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シャトル打ち

「シュパッ!」「シュパッ!」

今日も、息子がシャトルを打つ音が家の中に響き渡る。

仕事から帰宅し夕食を食べ終える頃、小学4年生の息子がシャトル打ちの準備を始める。

床に貼ったマスキングテープのラインの横に100均で買ったマットで作ったホームベースを置き、バドミントン部の姉が貰って来てくれた使い古しのシャトルの入った箱を持ってくる。

お気に入りのバットをケースから取り出すと、準備した模擬バッターボックスに立ち、好きなプロ野球選手のルーティン動作を一通り真似してから

「いいよー」

と声を掛けてくる。

シャトル打ちとは、野球ボールの代わりにバドミントンの羽根を打つというバッティング練習の一つ。シャトルは野球ボールよりずっと軽く、打ってもすぐ失速するので、打つ方向きさえ気をつければ家の中でもできる練習だ。

シャトルを1羽ずつストライクゾーンに向かって投げてあげると、息子はタイミングを合わせてライナー性の打球を居間のカーテンに向かって打ち込む。

始めたばかりの頃は空振りする事も多かったが、最近はしっかりミートした強い打球が増えて来た。

「今のいいね」
「今のはちょっと詰まったね」

直してあげたいところは色々あるが、毎日振って筋力を鍛えること、そして芯を捉える感覚を磨くことの方が今は大切だと思うので、あまり細かいことは言わないようにしている。

同じ学年のチームメートには小さい頃から始めている子が多く、都道府県選抜に選ばれて準優勝した子もいる強豪チームだ。

去年から野球を始めた息子はクラスでも前から3番目のチビだが、秋に初めてセカンドの頭をギリギリ越えるヒットを打つことが出来た。その後、選抜準優勝の子は家で毎日150回はバットを振っていると知り、もっと打てるようになりたいという気持ちが芽生えた時にシャトル打ちを始め、既に半年以上続いている。

プロ野球選手になりたいとか、甲子園に行きたいとか、そんな大それた夢を持っているわけではない。ただ、たまたま近くにあったチームに入り、野球の上手な友達と出会った。その子達と一緒に楽しく野球が出来るようになりたい。ただそれだけのために、息子は今日もシャトルを打っている。それで十分だ。

でもその一振り一振りが、いつしか揺るぎない自信に変わっていくことだろう。今の自分にできることを一生懸命頑張ること。それが、この先どんな道に進んだとしても、未来を切り拓くための糧になるのだから。

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