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【詩】飽きることの余白に立って

気が付いたら
稲刈りが終わっていた
イチョウは黄色くなっていた
コスモスは揺れていた
ススキはふわふわになっていた
空は高くなっていた
夜は近くなっていた
星はより輝いていた
初冠雪と白鳥がいっしょにやってきていた
朝には秋の終わりが肌寒くあった
そのうち蔦も紅くなって
そして色を失っていくだろう

モノトーンの手前で
冬眠の準備をするように
いろいろな実を食べて
いろいろな物語を浴びる
そしてひと通り飽きて
喪失感に追われるように
何かを始める

「3つの価値」を逆算し
態度価値はアイデンティティ
体験価値は新たな世界の更新と感情の代謝
創造価値は発するそのものの自由

変化や動きや更新によって生じる
空白地帯を生み出して
埋めようとするのは
経済も心も知識も価値も進化も同じだったとするならば
それは空腹と食欲の関係と同じく
その繰り返しの反動で未来へと進む

飽きることの余白に立って
静かな世界の中
新しい世界の芽を生み出して
また飽きるまで繰り返す

お腹が減ること
飽きること
喪失すること
それは正常なこと


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