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雪を守るために(for protect snow)

10年以上スキーをしてきた経験。雪山の現状を知り、気候変動への解決に動いてきた数年。状況は刻一刻と変わりつつも一向に良くなる気配は見せない。

スキーはとことん追求してきた。スタートからゴールまで決められた雪上のコースをただ誰よりも早く滑れば勝ち。これほどまでにシンプルで、しかしそこに秘められた技術や駆け引きの奥深さに痺れた。

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時速70~80kmも出る世界で、1分間滑る。ゴールしたらコンマさなんてことはザラにある。それで1位と2位を分けたり、決勝への進出が決まってしまったり…

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中高時代はひたすらスキーに向き合ってきた。高校時代はいわゆる進学校に進んだので勉強を妥協することは許されなかった。
雪上に立てる時間は他の選手の半分以下。今まで相手にしていなかった選手がぐんぐんと成長していくのを横目に、焦りといらだちの日々。

一旦焦ると勉強もスキーも手につかなくなる。一つ一つが繊細でもろく、今にも切れそうな糸がプレッシャーという大きな積み荷をなんとか支えている日々だった。

それでも真摯に向き合い続けた日々は裏切らなかった。中学から幾度となく全国で活躍するチャンスを逃してきた。これで最後だと決めて望んだ高校選抜で2位になれた。全国で2位という称号を得ることができた。最後の大会、今までの努力が報われた。不思議と涙は出なかった、きっと結果を出せると信じ続けたからだと思う。
一番うれしかったのは一緒に頑張ってきた仲間が引退を盛大に祝ってくれたことだった。そうやってかけがえのない高校生活を送ってきた。

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そうやってひたすらにスキーと雪と向かいあってきたからこそ分かる雪山の変化。毎年のように聞く雪不足というニュース。早すぎる雪解けの始まり。季節外れの雨。
雪の感触、風の冷たさ、気温、湿度まで繊細に感じてしまうぼくらにとって雪山の異変は、確かにはっきりとそこに現れる。

自然は雄弁に語る。音楽が言葉を超えるときがあるように、大地はその悲痛な叫びを隠し切れないでいる。

目を背けることは容易いが、その現実を受け入れなければ変われないことを理解した。
運よく多少頭が切れたので、この異変はどうやら気候変動による影響だと理解した。そして、それを解決するにはエネルギーというものを変えないといけないということも同時に理解した。

自分に何かできないかと思い、大学でエネルギーについてを学ぶことを決意した。高校3年の春である。
それからというものは必死に勉強した。一浪したものの無事に大学に入学することができた。

大学に入学してからはとにかく活動的になった。どうやったらエネルギー問題そして気候変動を解決できるか考え取り組んだ。

海外に行って視察や情報交換、インターンや調査、研究あらゆる方面から気候変動、エネルギー問題に向き合った。
今考えると異常なまでの行動力だったと思う。

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理解できた現実は決して生易しいものではなかった。権力、利権、感情、正義あらゆるものが複雑に交わった世界がそこにはあった。理想と現実がぶつかりあい、これでもかと欲にまみれた現実が正義という理想との中で葛藤し渦巻く。
そこに正しさというものがないということをつくづく知った。

何が正しくて、何が正義なのか訳も分からなくなったころに、ぼくの心は語りかける「雪山を見ろ」と。
雪山はシンプルにその現実を語る。気候変動が生み出す影響、そしてそれが生み出した現状を。

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結局ぼくらはぼくらにできることをやるしかない。どんなに小さくても、世界に与える影響が皆無だったとしても、ぼくらが持つ影響下の中で最善を尽くすしかない。
「塵も積もれば山となる」とはよく言ったもんで、小さな積み重ねでしか物事を変えることができない。
でも、ぼくたちはそうやって進歩してきた生き物なのだ。抱える問題がどれだけ大きくても、小さいところから変えていくしかない。

雪山が語りかけてきた現実を胸にぼくは一人の雪を愛するアスリートとして気候変動の問題に立ち向かっていくのである。

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(NHKとの取材を終えて)


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