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教授インタビュー企画vol.2〜筑波大学 人文社会系 和田尚明教授〜

言語学と芸術の出会い


…今年の芸術祭のテーマは『爆゛』。

様々な学問分野に爆散的に関与する芸術の様相を捉えるべく、広報企画の一環として芸術専門学群以外の学問分野の教授に、普段の先生の研究や芸術に対するイメージなどを聞いてきました!

筑波大学 人文社会系

和田尚明教授


今回伺ったのは人文社会系の和田先生。
インタビューしてほしい先生を調査するgoogle formで回答を得られた、人文学類1年3組の担任の先生で、言語学の中でも英語を専門にされているそうです。
英語は全学群の必修ですが、言語学の中の英語はどんなことを扱うのでしょうか。

―本日はよろしくお願いいたします。
早速ですが、普段はどのような研究をされているのですか。

「ざっくり言うと、英語の文法ですね。その中でも特に語用論や意味論というような分野ですとか、時制に関する表現を研究しています。例えば単語の意味でも、『のぼる』という単語があったとすると、なにか山に登るようなイメージがあるかもしれないですけれど、必ずしもそうじゃなくて『飛行機がのぼる』という文脈でも使えますし、”climb down”という用い方があったり。他にも、とても暑い日にエアコンの方をチラチラ見ながら”It's hot.”と言っていたらエアコンをつけて欲しいんだなと思ったりしますよね。そういうの言外の意味と言って、文章自体にはないけど伝えたいメッセージがその裏にあるような、そういう分野を語用論とか言ったりするんですよ。英語で言うと意味論がSemantics、語用論がPragmaticsというんですけど。広く言えばそういった分野を研究しています。自分の研究のライフワークみたいなふうにしていることとしては、時制・アスペクトということを扱っています。過去形と過去進行形を使う時とはどう違うんだみたいなことですね。」

「言語が文化に影響を与えているのか、文化が言語に影響を与えているのか、どっちが先かってことはわかりませんよ。ただやっぱり人間の言語である以上どこか共通している部分はあるでしょうね。一方で英語だったら英語、ドイツ語だったらドイツ語なりにそれぞれの地理風土や文化、歴史の影響を受けている部分もあると思うんですよね。フランスでは絶対王政の時代にフランス語とはこうあるべきだという感じで、強制的に変えたりって話もあるらしいですから。それはもう本来の言語のあるべき姿というよりはむしろ強制的に権力者が変えてますよね。」

ー先生は文化からの影響というよりはもっと広範囲の視点から時制などの規則性を研究されているということですか。

「そうですね。」

―ありがとうございます。
次に、先生の個人的な芸術に対する印象をお聞きしたいです。

「僕は芸術に関しては、観るのとか聴くのは大好きなんですよ。中心は西洋画なんですけど。もちろん山水画とか、日本の伝統的な絵を見るのは好きなんですけど、どちらかというと西洋にかぶれているので(笑)。そっち中心にはなります。」

―やっぱり英語と関係あるんですかね。

「あるのかな(笑)。なにかやっぱり昔でも世界史とかヨーロッパあたりがすごく興味を持って勉強していたので、どうしてもそういうところがあるんでしょうね。」

「学問と結び付けられるかどうかわかんないんだけども、僕はさっき言ってた時制とかを好きでやっています。自分の性格かもしれないんですけれども、もちろんほら、どんなことでも自分の独自色とかオリジナル色とかって言ったとしても、それほら、好き勝手にやってたらルールも全く無視で、やったら全然何やってるか分かんないことになってしまうから、それはそういう意味でも全くの独自色でもないと思うんですけれども、いわゆる広まっている理論とか、一般的に認められているというものではなくて、何か自分なりのものを追い求めていきたいなって思ってやっているんですよね。研究とかも。それは人が受け入れてくれるかどうかはまた別問題ですけれども。

たぶん絵画でいうとゴッホとか、生きている時は変人ですもんね。それが今すごい評価されているじゃないですか。別に自分をそれに例えて言うつもりは毛頭ないんですけれども、やはり自分のやりたいことをやっていたわけですよね。その時代の主流とはちょっと違う方向に行こうと思ってやって、それで失敗して、本当になんとなく消えていった芸術家って多分星の数ほどいらっしゃる。たまたま成功したっていういい例なのかもしれない。でもやっぱり自分でやっているのはいろいろあるじゃないですか。こういうふうな、すごく広まっている芸術だったら、芸術学問たる学問になった理論があって、その中で自分が貢献するんだっていうのも非常に立派な考えだと思うし、自分は自分でやりたいことをやるんだっていうのも一つの考えだと思う。人間のタイプですね。僕はどっちかというとベースのところがあるから。だからそういうふうなスピリットを持ってたかどうかは、その当時の人のことは心の内では分かりませんけど、そういう風に感じられる人がすごく好きだった。その人達を中心に音楽とか絵画を始めたので、そういうのがもしかしたら今考えてみると。」

「学問と結び付けられるかどうかわかんないんだけども、僕はさっき言ってた時制とかを好きでやっています。…たぶん絵画でいうとゴッホとか、生きている時は変人ですもんね。それが今すごい評価されているじゃないですか。別に自分をそれに例えて言うつもりは毛頭ないんですけれども、やはり自分のやりたいことをやっていたわけですよね。その時代の主流とはちょっと違う方向に行こうと思ってやって、それで失敗して、本当になんとなく消えていった芸術家って多分星の数ほどいらっしゃる。たまたま成功したっていういい例なのかもしれない。でもやっぱり、自分は自分でやりたいことをやるんだっていうのも一つの考えで、僕はどっちかというとそういうところがあるから。だからそういう風に感じられる人がすごく好きだった。」

―結構作者の背景とかに興味がありますか。

「うん、すごく気になります。どういう心境でこの絵を描いてるんだろうとか、どういう時にこういう音楽を作ったんだろうとか思いますよね。勝手なイメージですけどね。もちろん、後で作者の生涯の話を聞いて、全然違ったなとか思うこともあれば、ああ、やっぱりそうだったなと思う時もありますし。」



ー先生の、今後やってみたいことなどはありますか。

「やりたいことはいっぱいあるんですけど、一つはですね、著作があったりするんですけど。ほとんど時制に関することですね。こういう本でまた日本語と英語の比較は書いてみたいなって思ってます。
芸術に関連するところで言えば、ヨーロッパに行って絵画を見たり美味しい料理を食べたりしたいなと思います。やっぱり自分はなにか西洋が好きなんでしょうね。」

ー最後に、筑波大生になにかメッセージをお願いします。

「僕も昔の自分のこと考えたらあんまり言えないんだけど、やっぱり主体的に動いてほしい。学問を頑張っていくんだ、でもいいしなんでもいいんだけど。自分で考えて、主体的に、積極的に行動してほしい。それが結局一般的に言われている結論に辿り着いてもよくて、自分で考えて動くということがとても大事ですよね。それぞれのバックグラウンドがあってそれぞれ違った考え方がありますよね。だからやぱり自分の意思を人に任せっきりにするのではなくて、間違えても仕方ないですよ、でも人に決められて変な歩行に行くよりは自分で決めて、前向きに積極的に行ってほしいかなって思いますね。
それは自分がなかなか最初のうちはそういったことできなかったので。誰かが決めてくれたら楽だなとか、そう思ってた節があるんですよね。でもやっぱりそれよりは自分で色々考えて、自分で判断して、その方向に進んでいく。筑波大生のみんんがどんどんそういった風になればいいなって思う。」



言語学が位置する人文学系は比較的芸術と近いところにありますが、人間の営みを源泉とする文化の一部という点では共通しています。
ヨーロッパの言語だけではなく文化全体がお好きだとお話しする和田先生のように、芸術鑑賞もその作品1点で完結する見方ではなく、その背景となる時代の文化まで視野を広げられたらより豊かな鑑賞ができそうですね。
芸術から、芸術以外の分野に爆発していく。
型にハマらない芸術祭の姿お届けできたでしょうか。
教授インタビューはまだまだ続きます!
お楽しみに。

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