見出し画像

医学生のマッチングと医師以外のキャリア


今週のTXP勉強会では、研修病院のマッチング結果が出たこともあって、インターンがマッチングをどのように行っているのかや、どんな準備をしているのか、そして周りのインターンがどんなことを考えているのかを教えてもらいました。タイトルに「?」がついてるのは、あくまで勉強会参加者の話かつ、公開できる範囲の内容なので一般化しないでください

勉強会には面接を行う側の先生も複数名いたので盛り上がりました。僕は福井大学出身でマッチングも福井大学第一希望だったのでちょっと実感がない分、羨ましいような大変だなあという気持ちもあるような。


1. 都内・横浜のマッチング

マッチングの傾向と対策みたいなのはプロにお任せしますが、東京23区や横浜あたりは本当に大変みたいですね。今回発表したインターンは東大生ですが、「『東大生だから楽勝でしょ?』みたいに言われますが、全然そんなことないです!」とのこと。東京の人気病院はとにかく数を受けるしかなさそうです。関連病院でも内定者は基本的に半数以下だとか。面接官同士でも「体育会系が好き」とか「業績あるから良い」とか人それぞれで、当たり外れもあるようです。

ただ、地方出身者は倍率通りの厳しさという意見はありました(6-8倍はざら)。つまり都内だとある程度情報があるけど、地方だとその情報へのアクセスが不十分で、枠を争う人がどんな人かわからないままでの勝負になると。

2. 面接で何が大事か?

インターンと、採用面接する側で重要だと思う共通した意見は、自分なりのストーリーがあって、それが矛盾していないことでした。これは留学などでポジションを得るときも同じですよね。人気病院はそれなりに診療科重点コースがあるし、ポスドクだってお金払うからにはお互いwin-winになる関係性を求めるはずです。その人がどういうキャリアを歩んできて、それが自分たちのブランドを強化することになるかどうか。

自分のストーリーを魅力的に語れるというのは結構な強みだと思います。苦手な人もいるでしょうから別にこれだけが、というわけではないですが。その一方で、点数でスパッと切る病院もあるとのことでした。面接は明らかにヤバい人を落とすだけと。やたら学科試験が難しいところもあるようですが、その点数がどこまで関係しているのかは秘密。

面接する側の意見で面白かったのが、「たかがマッチングぐらいの気持ちでいいいと思います。正直、これで選ぶのは難しいし選ばれなかった人が今は活躍されてますんで」というコメント。

確かに、卒後10年して活躍している人(いわゆるキラキラしている人)は学生時代の印象とは違うような気はします。あと、病院側として一番怖いのは国試落ちで欠員が出ることなので、そこへの安心感は確かに大事かもしれませんね。

ちなみに一周回って面接では分からんという意見は多かったです笑。面接の印象とその後のアウトカムは関連しないという研究もあるそうで、誰か調べて教えてください。

3. 医学生は待遇に敏感

住む場所や病院が綺麗というのは結構重要なファクターらしいですよ、病院関係者の皆様。

某病院の寮はデザイナーズマンション借り上げと聞いて羨ましくなりました。僕が初期研修医の時の福井大学病院の寮は汚い上に風呂がバランス釜で最悪と評判でした。流石に今は違うでしょうけど(と信じたい)。

SNSが当たり前になった時代ですから、ある程度の情報は回りますし、「割に合う場所」に集中するのは当然ですよね。とある不人気病院は日給1万円+手当込みで月30万円程度・土日勤務時間外ありな一方、同地域の別病院だと倍額+時間外+定時なので、みんなそっちに行くとか。

他にも当直料増やしたり、土日の振替休日設置で志望者が増えたりといった例もあるそうです。

まあどこも人もお金もないので仕方ないんですが、とはいえ人が増えないとどうしようもないです。日本と同じで。

ちなみに僕の出身大学は病院長が医学部5,6年生のバイトを禁止したとか?でめちゃくちゃ反発があったとか。まあそういうのも影響しますよね。結局マッチング率は下から5番目の18%。

あと、「ハードワーク」が売り文句にならなくなっているというコメントもありました。たくさん症例きて経験が積めます、では人が来ない時代なんですかね。症例数に加えた指導体制とか、どれだけ初期研修医がそのまま残っているかも大事なファクターでしょうが。

4. 学生が論文書くことに意味があるのか?

シンガポールだと医学部一年生くらいから「インターンさせてください」「論文書かせてください」っていう人が多いそうです。そのモチベーションは、人気レジデンシープログラムのハードルが高いため、内部のコネクションを確保しつつ論文で押す形になるからというのもあるそうです。あとは米国に行く時とかに履歴書に書けるものが必要と。

ただ、日本は学部からなのに対して、他の国は一旦卒業してからのgraduate schoolという位置付けが多いのでそこは考慮した方が良いです。大学院生だと思えば別に違和感ないですかね…?

ちなみに米国だと脳外科や小児外科なんかは専攻に行くのに10本〜15本くらい必要と聞いて驚きました笑。内科よりも外科の方が論文数を要求されるとか。

TXPのリサーチインターンには最低一本は何かしら書いてもらうことを前提にしていますが、それは「医療IT企業でのインターン+研究結果」という履歴書に書けるものを残してもらい、キャリアアップに繋げてもらいたいという思いがベースにあるからです。

5. 医師以外のキャリア?

僕は現在医療系スタートアップ所属なので、多分この辺の話は実感しやすいところにいる気はします。

ちょうど玉木議員が医師の給与問題で炎上していましたが、やはり医師の待遇の悪化はかなりの医学生が不安に感じているようです。起業、コンサル、IT企業など他の仕事に行く人も話を聞く限りは増えている印象です。

米国にいる先生から、各国の医師・患者事情に関してコメントをもらいましたが、
・ロシアとかだと待遇が良くなく、正義感で医師になる人が多い
・予算を削減しながら頑張ってる欧州では、プライマリケアにおける行列問題があり、シンガポールなんかはお金が出せるならプライベートホスピタルという形
・米国は地域格差が極めて大きく、日本人が多いボストンなんかは医療費が高いけど良い医療を受けれる一方、普通の?地域は救急医療なんかは結構絶望的

それを考えると、やはり日本の医師は真面目ですごいと思うのですが、予算制限が現実的な問題になっていますよね。これから先、決して明るくない日本で医者になるのはそれなりに覚悟のいることかもしれません…と思ったけどどの職業でも同じか。

僕は医者以外の道も含めてその人の好きにすればいいと思っています。特別上げることもなければ、下げるつもりもないです。ただ誰かも言っているように、日本においては医師免許最も強いリスクヘッジライセンスでもあるので、初期研修くらいはしておいた方がいいという意見は変わりません。それを捨てても戦えるものや好きなものがあるならそっちで集中した方が楽しいでしょう。

あとは臨床に出ると、臨床が全てだ・臨床ありきだという意見を聞くでしょうが、まあそんな事全然ないですよ。ただ臨床は楽しいです。僕も週に1,2回平日日勤するなら好きです。極端な臨床至上主義は、「臨床やりながら研究・教育・運営をやらざるをえない」という日本の状況を悪化させるだけだとは思っていますけど。臨床やりながら研究・教育している人も多数いますが、一部、そういう人たちの声が大きい時は、自分たちの首を絞めているように思う部分はあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?