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【Y!映画】■映画「風立ちぬ」■レビュー(ネタバレあり)★★★★★

【不幸な時代を生きる我々に向けた人生応援歌】

映画「風立ちぬ」は宮崎駿監督が不幸な時代を生きる我々に向けた人生応援歌である。

宮崎駿監督はインタビューで「なぜ今この映画を作ったのか?」と聞かれて「現在、
(当時と)同じ様な時代が来ているからですよ」と語っている。つまり、宮崎駿
監督は大正12年の関東大震災から昭和20年の終戦までの激動期と同様の歴史的な
うねりが現在起こっていると考えているらしい。

そこで風立ちぬの登場人物達を見てみると、実に真摯に誇り高く、不幸が連続する時代を
力強く生き抜いている。

映画の最後、終戦を迎えたと思われる主人公堀越二郎が夢の中で無数のゼロ戦とそのパイロットを
見送りながら静かに呟く。「一機も帰っては来なかった・・・」と。
続けてヒロイン菜穂子が微笑を浮かべながら天を仰いで高らかに叫ぶ。
「あなたは生きて!」
私はこの場面で思わず落涙してしまった。正直、嗚咽すら漏らしそうだった。
ここまで感動した日本映画は「夕凪の街桜の国」以来だ。

そして宮崎駿監督の意図を解釈し、メッセージを受け取った。
「現在、世の中は不幸が連続しているし、今後も更なる試練が待ち構えているであろう。
しかし、生きている我々は先人の分も含めて真っ直ぐ一生懸命に生きて生きて
生き抜かなくてはならない!」と。

なお、この作品は既存の宮崎駿監督作品であるナウシカ、ラピュタ、トトロ、千と千尋、
ポニョ等と違って、大人は勿論、子供も楽しめる作品ではなく、精神的に十分に成長
した大人しか楽しめない作品となっているので、お子様連れの鑑賞は控えた方が
良いかも知れない。また、現在宮崎駿監督の売国的発言を槍玉に挙げて「観に行かない」と
宣言している方がいるが、もしその方が映画ファンなら勿体ない。色眼鏡は一時的に
外して鑑賞してみてはどうか?
それと、たどたどしい演技が問題視されている主人公堀越の声優である庵野氏だが、
庵野氏の声が中年男性としては高めなのと堀越の人柄が朴訥としているお陰か
意外に合っていたと個人的には思えた。

総合評価は100点満点で95点。星5つ。全ての大人に勧めたい日本映画の傑作。
繰り返し見たい不朽の名作として日本映画史に名を残すであろう。

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