心理学の知見:使命感は両刃の剣
その仕事に運命を感じ、強い責任感をもつことを使命感とよんでみます。
いいことですよね。そんな仕事を見つけたいですよね。
ところが、使命感は素晴らしい面があると同時に、危うさも潜んでいることを指摘した研究があります。
動物園の飼育員を調査した研究です。飼育員の多くは動物が好きで、給料は低いものの、動物のお世話をする使命感を持っている人が多いといわれているんですね。
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ワシントン大学の研究グループは、動物園の飼育員23人のインタビューと、およそ1,000人へのアンケートを実施をした。
飼育員の仕事に使命感を感じていた人は2つの特徴があった。
#特徴1 仕事を自分そのものと感じていた。その結果、仕事に意味と重要性を感じていた。
#特徴2 仕事に道徳的な義務感を感じていた。その結果、無償で働くなど、自己犠牲もいとわなかった。
使命感をもつことは、仕事に意味と重要性をもたらすが、それと同時に、自己犠牲という代償もあることが分かった。
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本当に意味ある仕事は、代償がつきものである―そうとらえることもできるかもしれません。
でも、これが利用されてしまうとしたら。
従業員にやりがいを感じてもらい、長時間労働や低賃金で働いてもらう「やりがい搾取」が起きてしまうかもしれません。
また、第二次世界大戦の特攻隊の決死的な行為も、使命感がよりどころになっていたのではないかとも、思うのです。
使命感は誇り高くすばらしくもあり、でも一方で悲劇を生む可能性があることを忘れてはならない、と思う今日このごろです。
Bunderson, J. S., & Thompson, J. A. (2009). The call of the wild: Zookeepers, callings, and the double-edged sword of deeply meaningful work. Administrative Science Quarterly, 54(1), 32–57.
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