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「読後感が大事なんだ」

12月24日、午前7時10分。外から子どもの叫び声が聞こえてきた。「サンタさん、ありがとーーーーー!」

私は目覚ましが鳴るまで起きない。むしろ鳴っても起きない。だからこれくらいのことでは絶対に目は覚めないんだけれど、今日は起きた。毎朝元気に「お父さん、行ってらっしゃーい」とお見送りしている少年が、いつもの時間にいつものテンションで「サンタさん、ありがとーーーーー!」と叫んだことが気になった。でもそれ以上に、サンタさんが家に来たタイミングが気になった。

高尾家には24日の夜に来てくれていた。25日のクリスマス当日にプレゼントが手元にあるように、という優しさだと思う。朝起きて、枕元に地球戦隊ファイブマンのフィギュアを見つけたときにはテンションが上がった。「お母さん! 泊まっとるおじいちゃん家にもサンタさんが来たよ!」

今朝、少年がサンタさんにお礼を言ったということは、現れたのは23日の夜から24日の朝方にかけてだろう。最近のサンタさんは世間が賑わうイブに合わせて、前乗りしてくれているのか……?(いやいや、単なる家庭の事情でしょ)

私がサンタさんを卒業して約20年が経った。「クリスマスだから何だってんだ」と言ってしまうやさぐれた大人になってしまったけれど、もしまた来てくれるのならやっぱり24日の夜がいい。翌日にはスーパーに鏡餅やおせちの材料が並んで、世間は一気にお正月モードになる。だから25日の朝もクリスマス気分を味わえたほうがうれしいよな。余韻を楽しめるしな。そんなことを寝ぼけた頭で考えていたら、雑誌『SOCCER KING』元編集長の言葉が浮かんできた。

「読後感が大事なんだ」

読後感とは文章を読んだあとの余韻みたいなもので、例えばビールを飲んだときの「甘い」、「爽やか」、「苦い」といった後味だと思ってもらえればいい。アサヒスーパードライを飲んで、「スッキリしていてうまい!」と思う人もいれば、「辛口すぎる」と思う人もいる。つまり同じ文章を読んでも感じ方は人それぞれだ。だから「読後感が大事なんだ」と言われても、かなり難しい。未だにコツすらつかめていない。「もっと教えてください」と泣きつきたいくらいだ。

ただ、「大事なんだ」ということは分かる。いや、むしろ情報過多の今はしっかりと意識したほうがいい。

例えば、多くのWebメディアがタイトルに力を入れている。いかに注目してもらうか、クリックさせるか。どの編集部も頭をひねって考える。そうやって生み出されたタイトルに、こっちは期待させられているもんだから、記事を読んでガッカリすることはしばしば。最近はきっと大した内容じゃないだろうから読まないでおこう、とスルーすることが増えた。

そんなときに、「これおもしろいな」と感じる文章に出会ったらどうなるか。その人(もしくはそのメディア)の文章をまた読みたいと思う。「うまい!」と思ったアサヒスーパードライをおかわりするように、リピーターになる可能性がグッと高まる。ネットの中を自由に行き来できる時代に常連になってもらうためも、読後感は大事なんだと思う。

なんて偉そうに言ったけれど、24日にアップするつもりで書き始めたものを、日付が変わってから掲載している私はまだまだだ。


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