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【ショートエッセイ】松本裁判~匿名・仮名の人間を使った「週刊誌スキャンダル商売」はこれからも安泰なのか?

以前書いた「【ショートエッセイ】松本裁判~「A子」「B子」って誰なんだ?」という記事の追記として、書き始めたのだが、いろいろ浮かんできて改めて別の記事として書くことにしたww

 報道によると、賠償請求金額は5億5000万円で文春の追加記事がでれば、さらに加算される可能性があるとのこと。事実関係の確認のため、告発している「A子」「B子」に証言させるかもしれないらしい。いずれにせよ、告発している人間が姿も見せないまま終わらせたら、確かに今後も週刊誌メディアはなんでもできてしまうことになる。

 今後の展開が見もの。まあ「A子」「B子」も一応証言台に立つといっているのだから、もし実在するならしっかり、証言してもらったらいいと思う。

 すくなくとも「A子」「B子」が実在する人物なのだということは、第三者が確認して法廷の場で明確にすべきだろう。週刊誌の常套手段として、「ある事情通」とか「業界関係者」という言い方で、コメントを入れて真実相当性を強調する方法がある。「ある事情通」とか「業界関係者」の存在を証明できればいいが、できない場合は週刊誌も苦しくなる。

 最近の例だと、週刊朝日による橋下徹特集記事問題がある。著名なノンフィクションライターが書いた記事だが、この記事の中で、橋下の父親が反社会的な行為をしていたという匿名の人物による証言が書かれていた。たぶん、橋下一家が暮らしていた大阪の地元に長年住んでいる人物という書き方だったと思うが、匿名だった。

 橋下は、これについて、「いったいこんな証言をするのは誰なんだ。名前を出せよ。実在しているかもわからない人間のコメントで、家族の名誉が深く傷つけられていいはずがない」というような発言をしていたと思う。まったくの正論だ。

 この匿名の人物の証言は、橋下に対するイメージをかなり棄損するものになる証言だった。橋下自身だけでなく、彼の子供や妻にもダメージが大きい。そんな重大な発言を匿名の人物の発言として掲載して、裁判で「記事は全体として真実相当性がある」なんていわれたら、書かれた側はたまったものではない。

 取材源の秘匿を盾にすれば、どんなことでも書けるというのはおかしい。被害を受けた側が異議申し立てをすれば、その取材源の調査をしかるべき機関がすればいいのではないか。記事については自信をもっているというならw

 この橋下の発言がきっかけかどうかはわからないが、最終的には週刊朝日側が橋下に謝罪をすることになった。その後の裁判で、和解が成立して橋下に対して賠償もされている。もちろんこの時、週刊朝日側は、その証言者を表に出すこともなく、橋下に謝罪をした。

 匿名、仮名の人物の「証言」で記事内容の中心となる部分が補足され、それが、さも真実であるかのように世間から言われるのは、個人にとっては相当きつい。

 報道では、今後の裁判では、文春側が「A子」「B子」の出廷を要求される可能性もあるとしている。しかし厳しく松本側から追及されることは必至なので、文春側は「A子」「B子」を証人として呼ぶことはないだろう、と推測されている。

 しかし「A子」「B子」の発言は、記事の核心部分だ。中心的な人物は何も言わず、そのまま記事は事実だという形で決着するはずもない。

 この裁判をきっかけとして、実在するかどうかもわからない匿名の人物を取材源の秘匿を盾にして守りながら、記事の真実相当性を判断することの是非が問われることになるのではないだろうか。

 わたしは裁判なんかしないで謝ってしまえと別の記事で書いたけど、週刊誌の商売のやり方に歯止めが利くようになるなら、松本が起こした裁判も意味があると思う。なるべく早く決着をつけてほしいが・・・。

 文春は「このほかにも続々性加害の被害の訴えが来ている」といっているらしいが、その証言者が法廷に呼び出されるなんてことになったら、どうするつもりなのだろう。まさかネット上で出てきた「訴え」とやらを、記事にしているなんてことはいえないだろうしw

 こんな風に考えていくと、もしかしたら、文春が松本に謝罪して賠償金を支払う可能性もあるのではないか。

(おわり)敬称略

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