#11 下位打線を舐めるな!!
お盆明け最初の週末2日目の午後、4年生以下によるリーグ戦の最終戦が行われた。
39チームが4ブロックに分かれて行われているリーグ戦で、K太のチームは9チームのブロックに入っている。
現在の戦績は全8試合中7試合を終えて今のところ全勝。今日の試合は決勝トーナメント進出が決まる大事な試合だ。
K太のチームには昨年度末に3年生以下による都道府県対抗の全国大会に出場した選抜メンバーに入った子が、先日退団した子の他にもう1人いるのだが、今日の相手チームはその選抜メンバーが3人も所属する強豪で、リーグ戦も今のところ5戦全勝と実力を発揮している。
ちなみに、昨年秋に開催された3年生以下の選手のみで構成したチームが集まる地方大会の決勝戦でも対戦しており、その時は接戦の末、1点差でギリギリ勝つことができたのだが、相手にとってはそのリベンジマッチになる。久々にガチンコの勝負が予想される試合だ。
相手の左打者に良いバッターが揃っていることもあり、K太は7番ライトで先発出場。外野の2番手としての期待を感じる起用となった。
いざ、プレイボール!
<1回表>
後攻で始まった初回の守り、相手は選抜メンバーが1〜3番に並ぶ攻撃的なオーダー。
うちは2番手エースが先発。
1番打者に対し2ボール1ストライクのバッティングカウントから、直球を詰まらせて弱い打球がセンター前に飛ぶ。これをセンターが躊躇してポテンヒットにしてしまい、監督から厳しい叱責が入る。負けず嫌いの監督は弱気なプレーに厳しく、それが逆に選手を萎縮させてしまうのがたまに傷だ。
俊足のランナーに連続盗塁を許し、2番打者のレフトへの犠牲フライで先制点を許す。
「だからそういうことになるんだっ!」
監督の言いたいことはよくわかる。
でも、みんなまだ4年生。ここは切り替えていこう。
その後は3番・4番を内野ゴロに打ち取り、最少失点で終えることが出来た。
<1回裏>
得意の攻撃で流れを変えたいところ。
相手投手はやはり選抜メンバーの一人だ。
こちらも選抜メンバーの先頭打者が冷静に四球を選ぶと、すかさず盗塁。2番打者のセーフティバントが見事に決まり、無死1・3塁のチャンスを作る。
3番バッターのところで相手のワイルドピッチの間に1点返してまず同点。
ランナーが3塁まで進み、一気に逆転と行きたいところだったが、次の球を打ち返した打球はショート正面のハーフライナー。これに三塁走者が飛び出してしまい最悪のゲッツーを取られてしまう。監督のイライラも募る。
再び相手に流れが行きそうなところだったが、4番が四球を選び簡単には渡さない。
盗塁を決めて2死二塁とし、5番打者のセカンドフライを相手が取り損ね、逆転に成功した。
さらに攻め込むべく盗塁を試みるも、相手捕手の好送球に阻まれこの回を終える。
やはり強豪チームは多少のミスで大崩れせず、これまでのように簡単に大量得点を取らせてくれる相手ではない。
<2回表>
なかなか無かった緊迫した試合展開で調子の上がりきらないピッチャーは、先頭の5番打者を四球で歩かせてしまう。
盗塁を決められたあと、6番の送りバントの間に二塁走者が一気にホームまで還ってきて同点に追いつかれる。
監督はここで継投に出てエースが登板。四球を1つ許すも、三振と内野ゴロで後続を抑え、その後は無失点でこの回を終える。
<2回裏>
相手チームも2番手に交代。二人目もやはり選抜メンバーだ。
先頭の6番が、初球から積極的にうちに行くも、ショートへの平凡なフライに打ち取られる。
続くは7番K太。簡単には終わりたくない。
「3球で帰って来い!」
「打順下がっていくよ〜!」
相手チームの監督や野手が投手を盛り上げる。
しかし、K太は挑発に乗ることなく、初球の高目を落ち着いて見送り1ボール。
「ちょっと低くく〜!」
「下位打線、どんどん行こうぜー!」
完全に舐められている。確かに去年対戦したときは、うちの下位打線は安牌だった。ましてやK太はその試合に出れてさえいなかった。でも、半年以上バットを振り続けてきた成果を見せる時だ。
続く2球目、ストライクを取りに来た真ん中の直球にタイミングをぴったり合わせ、ジャストミートした鋭い打球はショートの頭上を超えて左中間で弾む。
センターがうまく回り込んで長打にはならなかったが、この試合チーム最初のクリーンヒットがK太のバットから生まれ、相手の野次を掻き消した。
「K太〜、ナイスバッティング!!」
同級生の9番打者がベンチ前で飛び跳ねて喜んでいる。おとなしくなりかけていたベンチにも活気が戻る。
しかし、続く8番打者で確実に送りたいところだったが、バントを2球失敗し、結果セカンドゴロで二塁フォースアウト。
それでも9番が粘って四球を選び1番に繋ぐと、ここで意表を突くダブルスチールのサインが出る。これが見事に成功し、2死2・3塁のチャンス。
1番がサードゴロに打ち取られ得点には至らなかったが、K太の1本で流れが変わったように感じる攻撃だった。
<3回表>
相手は1番から始まる好打順。
先頭打者を内野フライ打ち取るも、エースが2番にデッドボールを与えてしまう。
続く3番に痛烈な打球をレフトに飛ばされるが、先ほどバントを失敗した左翼手が鋭い回転で切れていくライナーに飛びついて捕球するファインプレーが飛び出し、ミスを取り返す。
4番にも同じような打球を打たれ、今度は捕球できずエンタイトルツーベースとされるも、5番をピッチャーゴロに打ち取ってなんとか無失点で切り抜け流れは渡さない。
<3回裏>
2番、左の好打者から始まったこの回。
チーム一の野球センスの持ち主である1番打者がほとんどの打席で出塁するので、盗塁待ちやセーフティバント、スクイズのサインでなかなか自由に打たせてもらえないことが多い2番打者だか、久々に自由に打てる機会を得た。
1ボールからの2球目。「自分だって打たせてもらえれば打てるんだ」という気持ちをバットに込めたような打球が右中間を真っ二つに破り、見事なエンタイトルツーベースとなる。
その後ワイルドピッチの間に三塁まで進み、3番打者がショートゴロに倒れた後、次の4番打者を迎えたところで、相手投手は選抜チームでも投手を勤めていたエースに交代した。
4年生としてはかなりの速球派だが、普段からレギュラーの試合でも4番を務めるうちの主砲にとってはむしろ打ちごろ。
1球見たあとの2球目を振り抜くと、高々と打ち上げた打球がそのままレフトの頭上を超えるツーベースで1点勝ち越し。さらに四球と相手エラーで2点を追加した。
なおも1死1塁でK太に打席が回る。さらに追加点が欲しいところ。
初球のボール球を見送ると、2球目に盗塁のサインが出て1塁走者が見事にスチールを決める。
1ボール1ストライクから、K太にセーフティバントのサインが出る。3塁側にうまく転がすが、相手ピッチャーの好フィールディングで惜しくも1塁でアウト。それでもランナーはしっかり送ってチャンスを広げる。
結局8番が三振に倒れるも、相手にプレッシャーをかけ続け、良い雰囲気で流れは渡さない。
<4回表>
ピッチャーは一番器用な3番手に交代。普段はサード・ショートを守る選抜メンバーだ。
6番から下位打線向かう打線に緩急を上手く使い、四球で一人出塁を許すも危なげなく0点に抑える。
<4回裏>
最終回を前に追加点が欲しいところ。
9番が9球粘って出塁すると、すかさず盗塁を決め、無死2塁。
1番打者がセーフティバントを試み1塁でアウトになる間に、セカンドランナーが一気にホームを狙った。しかし、相手のファーストが素早くホームに好送球し、惜しくもタッチアウトで2死ランナー無し。
それでも2番がまたもライト前ヒットで出塁して流れを渡さず、その後3番が打ち取られるも、良いムードのまま最終回を迎える。
<5回表>
最終回の相手の攻撃は、1番から始まる好打順。
初球を見事に捉えられ、右中間へのツーベースを許す。
それでも、3点差を付けていることもありピッチャーは乱れない。
2番打者がライトにフライを打ち上げるも、K太の守備範囲でワンアウト。
3番打者のところで盗塁狙った2塁走者を捕手の好送球でツーアウト。
さらに3番打者もセカンドフライに打ち取りゲームセット。
結果、5-2で快勝することが出来た。
ここ最近、4年以下の試合は、大抵の相手なら大差で勝ててしまっていだだけに、久々に見応えのある締まった試合となった。
負ければリーグ優勝を逃す可能性も高かった試合で、監督が不機嫌になりかけたのも跳ね除けて勝利を手にしたのは、チームとしても成長してきた証だろう。
その中で、K太もしっかりと役割を果たせるようになってきた。
この後は、他の3つのリーグを勝ち上がってきた相手とのトーナメントで優勝を決めることになる。
目指すはそこでの優勝だ。
お盆前に優勝した大会とは違うレベルのトーナメント戦になるだろうが、みんながいつも通りの実力を発揮できれば、十分に狙える強さはあるように思う。
次週は地方に遠征した後、お盆前に初戦で圧勝した大会の二回戦に再び4年生以下で臨む予定だ。次こそ5年生が出てきたときに、どのような試合が出来るか見ものだ。
大分長くなってしまいましたが、次週の大会にも乞うご期待!
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