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METOSの薪ストーブと苗場の地下水掛け流し。フジロッカーを整えたサウナイベントをレポート。

フジロックフェスティバルとは


夏を中心に、日本各地で開催される、野外フェス。その中でも、圧倒的な規模と、フェス文化の草分け的な存在として、今なお多くの支持を得るイベントが、フジロックフェスティバルだ。毎年7月下旬、新潟県湯沢町、苗場スキー場で開催される。木曜日の前夜祭からスタートし、日曜日深夜(月曜日早朝5時!)まで、述べ10万人以上の観客を動員する(2023年は114000人)。その参加者の多くは、自ら持参したテントでのキャンプ泊が中心となる。1997年に産声を挙げたこのイベント、今年で26回目(唯一、2020年のみコロナの影響で開催中止)となり、毎年通い続けるリピーターも多い。筆者も、2004年以降、毎年参加している。

40000人を収容するメインステージ

フジロックのお風呂問題


キャンプ泊の参加者にとって、毎年話題に挙がるのがお風呂問題だ。キャンプサイトには、仮設の簡易シャワーが設置され、隣接する苗場プリンスホテルの「苗場温泉」を利用することもできる。しかし、だ。
大混雑。当たり前である。特に、ヘッドライナーの公演が終了した23時頃からの行列は顕著で、苗場温泉は約2時間半待ち!簡易シャワーであっても1時間待ちは当たり前の状態となる。当然、朝も混む。皆、利用したい時間は同じなのだ。
そんな状況の中、サウナに入りたいなどと、贅沢は敵だ、と袋叩きに遭いかねない発言はできなかった。都会を離れ、大自然の中、不自由を楽しむのがフジロックの醍醐味のひとつでもある。
しかし、だ。
サウナを生活の一部として取り入れている人たちにとって、それは重要な体調管理のツールとして成り立っていることも事実だ。特に、疲労が溜まっている時にサウナは絶大な効果を発揮する。

隣との間隔もほとんどなくテントが張られる

フジロックでは、1日に平均して3万歩以上歩くと言われている。要するに、20キロ以上歩いているのだ。完全に舗装された道だけでなく、砂利道やぬかるみを、ひたすら歩いているのである。それも、ビールを飲みながら。それまでの炎天下が、ゴロッという音が聞こえた瞬間、雨に変わる。変わりやすい山の天気も参加者の体力を削っていく。1日が終わり、想像を絶する疲労感のもと、テントに戻り、泥の様に眠る。それでも朝5時までライブは続き、山々にこだまする重低音は、深い眠りを妨げる。ようやく音が止み、静寂が訪れる頃にはもう、夏の太陽がはっきりと放熱を始め、テントの中を灼熱化させる。疲労をケアできない状態で、参加者たちは過酷な2日目に挑んでいく。
そんな状況下にあって、もし、サウナがあったら、どんなに救われるだろうか。

フジロックにサウナがあれば
そう考える参加者は多い

潤沢な予算で、キャンプ泊から、サウナ付きペンションに切り替えることも、確かにできる。しかし、苗場プリンスホテルの宿泊権と同様に、人気のあるペンションの宿泊権も、毎年争奪戦が勃発する。金さえ払えば解決する問題ではないのが難しいところだ。
そこで私は、毎年、ダメ元でサウナ付きペンションに、日帰り入浴ができないか、事前にメールで確認していた。また、期間中も、それぞれに電話し、サウナを利用したい旨を伝えてきた。しかし、だ。気持ちよく全て断られ続けて来た。
唯一の抜け道として、苗場プリンスホテル内の大浴場が時間限定で解放されており、そこにサウナが併設されていた!しかし、当然そこも大混雑。水風呂がないうえに、シャワーは常に裸の男が順番待ちの行列をなしている。やっと見つけたサウナも、入ってみても温湿度ともに不満、出ても水を浴びることもできない生殺しの刑に処されてしまう。これでは、逆にストレスが増してしまう。もはや、四面楚歌、八方塞がり。

ついに、フジロックでサウナに入れる?


そんな中、ついに、一筋の光が差し込んだ。
毎年、何軒かのペンションに事前に送っているメールに、返信があったのだ。
「このたびは、Heidi Guest Houseにお問合せをいただき誠にありがとうございます。
フジロック期間中は、Heidi Guest House駐車場にて、アウトドアサウナの日帰り利用イベントを実施いたします。
詳細はこれから発表予定となっております。
詳細が決まり次第、当館SNSアカウント(Instagram/Twitter)にて発信をさせていただきますので、
ぜひご利用のご検討をいただけましたら幸いです」
きた、きた、きた、きたー!
どんなヘッドライナー発表よりも、テンションが上がったこの返信メール!そこから数日、ゲストハウスハイジのTwitterをチェックしていると、嬉しい企画が発表された。

今年、どのアーティスト発表より興奮した
(すいません)

なんと、国内でサウナストーブシェアの半数以上を占めるMETOS社と一緒になって、ペンションの駐車場にSAUNA PARKを展開するというもの。1時間ごとの予約制となっており、午前中と夜のみ、開催される。テントサウナやトレーラーサウナを引き連れて、さながら小規模のサウナフェスだ。予約をしない選択肢は、ない。私の友人にもこの情報を共有したところ、皆すぐに予約したそうだ。今年のフジロック参加を迷っていた1人の友人は、このイベントが最終的な決定打となって、フジロック参加を決めたそうだ。
サウナ好きにとって、フジロックに欠けていたラストピースが、ついにはまった。

ハイジが誇る井戸水掛け流しの露天水風呂

SAUNA PARK体験レポート


フジロック初日。昨夜の前夜祭のハイボールの余韻が、まだ少し残っている。キャンプサイトの入り口から、徒歩10分かからない程度だろうか。ハイジゲストハウスは、フジロック会場を出てすぐ、国道17号線沿いにある。ペンション前には、タイトルのアイキャッチ画像の旗がたなびき、期待を膨らまさせる。私は、朝8時からの回を予約していた。

普段はゲストハウスとして営業している

会場に着くと、まずはペンション内で受付と、着替え、準備だ。受付では、バスタオル一枚と、アイススラリーを一つ、頂くことができる。

玄関入るとすぐに大きな暖炉が出迎えてくれる

ペンションの中は、木の梁がアクセントとなる欧風な作り。更衣室として用意された部屋で水着に着替える。貴重品だけ小さなロッカーに預け、いざ。

連結型テントサウナ
それぞれ別の趣きに設定されていた

まずはテントサウナから


今回のサウナイベント、テントサウナが2基、トレーラーサウナも2台、ハイジの名高い井戸水掛け流しの仮説水風呂が1槽、設けられていた。会場内いたるところに、整い椅子も設置してされている。客は、私を含めて7名程度、か。(ちなみに、友人たちと揃って予約したのは最終日)
スタッフの案内によると、テントサウナの方が温度が低い、とのことだったので、まずはそちらから。

温度は低いがロウリュでしっかりと発汗できる

中には薪ストーブが一台。温度計は60℃付近を示していた。じんわりとした熱がテント内に充満している。3日間のスタートにふさわしい優しい熱だ。ラドルでストーブ上のストーンに、ゆっくりと回しかけると、少しだけ油っぽく、スモークを凝縮した香りが広がった。タールのアロマ、だそうだ。サウナの本場フィンランドでは、特に男性に人気の香りで、アカマツから精製され、伝統的な万能薬として親しまれているそうだ。私も、好きな香りだ。確かに、どこか男っぽく、古い船内を連想させた。ゆっくりと、だが、多くの汗が流れ出る。遮光式テントによって、内部は薄暗く、薪がはぜる音だけが心地よく響く。爆音を浴びすぎた最終日、きっとこのテントサウナは、全てが染み入るだろう、そう思った。

井戸水を掛け流す仮設水風呂
キンキンに冷えている

苗場の天然地下水に包まれる


外に出ると、自分の肩や頭、あらゆるところから湯気が出ていることがわかる。最短距離で水風呂を目指す。それが今の私に課せられた唯一の使命だ。
桶で全身に一気に掛け水し、その水に潜り込んだ。
気持ちいいー!体感的に12℃程度か。人工的な消毒臭は、もちろん皆無。そのままごくごく飲み干したい衝動に駆られる。美しい水だ。
ここの水風呂は、地下天然水を井戸で汲み上げ、年中掛け流し。仮説プールの奥に見える露天風呂が、このペンションの名物、天然水掛け流しの露天水風呂である。もちろん、外気が氷点下となる冬場でも、それは変わらない。想像してみてほしい。日本でも有数のスキーリゾート苗場で、冬、マイナス10℃の外気温の中、この露天水風呂に飛び込むシチュエーションを。
「さいこーではないか」そう思ったサウナジャンキーの方々の、羨望の声が聞こえてきそうだ。ハイジゲストハウスには、METOS社が導入したストーブによるサウナがあり、通年を通してサウナファンが訪れる。今回のコラボ企画も、そう言った繋がりから生まれたものだそうだ。

ここから見上げた苗場の空の青さが忘れられない

1分も入れば、足先が冷たさのあまり痺れてしまう。その痺れの余韻を楽しむべく、用意された数々のインフィニティチェアに腰掛ける。夏の健全な朝日が、体から全ての毒素を浄化させていく。

室内95℃
室内110℃!
それぞれ別のアロマ水が用意されている

さて、スタッフの方々が口を揃えて「熱い」と評するトレーラーサウナは2台。特に白い箱は100℃を超える温度設定。早速入ってみる。

10分砂時計も木製

トレーラーサウナの熱さを体験


熱い。中の温度計は110℃を示していた。
先ほどのテントサウナより密閉性が高いため、外気の音はさらにシャットアウトされる。ラドル一杯のロウリュをおこなうと、ストーンたちはそれを待ち侘びていたかの如く、一斉に喜びの声を挙げる。蒸気は低い天井から一気に下降し、私の全身に降りかかった。その数秒後、私はトレーラーサウナを飛び出した。
初めての体験である。自分がおこなったたった一杯のロウリュが、自ら退散するほどの蒸気となって襲いかかって来るとは。
「ホント熱いですよね。ロウリュはラドルに少量づつで様子を見ながらお願いします」笑いながらスタッフにアドバイスされた。

トレーラーサウナは詰め込めば12人ほど入れる


気を取り直して赤い方のトレーラーサウナへ。こちらもしっかりと熱い。温度計は95℃を指している。先ほどの凶悪な熱さに比べたら、マイルドである。
今度は注意深く、ゆっくりと様子を見ながらロウリュをおこなった。深い森の香りのアロマに包まれる。ストーンの発する歌声も、心なしか優しい。
熱いが、その熱が柔らかい。これが薪ストーブによる効果か。体の表面だけでなく、芯から温めてくれる。その熱は、今日から始まる過酷な祝祭を楽しむための、大いなるエネルギーとして体を満たしてくれる様だ。やはり、サウナがあれば、フジロックはまだまだ、もっともっと、楽しくなれる。

給水はしっかりと

サウナ上がり、すぐにビールに走りたくなるが、設置された水までも、丸く、優しく体に染み込んだ。

夏場でも溶けにくくできているそうだ

「JYMY(ユミュ)」で内からクールダウン


本場フィンランドでは、サウナ上がりにアイスクリームを食べる習慣があるそうで、こちらも本国から輸入されたもの。「ユミュ」と読むらしい。オーガニックの原料のみで作られた体に優しいアイスだ。フィンランド航空の機内食にも採用される実力派。
無添加とは思えぬほど、濃厚。ブルーベリーの酸味が心地よく感じられる。味はほかに、バニラとストロベリーがある。

大磯ロングビーチでのコラボ企画

スタッフに聞くと、このハイジゲストハウスとMETOSのコラボ、実はここ苗場より一足早く、大磯ロングビーチにて昨年から「Sauna Park」として活動しているそうだ。もちろん、今年の夏も開催中。サウナ後の水風呂がプールというスタイル。

METOSスタッフの皆様
朝から暑い中、お疲れ様でした
皆気さくで優しく、なんでも答えてくれ、感謝しています
ありがとうございました

毎年開催希望!


私は何度も何度も「必ず、これから毎年開催してください」とスタッフ一人一人にお願いした。できれば、フジロックの会場内にて、開催してほしい。(お風呂の大渋滞問題緩和に、少しでもつながると思う)
自然と一体となって楽しむフジロックフェスティバルだからこそ、電気ではなく薪ストーブにこだわった熱源と、地元の地下水の水風呂に大きな意味がプラスされる。

フェスの楽しみの一つに、全く知らないアーティストのライブに、ふと足を止め聞き入ってしまうことがよくある。そこからそのアーティストのことを調べ、気づいたらファンになっていたり。
このスタイルのサウナも、同様の効果が期待できるのではないだろうか。サウナと水風呂を「熱いだけ、冷たいだけ」と敬遠して来た層を「お、楽しそうだな」と別の入り口から引き込むことで、サウナ人口の裾野を広げていく。

開催当初は、まだその存在を懐疑的に捉えられていたフェスだったが、気づけば日本はフェス大国と呼ばれるまでになった。夏を、代表する文化の一つだ。
サウナも、このブームを抜けた後、芯の通った文化の一つとして、この国に根付いていることを、強く願う。

さーて、思い切り遊ぶぞ!
大人が真剣になって遊べる場所、フジロック。
サウナも加わって、今年はさらにディープな夏になりそうだ。

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