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ガンジャ先生。4ー8

夜の授業 光と影

 路上には酔っ払った人が楽しそうに通っていく。
MaxRiven - The Riddle

どこか思い出す景色だと思えば、ラーメン屋、焼き鳥屋など少し前の日本に似ていた。
聞こえる声も何故か日本語。逆に女性陣は緊張している。

「ちょっと、どこ行くんだろう」
「こういうとこもあるのね。歌舞伎町みたい」
「とりあえずついていこうか」

 雑居ビルに入りこっちだーとエスカレーターを上がる。
6階だったが、ボタンによくあるスナックやキャバクラの店名が並ぶ。

エスカレーター出て恐る恐るついていくと。。


『「「『「「いらっしゃいませー!!」」』」」』


‥‥‥声にならない。
そこには30人のタイの女のコが勢揃いして。。
一斉にこっちのに挨拶をする。

先生はボーッとしながら
「ママいる?」って聞いて案内役人と話している。

流石にドン引きだ。キャバクラそのまんま。
客数が少ないのかタイの女の娘達は興味津々でこちらを見ている。
委員長は顔が引きつっていた。
流石の歩も目が点になって何も言えない。

 そのまま案内され、無言でカラオケルーム?の様な一室に入る。色はピンクだ。

「ガンジャ先生!ここは何ですか!」

委員長が怒る。みんなも怯える様に座っている。

「まぁまぁ落ち着け。ここはそういう場所だが、実際に現地の人と話した事がなかっただろう?」

「今日の課題はタイ語。実際にタイ人と話してタイ語を覚える。4人ほどくるからいろいろ聞いてみてくれ」
何言ってるんだ。。タイ語なんかわかんない。

「先生!でもこんな店、失礼と思います!」

そこでガンジャ先生の口調が変わった。

何が失礼なんだ?彼女達には時給相応の給与が払われてる。もちろん会話するだけでも、お酒飲むだけでも変わらない。またここの子はカタゴトだが、日本語も勉強して優秀だ。Berlitzでもこんな会話のお試し用意できない」

「でも。。なんだか。。」

「あのなー。はっきり言おう。明日の夜から移動する。しかし俺はついて行けない仕事がある。今までずーっと面倒みているが、お前らだけで飯も頼めるの?なあタツヤ。匠。どうだ?タクシーで行き先言えるか?
タツヤは何も答えれない。僕も何も答えれない。

「勘違いすると困るが、俺はお前たちの保護者ではない。だが、面倒を見てくれとお願いされている。お客様と勘違いするな!
委員長。。雪菜は泣きそうなっている。
未亜は下を向き、歩と茜も動けない。

 後にも先にも、ガンジャ先生が怒ったのを見たのはこれが初めてだった。
迷惑をかけて甘えていたのはこっち。。だ。
 

「もう一度言う。ある程度の事は我慢してでも必死に学べ。それが人生だ。俺はちょっと話しつけてくる」
そう言ってガンジャ先生は部屋を出ていく。


□□□


 室内は漠然(ばくぜん)としていた。雪菜も何も言わず。みんなはいつもと違う怖さを感じている。
タイの人がきたって何を聞く?何を話す?無理だしできそうもない。
端で未亜が泣いてみえた。
タツヤが肘で突っつく。小さな声で
「おい、ヤバくね?匠なんか言えよ」
「なんかって。。どうすんのさ」
「盛り上げて行けばいいって!流石の俺もキャバ初めてだし。。」
こういう時男は弱い。アタフタするだけの生き物だ。

次の瞬間。


どーん!!


っとドアが勢いよく開く。

「いらっしゃいませー♪ア、ミンナカワイイデスネー♪」
タイ人の女のコ4人が飛び込んできた。
セクシーな衣装はそのままで、氷とファンタ、コーラとポップコーンなど持って席に座る。

「あれ?なんで泣いてるの!ガンチャン、ナカシター!」
リーダーような子が怒った様子でドアから飛び出す。
先生を呼び戻し、「コラ!コラ!」と蹴って遊んでる。。なんじゃそれ。w

違うタイの子がよしよしと未亜を慰める。
「ひどいヨネー」
ポジション取りはさすがプロ。
すぐ「何か飲みますカ?」と氷を入れて横に座る。

「では、タイ語の勉強しましょう!アタシプイ!ヨロシクオネガイシマス♪日本語まだまだだけどーオシエテネー」

こうして僕らの夜の課外授業は始まった。


△△△


結論から言うと、プイ先生の授業は面白かった。

まずは数字の数え方。どこからともなくホワイトボードがでて、
「タイ語とニホンの数字呼び方が違いマスー!まずは1から10まで発音練習!また、パターンが大事デスネ!」

「よく使うのは100バーツ。ヌーンロイバーッ!サンハイ!」

「20バーツ言い方ちょい違いマス。イーシップと言いますー」

「数字の並びコツがあるのでそのままだと間違えマスが、お金ダイジ!」
初めはみんな暗い顔をしてたけど、面白く生活感溢れる授業だった。みんな除々にリラックスをしていく。
そう。彼女達はサービス業のプロだ。

委員長はいつの間にかメモ帳とペンを持ち書き込む。
「書き読みムズカシイ。まずヨク聞くとイイヨ?」
と隣の白い女のコがフォローしてる。
3人の女のコはこんな感じで間に入り個々に教えてくれる。

数字の単位から、食べ物の名前、相場、アロイからサワディー、会計のケッタンドゥワイ♪までいろいろな知識が流れ込む。悪口まで教わるのか。。

もちろん一朝一夕で全てが解る訳はないが、それなりに言語の意味は知ることできたと思う。

 50分くらい立つとプイ先生は「では自由時間!ニホンゴオシエテネー♪」と逆にいろいろ質問してきた。

すでに場は和んで、みんな笑顔で話をしている。
ガンジャ先生は、ちょいと離れたカウンター酒飲んでチラチラ見ていた。心配だったのだろう。

 僕の近くにいた子はパニーって言う子で、京都の事にすごく興味津々。お寺の数は?とかマイコはいるの?とかホテルの相場?いくら位持っておくべき?と迫る。
 。。う。おっぱいに目がいき凝視できない。
分かる範囲で答えているけど、正直驚いた。
彼女は年上で大学生くらいだったし、何より基本の日本語ができている。
一番違うのはその貪欲さ。必死さが伝わった。


 あっと言う間に1時間半が過ぎ、先生が「んじゃ帰るか」と顔を出した。
支払いを終わらせ、みんなに「何かいう事ないのか?ん?」というと。
委員長が「ありがとうございました!」と白い女のコに頭を下げる。
僕らも続いていて「「ありがとうございました!」」と各担当の女の娘にお礼を伝えた。
「ドウいたしましてー♪」と返ってくる。
 プイ先生は嬉しそうに「またね〜♪」と手を降って少し賑わう違う席に行った。

□□□


帰り道に先生は気にしてたんだろう。

「雪菜(ゆきな)、さっきは言い過ぎた。ごめん!」

と謝ってた。委員長も戸惑った顔をしつつ。

「せ、先生私の方こそすみません。変なとことか言って。。いろいろ勉強になりました」

「彼女達は日本の普通の短大クラスの知識がある。が、生まれた環境、この国の習慣。そういうものが重なり。あそこにいるんだよ。まだ幸せなほうだがな。。」

説明する先生は寂しそうに上を向いて話した。

「もうすぐ満月か・・・」

夜空は昼の雲もなくなり、月明かり照らされていて綺麗な夜だ。

こうして僕らの課題は終わり。

少しのタイ会話を覚えて2日目は終わろうとしていた。

経験はチカラです。 若い頃行っとけば良かったな〜と思う事も多かった。 世界は広いです♪ ٩(ˊᗜˋ*)و