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28年ぶりの邂逅

先週末、静岡市で、飲んだ。
今回の相手は、高校1年生の時の同級生だ。
1人は、警察官のT。もう1人は、弁護士K。

僕を含めたこの3人、クラスが一緒だったのは1年の時だけだ。卒業してから、Kと会うのは初めてのこと。何と、28年ぶり!

Tとは、大学も同じだったこともあり、卒業後も交流があった。昨年、oasisのLive映画にも一緒に行き、周りにバレないレベルでシンガロングした。上映前にビールやらワインやらをがぶ飲みし、泥酔状態で映画館に入った。実は、映画の内容はほとんど覚えていない。oasisを聞くのに、素面ではアーティストに失礼だ。正しい行為。

なぜ、今更Kを含めたプチ同窓会が開催されたのか。
詳細は明記できないが、Tが検挙した犯人を、たまたまKが弁護することになり、偶然2人が再開したそうだ。その後、何度か顔を合わせるうち、今回の企画が持ち上がり、比較的フットワークの軽い僕が呼ばれた構図らしい。静岡市がその舞台に選ばれたのは、Kが構える法律事務所があるからだ。

「せーんせ!」
静岡の繁華街、両替町辺りを歩けば、Kは呼び込みやら女の子やらに、やたらと声を掛けられる。毎晩の如く繁華街に繰り出し、朝まで飲み続けることも茶飯事だと言う。卒業してからの半生を、お互い素早く回収したが、Kがかなり苦労して現在にいたることを知った。
明らかに金を掛けているとわかる貫禄ある腹回りも、きっと多くのストレスを抱えた代償だったのだろう。まるでその腹に、欲望とストレスの全てを詰め込んで歩いている様だった。
しかし、Kは派手に遊び回っているだけでなく、随分と夜の住人たちに慕われているのがわかる。どうやら、揉め事や訴訟、刑事事件に至るまで、Kは彼ら彼女らを、厄介ごとから法的に守る仕事も引き受けているらしい。ある店ではかなり若い男性店員が「Kさんには本当にお世話になっています。一度独房に面会に来てくれた時は、本当に嬉しくて」と本気で感謝を述べているのを聞いて、なぜかこちらまで少し照れてしまった。

Tが話した興味深い話がある。それは、逮捕状もガサ入れ状も、起訴状も文章力が必要だと言うことだ。送り相手は、もちろん裁判官。
わかりやすく、相手を納得させる文章を書けないと、裁判官からの許可は降りない。「凶悪犯を取り押さえる機会を失うことにもなりかねないし、逆に無実の人を有罪に仕立て上げてしまうかもしれない。捜査は細心の注意で進めるけど、それら集大成は、結局、文章で書くんだよ」
本当に物理的な意味で、人の人生を左右してしまう文章を警察官が書いている。想像しなかったアナログなこの手法、文章を書く力の大切さを再確認させられた。

朝まで飲んだのは何年ぶりだろう。最後の店を出ると、朝7時を過ぎていた。
マル暴の刑事と、夜遊び弁護士と共に、朝日に目を細める。28年ぶり。それはもはや他人に近い。
でも、決してそうならない「同じクラス、同級生」という摩訶不思議な縁で成り立つ間柄が、青臭い夜を演出してくれた。
楽しかったよ。
またな、せんせ。少し痩せろよ!

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