本厚木のプライベートサウナで過ごす泡沫の時間
プライベートサウナ、ここ数年で聞くようになった新単語の一つだと思う。
サウナのブームはかげりを見せず、休日ともなれば、どこの温浴施設も多くの客で溢れかえる。隣の客の意味不明な独り言や、掛け水もせずに水風呂に入るマナー違反の若者を見て、逆にストレスを抱えることも少なくない。
だからと言って、自宅にサウナを作ってしまう夢の話は、賃上げままならぬサラリーマンにとっては現実とかけ離れている。
サウナに人生の潤いを求める人にとって、プライベートサウナ「TENNIMO」本厚木は、泡沫の夢を見させてくれる空間かもしれない。
小田急本厚木駅北口から徒歩3分。2023年9月にオープンしたばかりのこの施設、まず特筆すべきなのは、内外装の美しさ、である。施工直後の真新しさはもちろんのこと、施設全体が落ち着いたグレートーンで統一されている。
入ってまずは支払い。新規利用プランで1時間¥4500→¥3800。この金額をどう捉えるかで、プライベートサウナの価値が変わってくる。
室内に通されると、中から鍵を掛けるスタイルで、完全な個室。時間内は、誰とも顔を合わせることもない。決して広い空間ではないが、1人でサウナを楽しむだけであれば、十分な広さだ。
サウナ室は、間接照明が美しい落ち着いた空間だ。先ほど選んだアロマ水が用意されている。
室内温度は95℃程度。ただ、実際に座るベンチは温度計より1メートル近く下にあるため、体感はもっと低く感じられる。
設定は106℃。
このサウナ室の一番の特徴は、何と言ってもこの広さ。誰にも気兼ねすることなく、寝転がることができる。
寝転がると、「サウナに入ると頭だけ熱くなる問題」がなくなり、15分程度入っていられる。全くのぼせることなく、気持ちよく発汗できる。
ストーブはフィンランドHARVIAの電気ストーブ。サウナストーンを最大25キロ積めるタイプ。ストーンに埋め込まれて、サウナの妖精トントゥを発見した!
誰にも気を使うことなく、自分好みのロウリュで湿度設定できる。天井に向けてバンバンタオルを扇いでも誰にも文句を言われない。
このプライベートサウナ、今回私が利用した1人用のスタンダードルームには、水風呂が付いていない。水風呂付きは、VIPルーム以上となる。お値段はこちらも新規利用プランで90分¥12000→¥10800。こちらは2人での利用も可。
水風呂のないサウナなんて、私も、そう思っていたんです、最初は。ごめんなさい。とりあえず先に。
写真のシャワーは、天井から伸びる冷水ヘッドシャワーと、左手の温度調節できる(お湯も出る)シャワーの2種類が備え付けられている。
身体中から湯気の上がる体を、冷水ヘッドシャワーで一気に流した。水温は15℃。常にフレッシュな水が頭上から降り注ぎ、その冷たさは痛みを覚えるほどだ。水風呂の15℃とは冷たさが全く異なる。ざぶんと浸かることはできないが、体を急速冷却させるには、実はこの方が最適解なのかも知れない。
水も、厚木特有の柔らかさを含んでいる。
入った時は25℃に設定されていたが、僕は22℃まで室温を下げた。これが正解。
室内には、優しく小鳥の声が響くBGMが控えめに流れている。心臓より高く足の上がるチェアに横たわる。ここでも、誰にも遠慮はいらない。もちろん、チェア待ちの時間も皆無。人の視線を気にすることもない。堂々と大股開きで、半目状態の情けない顔でボーッとできる。
ぜいたくな時間だ。自分のだけの空間で、自分と向き合うだけの時間。
この時間を、買う。そう思えば、決して高くはない。見苦しい同性の裸や陰部を目にすることなく過ごすことが、こんなにもストレスレスなのかと気づいたことも、今回の新発見だった。
1時間は、本当に一瞬で過ぎ去ってしまった。その短さは、泡沫の時間の証明だ。儚い。だからこそ、僕らはそれを求め続けるのかも知れない。
最後は、シャワーを浴びて部屋を後にする。
僕の様にサウナ入浴に特化した髪型(シェイブドヘッド)の人間でも、1時間は短いと感じた。髪を乾かしたり、女性であればメイクを整えたり。そういった人には90分コースをオススメする。新規利用プランで¥5200→¥4200。
決して、頻繁に利用できる場所ではない。
でも、一度知ってしまったこのぜいたくを、発作の様に求めてしまう自分を抑えることができるのか、僕には、自信がない。
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