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ニンジャスレイヤーTRPGリプレイ小説:「アンエクスペッド・エンカウント」#1

◆前書◆ドーモ、Tac.Tと申します。この記事は11月4日の夜に、Discord上で実施したニンジャスレイヤーTRPGのセッションを、少々の加筆修正を加えて公開したものです。◆よく分からない方は、ダイスを振って展開を決める、ニンジャスレイヤーの二次創作とお考えください。◆生存◆
◆前書◆さて、前回のSTILL‘A’LIVEストーリーは如何でしたでしょうか。このシリーズはニンジャスレイヤーTRPGを、キャンペーン方式で独自にプレイし、文章化するという試みです。今回は久々にアイツが活躍するぞ◆生存◆
◆前書◆今回のセッションは、T1000G=サン(https://note.com/tg1000)ご協力の元、半ばソロプレイングとマルチプレイングが混ざった特殊な形でのセッションとなりました。この場を借りてT1000G=サンにお礼を。ありがとうございます!◆今回はRPなどを用いたプロローグ部分なので文章多めです。また、実際のセッション時の文章を加筆、再構成しております。プレイングの様子は次回をお楽しみに!◆生存◆
◆STILL ‘A’ LIVE SERIES PREV... “STRANGER AND FLAME GIRL”◆

SECTION: FIRST SECOND


NM(T1000G=サン):現在めっちゃ震えてますが始めましょうか()

PL(Tac.T):お、お願いいたします……!

NM:では
◆◆◆

PL:スリケンダー!!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ネオサイタマは今日も暗かった。重金属酸性雨がPVCコートやPVS傘で備えたサラリマンやオイラン達を濡らす。ここはネオサイタマ、ツチノコ・ストリート。サツバツしたストリートにして暗黒街である。

ビルディングとビルディングの狭間……ツチノコ・ストリートのとある路地裏に風変わりな男がいた。鍔広帽に丸サングラスめいたゴーグル。長身をレインコートに包み、冷たい雨をそのまま受けて、片手で大きな何かを抱えている。

「オイ、しっかりしろアンタ!気をしっかり持て!」何かに向かって必死に声をかけつつ、もう片方の手にIRC端末を握り、キーを叩く。一瞬の稲光がカメラのフラッシュめいて路地裏を、風変わりな男の姿を照らす。彼が抱えているのは……腹に強烈に殴られた痕を残すイタマエめいた男であった。

「ニンジャは……ノパンしゃぶしゃぶを襲撃して回っているようなのです……我々の店は常に襲撃されました……どうか……同業者の皆さんを救ってやってください……」絶え絶えの呼吸の中、ようやくイタマエはかすれ声を絞り出した。「それよりアンタ、救急車だ!ヨロシの方の…いま呼ぶから!」男はイタマエを助け起こす。傘もささずにいるためか、酸性雨が顔を打つ。

ネオサイタマの暗黒イタマエならば、同業者の店の崩壊をさぞ嬉しく思うであろう。傭兵を雇って向かい側の店を襲撃させるような輩もままいる。それに比べれば、このイタマエは優しい男ともとれた。「ドーモ……ゲホッ……ゴボーッ!」イタマエが血を吐いた。どす黒く濃い血である。内臓を完膚なきまでに破壊されているようだ。

「……クソッ!」イタマエを抱え、駆け出しながら男はガムシャラにIRC端末をいじる。病院は。闇医者でもいい。どこにある。抱えるイタマエの体温がどんどん下がっていくのが分かる。「オニイサン……一つ私の頼みを聞いてください……」抱えられ、血を吐きながらイタマエは言った。「ワカメ酒」と。

「…………ワカメ酒」それ、ギャグじゃねえよな。思わず浮かんだ一言を男はグッと喉の奥に押し下げて、問う。「ワカメ酒…ワカメ酒がどうした!?」イタマエの口が震える。「ワカメ酒……そこに……そこに……現れる……ニンジャが……」「…ニンジャが、そいつが犯人なのか!…ワカメ酒に来るニンジャが!」

男がイタマエの顔を覗き込み、せっついて聞く。イタマエはハイともイイエとも答えなかった。胸の前で組まれた手が、力なくだらん、と垂れ下がる。呼吸の音も、脈動する感覚も、もはや彼からは感じ取れなかった。



◆STILL ‘A’ LIVE SERIES#2◆


…数日前。その日も重金属酸性雨が、街を冷やす。空は暗く暗黒に包まれているが、地上はビルディングとネオン看板で明るく輝いている。それはこの「カナリサカサマ・ビル」とて例外ではない。…しかしこのビルに限っては、暗黒メガコーポやジアゲ反対グループなどが自由に使うことができる秘密ブリーフィング・ルームが中に隠されていた。盗聴されないという保証はないが、比較的安全な場所ではある。

その一部屋で、一組の男と少女が対峙していた。「依頼を受けて頂きアリガトウゴザイマス。私は、ヘルゲイザーです」テレビ・カトゥーンから抜け出たような探偵服に身を包んだ少女がオジギする。「…ドーモ。エート……どっちの名前で名乗った方がいいか…」男の方は帽子を取り、後ろに流した短髪を掻く。「…まあいいや。"マインドセット"です。」

ヘルゲイザーと名乗った少女の胸元には、クロスカタナ紋のエムブレムが燦然と輝いている。ネオサイタマを裏から支配する、悪名高きヤクザ組織…ソウカイヤの紋章だ。そしてその構成員のほとんどは、ニンジャである。彼女の服装は探偵めいてはいるものの…その腰にはブラックベルトが巻かれている!ナムサン!彼女はニンジャなのだ!

そしてヘルゲイザーと相対するこの男もまた、ニンジャ。マインドセットと名乗った男は、メンポ代わりのスカーフを押し下げて首に巻くと、ヘルゲイザーの瞳を丸ゴーグル越しに見据えた。「………で?依頼はお前さんの…独断で、非公式。ずいぶんまあ…」男は少女の風体を上から下まで見て、驚く。まだ年端もいかない女の子ではないか!

「あ、あの……その……」少女はアイサツした後も、ぶるぶると震えている。ニンジャとなってカラテを身に付けたとはいえ、偉丈夫の男は少しコワイと見えた。彼女の様子に気づき、マインドセットは少々慌てつつ、落ち着くように促す。「……え〜〜と、その、ダイジョブだぜ?そう気張らなくたって…その、ホラ…俺だってそこまでその…カラテが、さ。スゴイってわけでも無いからな?」うまい言葉が見つからぬ!

「…まあ!とりあえず…座ってくれよ!その依頼とやらを聞かねばならんし…」「あ、ハイ……スミマセン!座ります!」促されるままに、ヘルゲイザーは声を張り、座った。緊張しているようだった。この年齢にしてヤクザ組織の一員である。コワイだろうし、苦労も多かろう。マインドセットは、心中で彼女のことを気遣った。

「最近無軌道ニンジャが暴れまわってます。でも、上層部は捨て置けって言うから……私は動けないんです……」マインドセットが注いだコーヒーを前にして、ヘルゲイザーが語り始める。「無軌道」男も依頼人に続いて奥ゆかしく椅子に座り、彼女の顔を見て話を聞く。真摯に依頼人と接するべし。加えて…依頼人の人柄を見定めるには、じっくり依頼人と腰を据えて話すべし。

「そして…捨て置け、か。ソウカイヤらしくも無い。無軌道ニンジャの取締りが連中の仕事の一つじゃ無かったのか?」「その…襲われてるところが……」不思議そうに聞くマインドセットの言葉に、少女は頬を赤く染め、俯いた。「ノ……ノ……ノ、パンしゃぶしゃぶ店で……」

「あれま……」マインドセットは、思わず気まずい表情で頭を掻いた。「…風俗店か…そりゃそうだ、ヤクザクランじゃないもんな…」「多分どこも小さいお店だから……ソウカイヤは別に気にしてないのかな……」ヘルゲイザーは顔を左右に振り、手で両手で頬をバシバシと叩いた。「でも!私は見過ごせないんです!」

「……………」懐からサクラ材のパイプを取り出しかけ…やはり懐にしまう。この依頼人の前ではよしておくことにしたのだ。「小さい店だからって……ノ、ノパンだからって……見過ごすわけにはいかない!罪のない人が……犠牲になるなんて……!」

「……ソウカイ・ニンジャでそんな事言う奴を、俺は初めて聞いたぞ?」マインドセットが静かに告げる。「”罪のない人を見捨てられない!”なんて。ヤクザの言うことじゃねえな」「いや……その……スミマセン」ヘルゲイザーが己が身を乗り出して話をしていたことに気付き、再び座る。「あの、ヤクザって……何なんでしょうか」ヘルゲイザーはポツリと呟いた。

「……なんなんだろうなあ」マインドセットも応えるように呟く。「オレの見たソウカイ・ヤクザは…まあ、そう言う連中ばっかだったぜ。モータルのことを食い散らかして省みもしない連中…」ふと、ブラインドの下げられた窓の方を振り返った。外のネオサイタマの空には、重金属酸性雨がしとしとと降り注いでいる。「と言うか、そんなことを言う奴…この街でもそう見ないしな。」

「ですね……」ヘルゲイザーは悲し気に呟いた。わかっていた。ソウカイ・シンジケートに巣食うニンジャ達は邪悪で、モータルをゴミと見ている。だが、到底自分にはそんなことはできない。見捨てることなんて……コケにすることなんて……!

「だからこそ、だ」「ふぇ?」マインドセットは立ち上がり、大きく伸びをした。「お前さんの願い事を放り出すわけにはいかねえよな」そして口角を上げてにっこり笑い、今一度少女の目を優しく見据える。「…なにせ俺もそんな変わり者の一人だ。受けるぜ、その依頼。」

「あぁ……あぁ……!アリガトゴザイマス!」少女の目に涙が溜まり、彼女は勢いよくオジギをした。勢い余ってテーブルに頭が当たる。「いたた……」「アハハ、いや落ち着け落ち着け!」男は少女を宥めると、カバンからIRCデバイスを取り出し始める。「それで…だ。その…お前さんに今一度頼むのもなんだが…その無軌道ニンジャとやらの詳細、襲った店とその大まかな足取り、そいつを知った経緯。できる範囲で良い、教えてくれ!」


◆◆◆


…時間は巻き戻って、現在。「…………………」マインドセットは冷たくなったイタマエの目を閉じさせ、奥歯を噛みしめる。

畜生。畜生。なぜどいつもこいつも俺の前でこうも死にやがる。声にならぬ叫びと鬱屈した怒りともつかぬ感情が、彼の奥底で激しくうねり、渦巻く。手慣れたものだろう。なぜいちいち感傷的になる。口に出さずとも、何度も自分に言い聞かせる。……武装ジャーナリスト時代からの癖だ。

しばらく死体を抱えて歩くと、黒塗りの死体回収車がアナウンスとともに走ってきた。ところどころで止まっては、道端に転がる浮浪者の死体を拾い、どこかへ連れ去っていく。こんな光景がネオサイタマではチャメシ・インシデントである。彼は積み込み作業中の職員に声をかけ、イタマエの死体を差し出した。回収されるイタマエのその死に顔は何故か、期待と――希望に満ちていたように見えた。

マインドセットはヘルゲイザーからの情報…「無軌道ニンジャはツチノコ・ストリートによく出没する」「イタマエめいた格好をしている」「ノパンしゃぶしゃぶ店しか襲ってない」。それらをもとに地道に調査を進め、その結果として先ほどのイタマエと遭遇したのである。彼がLED傘を投げ捨てて駆けつけたときには、既にイタマエは瀕死であった。…死体回収車の運転手が何か呟き、車を走らせる。重金属酸性雨が降っている。

「……ワカメ酒……ワカメ酒…………どう考えても店の名前だよなあ」IRC端末のブラウザ検索欄に”ワカメ酒”と打ち込み、検索結果に表示された店の評価を見てみる。星が3.8個ついている。いつものことだ。こういった飲食店の評価は高すぎても低すぎてもいけない。評価が高すぎれば出る杭めいて打たれ、低すぎれば周りからは奥ゆかしくない店とみなされムラハチされる運命になる。ここらあたりの風俗飲食店は、ギリギリのバランスで成り立っている。

マインドセット……タニマチ・ギンジは、これも武装ジャーナリスト時代から続けているルーティンをした。一呼吸置き、両手で素早くサインを切る。……あのイタマエを弔うのは、全てが終わった後だ。
………仕事の時間だ。


◆◆◆◆◆◆◆


【STILL‘A’LIVE】

◆To Be Continued…◆



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