TADF MAGAZINE 🔴🟢🔵 - #8 原寸展・変遷展のコンセプトについて
長谷川泰斗(長谷川):実行委員長
多辺田風香(多辺田):副実行委員長
田中陽(田中):デザイン統括
熊澤佑悟(熊澤):デザイナー
以上の4人で、原寸展・変遷展という2つの大きな作品の展示方法について話していこうと思います。
1. オンラインでしかできない展示とは?
長谷川「まず5月くらいにオンライン開催が決定して、いったん絶望したんだよね笑。オフラインでやること前提で色々考えてたから、あの瞬間に全部が変わっちゃって。
それまではオフラインでの開催ってことでそれぞれの企画にそれぞれの部屋を用意してあげて、あとは、各企画に任せるっていうスタイルだった。
でもオンラインになったら、俺たちがその会場まで全部用意してあげないといけないっていう状況になって焦ってたよね笑。
あと、去年芸術祭が中止になった理由が、そもそもオンラインで作品を展示するっていうこと自体に若干の批判があったのと、オンラインで絵画作品とか展示するっていうのがあんまり効果がないというのがあった。
中止になったものを、今年は決行するしかなくなっちゃって、その中で考えた結果生まれたのが、原寸展・変遷展だったわけだけど、あの時ってどうやって考えていったんだっけ?」
サイトに実際に実装された原寸展と変遷展。是非あなたの目で鑑賞してみてください。
田中「まずはとにかく、作品をいかに尊重して扱うかってことを考えて。写真ベタ貼り、説明ベタ貼りじゃだめだよねっていうところから始まって、オフラインでできる体験をなんとかオンラインに持ち込もうっていうところが最初だった気がする。」
長谷川「そこからさらに、オンラインでしかできない展示方法ってなんだろうみたいな、そういうところまで発展していったよね。」
田中「そうそう。結果的にどっちもオンラインでしかできない体験になってすごい面白いと思う。」
2. オンラインで芸術祭をやる上での課題
長谷川「1年間、芸術祭の中止を受けてさ、オンラインで開催している他の芸術祭やアートイベントとかを見ていて、指先フリックでどんどん流れていっちゃう作品が、すごく勿体無いなって感覚が強かった。全部スクロールしていったらもう終わっちゃった、みたいな。
そこから、オンラインで開催することの問題点とか課題ってなんだろうっていう議論が始まって,
原寸を見せるというコンセプト
まず、スマホとかPCで見ちゃうとその画面のサイズに合わせて表示されちゃうから実際の作品のスケールを感じられないということが課題として出てきて、
経過を見せるというコンセプト
もう一つはオンラインでもオフラインでも同じだけど、完成品しか見られないよねっていうのがあって。この時熊くんとも結構話してた内容だけど、今回の芸術祭でも経過を残すことを重視してやってきた。
1年間コロナとかで何もできなかったっていうあの時期がさ、スッと過ぎ去っていっちゃったように感じるけど、自分たちが作品に向き合っていた経過が無いようにされちゃうのが、すごく勿体無いよねって話もしていて。
過去を辿れるとか、その人がどういうふうに考えてどういうふうに今の作品に至ったのかっていう「経過」が見れるようにしたいよねっていう話もしてて、
そこから「実寸を見せる」っていうのと「経過を見せる」っていう2つのキーワードが生まれていったような気がする。」
初期構想の頃に作ったイメージ
4. 実装について
長谷川「原寸展とか変遷展とかみんなでワイワイ言ってる間、実装する俺はそもそもどう実装したらいいんだろうっていう謎の不安感とともにいたけど笑。結果、なんの不安も持たずにいったんとりあえずやってみっか!ってやったのがよかったよね。」
田中「確かに実装っていう壁は大きかったし、俺らは提案する側として、どこまでができてどこまでができないのか全くわからない状態で無茶振りをしまくるっていう笑」
長谷川「そうそうそう笑。俺もさ、「原寸で見せるって面白いじゃん!」って言いつつ「え、そもそもディスプレイによってサイズや解像度違うし、それどうやって取得するんだ?」とか、謎の不安感を感じながらやってたけど笑」
全体「笑」
長谷川「でも良かったな、あの走り出しは。最初からどういうコンセプトとかステートメントでやっていこうみたいなのを、ある程度ちゃんと固めてたのが良かったよね。」
実装に関する細かい話は需要があればやります(やりません
5. 初期コンセプトと完成形で変わった部分について
長谷川「実装についてなんですけど。
最初は原寸モードとレスポンシブモードを切り替えて自由に移動しながら見れるようにしようとしたんだけど、思った以上に原寸感がなくて。
そこから、どうやったら原寸とレスポンシブの大きさを指で感じ取れるかみたいなことを結構考えてて、少しずつアイデアを練ってた。その中で、指の動きに連動して作品の大きさが変化すると、指先で大きさを感じられるようになるんじゃないかみたいな話になって、スクロールしていくと実寸になる今の実装に変えていった感じだったかな。そんな変化だった気がする。
スクロールする指の動きに合わせて表示される作品のサイズが変化する
武村優希さんの作品「水郷」
変遷展はそもそも最初経過展だったんだよね、なんで変遷になったんだっけ?」
多辺田「原寸と変遷で韻が踏めるから!」
長谷川「あ!だそうです笑 そんな変遷もあったね。」
熊澤「なんなら作家1人に芸祭委員が1人ついてずっと追いかけるみたいな話もありましたよね。」
長谷川「あ〜キュレーションみたいにするのもあったね!それが緊急事態宣言が出て人に会うことが難しくなって辞めることになっちゃったんだよね。あれね〜、できたら面白かったけどね。ずっと密着みたいな感じでさ。」
田中「途中俺らミーティングもできなかったもんね、取材なんてもう、もってのほか…笑。」
長谷川「それできたらまた違ったかもね。結果、変遷展について思うところだけど、もっと作品数欲しかったな、っていうのは思う。誰しも、作品を持ってる人は絶対変遷があるわけだから、もっといろんな人の見れたら良かったなって思う。
50人、60人とかっていう規模で、もっとたくさんの変遷を見れたら良かったなっては思うかも。」
ということで原寸変遷展の振り返りでした。
今回は、原寸展・変遷展が、どんなことを大切にして企画されていったのか伝わってくる対談でした。この2つの展示は今年の芸術祭メイン級の企画です!技ありな実装にもぜひ注目しながら、素敵な作品をご覧いただけたら嬉しいです◎
筑波大学 芸術祭 2021 / TSUKUBA ART&DESIGN FESTIVAL 2021
11/6-7 ONLINE開催
公式サイト:https://tadf.site/2021/
Twitter:https://twitter.com/TADF_2021
Instagram:https://www.instagram.com/tadf_2021/
執筆者:菅野淳里
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