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『「鬼畜」の家ーわが子を殺す親たちー』/オーディブル版
親が子どもを虐待した上に命まで奪ってしまったと言うニュースを耳にすると、
同じ目に遭わせろ!
なんて脊髄反射してしまう。継いで、
児相は何をしていたのか?
なんて、ワイドショウと同じ発想をする。
子どもの虐待はどこかよく知らないところで、あまり関わりのない人たちによって行われると思っていたが、最近にわかにそうでもなくなり、知ろうと思い本書を聴いた。
虐待死させた極端な事例であり、児童虐待は一括りではなく、加害側である親の経済力や知的能力などによって、動機やパターンは異なるのだろうと思う。
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本書は実際にあった三つの事件の加害者の親や兄弟と面接し、生育歴や親との関わりに焦点を当て、我が子を虐待して死に至らしめたり遺棄する要因を探り考察している。
加害者の人格形成に大きく作用したであろう実の親や関係者(愛人や恋人、虐待死児童の事実上の父親等)は、直接事件に関与しないので罪が問われることはない。
明文化されないから、関与は推察の域である。
三つの事例では押し並べて、加害者は実の親との関係が悪い。
しかし必ずしも貧しい家庭やひとり親世帯で育ったと言うわけではない。
著しく知的能力が劣ってもいない。曲がりなりにも県立高校を受験し合格している。
ニュース等で一報を見聞きし、テレビ画面に映された加害者の人相や風体や散らかった住まいの外観をチラリと見ると、自分とは遠いところにいる人間と判断しがちに思う。
しかしそうでもない、そう差異はないのだと知った。
つまり、隣人と変わらないのである。
決定的な違いは明らかにある。
けれども、その違いは内側にあり見た目で判断されない。
予想外に無職ではない。働きぶりはむしろ真面目、身を粉にして働く。
だから、仕事場で会う人たちは真面目で仕事熱心だと評価する。
にも関わらず極貧で汚い部屋に住んでいる。
お金がないのは、搾取されているからだ。
搾取しているのは親であったり、親と似た特質の配偶者だ。
劣悪な親の元から精神も肉体も離れることができない。
親からされたことが"愛情"だから、我が子にも同様にする。
それ以外知らないのである。
亡くなった子も、愛されていないとは思わなかったろう。
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『今お腹にいる子を産んで幸せにしては、産み落として天井裏に隠した子が可哀想』
天井裏の子の次に産み落とした子を、押入れに隠した母親の証言である。
最もわかりやすい例を取り上げたが、万事が万事、このような発想である。
産む気がない、または産みたくないから都合の良い屁理屈を述べているように思える。
しかしそうではなく、本気で天井裏の子を憐れんで、そう考えるのである。
天井裏に隠さざるを得なかったのはなぜかについて考えない。
また同じことを繰り返さないためにはどうすれば良いか考えない。
バカ、と言ってしまえばそれまでだが、けして知能指数は低くないし、方向性はおかしくとも天井裏の子を憐れむ感性もある。
なぜこのように考えが至らなくなるのか、生育に関係があるとしながらも本書では詳にされない。
知るためには心理学を学ぶ必要があるだろう。
中途半端な知識を開陳するわけにはいかない。
それが偏見にもつながるのだ。
打つ手の無さに、やり切れなさを感じたが、最終章で少し明るい展開があった。
『babyぽけっと』の活動の紹介である。
この辺りは深掘りしていないので感想は控える。
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文庫版を朗読図書にされたので後書きがあった。
後書きで、このような凄惨な死を迎える子どもたちを無くすためにできることは何か?著者からの提案があった。
親からの悪い継承であれば打つ手がないように感じる。
さらに、虐待死事件に至るのは氷山の一角で、裾野には死には至らずとも放置されている子どもがいる。
また、貧困や低よりさらにひどい無学歴世帯が再生産され続ければ社会保障費は増えるばかり、子どもを産み育てることが喫緊の課題である現状の足枷でもある。
子どもが殺されるのはかわいそう、という感情的な問題で済ませてはならない。
子どもの健やかな未来のために…というと、医療を充実させたり、保育教育費を無料にしたり、大学進学率を高めたりするなどに目が行きがちだ。
それと同時に、生活保護世帯として支援するに留まらず、再生産を止める教育を強化する必要を感じた。
具体的にはわからないが、劣悪な家庭から救い出すのは教育しかない。
なにも、たくさん勉強をさせて国内外の社会に貢献する人材に育て上げろと言うのではない。
立派じゃなくても優秀じゃなくても、ごく当たり前に生きていくことができる人間を育てるのが、ほんとうの教育じゃないかと思う。
そういう大多数がこの国を成り立たせていることを忘れてはならない。
※かわいいウサギの画像は 落合 慶太/複業クリエイターさんよりお借りしています。
ありがとうございます♪
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