豊かな孤独
「ソロ活」はすでに市民権を得ているとのことですが,ソロ活という言葉自体,こちらを読ませていただき初めて知りました。
話は飛びますが,土曜日に放送された「男はつらいよ 寅次郎と殿様」の中にこんなワンシーンがありました。
寅さんは旅先の宿で一人の女性を見かけます。あまりに綺麗な女性なので興味を持ったのか(寅さんの惚れっぽいのはお約束)宿の女将にここの客かと尋ねると,女将は女の一人旅らしい,男なら良いけど女の一人旅はちょっとね…としぶり顔をするのです。
そうそう,昔はそうだったと思い出しました。
私は現在の夫(過去に夫は他にありませんが)と結婚前,遠距離恋愛をしていました。
有給休暇を使って彼の住む町を訪ねるついでに,途中下車したり回り道をして一泊二泊の一人旅を楽しみました。
もう四十年も前のことで,当時は女性が一人旅をしていると何か訳ありと思われたものです。
私は買い物やちょっとしたイベントにも一人で出かけました。勤め先でも,用事を作って時間をずらして一人でお昼休憩をすることもありました。今で言う"ぼっちめし"です。
一人でいると,寂しい人に見えるだろうかと気にしたことはありませんでした。特に寂しくもない,一人は気楽でゆっくり休めましたし。
ところがある日,社内の階段の踊り場を通りかかった時に,思いがけず違う部署の男性社員二人の立ち話が耳に入りました。
どうも最近彼らの部署の女性社員が退職したようで,その方について話し合っているようでした。二人の口ぶりから,あまり良い印象ではない辞め方のようです。
「○○さん,友だちもいなかったしなあ…」
「そうそう,いつも一人で昼飯くってたしな…」
一人で昼ごはんを食べていると,友だちがいない,おかしな辞め方をする同僚だと思われるのか…
その発想はなかったわ…
逆に,出社してから退社するまでの約8時間,一日の三分の一も人と一緒にいるのだから,休憩時間くらいは一人になりたいと思わないことの方が不可解でした。
人から予想外な見られ方をするのは気になりませんでしたが,その考え方がおかしいのは気になりました。
私は選んで一人でいるのですから,寂しくありません。
一人で行動するのが好きなだけで,誰とも話したくないわけではありません。必要な時は共同するし協調もします。
一人は孤独ではない,もっと言えば孤独は悪くない,一人の時間があるからこそ大勢の時間が楽しいのであって,大勢の時間が多過ぎて一人の時間が足りなければ,いったいいつ,ものを思うというのでしょうか…
ずっとずっと前は,ものを思うよりも先に人と共同して身体を使わなければ生きられなかったかもしれません。でも,現代は良くも悪くも便利になってそんなにいつも身体を使っていなくても生きられます。
そうなれば,もの思う,考える時間が増えるのは当たり前のことに思います。孤独を求めるのは,進化への順応ではないかしら…
これ以上考えると手に負えなくなるのでやめておきます。
一人で昼食を摂ることに対してネガティブな意見を聞いてから約半世紀,ソロ活という言葉が市民権を持つのは,一人でいることが当たり前になったからなのか,未だ当たり前になっていない故なのか,どちらなのでしょう。
どちらでも,私は半世紀一人の時間を大切に生きてきましたが,何も困らなかったしとても幸せです。
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