自虐的に笑って見せた。
「だったら」
一度言葉を飲み込み、ついでにカクテルを一気に喉に流し込む。
「へぇ、ユウヤさん。結婚願望なんかあったんだ」
「あったんだなー。オレもびっくり」
「他人ごとみたいに」
「今まではそうだった」
「だったら、一度でいいから僕を抱いてよ」
怒りともとれる強い眼差しを友也に向ける。
「それは、できないっていったろ」
「どうしてっ!できないことないじゃない」
もう何度このやり取りをしただろうか。ムダだと解っていても、繰り返してしまう。
「困らせるなよ」
「僕、本気だよ」
「……解ってるよ」
そういうと、友也は真摯に見つめ返し、
「だからこそ、もう遊びは終わりにするって言ったんだ」
「納得できない。僕と寝てからだっていいじゃない」
「ユート」
特別強い口調でもない語気にビクついてしまうのは、それ以上の戯言はふたりの関係を切り崩しかねないことを知っているから。
「そんな目で見ないでよ」
(そんな、やさしい目。その目が僕を見ないなら……!)
「いっそ傷つけてくれたらいいのに」
うるんだ瞳で答える。
「ユート」
(困ってるよね。でもいつも『やめろ』とは言わない)
「そんなの、やさしさじゃない」
「そうかもしれない。だからオレなんか見限ってくれていい」
「やだよ。どこまでだってつきまとってやるから」
「おてやわらかに」
まだまだ未熟者ですが、夢に向かって邁進します