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『泣けない』こと。

「どうしても泣けないこと」について、ぽつりぽつりと、お父さんと会話した。

「酒の代わり」という文章を読んでもらった、その感想を聞いた。

「なるほどなぁ。…かもしんねぇな」

お父さんが言った。

「私はお父さんのことだと、寝てる姿 見てるだけでも涙出てくる。だけど息子のことでは、何かあっても本当に泣けないと思う。重すぎて」

そう 話した。

お父さんが会社にいたとき。

会長が亡くなった日、狂ったみたいに泣き叫んで帰ってきたお父さん。
本当に涙が枯れるまで泣くとはこういうことだと言わんばかりに、男泣きに泣いて、泣きじゃくって、その姿を見たとき、私はとても泣けなかった。

お寺の前で、腕章をつけて立っていたお父さんのあの顔。

死ぬまで忘れないだろうあの顔。

あの顔を見て、お父さんとすれ違った瞬間、私は号泣した。

その時やっと泣けた。

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