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リサーチクエスチョンを練る大変さ & 介入前後比較

6/12のTXP勉強会は、研究者の研究アイデア検討とLancetのcontrolled ITSの論文発表でした。来週にはFF16が出るのでしばらく引き篭もりたいです。ちょっと触った体験版が凄すぎて楽しみです(そして歳取ると一本道の方が楽…)。

リサーチクエスチョンを練るのは大変

発表者は論文2本目、学年的には卒後10年未満の若手の先生。普段の臨床で疑問に思っていることをまとめてきてくれましたが、結構ボコボコにされていた気がします(愛を込めて)。

やっぱりここに時間をかけないと後々で辛くなるのが見えています。膨大なサンプルサイズがあって何かしらの結果が出るならまあ論文化することも可能でしょうが、自分で書いていてもよく分からなくなるケースの方が遥かに多いです。ChatGPTで論文が書きやすくなったのは間違いないですが、それは経験者かある程度ガツガツ進められる人であり、初学者がChatGPTのみで頑張るのは中々難しいと思っています。

ただ、初学者はここで時間をとりすぎても進まないので、手を動かすためのテーマは別にもらった方が良いんじゃないかなという気はしています。運転初心者にあれもこれも言っても無理なのと同じで。

リサーチクエスチョンに関しては下記長谷川先生の記事にまとまっていると思うので是非一読してみてください。一部抜粋します。


質問:リサーチクエスチョンは大事か。どうやってそれを見つけるか。
回答1:リサーチの実践において、リサーチクエスチョンを設定することほど大事なことはありません。なぜならこれがリサーチ活動の最上流だから。
ピーター・ドラッガーもこう言ってます:「正しい答えではなく、正しい問いが必要である」(『想像する経営者』)

回答2:その設定の基準には以下の3点があります
– 解決した時のインパクトが大きい(例:研究領域にパラダイムシフトを起こす。患者・公衆衛生へのインパクトが高い)
– 既存のテクノロジーのギリギリのところで解決可能な境界領域にある問題
– 自分および外部ネットワーク(後者は拡張可能)のスキル・リソースにおいて解決・実行可能である

回答3: とはいっても、研究初心者にはこれらの基準自体がわからない。そこで必要なことは:
– 経験と知識のあるメンターにつく。ただしシニアメンターはその知識と成功体験に縛られることが多いので注意が必要。ここにはクリステンセンによる『イノベーションのジレンマ』と共通点があります。
– 研究領域のdomain knowledgeが必要。それにはある程度の時間と労力を投資
する。最低1-2年か。つまり論文ごとにテーマを変えていると、ここが深まらない


みんな言っていることは同じだし、どの本を読んでも書いてあることに変わりはないと思いますが、実行するのは難しい。あと耒田先生からいくつか教えていただいたのは下記の点。

  1. 視点として重要なのは「もしRCTをするならどういう風に行うか?」というTarget trial emulationの考え方。そこに至るまでの十分なデータがないなら記述研究から始めてもいい。

  2. それぞれのリサーチクエスチョンでどういうデザインの研究結果がガイドラインやmajor reviewに引用されているかを調べ、その論文のlimitationやデザイン上のlimitationが自分たちで改善できるならチャンスはある。

  3. まだ明らかでないけど重要なリサーチクエスチョンは往々にして一流雑誌の最近のreviewにknowledge gapやこれまでの研究のlimitationとして紹介されていることが多い。

最後に、こういう事を言うと良くないのでしょうが、「あー、これは正直面白くないな」と思う案に対しては、優先順位が下がる気持ちが無いと言ったら嘘になります。もちろんなんとか形にしたいという気持ちはあるんですけど。逆に僕が指導を受けて来た中でもこれは結構感じるものがありました。

指導者の反応が悪いな、と思った時は上記イノベーションのジレンマの可能性もありますが、一旦温めておいて、他のアイデアを沢山持っていった方が先に進むかもしれません。反応が悪い研究を進めても、その後の反応も多分そんなに良くないし、コミット量もきっと高くなくて苦しむ可能性があるから。

Controlled ITSなどの話

論文抄読会は下記の論文。TXPのアプリケーション導入効果をITSを用いて調べた研究を元に最新の論文からCITSを用いた論文があったので、とのこと。

Evaluating the impact of alcohol minimum unit pricing on deaths and hospitalisations in Scotland: a controlled interrupted time series study

ちなみにTXPのアプリ効果を見た論文は下記。

Interrupted time series analysis (ITS), controlled interrupted time series analysis (CITS), synthetic control/causal impactに関しては佐藤先生のツイートがイメージしやすいでしょうか。

単純な前後比較だとトレンドを無視してしまう
→ITSを用いることでトレンドを考慮できるが対象群がない
→Controlled ITSを用いることで対象群ができてfairな比較ができる
→状態空間モデルにおいて介入群と非介入群の共変量を用いたCausal Impactを行うことで介入効果のATEを求めることができる。

Causal impactは今行っている実証実験で使ってみたいなと思って勉強中なので間違っていたら教えてください。

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