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バッハ、魅惑のオーケストラ・コンチェルト! 〜『タクティカートオーケストラ ブランデンブルク協奏曲全曲演奏会』見所・聴きどころ紹介!〜

 8月11日(金・祝)、浜離宮朝日ホール・音楽ホールにて『タクティカート オーケストラ ブランデンブルク協奏曲 全曲演奏会』を開催いたします!
 今回はその見どころ・聴きどころをご紹介。「ブランデンブルク協奏曲って何?」という基本から、タクティカートオーケストラとしての意気込みまで、余すことなくお伝えします!


 2020年の結成後、活動を拡大し続けているタクティカートオーケストラ。
 今年2月に指揮・坂入健司郎氏を迎え開催した『ラフマニノフ 生誕150周年コンサート』で披露した『交響的舞曲』などのライブ録音CDは、『レコード芸術』最終巻で特選盤の認定を受けるなど、若手ながらオーケストラとしての高い実力にも注目が集まっています。

 そのタクティカートオーケストラがこの夏挑むのが、J. S. バッハ作曲の『ブランデンブルク協奏曲』の全曲演奏会です。

見どころ① バッハの「ポートフォリオ」! 自信作で組み上げた『ブランデンブルク協奏曲』

 バッハの『ブランデンブルク協奏曲』は、バッハが30代、ドイツ・ケーテンで宮廷の楽長を務めていた頃の作品。「ブランデンブルク」と名がつくのは、この6曲がまとまって、当時のブランデンブルクを収めていた伯爵・ルートヴィヒ伯爵に献呈されたことに由来します。

『ブランデンブルク協奏曲』自筆譜の表紙。フランス語で
「ブランデンブルク辺境伯 クリスティアン・ルートヴィヒ(仏: Chretien Louis)伯爵に捧げる」
と書いてある。

 ケーテンで、バッハは非常に幸せな生活を送っていました。仕えていた伯爵は大の音楽好きでチェンバロヴィオラ・ダ・ガンバにと演奏するとともに、充実した宮廷楽団を持っていました。結婚生活も順調だったバッハは、創作意欲も高く様々な作品を書き残しました。
 しかし就任から3年が経った頃、妻が他界。さらに伯爵には新しい奥様がやって来ましたが、この奥様が音楽嫌い、伯爵自身の音楽熱も冷めていきます。ケーテンを離れることを考え始めたバッハ。そんな中、ブランデンブルクのルートヴィヒ伯爵から依頼が来ます。
 ルートヴィヒ伯爵は非常に裕福で、宮廷楽団も小編成ながら優秀だったと言われ、バッハも自分の楽曲を披露した経験がありました。「もしかしたらブランデンブルクで働けるかもしれない…」という希望をバッハは抱いたに違いありません。

 『ブランデンブルク協奏曲』は、この依頼に基づいて献呈された作品です。ここに収められたのは、新曲ではなく、ケーテンで作曲した中から6曲をセレクトしたものでした。6曲は編成・構成などに一貫性がなく、「こんな編成でも書けるし、こんな曲も作れるんです!」と、まさに自分の実力をアピールする内容になっています。
 いわば転職活動用の「ポートフォリオ」だった『ブランデンブルク協奏曲』。
バッハ自薦による『バッハ・協奏曲名曲集』とも言える曲集は、現代の我々にとっても、当時のバッハの多彩さを容易に感じ取れる作品となっています。

ドイツ・ケーテンにあるバッハ像


見どころ② 超ユニーク! 個性と魅力に溢れる6曲の協奏曲たち!

 『ブランデンブルク協奏曲』の6曲は、この当時流行していた「合奏協奏曲」と呼ばれるジャンルに大まかに属します。
 これらの楽曲では、オーケストラ全体での演奏部分と、ソロ楽器たち、楽器たちとオーケストラ、もしくはオーケストラ内の一部パート同士がコンチェルトのように対話する演奏部分の交代で構成されます。

 バッハの『ブランデンブルク協奏曲』は、先ほども言ったように全6曲で一定の編成を持っている訳ではなく、それぞれがユニークな編成で構成されていて、曲ごとに様々な響きを楽しむことができます。


第1番 BWV1046
 6曲の中で一番大きい編成の楽曲。弦楽の伴奏にソログループとして、小さめのヴァイオリン:ヴィオリーノ・ピッコロオーボエ、ファゴットなどの木管楽器、さらにはホルンまでが加わります。しかし協奏曲というよりは、通常のオーケストラの楽器がパート単位で会話していくような、オーケストラのためのコンチェルトにも聞こえるような内容です。
 3楽章構成がほとんどの6曲の中で、唯一第4楽章が入ります。このメヌエットでは途中、木管によるトリオ、弦楽によるポロネーズ、ホルンとオーボエによるトリオなどが挿入されます。大編成の響きから、小さな単位でのアンサンブルまで聴ける、第1番から盛り沢山の内容です。


第2番 BWV 1047
 ソロ楽器として、ヴァイオリン、オーボエ、リコーダー(今回はフルートで演奏します)、そしてトランペットの4種類の楽器が登場します。
 高音域を奏でる4楽器によるグループとオケ伴奏が対話する構成は、当時でも一般的なものですが、通常は全てヴァイオリン、というように同種類の楽器からなる物でした。しかしバッハはここでは、トランペットやオーボエなど様々な楽器をセレクト。特に、演奏が難しいともされるトランペットは効果抜群で、ソロ楽器グループが輝かしい音色となって、曲の雰囲気を華やかにしています。


第3番 BWV 1048
 ソロ不在の弦楽器のみのオケからなりますが、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロがそれぞれ3パートを受け持って進む、弦楽器奏者たちのためのコンチェルトとして、6曲でも人気曲の一つです。
 活気ある前向きな雰囲気の3楽章構成ですが、第2楽章は、チェンバロなどの通奏低音のために2つの和音が書かれているだけ。これを元にした即興演奏がされたり、または別な曲が持ち込まれることもある2楽章。本番一度きりのその内容にも注目です。


第4番 BWV 1049
 ソロ・ヴァイオリンと2本のリコーダー(今回はフルートで演奏)の3本がソロ楽器のグループとなります。2番と同じく高音域の楽器で構成されるソログループですが、リコーダー(フルート)のおかげで、雰囲気はより暖かなものに。ヴァイオリン・ソロも、ヴァイオリン協奏曲を思わせるような、テクニック的にも充実したソロで、演奏に注目が集まります。
 3楽章構成、中間の第2楽章は、6曲で唯一オーケストラ全体で演奏される緩徐楽章。音量の大小が対比的に用いられて、柔らかくも闊達な両端楽章の間で哀しみの音楽が印象的に響きます。


第5番 BWV 1050
 6曲の中でも一番有名な曲と言っても過言ではないでしょう。ヴァイオリン、フルート、そしてチェンバロが中心となる協奏曲です。
 チェンバロは本来通奏低音の一部として、伴奏側となることがほとんどの楽器。しかし5番ではソログループに含まれ、第1楽章では長大なソロでのカデンツァも演奏するなど、ソリストとして大活躍します。それもあって、第5番はピアノ協奏曲へと繋がる『最初の鍵盤楽器とオケの協奏曲』とも言われる作品です。他2本のソロ、ヴァイオリンとフルートとの掛合いも美しく印象的な内容です。


第6番 BWV 1051
 これまで活躍を続けていたヴァイオリンが姿を消して、ヴィオラ、チェロ、そしてヴィオラ・ダ・ガンバ、通奏低音という、6曲中で 1番小さな編成で演奏されます。ソロと言えるパートはありませんが、滅多に最高音部を担わないヴィオラがメインに活躍する意味では珍しい楽曲です。
 また「バロック音楽の楽器といえば!」とも言えるヴィオラ・ダ・ガンバが登場するのも見どころ。ケーテンの伯爵が演奏していたこの楽器、当時はチェロが一般的となって曲に取り入れられるのは少し珍しくなってきている頃。チェロと並んで使われることで、ヴィオラ・ダ・ガンバの特色も感じられるでしょう。



 様々な編成・響きが盛り沢山の『ブランデンブルク協奏曲』。
 似たような響き…と思われがちなバロック音楽ですが、『ブランデンブルク協奏曲』では6曲それぞれの個性を知ることで、バラエティに富んだ音楽としてお楽しみいただけること間違いなしです。



見どころ③ タクティカートオーケストラの挑戦!

 そんな個性豊かな傑作・6曲に挑むタクティカートオーケストラ。
 これまで様々な楽曲に取り組んできましたが、2022年1月には、バッハのヴァイオリン協奏曲全3曲による演奏会を開催するなど、バッハへの意欲も高く、今回の『ブランデンブルク協奏曲 全曲演奏会』もオーケストラとしての活動の一つの目標でした。

 今回、結成3年目にしてその目標を達成する訳ですが、昨年のバッハ演奏会以降の1年半、タクティカートオーケストラは様々なジャンル・編成、そして様々なソリスト・指揮者との共演を通して成長を続けてきました。

 2022年5月には、2000人規模のホールでの初公演となる『RISING STAR CLASSICS』を開催。一方で9月には浜離宮朝日ホールで、服部百音をゲストに、指揮者なしのオーケストラで『ザ・ドラマティック・ヴァイオリン』を成功させています。

 11月には没後30年の作曲家・ピアソラの作品だけでお送りした『ピアソラ・ザ・ファイナル』、そして今年の2月には生誕150周年の作曲家・ラフマニノフの作品だけでお送りした『ラフマニノフ 生誕150周年記念コンサート』を開催し、その演奏の幅も見せつけました。

 今年はその後、3月・6月にそれぞれ、『黒岩航紀 ピアノリサイタル』『長富彩 ピアノリサイタル』に協奏曲の伴奏として出演。前者ではアンコールとしてブランデンブルク協奏曲からも演奏しました。
 ソリストと小編成で作り上げる音楽は、まさに『ブランデンブルク協奏曲』に繋がっていく内容だったと言えるでしょう。

 今回、満を持して開催する『ブランデンブルク協奏曲 全曲演奏会』には、オーケストラメンバーとして、東京シティフィルに在籍する傍ら室内楽やソロなどでも幅広く活動を続けるヴァイオリニスト・高宮城凌や、東京藝術大学出身で、学内では安宅賞・アカンサス賞などを受賞、卒業後も兵庫県芸術文化センター管弦楽団に在籍をしたフルート奏者・大久保祐奈などが出演予定。

 更には、デン・ハーグ王立音楽院を修了し、バロック・ヴァイオリン奏者としても活躍する高岸卓人や、チェンバロには国内外で古楽器の研鑽を積み、様々な鍵盤楽器にも精通した西野晟一朗など、バロック音楽へ精通したメンバーも参加し、総勢25名でお届けいたします。

出演者一覧



まとめ

 バッハ自身がセレクトした、合奏協奏曲の名曲選・『ブランデンブルク協奏曲』。6曲それぞれがバラエティに富んだ、飽きることのない作品たちです。
 ソロの有・無、楽器の編成、また楽章構成など、全く異なる個性を持っている6曲。明るい長調で全て書かれていますが、豪華さ・華やかさ・推進力・暖かみなど、それぞれが異なる雰囲気を持って輝きます。そして雰囲気に加えて、バッハ自薦の6曲だからこそ、もちろん作曲技法の見事さも十分に現れた曲たちです。
 そんなバラエティ豊かな6曲を一気にお聴きいただける『全曲演奏会』。オーケストラによるバッハの魅力を余すことなくご覧いただける機会です。

 今回、満を持してお届けするタクティカートオーケストラ。国内外で活躍する若手音楽家たちだからこその、良質なソロに富んだ、若々しい溌剌としたバッハは、この夏、ぜひ多くの方にお楽しみいただきたい公演です!

 公演チケットはイープラス、朝日ホールチケットセンターにて現在好評発売中。お見逃しなく!


『タクティカートオーケストラ ブランデンブルク協奏曲 全曲演奏会』

日時:2023年8月11日(金・祝) 18:00開場 19:00開演
会場:浜離宮朝日ホール 音楽ホール

出演:タクティカートオーケストラ

曲目:J. S. バッハ『ブランデンブルク協奏曲』全曲
   (第1〜6番, BWV1046-1051)

チケット 全席指定:一般¥5,000、学生¥3,000(イープラスのみ)
 販売
  イープラス:https://eplus.jp/tactiorch_brandenburg/
  朝日ホール チケットセンター:
   WEB: https://asahihall-ticket.jp/top/
   TEL: 03-3267-9990(オペレーター対応 日・祝除く10:00~18:00)

◉タクティカートオーケストラ:https://www.tacticart-orchestra.com

文=藤原 健太


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