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20240620

富士見ヶ丘駅に向かう。暑い。渋谷まで出てから向かうのが乗換案内には出てきているが、下北沢経由で行くことにした。通い慣れた行き方で、エスカレーターやエレベーターの位置などを把握している安心感をとる。大きなキャリーケースを引いて移動するようになってからだいぶ電車や駅のとらえかたが変わった。経験したことのないベビーカーユーザーや大荷物を運んで移動する人たちに少しだけ目を向けるようにはなった。

千代田線での30分余りはSNSの投稿に専念していると一瞬にして過ぎる。気がついたら地下鉄は地上へと上がり代々木上原。下北沢に着いてからは井の頭線。ゆったりとした時間が流れている。車内は空いていて(平日お昼の12時くらい)、線路と建物との距離が近く街の様子がよく目に届く。目の前に座るカップルは仲睦まじい。

越谷から北千住くらいの体感時間で、下北沢から富士見ヶ丘に到着。朝に食べた味噌汁プラス白米ときゅうりだけではお腹が空き、お店の近くのセブンイレブンでおにぎりを購入。赤飯と炒飯。このおにぎりがあとで効いてくる。ほんとうは下北沢駅のおにぎりやさんやコンビニでおにぎりを見たんだけど心が動く具がなかった。最後の砦、もうあとがないからこちらで購入を決める。袋をもらわずそのままふたつを首からさげたサコッシュにねじこむ。すぐに食べるかなと思ってあたためてもらったからあつあつ。

お店へ。田中珈太郎さん(名をまだ呼べたことがない、以下 田中氏)が準備中。鯛焼を焼く用のテーブルを出してくれる。言葉少なだけどなんともいえない安心感。頼れる兄貴感。開店時間が迫っていたのでもくもくと準備。快適空間。だからかいつもよりは早めにセッティング終了。
ほどなくして渡辺涼介さん(名をいまだにちゃんと呼べたことがない、以下 ワタリ氏)が買い出しから戻ってくる。挨拶をそこそこに、メニューの確認、ポスターを張ったり大きな黒板に今日の企画名を書き込もうとしてくれている。大きくて無地の黒い板を前に、一文字目を書くことに一瞬の躊躇いを見せる慎重派ワタリ氏。そこへ田中氏がとにかく書くように促す。(笑)
メニュー表もこの日のために作ってくださった。ところどころにたえ焼きのイラストたい焼きくんも挿し込んでくれていてうれしい。

あっというまに開店時間。そういえばサコッシュに潜ませていたおにぎりの存在をすっかり忘れて食べるタイミングを逃す。
一番乗りのM子さん。うれしい。すぐあとにCさん。オープン直後のまだゆっくりしている時間だから、いろいろと話せた。こういう機会も持ちたいとちょうど思っていたところだった。たい焼き焼いて、ゆっくり座っておいしいコーヒー飲みつつおしゃべりして、のんびりとできる時間。いつも焼くのでせいいっぱいだから。のちにオーダーが重なり焼くのでせいいっぱい状態にどうせなるんだけども。たい焼きだけでなくタイペーパー(ZINE)も興味を持ってくださることがとてもうれしい。

混まないお昼のうちに、と思いちゃっかりわたしもテルッタのティラミスを注文。そしてコーヒーも。コーヒーの説明を聞くのが好きな理由のひとつに、コーヒー豆の産地、まだいったことのない世界の国々のことについて想いを馳せて想像をふくらませるのが好き、ということもあげられると思う。ましてやこの日、ゲストロースター(記憶が正しければ)にあたるお店は長崎県にあるお店だという。(KARIOMONS COFFEE)そのお店のことや豆の特徴、温度によって変わる味わいのこと…。それを今から飲める楽しみ。この日は、ニカラグア(ナチュラル)にした。飲み口は草原を思わせる爽やかさ、だんだんと温度が下がってくると柔らかさ、甘み、あらゆる要素がにじみでてくるようでその変わりかたがおもしろい。(味覚の記憶が正しければ)
ティラミスはなめらかで濃厚、ぜいたくな気持ちになる。使っているコーヒー豆の種類もそのときならではのもの。

昼を過ぎて夕方にさしかかるころ、目の前の通りが賑やかになる。夕飯の買い出し客、近くに学校があるのか下校中の小学生。
飲みかけの2リットルのペットボトルを抱えて歩く久我山に住むという人と立ち話する。この辺にはそんなにたくさん飲食店がないからね〜などと街の様子を教えてくれる。富士見ヶ丘は富士山が見えたんですかね?とか聞いてみる。
買い物帰りに自転車で寄ってくれる母娘さん、白砂糖を絶っている家族がいるという方。いろんな人が立ち止まり、また帰っていく。合間にようやくおにぎり(赤飯)の存在を思い出し、店先のベンチでぱぱっと食べる。

焼くのに夢中で気づけばだいぶ日が落ちて暗くなっている。夜に向かうほど仕事終わりのお客さんたちが詰めかけた。スーツを着た男性たち、友人・恋人同士、家族連れとにぎやかな店内を背中に感じつつひたすら焼いていく。

『粒ずんだ1、白ずんだ1です』とまるでAIのようにむだのない動きで流暢かつ丁寧にオーダーを伝えてくれるTashiro Yuta氏(まだ名を呼んだことがありません)。焼いてる本人がいちばんピンときてない商品名を、こんなにスムーズにおぼえて読み上げてくれるなんて。
この日の鯛焼は、
一、粒あん
二、粒あん&ずんだあん
三、白あん&ずんだあん
の三種。
注文を受けてくださるテルッタのみなさんが、これをわかりやすく省略して毎回オーダーを読み上げてくれるんだけど、なんとも言いづらい品名。特に二番目と三番目の品名…。ご迷惑をおかけしました(笑)。

そしてあっという間に22時、閉店。終電を気にしつつもくもくとみんな片付けをすすめる。精算をし(すべて計算もしてくださり感謝)、元の位置にテーブルや椅子を戻す。食器などすべて使わせてもらい洗浄までしていただき感謝。名残惜しくも挨拶をしひと足お先にお店をあとにする。
アドレナリンが出ているのか、へとへとかどうかもわからないなか、ただスーツケースを押して歩く。途中までTashiro氏がご一緒してくださる。なぜ鯛焼屋なのか、きっかけなどをぺらぺらと。

また下北方面へ、と思ってひとりホームに立って待っていた電車は反対方向の吉祥寺行きだった。しかたなく乗るが、この先の電車の混み具合に不安が押し寄せる。中央線はまぁまぁ混んでいたような気がする(おぼえていない)。 

なんとか武蔵野線に乗り換える。つい先ほど発車したようでホームはがらんとしている。端っこのほうまで歩き、先頭に並んで電車を待つ。このとき初めて空腹を感じる。サコッシュの中のおにぎり(炒飯)の存在を思い出し、僻地に放り出された流浪の民の気持ちでおにぎりをその場でほおばる。ん!…んまい!この空腹に、この味付!塩コショウにんにく以外の、このパンチある調味料の味…なんだろう。とにかく沁みる、沁み入る、沁み込む。裏の成分表もパッケージと一緒にちぎれちゃったし見る気も起きぬままあっという間に食べきる。疲れたときの炒飯にぎり(セブン)の破壊力がすごい。

武蔵野線はわりと空いていてキャリーケースをすんなり置けて、自分も座れてゆったり乗りっぱなし。みんなが投稿してくれた鯛焼の写真を引用できるだけして投稿、投稿、投稿。

やはりアドレナリンが出ていたのか、はたまたチャーハンが効いたのか、駅から家までの20数分、キャリーケースを力強くガラゴロおして真夜中を闊歩した。

それから泥のように眠りました。



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