見出し画像

ギターから輸入したヴァイオリン演奏技術の話

実は私が人生の中で一番真剣に音楽に取り組んだ時期というのは
ギターを弾いていた時期であって
子供の頃のヴァイオリンは実にいい加減なものでした
怒られない為だけにやっているので本人の中に上達したい想いは
全く有りませんし、別に音楽の事は好きでもありませんでした。

そして今ではヴァイオリンの世界に帰ってきましたが
実はギター時代に学んだ技術を輸入してヴァイオリンを弾いていまして
純粋なヴァイオリン上達のための練習ってほぼやっていないんですね。
依頼されるがままにやってくる曲を譜読みして演奏しているだけで
周りに流されている感じでそこにあまり自主性はないのです。

ギターでは6本の弦があり、1本1本弾く事よりも
6本全てを使って和音を弾く事の方の方が圧倒的に多いので
まずは人差し指の1本だけで6本の弦を全て押さえて
6つの音を出す事が最初のハードルになります。
このテクニックをセーハと呼びます。
ヴァイオリンでは絶対にしない指の使い方です。
セーハが出来ないとFのコードを押さえることが出来ません。
C → F → G のコード進行は基本中の基本であり
ここでギターを挫折する人が実に多いのです。
もちろんセーハをしつつ人差し指以外では別の場所を押さえていき
コードを進行していくので
ギターの運指はヴァイオリンよりかなり複雑です。
しかし私はギター特有の運指からヴァイオリンに輸入したテクニックが
かなりあります。

例えばヴァイオリンの5度の重音は苦労される方が多いですが
ギターに比べれば1本の指で2本同時に押さえるのは
さほど苦ではなく通常運転です。
とはいえヴァイオリンの重音はフレットがない分
音程的にはかなりギターより難しいのですが
複数の指を効率的に展開していく事に関しては
弦が少ない分、ギターよりはかなりシンプルです。
また押弦の指の角度、立てて押さえる、寝かせて押さえるの
効率的な使い分けはギターで学んだ財産です。

また私は残し指と自分で名付けて呼んでいる運指が有りまして
押さえた後に弦から離さないで良い指は押さえたまま残しておき
運指を展開していく戦略を立てて譜読みしています。
大抵の音楽は鳴らした音がその後に帰ってきて展開・解決する事が多く
残し指する事で最小限の指の動きで弾くことが出来ます。
私の演奏動画では左手がほとんど動いておらず
指がバタバタしない特徴があります。

これは残し指を多用しているからです。
人差し指に着目していただければほとんど動いていないと思います。
ただこれ、指を押さえたままの状態でいる事から
他の指を動かす事で動かしにくく感じる方が多いと思います。
ギターのコード進行を学んでいなかったら
個々の指の分離動作は難しかったのではないかと自分でも思います。

あとギターにはボウイングが有りません。ピッキングと言って
全てピッチカートで弾くようなものと思っていただければよいのですが
弦をはじく事で音を出します。
ピッキングはボウイングと比べればシンプルな単純動作ではあるのですが
実は右手と左手のタイミングのシンクロ率のシビアさでいえば
ピッキングの方がかなり厳しいのです
ボウイングの場合、多少の左手運指のタイミングがズレても
音が鳴らないことはないですが
ギターのピッキングは押さえている時に弦をヒットさせなければ
当然音が鳴りません。
ギターで右手と左手のタイミングをシビアに合わせる事を学んだので
コレはとても役に立っています。

The Real Jazz Guitar

でも実は一番役に立っているのは楽典かもしれません。
ギターの楽典はクラシックの楽典と基本は同じですが
即興音楽の創り方にかなり振られていますので
即興演奏にはかなり強くなりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?