見出し画像

第60回:展示会見学、四角いお部屋をまあるく掃く!?

先日、東京ビックサイトで開催されていた某展示会を見学しました。彼の地で開催されている産業展示会の例に倣い、水曜日から金曜日まで終日開催されており、大きなコンベンションセンターが出展企業ごとのブースに区切られていました。いわば大きな天井の高い体育館のような建物の中で大型・中型・小型のブースがお祭りの夜店のように軒を連ねているといった様子です。


展示会は通常、関連する産業から何百社もの企業が出展します。例えば、「オフィスづくり」がテーマの展示会でしたら、オフィスの移転をプロジェクトマネージメントする会社、家具のメーカー、オフィスのカフェテリアを運営する会社、防災用品、入館やシステムや勤怠管理システムを提供する会社などが出展されるでしょう。

ですから、広い会場はエリアごとにゾーニングされており、例えば「ゾーンA:オフィス家具、ゾーンB : 福利厚生、ゾーンC :防災用品・・」といった具合です。

もちろん、「◯◯会社の出展ブースさえ見学できれば良い。それさえ見たらすぐ帰る。」という方もいらっしゃるかもしれませんが、そのような方はむしろ稀ではないでしょうか。

展示会の本来の目的はリード獲得・商談成立ですが、同時に出展博覧による露出広告効果も兼ねているでしょうから、来訪者をくまなく歩き回らせることも大切であると思われます。

ところが、実際に地図を片手に歩いてみても、頭上に掲げられているゾーンを示す看板を見上げないと自分がどこにいるのかわかりませんし、ゾーンが変わったこともわからない。これは、「激安の殿堂・ドンキホーテ」のように、あえて迷路のような空間を演出しお客様の滞在時間を長くさせようとしているのでしょうか。更には、広い空間を歩き回ることで疲労が蓄積しますので、気がついたら「四角い会場を丸く掃いていた。」つまり、すべての通路を通らず、また四隅の角まで到達せず、中央のメインストリート周辺をうろうろしていることに気がついたのです。

来訪者の歩くルートを音で誘導できることをご存知ですか?

音やサウンドは購買行動を喚起するだけではなく、お客様が店舗などで歩くルートを誘導することができます。


例えば、低デシベルの高周波サウンドをスピーカーから流します。これはヒトが高周波のサウンドを避ける傾向を利用するものです。展示会でお客様に会場の四隅の端にある出展ブースまでご覧頂きたければ、お客様が中央に戻ろうとする歩行経路側から高周波サウンドを流すことで、お客様は無意識のうちに中央に戻ろうとする経路を進まず、そのまま直進あるいは反対側の経路を進むと考えられます。

右の角を曲がらせたければ、左の角から高周波を。

左の角を曲がらせたければ右の角から高周波を。

また、お腹にズンズン・ドンドン響くような低周波サウンドを聞くとヒトはその場に留まらない傾向が高まる、といったことも確認されています。もちろん、展示会は各々の出展ブースからも様々な音声や音楽が様々な音量で流れていますので、会場全体のサウンドスケープの再構築はかかせません。また、コーナーや中央は音が集まりやすい傾向があります。ですから展示会の主催者側が会場のブースの設置に際し、音の反響効果を織り込んで「展示会会場全体のサウンドスケープ」を設計すると、更に良い結果がうまれるでしょう。

お客様を音で誘導するのは夢の国だけのマジック?

更に、エリアごとで異なるサウンドを構築し、エリアのボーダーを設計すると、お客様は無意識のうちにAのエリアからBのエリアに移ったことがわかります。

例えばコンクリートの床を歩くのと絨毯の上を歩くのでは音は違いますね。また、AのエリアとBのエリアで流れるBGMや効果音を異なるサウンドにすることもできるでしょう。例えば、ディズニーランドではそのようなサウンドスケープを科学的に構築することでお客様を無意識のうちに誘導することに成功しています。ランド内のエリアによってサウンドを変化させ、アドベンチャーランドからウエスタンランドに移動したことが看板等のビジュアル標識に関わらずゲストが認知できるように表現・設計されています。

さて、いつもの「帝釈天で産湯を使い」方式です。

「音やサウンド」=周波数の表現はヒトの「感情」を引き出し、動かし、「記憶」を呼び起こし、「行動」を喚起することができます。 

即ち、テンポや拍子、調性、音域などによって、お客様の行動を誘導することが可能になるというわけですが、ただしそれには「高い音だけ流せば良し」等、「〇〇すれば良し」方式ではなく、音量dB、テンポ、ノイズの設計、そしてエリアやブースの反響などのトータル的な「サウンドスケープの設計」が必要となってくるのです。

展示会会場の運営。漫然と来訪者の気分と疲労度に歩行経路を委ねていませんか?小売り店舗だけではなく、大型のコンベンションセンターなどで開催される展示会などでも音やサウンドを有効に利用したいものですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?