もう歳なんだから
歳を取ってつくづく感じるのは、私が何も言わなくても世間はちゃんと私を年寄りらしく扱うということである。
親切にされることもあるが、余計な気遣いに感じたり、親切に見せかけているが、これは今流行りのハラスメントでは?と受け取る、可愛げのない年寄りである。
そもそも、年寄りは可愛くしてないと煙たがられるなんて言い方が大嫌いだ。
このように、人様に何を思われるか気にもかけずに断じてしまうのが、年寄りの年寄りたる所以なのではあるが。とほほ。
例えば、買い物に行って必要があってスマートフォンのアプリをダウンロードするという場面、よくありますでしょ?
こういうのの初期操作は、いわゆるZ世代であれば息を吸うようにこなせるのだろう。
私たちが若い頃に、難なくATMを使いこなせたように。
ところが、私はそうはいかない。
そうはいかないが、できないわけではない、ちょっと戸惑っているだけだ。
すると店員は、ちょっといいですか?とかなんとかおっしゃって、私のiPhoneの画面をひっくり返す。
そして、ネイルを施した指先でサササッとスワイプしてパパッとタップして、ジャーンとアプリを起動させる。
こんなとき脳内に、マリオがジャンプしてポーズを決めたバックのお城に花火が上がり、タラララッタラ〜🎵というメロディが再生される昭和世代だ。
またある時、小さな窓口で入場券を買うという場面。
JAFの会員ですか?と問われたので、会員カードを入れた免許証ケースが入ったポーチを取り出すために、バッグの奥の方をゴソゴソやり始める。
あった、ありました!
喜ぶ私。
他の誰も喜んじゃいない。
窓口の人はカードを受け取り確認して言う。
おかあさん、このカードは期限が切れてますね。
その、下に入ってる方じゃない?
私はあんたのママじゃない!
第一お母さんと呼ばれるほど歳の差無いと思うが。せめて姉さんだろ、二つ違いくらいの。
それに、ヒトのポーチを不躾に覗き込まないで。
あ、そうですか、すいません、すいません、こっちですね、あ、ありました、ありました、お願いします。
内心とは裏腹に低姿勢なのだ。
こうして否が応にも歳を自覚せざるを得ない。
年寄り黙らすにゃ刃物は要らぬ、
「年甲斐もなく」
と言ってやればいい。
三十二歳の次男曰く、
もう歳なんだから、とか、歳を自覚しろ、とか言うのは、年齢関係なく、何にも取り組んでない人だと思う。
何かに取り組んでいたらそういう発想しないと思う。
そして何にもやらないで、歳さえ取れば偉くなれると思ってる。
俺はそう思う。
御意。
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