『泣けない』こと。
「どうしても泣けないこと」について、ぽつりぽつりと、お父さんと会話した。
「酒の代わり」という文章を読んでもらった、その感想を聞いた。
「なるほどなぁ。…かもしんねぇな」
お父さんが言った。
「私はお父さんのことだと、寝てる姿 見てるだけでも涙出てくる。だけど息子のことでは、何かあっても本当に泣けないと思う。重すぎて」
そう 話した。
お父さんが会社にいたとき。
会長が亡くなった日、狂ったみたいに泣き叫んで帰ってきたお父さん。
本当に涙が枯れるまで泣くとはこういうことだと言わんばかりに、男泣きに泣いて、泣きじゃくって、その姿を見たとき、私はとても泣けなかった。
お寺の前で、腕章をつけて立っていたお父さんのあの顔。
死ぬまで忘れないだろうあの顔。
あの顔を見て、お父さんとすれ違った瞬間、私は号泣した。
その時やっと泣けた。
ここから先は
401字
¥ 100
よろしければ、サポートお願いいたします!!頂いたサポートは夫やわたしの医療費や生活費に使わせて頂きます。