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ちょっと男子、そして死ねeverybody


まずは、想像せねばならない。自分がどんなに未熟で、その未熟さゆえに壮大なミスを犯したか。

生温かいけれど、さすがに36度はないなと思う。それも当たり前か、外気に触れれば熱は冷めていくことは物理で習っただろう、熱は均衡を保つように移動するんだ、熱力学…なんだったか。こういう癖があるんだよな昔から。絶対に今考えるべきではないことをあえて考えて時間をロスする。怖いもの見たさに近い感覚だから、やめられない。包丁はどうする?丁寧に上着で拭いてみる。意外とうまく拭き取れないもんだな。てか上着に血をべっとりつけてどうするんだよ。自ら証拠をひとつ増やすようなものだ。てか証拠って、俺が生きている時点でなにをしても証拠を残すことになるよな。なにかに似てる。あれだよ。部屋の埃が気になって掃除しまくってたのに、すぐまた埃が溜まるから、どうにかしないとって思ったんだけど、それ普通に俺が生きてるのが原因だから死ねばいいと思ったんだっけ。似てんなぁ。生きてる時点で証拠だし、証拠隠滅するか。生命シャットアウト。イノチスーパーセルフmurder。投げ捨て命(ライフ)、実行。包丁の刃先を1センチほど、喉に刺してみる。血が出る。意外と。血が出たから、床に広がった血の海に右手をつけた後、首から流れる血を左の人差し指で触って、真っ赤な右の手のひらに塗りたくってみる。中では俺とお前の遺伝子が混ざりあっているよ。セックスより生々しくて、エロティックだと思わないか。何かが起こってくれと思っていたのかな。ただ、血が混ざり合っただけでそれ以上なにも起きないということに気づくまで時間がかかったんだ、なぜか。魔法陣のように何かが始まるとでも思ったんだろうか。次は2センチ刺そうかな。2センチ刺すと見せかけて、刃の半分を首に刺し込もうかな。そういうフェイントねフェイント、誰に対して?
まあ死ねばオーライ、任せとけよ。あぁ、ここ、9階だったなあ。


包丁を地面に投げて、包丁の音が止まないうちに走ってベランダに出て、勢いよく飛び降りた。



「ちょっと男子!掃除やって!机運びして!」



懐かしいあの頃に戻りたい。

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