【紀行文】日本オオカミが導いた奥秩父の霊場 「氣守り」の三峯神社
静岡県民からすると埼玉県は東京の北であり、通常であれば一旦東京を経由して埼玉に入り行くルートを想定する。
実は、もう一つ山梨県からアプローチするルートがある。秩父往還といわれた雁坂道を通る道だ。これは山梨県の勝沼から北上し、西沢渓谷などで知られる山梨市三富地区に至り、長い雁坂トンネルを通り、奥秩父に抜けるものであり、一気に埼玉県にアクセスできる。元来、甲府盆地と秩父盆地を結ぶ生活道路だったところだ。
三峯神社のことは、最近「氣守り」を知ったからで、美しいデザインと「氣」の一文字に惹かれ、ぜひいただきたいと思ったからだ。
調べると日本武尊の東征伝説の地であること、眷属信仰が色濃く残りニホンオオカミの目撃地であること、そのほか龍伝説や修験道など、本当に日本宗教史を凝縮したような興味深い神社であることが分かり、さらに来訪への熱が高まった。
静岡を出発し、勝沼ICから山梨市内へ向かう。三富地区で一休みしたところで運転時間は約2時間半。そこから雁坂みちに入り、奥秩父湖方面へ向かう予定だったが、この日は通行止めだったので、奥秩父もみじ湖の滝沢ダムで休憩を入れた。
深山にダム湖が悠々と水を湛え、雲海が山々を渡っていた。その雲海を超えて三峯神社を目指すのである。
三峯神社への道は、いよいよ細くなり、すれ違うのもやっとの道幅の場所もある。それでも交通量が多い。人気の神社なのであろう。
この日は、霧深く雨もぱらつく天気だったので、景色をあまり楽しむことが出来なかったが、霧の中を抜け山奥に分け入っていくので、霊地霊場に向かっていく感が強まる。
休憩も入れて約4時間で三峯神社に着いた。駐車場は全体に霧がかかって見通しにくいが、かなり満車に近い様子だった。
広い境内地 ビジターセンターも注目!
駐車場から階段を上がった場所でまず目に入ったのが、三峰ビジターセンターだった。ここには、この三峰山麓にかかる自然史やジオパークとしての三峰(奥秩父)の紹介があった。様々な野鳥や野草の宝庫のようだ。ビジターセンター内には、数多くのはく製が展示され、ジオラマや野鳥の鳴き声を聞かせてくれる装置があり、いろいろ学ぶことが出来る。
歴史のありそうな休憩所や土産物店を横目に、まずは参拝をと神社に向かう。まもなく特徴的な三つ鳥居が見えてきた。その鳥居の前に鎮座するのはオオカミの狛犬だ。ここではニホンオオカミが大口真神(おおぐちのまかみ)として祀られ、ご眷属信仰もあるため、こうしてオオカミが随所におられる。
参道を進み、左に折れると随神門だ。朱を基調とした鮮やかな彫刻があり、道教寺院的な雰囲気がある。
この三峯神社は、ヤマトタケルの時代、つまり景行天皇の御代に創建され、その後修験道の聖地として、真言宗の寺として栄えてきたようだ。山岳修験道では、神仏混淆が進み、ここも観音院高雲寺として、僧侶が神前奉仕 をしていた時代が続いた。しかし、明治時代の神仏判然令で三峯神社となったようだ。
三峯神社の「三峰」とはどこか。
この日は、あいにくの霧で、周辺の山々は一切見えなかったが、霧が晴れれば美しい山々が拝めただろう。雲取山、白岩山、妙法が岳がこの地から望めることから、三峯神社と名付けられたとあった。
すっくと美しい杉の木が並ぶ中を進むと御神木と拝殿が見えてくる。階段には参拝を待つ多くの参詣者が列をつくっていた。私もその末尾に加わり順番を待った。
すっくと立つ御神木の「氣」をいただく
それにしても素晴らしい御神木だ。
太くまっすぐに立つ御神木が天に向かって聳えている。自然と背筋が伸びるようだ。立て看板には、参拝後、お守りを携えて、ここで深呼吸をし親睦の「氣」を込めて持ち帰るとよいとあった。きっと気持ちよいだろう。
神前へ二礼、二拍、一礼にてお参りをした。
私の修する合氣道の上達を祈り、その他家族のこと、平和への思いなどを祈った。
そのすぐ左手に瑞祥として近年現れた「龍」がいた。こちらにもお参りをする。白狼、黒龍とパワーの強い神様がいる。
今回来訪の目的であった「氣」のお守りはこちら。
この紺(青・黒)のほか、赤、緑、桃色の四色がある。中に入っている護符は同じもので、外の袋の色違いなのだが、私はこの紺色が気に入った。裏面の大口真神のデザインとマッチしており、美しいお守りで気に入っている。この他、特別に祈祷を込めた白いお守りがあったのだが、あまりにも人気がありすぎて、周辺道路に渋滞を引き起こしたことから、現在は配布をしていないとのことだった。
参拝後、三峯神社の境内を散策した記事はこちら。