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#15 「野球はツーアウトから」

「野球はツーアウトから」
とはよく言うけれど、まさにそれを絵に描いたような試合だった。


5年生以下による新人戦に4年生以下で臨んだこの日の2試合目、遠方よりこの試合のために遠征してきたその地域No.1の強豪チームだ。

去年3年生以下の大会の決勝戦で当たり勝利した相手ではあるのだけれど、この日はそのチームの5年生との対戦だ。メンバーは体も大きく、試合前の練習を見ても普通に上手い。これまで4年生以下で対戦してきたチームとは明らかに違う相手だった。


試合は相手チームの先攻で始まった。
K太は7番レフトでスタメン出場だ。

【1回表】
4年生エースが登板。
先頭打者を2-2と追い込んでから、痛烈なライナーがレフトのK太を襲う。
いきなり来たかと思ったけれど、K太は周り(私)の心配をよそに落ち着いて正面に入ってキャッチ。打球の強さに押されてグローブが負けそうになっていたけれど、しっかりアウトにした。
2番はサードゴロ、3番はショートライナーで三者凡退に抑えたものの、いずれも強い打球が正面を突いただけという感じで、強さを見せつけられるような攻撃だった。

【1回裏】
先頭打者がお返しとばかりにジャストミートしてセンターに飛ばすも、ややピッチャーの球威に押されたのか伸びが足りずセンターフライでワンアウト。
その後は2者連続三振に取られて三者凡退。うちの上位打線が簡単に打ち取られて終わるのは、4年生同士の対戦ではなかなか無かった展開だ。

【2回表】
この回先頭の4番打者にセンターへのクリーンヒットを許し、パスボールと送りバントで三塁まで進まれ、さらにワイルドピッチで先制点を献上。いつもうちが得意とするような野球を相手にやられる。
その後も四球からの盗塁とワイルドピッチで再び三塁まで進まれたが、なんとか三振とピッチャーゴロで切り抜ける。

【2回裏】
うちも4番が四球を選んで出塁。
ここから反撃と行きたいところだったが、暑さのせいか5番がふくらはぎに違和感を訴えて戦線離脱。
K太とポジションを争う一人が代打で出場すると、1・2塁間を破るヒットでつなぎ、6番もヒットで続いて同点に追いつく。
送球間に進塁して、無死2・3塁のチャンスでK太に打順が回る。
いつもならスクイズやセーフティスクイズの場面だが、代打で出た3塁走者は走塁が大の苦手。バントをしてもホームで憤死する可能性が高い。
打てのサインで逆転打を狙うも、サードゴロに倒れ、三塁走者がホームに突っ込んで憤死。後続も絶たれてこの回は同点止まり。

【3回表】
先頭を四球で歩かせ、盗塁と内野安打で1死2・3塁のピンチを招くも、交代した2番手投手が踏ん張り無失点で凌ぐ。

【3回裏】
1番から始まる好打順も、ショートフライ
とピッチャーゴロ二つで三者凡退。

【4回表】
この回も先頭を死球で出塁を許し、1死2・3塁のピンチを招くも、捕手へのファウルフライとピッチャーライナーで、この回も無失点で切り抜ける。

【4回裏】
先頭の4番打者に、左中間への見事なホームランが飛び出し、1点を勝ち越し!
しかし後続は倒れて1点止まり。
緊迫したゲームが続く。

【5回表】
相手の1番から始まる好打順も、3番打者に四球を許しただけで無安打に抑える。
あと1回抑えれば勝利だ。

【5回裏】
追加点が欲しいところで、2死からツーベースと死球でチャンスを作るも、3番が三振に打ち取られてダメ押しならず。

【6回表】
最終回の守り。
サードゴロとファースゴロで簡単に2死を奪う。あと1人で勝利が見えてきた。

続く7番の打球がショートに転がり、確実に捕球して1塁に送球。

1塁手が捕球してゲームセットに思えた瞬間、ボールがグラブからこぼれ落ちた。
判定はセーフ。

次は8番打者。
下位打線を確実に抑えれは大丈夫。
しかし、1ボールからの2球目をセンター前にはじき返される。
途中からセンターに移っていたK太は2バウンドでキャッチすると、すかさずセカンドでフォースアウトを狙ったが、1塁ランナーが2塁に滑り込み惜しくもセーフ。2死1・2塁となる。

まだラストバッターを抑えれば勝ちだ。
しかし、ワイルドピッチで2・3塁としてしまい、もう一度ワイルドピッチで3塁走者が返って同点。さらに2-2からの5球目をライトに弾き返され逆転を許してしまった。

なおも2死2塁のピンチで打順は1番。押せ押せの展開で初球をミートした打球が左中間に飛ぶ。
ここに走り込んできたK太がランニングキャッチを成功させて、負の連鎖を断ち切る。
なんとか2失点で抑え裏の攻撃に望みを繋いだ。

【6回裏】
望みを繋いだものの、頼みの4番が三振に打ち取られると、続く途中出場の5番もピッチャーゴロに打ち取られて簡単にツーアウト。

しかし相手もそうであったように、野球はツーアウトから。まだ諦めるところではない。
6番が死球で出塁しK太に打席が回る。

初球のアウトコースの際どい球を見送り1ストライク。
2球目の高めボールを見極めカウント1-1。
3球目、甘く入ってきた高めの球を振り抜くと、ボールの上っ面に当たりサード前へのボテボテのゴロ。
これがなんとも絶妙なところに転がり、ピッチャーが取りに行くも取れず、サードがカバーするも投げようとした時にはK太は1塁に到達していた。内野安打で2死1・2塁。
まだ試合はわからない。

次の打者は、これまた途中出場の2年生。
うちのチームには4年生が多い代わりに3年生がいない。一生懸命頑張って練習についてきてくれているが、5年生が相手ではなかなか厳しい。
しかし、背の小ささが幸いして相手投手は狭いストライクゾーンに投げ切ることが出来ず四球で繋いだ。

2死満塁となり、逆転サヨナラのチャンスで9番が打席に入る。
9番の子は下位打線の中では1番に繋ぐ役割で一番センスのある子が置かれている。上位打線程ではないにしても期待は持てる。なんとか1番に回してくれれば勝利が見える。

ストライク

ボール

ファウル

ボール

ファウル

ボール

粘ってカウント2-3からの7球目。

外角低めの際どい球を見送る。

「ストーライクッ!!」


無情にも審判の右手が上がりゲームセット。
2対3で、今年4年生以下で戦った試合では初の黒星となった。


この試合、去年から主力が1人退団している上に、いつもの5番が負傷交代し、普段8番を打つ子も不調で途中から2年生に交代するなど、メンバー的には去年戦った時よりもかなり落ちている。そして相手は去年戦った今の4年生よりも1学年上の世代。

正直ボロ負けしてもおかしくない試合だったのだけど、これだけの好ゲームに出来たのはむしろ誇らしい事だと思う。

それでも、最後に見逃し三振に倒れた子を含め、悔し涙を流す子が何人もいた。

その悔しいという気持ちが、必ずや強くなるための原動力となる事だろう。

K太のヒットのことを追うつもりで書き始めたけれど、そんな君たちの成長に期待しながら、これからも書き綴っていきたいと思う。

最後までご覧いただきありがとうございました!「スキ」をいただけると、今後の執筆活動の励みになります(^o^)/