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第一回 大暴力小説大会 結果発表


はじめに

皆様、大変長らくお待たせいたしました。
2024年3月1日から3月22日にかけて開催しておりました「第一回 大暴力小説大会」について、ご参加誠にありがとうございました。
予定よりも時間がかかってしまいましたが、ようやく結果発表となります。
投稿総数は49作!
評議員は以下の3名が務めました。
 暴力JK:タチバナ(立談百景)
 暴力忍者:草森ゆき
 暴力海老:南沼
では早速、大賞・各賞の順で発表いたします!

大暴力大賞発表

大暴力大賞はフカ様の『おれの華麗なる一日』に決定です! わーーーーーー!! おめでとうございます!!
受賞されたフカさんから、コメントを頂いております。

この度は栄えある賞をいただき、ありがとうございます!
書き手としても読み手としても大暴力の渦のなか、熱く血湧き肉躍る素敵な大会でした。
重たく人を惹きつけてやまない、暴力、しかも大暴力!という魅力を冠したパワフルなご企画で、大賞をいただけたこととても嬉しく思います。嬉しいです!ワーイ!!
主催ならびに評議員の皆様、参加された書き手の皆様、読んでくださった皆様に心から感謝申し上げます。お疲れさまでした!

続いて各賞の発表です。

各賞発表

今回、当初の予定では「暴力金賞…1作」「暴力銀賞…2作」「評議員賞…3作」としておりましたが、諸般の事情から「金賞」を2作に増やし、さらに新たに「暴力銅賞」を追加させていただきました。
追加の理由などは、評議会の様子をご覧下さい。

暴力金賞

獅子吼れお 様 『握って・掴んで・離さないで
月見 夕 様 『
五つ目の化物

以上2作が金賞となります。おめでとうございます!!

暴力銀賞

姫路 りしゅう 様 『濾過
君足巳足@kimiterary 様 『
Gratuitous Violenceを忘れない

銀賞は以上2作品です。こちらもおめでとうございます!

暴力銅賞

きょうじゅ 様 『われを畏れよ
真狩海斗 様 『
夜明け前
真狩海斗 様 『
セーラー服とチェーンソー
外清内ダク 様 『
けだものタクシー

新設された銅賞は以上4作品、おめでとうございます!

審査員賞

✊ 暴力✊ JK賞:狂フラフープ 様 『きみたちはぜつぼうをしりたい
激エモ忍者賞:押田桧凪 様 『
解散前夜
グレートエビ賞:馬村 ありん 様 『
パティシエのとっておき

審査員賞は上記3作品となります! おめでとうございます!

各賞発表は以上となります。
みなさま素晴らしい作品を本当にありがとうございました!! 拍手!!
暴力暴力でいいお祭りになりましたね。ご参加の皆様もそうでない皆様も、是非是非、各作品をお読みいただければと思います。

各作品寸評

以下は、全作品の寸評となります。寸評という触れ込みでしたが、他の川企画と同様に「講評」と言って良い分量になりました。ちなみに講評・選考会議の内容を含めて6.7万字ほどあります。お覚悟ください。
寸評・選考会の際、3名の評議員はそれぞれ他の評議員の寸評を見ておりません。読み方や評価ポイントがそれぞれ分かれており、その違いも含めてお楽しみ頂けますと幸いです。
以下、作品の出現順は投稿順・敬称略となっております。若干順番が前後している場合もあるかも知れませんが、ご容赦ください。
それでは張り切ってどうぞ!

No.01 『パンチャーGOTO』 紫陽_凛

暴力JK:ヒト以外の人型が突如として啓示を受け世界を暴力により破壊しようとするアポカリプス小説。初っ端から景気の良い暴力でありがとうございます。制御できない義腕と共に狂気と正気の隙間で暴れる主人公が良い感じです。やはり理不尽に振るわれてこその暴力ということで、終末のようなものが訪れている世界でこそ輝く拳を見せていただきました。最初の日から積み重ねていった暴力を潤す腐ったタピオカミルクティー、ふと「ミルク」は血液と成分が同じなのだということを思い出しました。

暴力忍者:
海外小説翻訳風の言い回しやルビの振り方が目を引く掌編でした。ハードボイルド然とした雰囲気が非常に好みで、すなわち暴力であると機械に言わしめる創造主自体は終始不明で意味がわからず、それがまた文字数と内容に見合った妙味になっております。
 一番槍なだけあって反射で出力したと思われる勢いが籠もっており、内容の不条理バイオレンスに翻弄される主人公の境遇にマッチして読み応えがありました。
 後藤とGo Toのミーニングが小洒落ていてとても好きです。パンチャーの全員殴って吹き飛ばすという気概もよく、ゾンビーが弾け飛ぶ描写は暴力は上も下もなく暴力であると指し示しているようにも感じられました。とにかく終始暴力に徹しており、たいへん好印象です。

暴力海老:
一番槍にこういうのが来るというのがとても良い。
文句なしの暴力まみれですね。
ひたすらに理不尽で無節操、ぐちゃぐちゃのどろどろを2000字ちょいに詰め込んで、それで綺麗にまとまってるのもすごい。
えっほんとに2000字!?ってなる。
最初の日がこれなんだから、いきなりクライマックスになってしかもそれがずっと続く、脳内麻薬エンドレスの日々なんでしょう。
最高だな。
あと個人的に義腕シコが性癖ポイント高です。
多分腕丸ごとが機械のやつをイメージして書いてるんだろうけど、バグ動作をすると激ヤバなやつなのにそれでもする。
その安全意識の希薄さは完全にパンクロック。


No.02 『川田くん』 ヤマタケ

暴力JK:クソ上司を痛めつけることが大好きな川田くんの話。気持ちが良いです。やはり暴力は立場が上の者に振るってなんぼなところがありますので。日本が司法国家であるが故に同じ条件で暴力を振るい続けるのが難しい、という暴力の脆弱性が主人公との関係を生んでいるのも良いポイントでした。「まあ、どんなに理不尽を受けても俺こいつのこと簡単に殺せるし」を地で行く物語。強い人間が穏やかでいられるのは暴力があるから。上司の尊厳をバキバキに破壊しながらも清い目を持つ純暴力、ありがとうございました。

暴力忍者:
川田くんの性格や性癖と呼ばれるものが少しずつわかってくる流れがミステリ的であり、構成面が非常に好みでした。クソな上司が嫌いな方は沢山いると思われ、読者がクソ上司に多少なりともイライラしたところへお見舞いされる川田くんのぶん殴り、ガッツポーズが出なかったと言えば嘘になります。
 主人公と川田くんのどちらが話しているかわかりにくく、個人的には若干混乱しました。どちらかの口調や一人称を変えても良いかもしれません。
 テーマである最初の日の回収が特に良いと感じ、川田くんが上司への暴力に目覚めた「最初」と主人公が川田くんの暴力を見た「最初」、弁護士として現れた「最初」とテーマが存分に生かされていたように思います。

暴力海老:
暴力の虜になり社会からドロップアウトした「川田くん」と「俺」のおはなし。
こちらは暴力から一歩距離を置いたスタンスの作品でした。
普段は誰にもそれと気付かせない暴力の化身。
おまえが歩いていたのは実は地雷原でした、というスリルは暴力の持つ理不尽さの体現ですよね。
財布の中身には目もくれず、ひたすら上司の持ち物を破壊していく同僚、確かに怖い。
リアリティラインあればこその怖さと思います。
苛めへの意趣返しという痛快さもあり、テーマを消化しつつ堅実にエンタメしているな、という印象です。


No.03 『花が咲く』 るつぺる

暴力JK:暴力に生き、暴力で死んでいった唯一の友人を助けられなかった少年の話。鼻が折れた顔面を花となぞらえているのがとても好きですね。暴力で繋がった友情が暴力で決別へと変わり、暴力で心の傷になる。「暴力のあるところに暴力が集まってくる」という物語の中で、主人公だけは暴力を振るっていないことが結果的に憲祐を死なせてしまい、「ようやくひとりぼっちになれた」はずの主人公が「本当にいいのかな」と思うその瞬間が、深く印象に残りました。

暴力忍者:
憲祐のキャラクターが大変好みでした。私は荒んだ家庭の荒んだ男の子が大好きなのです。鼻を折って花が咲く。美しい暴力でございます。
 幼さゆえの考えの足りなさが引き起こしたすれ違いに胸を締め付けられる思いです。いじめの場面と最後に殴り殺されている場面の一致が殊更悲しみを煽り、暴力が生む切なさを存分に堪能出来ました。
 最後の会話をどう捉えるかという話なのですが、近所の子供の会話が聞こえてきただけ、主人公の想像、分岐した平和な未来の自分たちと、想像の余地が色々とあり、良い余韻を残す幕切れでした。
 キャプションのきゃりーぱみゅぱみゅはググってみたのですがあまりわからず、浅学で無念に思っております。

暴力海老:
喪失感がすごく良い作品でした。
俺<暴力(いじめっ子)<暴力(憲祐)<暴力(怖いひとたち)
という構造から思い知った自らの矮小さ。
あっけない終わりを迎えた友人関係を修復しようともせず、助けることもできなかった自分の無力さ。
そしてどん底でこの先を生きるしかない自分を呪う。
みじめだね。かわいいね。
暴力が作り出す構造にフォーカスした作品、これもまた暴力祭りの一端を飾るに相応しい良い作品と思います。
(レギュレーションを読んでいなかったみたいなポストをされていましたが、憲祐との邂逅を書いている以上確かにテーマは回収されているように思います)


No.04 『アイアムユア』 惣山沙樹

暴力JK:タバコの銘柄が同じというきっかけで出会った行きずりの男女が「首締め」という暴力的なプレイで結ばれる話。合意の暴力の中でも「首締め」はとてもあれですね、背徳感がありますよね。暴力小説としてはシンプルながらも、首締めを求める優愛と、それに答えていく透のやりとりが丁寧に描写されているのが非常にエロティックで良かったです。スロー・バイオレンスなんて言葉はありませんが、そう呼べるようなお話。ロマンスの中にするりと語られる暴力、ハッピーエンドで読後感も非常に良かったです。

暴力忍者:
上司の自己啓発めいた持論が嫌すぎて、スタートダッシュから笑顔が溢れました。
 しっとりした雰囲気で話の進む中、ワンナイトの誘いが行われて期待する一方、おや暴力描写は……? と思っていると首を絞め始め、この流れがたいへん良かったです。
 カクヨム規定内の簡素な性描写ながら、首絞めを含めているために倒錯的な雰囲気となっており、性描写の方面でも楽しませて頂きました。一方で暴力表現としては少ないかもと思わずにいられませんが、首絞め一本で攻めたいという気概も感じたため、個人的にはとても好印象です。
 結婚までいって本当におめでとうございます。これからも仲良く倒錯していって下さいませ。

暴力海老:
こういうのエロスとタナトスっていうんでしたっけ、食い合わせ的に相性抜群なテーマですね。
おまけにフェティッシュなセックスは、それだけで求心力が抜群に高い。
そこを選ぶだけで絶対に外れないですからね。
方言や服装など、読みやすい文章の中にちょっとしたフック的な「良さ」がさりげなく散りばめられているのが個人的にはとても好きです。
なんというか、散りばめ方に品がある。
ただ、暴力については(劇中の2人にとっては重要なファクターですが)読者にすればあくまでスパイス程度なのかな、と少し物足りなく感じる部分はありました。


No.05 『真っ赤なザクロ』 黒石廉

暴力JK:「いじめ」に遭っていた主人公がヒーローになれなかったお話。多くの人が一度は想像しただろう「もし学校にテロリストがきたら」という妄想を形にした小説ですね。目を背けたくなるようないじめ描写から始まり、いじめ加害者たちがテロリストに殺されていく中で、突然人を殺す能力が開花する主人公。展開としては多少唐突にも感じましたが、理不尽な暴力を上回る「大いなる力」を手に入れた主人公のままならなさが、思春期の味わいとして表現されていてよかったです。

暴力忍者:
ザクロの中身の赤さ、私が個人的に好きなため、タイトルにまず惹かれました。酷いいじめ描写から入り、いじめている側の男二人のしょうもなさが早速素晴らしかったです。私はこのあとすぐザマァされそうなしょうもないヤンキーが大好きでございます。
 主任だけでなく校長も普通にいじめを無視しており、早く学校を燃やして候……という気分になりました。と思っていれば本当に謎の覆面集団がやってきて殺し始めたので逆にびっくりしました。
 故に、寸評に困っております。主人公の突然の異能開花にもびっくりしたため、暴力描写を置いておいて何が起こったのです……?となってしまいました。あくまでも個人の好みです、申し訳ありません。
 小説よりは詩の手触りがある掌編だと思いました。頭が次々に開いていく全校生徒を想像してみるとたいへん景気が良く、最期に向かう虚しい疾走が印象深いです。

暴力海老:
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」
いじめから心を逃避させるために頭の中で何度も繰り返す言葉の後に続く下の句そのもの、そしてその言葉を向ける対象がゴソっと転換するのが本作の肝と思います。
暴力の序列を一気に駆け上がってかつてのわが身を見下し、また自身の行く末に暗澹たる思いを抱く。
前半の救いの無さもさることながら、結局どっちを向いても絶望というのが良いですね。
覆面集団の目的が何一つ分からない、理由なく理不尽な暴力を行使するだけの存在というところも、謎の迫力がありました。


No.06 『きみたちはぜつぼうをしりたい』 狂フラフープ

暴力JK:暴力のゲシュタルト崩壊、暴力に次ぐ暴力(光学)。暴力が無効化された世界で暴力の在り方を問う、まさにアンチバイオレンス小説。この小説「暴力の具体性」がどんどんなくなっていくのが凄いんですよね。暴力という感覚も暴力的に破壊されていく。小説としてそもそもめちゃくちゃ面白いんですが、一旦暴力小説としてお話させていただくと、この「暴力が通じない世界」のフラストレーションを感じるのが大変良かったです。暴力を拒絶するための力もまた暴力であるというのが構造として美しいですね。そしてそれをねじ伏せるのも絶対的な暴である。非常にロジカルなバイオレンス小説でした。暴力!✊

暴力忍者:
たとえばライフルやステゴロと、たとえば復讐のためや単純に趣味など、なにで、何故、暴力を行うかという話ではなく、暴力そのものの話をしているところが印象的でした。
 でも内容は重くなく(とても良い意味で申しております)アンチ暴力フィールドが現れたところで笑ってしまい、たいへん面白く読ませて頂きました。
 トンデモ設定のまま猛ダッシュで走りきっており、攻めがもっと強い攻めに屈伏されて受けになるというような理論に膝を打つ思いです。
 暴力が出来ず悲しむナイフ使いがなんだか雑魚キャラの良さに溢れており、可愛らしかったです。とても好きな掌編でした。

暴力海老:
徹頭徹尾のトンチキ展開、散りばめられたパロディと言葉遊び、キャプションや段落間の絵文字により圧倒的な軽薄さを醸成する作品。
暴力太郎の字面はさすがに笑ってしまった。
本企画に対する最適解のひとつを放り込んできたなという印象です。
字数上限まで使い切って一瞬たりとも正気を垣間見せないのはすごいし、上述の言葉遊び(暴徒とか暴力差別とか)なんかはもう達人芸の域ですよね。
さすがと思いながらも笑えてしまう快作でした。


No.07 『【急募】三分以内に世界を救う方法』 秋乃晃

暴力JK:地球に訪れた侵略者と、それを迎え撃つ鬼の子孫の話。興味深い設定が詰め込まれており、これはKACのお題でもありましたが「3分以内に〜」というフックも効いていて、結末への道筋が非常に楽しみな物語でした。ただ正直、戦闘に関しては「そっちが勝つのか〜」となってしまったのと、かなりあっさり決着がついてしまったように思うので、暴力小説としては素直に、もう少しアッティラと万亀の駆け引きや戦いを読みたかったです。

暴力忍者:
キャプションを読まずに本文を拝読致しました。そのため後程、別作品と世界観を共有されているのだと知りました。
 次々に開示される情報が本文内のスピード感を高めており、驚いている間に読了致しまして、ナンセンスコメディとでも呼ぶのでしょうか、詰め込まれた設定がコメディ要素を強めておりたいへん面白く読めました。
 寸評冒頭の話に戻らせて頂くのですが、別作品と共有されていると知らずとも、何かのスピンオフだろうか?と感じた瞬間がございました。該当箇所があるという訳ではなく、全体を読んだ所感のようなものになります。理解できないわけではないため、直す必要もないと思うのですが、一応明記致しました。
 アッティラの✨がたいへん癪に障り(褒めております)、キャラ立ちが素晴らしいと思いました。鬼一族の設定や世界滅亡に際する設定など、中〜長編のポテンシャルを感じる掌編でございました。

暴力海老:
初読の感想は「めっちゃ贅沢な設定の盛り方をする作品」です。
アイディアと設定を惜しみなく盛り込んでいて、かつ読みやすいライトな作風で、楽しく読めました。
両性具有だという鬼が良いですね。
成長の過程でどちらかの外性器を不具にしなければならない、男女ともに具体的な痛みを共感・想像させる設定は個人的にとても好きです。
お祭り感は突き抜けていますが、設定の見せ方、文章作品としての組み立て方はもう少し丁寧さが欲しいように思いました。
あと、欲を言えばもうひと暴力欲しかったところですね。


No.08 『生物兵器と殺し屋さん』 こむらさき

暴力JK:「暴力的なまでの風……いわゆる暴風」で笑ってしまいました。それはそう。言葉選びのセンスが光る。
規格外の暴力装置である生物兵器の少女が普通の学校へ転入する初日を描いた非常にポップな小説。かなり楽しく読ませて頂きました。暴力、やはりコミカルなコメディとの親和性が高いですね。今回、しっかり凄惨な暴力を書いた作品が多かったので「コメディの暴力性」が描かれているのが非常に良かったです。キャラクターに愛着が湧き、この先もドタバタとした暴力が繰り広げられるんだろうな、という話の広がりにも期待できる物語でした。

暴力忍者:
こちら物凄く好きだったため、物凄く好きだったと先に申し上げます。冒頭からトンデモ設定なラブコメだとわかるところがたいへん素晴らしいです。
 キャラクターの台詞の端々で、ふふっと笑みが漏れました。掌編で置いておくには勿体ないと感じるキャラ立ちがどのキャラクターにもありました。
 あくまで個人なのに、生物兵器故に破壊力が高く、学校まで一本道を作るなどと暴力の規模が大きく、非常に爽快感がございます。
 ぼうりょくあばれさんにころしやあさしんくんというトンデモネームが特に好きです。笑いを堪えられず公共の場で笑ってしまいました。とても面白かったです。

暴力海老:
ぶっ飛んだ設定、ハチャメチャな展開でありながら他の作品が並ぶ中だとむしろ模範的な優等生感のある一作。
こういうトンチキお祭り枠の作品は他にも何作かありましたが、本作はかなり「絵」に特化したもののように見受けられました。
あと、作品の「閉じてなさ」が好きだな。
「阿晴ちゃん大人しい弟とかいそう。光L(ひかえる)みたいな名前の」とか言ってずっと遊べそうなんですよね。
そういう、なんというか周りを巻き込める強さがある作品だと思いました。


No.09 『犯罪とは、例外なく革命である』 あきかん

暴力JK:ワ、ワシがおる…!! 人の心はないんか…!! でも暴力って人の心があって初めて書けるものですよね。主催が女子高生のタチバナで、この作品で被害にあう女子高生も立花ちゃん。こう、実際の私自身をモデルにしていただいたわけではないと思うのですが、名前を同じにされて私が主催であることを分かった上で書かれたということは、私を読者想定していただいているのかと思うので、そういう意味で自分と同じ名前の登場人物が作中でひどい目に遭うというのは、これまで感じたことの無い読書体験でした。(念のため、肯定的な意味です!)
作品としてはある種のブロマンス的な趣ですね。女を挟んで確かめ合う絆、そこに暴力が接着剤のように絡みつく。暴力犯罪を「革命」と称すことで、何かを成すこともなく、ただただ浅ましい自分たちの行いに肯定感を見い出している。その彼らにとってだけの「革命初夜」。暴力小説として、非常に純なものを感じました。

暴力忍者:
私はフェミニズムには明るくありませんと先に置く無礼をお許しください。
 事象だけ追えば頭から終わりまでとにかく暴力で埋まった掌編であり、企画の趣旨としてはかなりの正統派だと思いました。いじめ、強姦、腕力での暴力と、短い中に詰め込まれており、淡々とした筆致によりくどく感じないところが良い塩梅でございます。
 最初の日と明示されはしないものの、藤城の性質は主人公が作ったものでありそれは過去のいじめが起因という回収がなされており、最初も最後も足を舐めて喜ぶ場面が使われているところが二人の閉じた関係性を強く感じさせ、私はたいへん好きです。
 冒頭に置かせて頂きましたフェミニズムの面はあまりわからず、こちらは申し訳なく思います。暴力の容赦のなさが特に印象的な掌編でした。

暴力海老:
お祭りだ~!という感じの作品が多数を占める本企画のガチ暴力枠。
こういうのを待ってたんだよな、大好き。
個人的には喝采を送りたいです。
ひたすら理不尽で陰惨。
テーマをどこで回収してるんだろと最初思ってたけど、女子高生の初体験ってことかと気付いてうわ~ってなりました(褒めてます)。
描写の粗削りなところが、かえって生々しい暴の迫力を醸し出しているように思います。
藤城の「革命家になりたい」ってのがまた、良いですね。
それ絶対革命でも何でもないじゃん。


No.10 『濾過』 姫路 りしゅう

暴力JK:すごいですね。暴力をテーマにした小説として、非常に素晴らしいと感じました。ただただ「純粋な暴力」を振るいたいという思想に取り憑かれた男の、ただただ純粋な暴力の末路を描いた小説。彼が暴力を振るった最初で最後の日の、取り調べという形での告白。かなり好きな小説です。暴力を振るうことへの論理立てが素晴らしい。タイトルの「濾過」が読み終えた時に決まってくるのがすごく気持ちよかったです。
ただ「暴力小説」として読んだ時に、どうしても暴力自体の描写の比重が小さく、今大会の審査基準ではやや弱いというのが惜しく感じました。でもこの小説の暴力描写はこれくらいがいいんですよね。暴力が客観的だからこそ濾された「暴力の純粋さ」が感じられる。
良い小説でした。ありがとうございます。

暴力忍者:
最初から最後まで非の打ち所のない掌編でございました。はじめの一言目からおや? と思わせ、すぐに残虐な事件の犯人だと開示、なぜ殺したかの一点集中で犯人の供述を聞く構成がたいへん読みやすく、そのホワイダニットの内容にも唸らせて頂きました。
 暴力そのものが出て来なくとも暴力についての話ではあり、殴る蹴る場面を出さずとも暴力を語っていて、確かにそれは暴力であるという部分が好印象です。
 特に良いなと感じたところはタイトルです。タイトルは最後の一文の後に来るという言葉を私は信じているのですが、姫路の「暴力は良くないですね」で締めたあとの「濾過」、純粋な暴力をしてみたいという「最後の濁り」が濾過されたのだなと感じ、深い余韻を残しております。
 人によっては構成が綺麗過ぎるという意見は出そうですが、それはシンプルにジャンルや好みがその方向きでなかっただけに私は思います。
 全体がかっちりとまとまっており、たいへん面白かったです。

暴力海老:
純粋な暴力からそれ以外の要素を徹底的に排除すればどうなるかという思考実験、を実行した人の話。
暴力的な描写こそないものの、暴力の暴力たる所以をただひたすらに追求した求道的な一作。
「暴力に対して真摯に向き合いました」みたいなポストをされていたのが印象に残っています。
確かにそう。確かにそうなんだけど、怖い。
ほぼほぼ無な動機で、十五年来機会を伺って、自分の人生台無しにしながら人を殺して出てきた結論が「それ」な訳でしょう。
犯行動機を取り調べる刑事のニュートラルな視線あればこそ際立つこの虚無ぶり、投稿作の中では随一、ぶっちぎりです。
「日常や普遍性からの乖離」という意味合いにおいてはこれがいちばんグロテスクだと思う。


No.11 『Gratuitous Violenceを忘れない』 君足巳足@kimiterary

暴力JK:めーちゃくちゃにかっこいい。かっこよすぎて痺れました。非公式な総合格闘技のリングに上がった男の「最初の日」を描いた物語。「Gratuitous Violence(理由なき暴力)」はMtGのカード名なんですね。内容にあるように「リラックス」するような文体から、静かに、けれど強い暴力が振るわれていく様は非常に映像的で、不思議な心地よさを感じるほどでした。

暴力忍者:
なるほど案外評価に困るなとここに来て示して頂けた感じがします。恐らくなのですが「作品のための暴力」と「暴力そのものの作品」にざっくりと分けられる作品群の中で、こちらは多少様子が違うなと思ったためです。
 突然の勃起もですが、暴力そのものに理由(殺意=集中力)があり、主人公の外側よりも内側を追った掌編で、外側では格闘技という作品のエンタメをしながら内側では暴力そのものの理由を話しているなという印象を受けた作品です。
 シンプルに文字列だけを追っていくとひたすらカッコ良いので、変に分離するよりも「カッケェ…」と読むものかもしれません。
 私は暴力と同じくらい殺意が好きなので、その面でも楽しみました。とても良い殺意でございました。

暴力海老:
ちょっとこれ、めっちゃかっこいいですね。
短文と倒置を繰り返して描写される意識や行動の遅延。
ひたすら「今この瞬間のスピード」を際立たせる、ものすごくスタイリッシュな文章。
情景だとかの視覚情報をほぼ省いちゃって、字数制限を逆手に取るように2000字ちょいにスピード感を詰め込んでる。
「そのもの」を描くのではなく、辺縁や影響を描写することで存在を際立たせるような手法というのかな。
だというのにその結果出力されるのがひたすらに暴力の塊なんですよね。
これは上手い。
めちゃくちゃ唸りました。


No.12 『それは=ではない』 サトウ・レン

暴力JK:暴力から遠いところにいると思っていた主人公が、「世界の終わり」をきっかけに自分の暴力性を知覚する物語。「自分は暴力から遠い人間だ」と独白しながら、すっと景気の良い暴力描写に移っていくのが軽快で良いですね。そこからじわじわと暴力を自覚していく様が非常に居心地が悪く、アポカリプスものの体を成しながらも、サイコスリラーのような感覚もあじわえる作品でした。

暴力忍者:
暴力テーマで暴力を嫌だと思っている男が主人公という設定が、ここまでなかったものなので新鮮に感じました。そしてこの設定が途中の返しに作用しており、構成力のある掌編です。突然の世界滅亡も私は好きです。
 ただ途中で少し考えると、そういうオチかな? と予想はつくと思われます。予想外ではないというだけの話ですので、あまり気にしなくて良いのですが、寸評なので一応書かせて頂きました。
 後半の段が特に良いなと思いました。覚醒して狂喜のエンディングを迎えた主人公、世界が完全に終わるまで楽しんで頂きたいです。

暴力海老:
綺麗にまとまった掌編だと思います。
全体分量のちょうど半分のあたりでくるりとタネを明かしてそれからは暴力一辺倒、というのもバランスが良いですね。
いきなり祭りが始まったぜ、とテンションがあがりました。
暴力量が十分にあるところも推しポイント。
「ところで、もうすぐ世界が終わるらしい」はいきなりすぎてちょっと笑ってしまいましたが、これがタネ明かしにつながる設定の妙なんですね。
読みやすく誤読や後戻りを生む余地のほとんどない文章に綺麗なオチ、ではあるんですが、裏を返せば少し優等生的に過ぎて意外性については物足りないところがありました。


No.13 『屠れサメロス』 惟風

暴力JK:タイトルがズルすぎるし、中身もズルすぎるんですよね。めちゃくちゃ笑いました。サメロス、思いついてもここまでに昇華できないですからね。すさまじい勢いでテンポ良く凄惨になっていく様が本当に気持ちいい。サメが人間のことを一切慮らないところも好きです。海の生き物たちによる仁義なき戦い、血で血を洗うオーシャンギャング映画、大変楽しませていただきました。
あと私の代わりに転売ヤーと戦って頂きありがとうございます。転売屋は絶対に地獄の果てまで追い詰めて七生蘇らないようにしてやる。

暴力忍者:
タイトルでまずひとつ目の笑い声が出ました。どんな話なのか、どんなテンションで読めば良いのかをわからせてくれる素晴らしいタイトルづけです。
 開いてみてもはじめからツッコミどころばかりでふたつ目の笑い声が出ました。首をビーチボールにしたり、さらっと時事ネタが仕込んであったりと、読者を飽きさせない展開が続き、たいへん楽しませて頂きました。暴論シャークだった! の唐突な意味のわからなさがまさに暴力的でもあり、テーマ性も抜群です。
 頭をカラにして楽しむものだと思いますので些末な寸評も必要ないほどです。楽しい掌編をありがとうございました。

暴力海老:
お祭り枠ですね(断言)。
サメ映画ラヴァー惟風さんの手による暴力サメ小説。
暴力と言うよりはどっちかというとモンスター小説的な……? と思っていたところにサメロスが旅客機を叩き落とし「うむ」となりました。
そんで「暴論だ! サメロスは筋が通らない論を暴力で押し通す、暴論・シャークだった!」は振り切り方として強すぎる、ずるい。
とても楽しい、楽しい作品なんですが暴力面についてはやや物足りないところを感じてしまいました。


No.14 『われを畏れよ』 きょうじゅ

暴力JK:ニュースでも世間に名をとどろかせていた熊である「OSO18」が人に撃たれるまでを描いた小説。熊の話、とても好きなんですよね。私が特別に熊に何かされたということはないのですが、熊害に関する話はそれだけでどこか惹かれるところがあり、今作も「熊小説」の魅力に溢れていると思いながら読ませていただきました。OSO18と呼ばれた熊の残忍さを、熊自身の視点から描くというのが非常に臨場感があり、素晴らしかったです。

暴力忍者:
実話は初めてかなと思います。もちろん暴力は人間だけのものではございませんので、人間(ないしそれに準ずるキャラクター)が主人公ではないという部分がたいへん良いなと思いました。良いテーマ選びでございます。
 牛さんが本当に強くて、熊の内情を思うと哀れみが湧き、その分オチにあたる人間たちの挙動が際立って感じました。人間は本当にアホですね、とても良かったです。
 書き慣れている方がざっと書かれたような印象を受けまして、良い悪いではなく、単純な地力や知識の豊富さを感じる掌編でした。

暴力海老:
暴力の構造、暴力ヒエラルキー枠ですね。
「けもののなまえ」「けものたちの名前」というサブタイトルがまた憎い。
捕えた獲物を食べるという当たり前の生命の営みを、暴力と呼べるか。
そこにどのような意図があろうがあるいは何一つなかろうが、私は呼べると思います。
食べるためでなく、ただ自身の満足の為に殺すのであれば何をかいわんや。
そう考えた時、この2000字ちょっとの掌編に登場する暴力はとてもバリエーションに溢れているように思います。
暴力小説として、とても満足度の高い作品でした。


No.15 『ぼく一人の力で君に勝たないとドラえもんが安心して未来に帰れないんだ』 きょうじゅ

暴力JK:非常に愛らしい暴力。
偽教授さんの作品連続2作目ですね。1作目のクマの話からほとんど間を置かずに投稿されていたのですが、この落差。暴力描写としては小さく、弱いものですが、それが物語の中でとても強い意味を持つところに芯の固さを感じました。
タイトルの「さよならドラえもん」の台詞の引用が示唆的で良いですね。のび太はドラえもんを安心させるために、暴力でそれを証明するという手段を選んだのだな、と思い返しました。

暴力忍者:
二作連続で投稿されており筆の速さに驚きました。熊とは打って変わって青春ものの雰囲気のある、どこか明るく柔らかさを感じる掌編です。
 それ故に、暴力の足りなさは感じてしまいましたが、この掌編に暴力を求めるのは違うとも思い、しかしながらこの大会は暴力小説を決める大会だからと、悩みがループに差し掛かりました。
 ドロップキックの容赦のなさがたいへん好きです。おっと思うようなオチ(性別誤認の仕込み)によって登場キャラに対しての親目線のような微笑ましさが生まれ、良い人間ドラマだなと思いながら読了致しました。

暴力海老:
お姉さんが「天然ものでないとダメだから取ってきて」とそそのかしたのは、ピートが彼の臆病な気質を何とか克服してほしいと思っていたから、あるいは気休めでもピート自身が治療に貢献したという慰めを実感として得て欲しかったからでしょうか。
ガキ大将っぽいピートが理不尽な命令を出すのか……という出だしで「おっ」と思ったものの、そこを通り過ぎた後は終始優しいトーンで物語が進みますね。
ただ暴力というお祭り軸での評価は割引かなと思います。


No.16 『この世界からの追放。』 サトウ・レン

暴力JK:死んで生まれ変わることで異世界転生するというお決まりの設定を、「一種の罰」として与えられた男の無限ループもの。延々と魔王を倒す旅を繰り返させられるという、重苦しいループから抜け出せない地獄が表現されていて、非常に鬱々とした気持ちにさせられました。前世で振るった暴力の結果がこの無間地獄であるにも関わらず、主人公がその地獄を忘れるのは暴力を振るうそのときだけというのも、非常に嫌だなあ〜と思いながら読んでいました。良い暴力ループでございました。

暴力忍者:
ブラックジョークめいた雰囲気があり、そのシニカルさが良いなと思いました。
 恐らくテレビゲーム(ドラクエなどのRPG)内に転生しているため、エンディングを迎えればまたはじめからと延々繰り返すことになっているのだと思うのですが、その構成自体に抗えない暴力のようなものを感じます。虚無の暴力性と言えば良いでしょうか。精神をぼろぼろにさせる方面の暴力、楽しませて頂きました。
 細かいところだと、女神の淡々としたキャラクターが好きです。主人公にかなり嫌悪感がありそうで、容赦がないところが良かったです。

暴力海老:
ひたすら暴力に生きた人間が「罰」と称する転生を経ながらも暴力を振るいまくり、時間のループに囚われる話。
女神との腹の探り合いのような会話が良いですね。
女神に「おまえ人殺してんじゃん」と指摘されたときの、開き直りでも申し開きでもない態度も「暴力を呼吸する人間」感があってとても好感が持てます。
このループを脱するカギは、暴力を振るい続ける以外の方法なんでしょうか。
もしそうなら何かの教訓話みたいですね。
(それを示唆するだけの材料は物語の中に無かったように思いますが)
転生後の情景や暴力についてはディテールが欠けているので、そこを補っていればもっと話に奥行きが出たのではないかと思います。


No.17 『裏切り者たち』 HK15

暴力JK:殺しの仕事を遂行することになった組織の男の顛末を描いた小説。非常に緻密な「銃」の描写が特徴的でした。ガンアクションを描いた作品としては、投稿作の中でも随一だったのではないかと思います。物語としてはオーソドックスではありつつも、しっかりとした描写のノワール小説として、非常に楽しませていただきました。

暴力忍者:
ガンアクションというタグの時点で贔屓目が入りました。私は銃火器が大好きでございます。
 全体的な雰囲気が統一されており、粛々と出来事を追っていく硬派な筆致が目を引きます。ハードボイルドガンアクションとしての掴みも抜群で、最後に明かされる真実も期待していた盛り上がりを感じ、「これだよこれ!ハードボイルドはこれ!」と膝を叩いた次第です。つまり、すごく好みです。
 私は小説を読む時に映像や画像に変換されないのですが、こちらは雨の中を走る二台の車や、急ブレーキのあとの一斉射撃、ペニーの最期の台詞など、映画のような映像で想像することができ、楽しい読書体験をさせて頂きました。
 女で身を滅ぼすことになるハードボイルドの男キャラ、色気がたまりません。改造した散弾銃やでかいコルトなどガンアクションの描写もたいへん良かったです。

暴力海老:
海外ノワールといった趣の犯罪小説。
これは良いですね。
時代設定、舞台設定、キャラクターにガジェット。
なにもかもが私に特効するタイプのやつです。
古式ゆかしきガバメントとソードオフショットガンが火を噴く銃撃戦、たまんねえ。
それにパラグラフごとのシーン転換がとても上手い。
ひとつの「劇」としてとても美しく感じます。
「言った」「言った」の連続がややリズムを損なっているきらいはありますが、美学のたっぷり詰まった小説を堪能できました。


No.18 『』 草森ゆき

暴力JK:とても静かな、しかし大きすぎる暴の力。こちらネタバレになりますが、評議員、暴力忍者こと草森ゆきさんの作品。非常に静謐な空気感のあるSF小説。文明や生命を破壊する不可避の圧倒的な暴力によって滅亡した人類が、滅亡の直前に厚顔無恥にも外界に助けを求め、数億年後に助けにきた異星からの生命によって生き残りが再びの絶滅を体験するという、巨大すぎる力の来訪を幾つも重ねて表現されていたのが印象的。真っ白な地球というビジュアルも含め、美しい暴力小説だと感じました。

暴力忍者:
好きなんですよね、触手。

暴力海老:
遠未来SF暴力小説!
淡々とした滅びの描写が清々しい。
「星が降り、終わった」の一文はあまりに美しすぎる。
異星人の生き残りの命を良心の呵責なく奪い、ただ「途絶した」とだけ表現するエイリアン。
ようやく見つけたシェルターを躊躇いなく破壊していく彼(?)の意図は分かりませんが、きっと中の生存者たちにとっては恐怖そのものだっただろうなあ。
さらっとした外連味のない描写ながら、込められた暴は中々密度がありますね。
本作はイメソン布教フェスタにも参加しており、存じ上げない曲だったので聞いてみたのですが、これがなかなか良い。
どこか荒涼としたシンプルなテーマを繰り返しながらもクライマックスを迎え、静かに終わってゆく。
小説の出来と直接の関係はありませんが、「あ、こう解釈するんだー」という面白味がありました。


No.19 『いつか来るその日に』 辰井圭斗

暴力JK:強盗に入った男の殺し様に見惚れた少年が、その強盗に拾われるバディもの。ディスペルとチャーリーの二人の関係がとても美しい。強盗たちの関係という野蛮な世界にありつつも、どこか静謐とした空気を感じさせるのが非常に心地よかったです。「いつか来るその日に」というタイトルから読める不安さも含め、素晴らしい作品でした。

暴力忍者:
全体的に読みやすい非常にまとまった良い掌編で、ディスペルのキャラクター造形が特に良いと感じました。
「美しい暴力をする強い男」という文字列だけで想像をすると、イケメン美形ハンサムと、外見の整った男性を私は想像しがちかなのですが、ディスペルはごま塩頭のおじさんと明示されるため、ここに生まれた小さなギャップが話を引っ張ってくれました。
 犯罪者に拾われる不遇な状況にあった少年という設定も王道的で良いですね、私がとても好きな設定です。さらっと読める語句選びがたいへんお上手だなと思いました。
 暴力には貴賤があるという一文が読了後に染みました。チャーリーはいつかディスペルを殺せるかもしれませんが、その時には本当の友達になるという言い分が物騒ながら誠実で、やはりディスペルのキャラ造形が特に良い掌編でございます。

暴力海老:
こちらは字数下限に挑戦したような一作。
冒頭付近の「きれい」な、カラッとした暴力が終盤に至り少し湿度の増す流れ、この字数でこれを出せるのはすごい。
それに、ディスペルの人物描写がものすごく粋ですね。
一人称文体ですから、チャーリーがそれだけ彼の事を魅力的に感じているということでもあるんだろうな。
冒頭振るわれる暴力がとても鮮やかで映像的なのも、そのシーンが彼にとって文字通り人生を変える一幕だったから。
そういった緩急の付け方はとても堂に入ったものと思います。
ただ、(文字数縛りがある以上しょうがない事ですが)その後がざっくりと流れるような描写に過ぎるところ、少し物足りなくはありました。


No.20 『アンデスの歌うネズミたち』 南沼

暴力JK:ビッグ・ゴア。評議員・暴力海老こと南沼さんの作品。さすがの暴力ですね。ゴア表現が飛び抜けて凄惨で、身体が不快なうずきを感じるほど。血なまぐささと怒りを感じる様々な暴力がこれでもかと続いていく、ハードなバイオレンス小説に仕上がっています。小さなねずみが、彼らにとってはなんの意味も無い凄惨な現場を眺めるという導入も非常に良いですね。妻子を無惨に殺された元刑事の復讐の私刑が淡々と、ただ血を塗り重ねるように繰り返されていく。素晴らしかったです。

暴力忍者:
最初から最後まで暴力たっぷりの掌編でした。これはすごい。テスカトリポカの残虐拷問シーンだけ抜き出してきたような迫真さ! 暴力忍者はやはり暴力が好きでここにいるため、笑顔で読了致しました。エビちゃ〜〜ん!(評議員仲間へのコール)
 指切断した後にちゃんと炙って止血しているところが特に好きです。出血多量で死んでしまってはいけない、私もそう思います。メインディッシュと言わんばかりに睾丸虐待が最後の方に挟まっているところがたいへん素晴らしいです。私もキャラを去勢したことがあるため、かなりの共感がありました。拷問する側に共感を持つのも変な気はしますが……でも復讐に燃える男という造形が好みなのでキャラ萌えファン目線かもしれません。
 冒頭と締めが愛らしいネズミたち視点になっていて、牧歌的でかわいいなあと、内容の拷問とのギャップで一層感じられる部分に構成技術の高さを感じます。暴力評議員の名にふさわしい、読み応え抜群のバイオレンス掌編でございました。

暴力海老:
自作です。
私事ですが最近「アンデスの歌うネズミ」という異名をもつデグーをお迎えしまして、それにつられた様に書きました。
拷問の最初の1日をひたすら繰り返す謎空間をネズミが眺めるだけのお話です。
かわいいね。ほら、暴力だよ。
男性も女性も玉ヒュンしてもらえたら嬉しいなあという思いでゴアシーンなどを書いています。


No.21 『愛情転生奇譚』 浅月庵

暴力JK:何度殺しても妻が生き返る男の話。妻を何度も殺す描写が出てくるのも「うわ〜〜」と思っていたのですが、妻が生き返るたびに愛情を取り戻し、それを受け続ける男が次第にほだされていくのも「あ〜〜〜」となり、睡眠薬飲まされたあたりで「やっぱこうなるよな男〜〜」と思ったら「殺されるたびに愛情が戻る」という設定が最後に効いていたので、「この話、完璧なのでは…」と思いました。ちょっと何言ってるか分からない寸評になってしまいすみません。めちゃくちゃ面白かったです。

暴力忍者:
話がテンポよく進み、とても読みやすい構成に思いました。暴力表現も多く、胸糞の悪い展開をあえて選んで書いてらっしゃる雰囲気で、もしも読者にちょっと嫌な思いをしてみて欲しかったのであれば、成功かと思います。そうでないのであればたいへん申し訳ございません…。
 設定が特に良いです。開幕から死体が用意されるため、このあとどうするのか?と思っていると家に殺した嫁がなぜかいる……。良い掴みなのではないかと思います。オチも「そうなるだろうなぁ…」という納得感がありました。
 殺される度に元気になっていくところがたいへん可愛らしいですね。この先はお二人揃って仲良く暮らして頂きたいと思いました。

暴力海老:
どんでん返し、逆転劇枠。
なんとなく終盤のオチは分かるような掌編ではあるんですが、それでも怖い。
「振るった暴力がそのまま返ってくる恐怖」、これもまた暴力ものの醍醐味ですね。
その意味ではある意味暴力の本質、その一端に触れている作品だと思います。
この点、個人的には高ポイントを差し上げたい。
殺された妻のセリフが鈎括弧でなく山括弧なのは何か意味があるんでしょうか?
もしかして主人公の幻聴なのかなとも思ったけれども、どうやらそんなこともなさそう。
キャラクターをもっと生かす、あるいは暴力描写にリキを入れればもう少し目を覆いたくなる出来(誉め言葉)に近づくのではないかと思いました。


No.22 『解散前夜』 押田桧凪

暴力JK:不和を抱えたコンビのお笑い芸人の、解散のきっかけを描いた作品。普段の暴力癖から、急なアドリブを出した相方を舞台上で咄嗟にぶん殴って、そのまま殴り合って、コンビの解散を確信してしまうツッコミの男の心情の吐露がとても切ない。余所の国からは日本のお笑いは暴力的だと言われることが多いと言いますが、この物語はそうなるべくしてなったと受け入れるのは、とても文化的なことかと思います。愛のある暴力というものがお笑いの舞台の上にあるとして、単なる暴力とその差はなんなのか、思うところの多い作品でした。

暴力忍者:
構成、内容、解釈、すべてをとりあえず置いておいてここまでで一番好みと申しますか、一番性癖に効く掌編でございました。大好きなんです。仲が悪いのに一緒にいなくてはいけない芸人コンビが……。
 私の好きな男性同士の感情のぶつかり合いが見られて最高の気分です。ああでもないこうでもない、昔はこうではなかった今はなぜこうなった、最後の最後に何を言うべきだったのか……。ほぼこの葛藤のみに費やされているところもたいへん良いです。好きです。
 そして暴力で繋がる関係というものは、確かにボケツッコミの芸人にも存在していると気付かされ、はっと致しました。
 至ってもすべてあとの祭りな結論と、せめて芸人としてもうええわを飲み込める矜持のようなものが読了後も胸に残りました。暴力の小説としてもかなり推したいと感じます。

暴力海老:
暴力をテーマにこれを書くか、と嘆息する思いです。
これがエモか。
冒頭の独白、完全に時間が止まった中でのそれですからね。
主人公のどうにもならない、どこにも行けない感がずしんとくる。
回想のまとまりのなさ、時系列の飛び具合がまたそれに拍車を掛けます。
読み終わってからタイトルを見た時、もう一度唸ってしまった。
暴力という一点では弱い、弱いんですがそれを補って余りある強さがある作品でした。


No.23 『シティ・オブ・ゴッド』 清泪(せいな)

暴力JK:最悪な両親の元で生まれ、最悪な状況で両親を失った少年が、最悪な街で暴力にまみれて生きながら、最後に全ての破壊を望む物語。暴力がなければ生きていけない、という境遇に身を置かれた少年の生き様が心にくる。最後に何でも手に入るという状況で、恐らく彼が初めて口にした「願い」が「破壊」という暴力であり、その時に思い出したのが両親の死に際の銃声だったというのが、暴力から逃れられない世界を感じさせ、大変苦しさを感じる良い終わり方だったと思います。素敵な作品でした。

暴力忍者:
話の全体に乾いた砂埃が吹き荒れているような荒廃を感じ、この空気感がたいへん魅力的な掌編に思います。
 全くでてこないキャラクターの話になってしまい恐縮なのですが、頭のおかしいとされている神父がすごく良いなと目を引きました。なぜかといえば、私の意味不明な先入観のせいもあるのですが、おかしい神父という設定ではじめに思い付いたのが児童への性虐待でして、ところが肉体に十字を掘るというナナメのおかしさだったため、物凄く印象に残りました。そしてこの十字が話の核として機能もしていたため、神父の存在が余計に際立ちました。
 暴力が暴力を呼び、暴力で終わるという、この大会らしい掌編でございました。

暴力海老:
南米のストリートチルドレンがモチーフの作品のようです。
家族を失いさりとて行政の保護もなく、暴力にさらされ悪事に手を染めながら生きていかざるを得ない少年の絶望を描きたかったのだと思います。
自分の中からとっくに失われてしまって、思い出としてすら今の荒んだ生活に入り込む余地のない「家族」の喪失が最後の瞬間に想起される。
悪事や暴力などでなく少年の絶望の根源はそこにあったのだという構図、とても良いですね。
それにしても町全体で行われる悪事に対する変態神父の貢献度みたいなのが半端ないな……。
字数にもまだ余裕があるので、この辺りを掘り下げたり生活感なりを描写すると尚良かったと思います。


No.24 『PEACE OUT』 灰崎千尋

暴力JK:殺し屋に拾われた少女と、その殺し屋が擬似的な親子関係を築くハードボイルドなバイオレンス小説。非常に格好いい作品でした。最後には男から殺し屋として生きる術を継承され、ある種の「親殺し」を行うことで二人の関係が永遠になる。親子のようでもあり、男女のようでもある二人の関係が終わるまでの物語が少し切なくも感じました。

暴力忍者:
いくつか前に少年と共にいるおじさんの話がありましたが、こちらは少女と共にいるおじさん(おにいさん)の話です。どうしても設定段階でレオンを思い出してしまうところはご容赦ください……。
 青年のキャラクターがたいへん好みです。暴力小説の名に恥じないアクションが散りばめられており、そこを少女視点にしてある部分が血生臭さを下げて読みやすさを上げている、巧みな筆致に思います。
 男女であることも生かされており、女性側が勝つ展開もそうですが、愛憎劇と銘打てる雰囲気作りも充分で、申し分ない暴力小説でございました。

暴力海老:
主人公が「アンタ」にどういう感情を抱いていたんだろうと思いながら読んでいましたが、最後に明示されました。
実の親がろくでなしで、彼らを排除したならず者に父性を感じ暴力を教わるという作品はこれで二つ目ですが、こちらの方が全体的に湿度が高い。
どうして2人が殺しあうことになったのか作中では明らかになっていないんですが、そこは重要じゃないんだろうな。
大事なのは、どちらかが死ぬまでにどうやって愛を伝えられるのかなんでしょうね。
イメソン企画に重複参加するだけあって、込められたロマンの重い一作でした。


No.25 『デイブレイク』 狐

暴力JK:ヤクザの「けじめ」を描いたバイオレンス小説。ヤクザの兄貴からヤクザのやり方や生き方を教わった男が、今度はその兄貴にけじめを付けさせるまでのお話。非常にヤクザものらしい、しっかりと暴力的な世界が描かれていて良いですね。暴力をしっかりと教えられた故に、最後にきっちりと暴力を振るうことができるという反転的な構造も、暴力の連鎖的な面が強調されていて、非常に見応えがありました。

暴力忍者:
たいへん良い暴力小説だと思いました。確か龍が如くがお好きだったと記憶しておりますが、それが存分に生かされているように思います。
 暴力表現だけでなく、アンダーグラウンドな世界観での独特な関係性がしっかり書かれている印象で、その人間ドラマの核の抜き出しがたいへんお上手でございます。肝心の拷問シーンに湿度のある感情が絡められており、前半と後半の差も合わせて読み応えがありました。
 お上手だと書くことが逆に少なくなってしまいます、ご了承ください。ストレートに面白い掌編でございました。

暴力海老:
ヤクザものだ!(歓喜)
第1話では苛烈ながらも面倒見の良い兄貴分であり主人公の憧れでもあると描かれた緑堂が第2話で落ちぶれる姿は、胸に来ます。
それに相対するようにヤクザとしての在り方、暴力をしっかりと受け継ぐ主人公。
ここの対比はとても鮮やかです。
タイトルに繋がるラストも格好いい。
いや本当に緑堂が良いんだよな。
化石のようなヤクザ観、「男になるんだ」は痺れる。
落ちぶれるところも含めてめちゃくちゃ好きです。推し。
ただ生々しい暴力描写とやや説明的に過ぎるセリフは少々ミスマッチに思います。


No.26 『壊れた彼氏とゴッドハンドの孫』 尾八原ジュージ

暴力JK:クソな彼氏を叩いて壊れたものを直そうとする女の話。やはり壊れたものは叩いて直すに限りますね。切なさと笑いと怒りといろんな感情がない交ぜにさせられる、闇鍋的な小説で大変おもしろかったです。シンプルな暴力で彼氏がどんどん壊れていく様に感情が転がされ、非現実的な状況と現実的な状況が一度に飛び込んでくる、「読む暴力」とでもいうような作品でした。

暴力忍者:
内容としてはトンチキに属されると思うのですが、トンチキなだけではないと思わせる話の進め方が絶妙であり、さすがの書籍化勢による横綱相撲の雰囲気です。
 改行が少なく流れるような文体が、読んでいてとても楽しいです。道中は暴力に次ぐ暴力、そして急に光り出す彼氏ととんでもないことが次々に起こり、殴られまくってたいへんなことになる彼氏には笑いを禁じ得ません。爆笑致しました。人間は壊れるとこうなるんだ…と、ならないとわかっていても何故か思ってしまいます。さすがの筆力でございます。
 そのトンチキ的な道中からの、オチのしんみりさが効いています。たいへん面白く読める掌編でした。

暴力海老:
導入からオチまでとてもきれいな(ただし絵面はきれいではない)、最早完成された域にあるショートショート。
暴力、テーマの回収、そしてお祭り感。
要望に対して出してくる回答が完璧すぎるんだよな。
作品としての仕上がりも素晴らしくて、これもまた名人芸ですね。
テンパりながらも執拗に金的を狙う主人公がとても良い。
ゲロの内容物まで描写しているのも好きポイントです。


No.27 『夜明け前』 真狩海斗

暴力JK:二人称視点で紡がれる、力を持った者が王になり、あることをきっかけに退位するまでを描いた作品。一つの国が民主化するまでの顛末を追っており、寓話的なお話だと感じました。暴力とは何か?という問いに対する答えは多くありますが、この作品で描かれる暴力は非常に装置的です。暴力を広い視野から見た時、国や民衆、それを統治する者にとってそれはそうなるのだという見せつけ方が、物語の結末で首尾良く機能しており、激しい出来事が描かれているにもかかわらず、すっと気持ちよく読むことができました。
スーパーマンの絵文字、かわいくてよいですね。

暴力忍者:
絵文字を見るに、スーパーマンの寓話のような話だと思うのですが、ディストピア風味もあり面白かったです。
 はじめはいい人だったのに……という悲しい変化、ありますよね。私はマギという漫画が好きなのですが、そこに出てくる王の器という人たちは、やはり時々闇落ちしたり、過去には民衆に殺されてしまったりとたいへんな目に遭いますが、こちらの作品にもその無常が感じられて、個人的にはかなり好きな一作です。
 妻との子供がうまく生まれないところも闇落ちに一役買っており、なるべくしてなった結果という幕切れはどこかすっきりとした読後感がありました。
 こちらもたいへん面白かったです。

暴力海老:
「気は優しくて力持ち」を地で行くエイリアンがとある国の戦争で戦果を上げ、王となって国家を運営していくが……
気まぐれや理不尽にも見える民衆たちの態度、主人公の心の在り様の変遷と人生の終焉というストーリーの素地に、最後に優しく主人公に語り掛ける「私たち」と主人公の手を離れ幼年期の終わりを迎える国家というラストを美しく添えたかったのかな、と思います。
作りたかった料理はわかるのですが、主人公の人物像が曖昧というか散漫というか、「人物」が見えてこないところ、ぼんやりとした味付けになってしまっており、そこがなんとも惜しい。
これは王として運営する国家についてもそうで、もう少し何らかの描写が欲しかったですね。


No.28 『セーラー服とチェーンソー』 真狩海斗

暴力JK:真狩海斗さんの連続2作目。「夜明け前」と打って変わって、疾走感溢れる血しぶきバイオレンスもの。「暴力作品が禁止される」世界の前日に、映画の世界から現れた怪物たちが大暴れする様を描いた作品。ストレートに読んでいて楽しいバイオレンス小説でした。やはりチェーンソーにサメ、外せないですよね。「暴力が失われる」という状況が暴力を生み出しているというのも、非常に今大会にふさわしい動機づけに感じました。あぱぱぱぱ。

暴力忍者:
最初の日というテーマの扱いが上手く、かなり効いている作品に思います。暴力と最初の日の融合作品として、私の中では一番印象に残りました。
 さっくり楽しめるトンチキ系統のモンスターパニックかな? と思わせておいての、暴力規制に関する話題に切り込む構成がお上手でございます。
 Siriの検索結果のところがとても好きです、つい笑ってしまいました。モンスターパニックではあるため、暴力表現もかなりアッパーで、舞う血飛沫や肉片は読み応えが抜群です。ポップコーン片手に読みたいですね。
 ハゲマッチョが現れる展開にボルテージが上がり、その最高潮で締めとなるところが贅沢で、たいへん面白かったです。

暴力海老:
どこかで見たことのあるようなフィクション上のモンスター達による血まみれの宴、暴力の嵐。
チェーンソーは武器に向いていないなんて突っ込みは野暮に過ぎる。
魔改造メガシャークが空を飛び、デスゲーム男爵が首輪を爆破する、この世の終わりのようなB級スプラッタカーニバルがたいへん気持ちよいですね。
もうすぐいなくなってしまう「俺たち」への餞であり、復活の日への希望としての暴力というのも別の趣を醸し出しています。
花のあるトップとしっとりとしたボトム、香水を思わせるような一作。
ただ、それぞれ違うフィクション作品に出演しているはずの彼らが一堂に集う「ここ」がどこなのかよく分からず、その点でちょっとノれなかったかなと思います。


No.29 『おいでよ どうぶつ麻雀の森』 ももも

暴力JK:これは……麻雀小説ですね笑。あまりに麻雀すぎて笑ってしまいました。あの、本当に申し訳ないことにですね、私が麻雀のことを全然知らないということで、物語としては面白く読めたのでよかったのですが、麻雀を知らなさすぎて起こってることが麻雀として暴力的か判断ができなかったので、この作品の正当な評価は雀士である暴力忍者氏、暴力海老氏の両評議団員にお任せいたします。無知ですみません! ご参加ありがとうございます👊

暴力忍者:
あまりにもタイムラインでございました。こんなん笑う…! と先に申し上げまておきます。
 本当にあまりにも見たことのある、かつ、想像のつく雰囲気の麻雀小説で、なんだこれは何を言えば…? こんな森で麻雀打ったら血管切れて死んじゃうなと思いました。
 私も麻雀打ち勢なため、理不尽な和了にキレ散らかしました。辛すぎます。登場人物と共に暴れ回りたい所存です。
 理不尽な和了、豪運麻雀などは暴力的で、トンチキの類だとは理解しつつも、たしかにこれは暴力小説だと納得も致しました。
 猿と狐を出禁にしましょう……!

暴力海老:
暴力的なまでに理不尽な麻雀を打つプレイヤーたちの話、で良いのかな。
めちゃくちゃ内輪ネタ!
登場人物たちのオリジンを知る人は勿論笑えますが、カリカチュアライズも過不足なく、モデルとなった人物を知らない人でも楽しく読める作品になっていると思います。
ただ暴力という点で言えば物足りないように感じました。
暴力麻雀というのなら、もう少し「盛って」も良いのではないでしょうか。
(本作の展開も十分理不尽ではあるのですが……)


No.30 『握って・掴んで・離さないで』 獅子吼れお

暴力JK:暴力とは無縁の生活を送ってきた2人の少年が、受験へ向けた日々の生活の発散のために「ヘレナ流決闘」を行う話。めちゃくちゃ良いですね。獅子吼れおさんの他の作品を読んだ際にも思いましたが、「男」の関係の描き方が非常に素晴らしいです。暴力慣れしてない少年達がうまく殴り合えるのか?という疑問もありましたが、彼らの頭の良さがそれを解決しているという運び方も、シンプルながら読んでいて新鮮味を感じました。

暴力忍者:
勉強のし過ぎによるストレス発散が最終的に暴力にいきつくという流れがたいへん好きでした。勉強のし過ぎはよくありませんね。
 暴力シーンに字数を割いているところが非常に好印象でございます。ところどころに入る、正解。などの勉強してそうなワードが、キャラ設定を忘れさせないまま暴力を進めてくれており、ライオンマスクさんの地力の高さが窺えました。
 友情でも憎悪でもない不思議な関係性が面白いです。お互いに無事進学したあとは偶に思い出すが会いもしないのだろうな……となんとなく感じました。すごく良かったです。

暴力海老:
これは良いですね。
何の憎悪もなく、ただ発散の為だけにお互いルールを遵守して暴力を振るい合う。
中盤のうっ血したように籠った熱と、それを発散し冷め切った締め。
でありながらタイトルに現れる、恋人同士のような情熱。
ホルモンぎらぎらの不安定なティーンエイジャーぶりが、本当に眩しい。
これらをまとめて料理するところ、文章構築のレベルが総じて高いと感じす。
旅人算や恐竜図鑑などの随所に出てくる小道具も良い味を添えています。


No.31 『パティシエのとっておき』 馬村 ありん

暴力JK:貧困からヒットマンになった男、信頼するオヤジを殺されたヤクザ、それを裏で手引きする者たちの三様を描く群像劇。短いながらも綺麗にまとまっており、ヤクザの抗争とその裏側で走る謀略、また登場人物達の心情の重なり方など、掌編小説として非常に完成度が高いと感じました。非常に面白く読ませて頂きました。ありがとうございます。

暴力忍者:
どこかかわいらしいタイトルからの殺戮展開の速さが非常に好印象です。
 特にパティシエさんが好きです。こいつが今日のデザートだ! という雰囲気で武器を出すところ、お約束を守りつつのかっこいい所作に感じ、たいへん良かったです。
 この文字数制限で視点を三つに分けているところが、純粋に凄いと感じました。三者三様のそれぞれの思惑の違いも楽しめましたし、段々と真実に近付いていく構成はミステリ的で、裏社会の怖さがじんわりわかるラストが最も好きな場面です。
 裏社会は男性キャラが多いとこちらが勝手に思っていることもあって葦原の設定にも唸りました。綺麗にまとまった掌編でございました。

暴力海老:
読み終えて「なんだこのタイトル」みたいな無粋な突っ込みを入れてしまった。
それはそれとして、これもまたとても良い作品でした。
まさか3000字ちょいでバイオレンス映画を一本持ってこられるとは思わんかった。
絵が浮かぶような鮮やかな銃撃戦に、その裏で糸を引く幹部たちの権謀術数。
説明的な長セリフも、本作のそれはむしろヤクザ映画そのままのスタイルなんだな。
葦原が実は女性であるという叙述的なサプライズの意図はよく分かりませんでしたが、それを差し引いても血沸き肉躍る一作でした。


No.32 『終末創世革新歓喜』 ラーさん

暴力JK:終末から創世までの一連を描くスペクタクル小説。圧巻の描写で、アポカリプスという世界への暴力が表現されている。非常に驚きながら読ませていただきました。こう言ったカオスの表現は著者の言語的センスが如実に出やすいと思うのですが、その全てが映像として脳を駆け巡るような心地で、ただただ圧倒されました。素晴らしかったです。個人的すぎる感想ですが、非常に好みな作品でした。

暴力忍者:
読む麻薬のような掌編です。褒めの意味なのですが、何を読まされているのかわからず、終始ぽかんとしたまま読み終わったので、もう一周しました。本当に読む麻薬のような掌編です。なんだかクセになってきます。喜びの歌も流してみました。
「手を繋ぎ合って踊る光速マイムマイムで光の粒子となって消えていった。」ここがたいへん好きです。初手からデウス・エクス・マキナを使われるとこんな感じかな? という始まりも面白く、作品の特色上、評価が分かれそうではあるのですが、文章自体がお上手なので気付いた時には読み終わっております。
 何気にキャプションもみっちりカオスが展開されており、これは笑ってしまいました。最初から最後までカオスたっぷりで面白かったです。

暴力海老:
こういうタイプのお話って、何か類型の名前が付いているものなんでしょうか。
脳をシェイクされていく感覚がひたすら気持ちいい。
第九が始まるまでの序盤はひたすらビジュアルが強い(それも原色が瞬くような)のですが、段々と謎概念が連発され混迷が極まってゆきます。
それに、これだけ滅茶苦茶なのに構成というか序破急からの結がしっかりしているので引き込まれ、読み終わった後に爽やかさにも似た感慨が残る。
お手並みは非常に鮮やかですが、暴力としては弱いかなと思いました。


No.33 『我々』 灰崎千尋

暴力JK:ある種の外界からの侵略をじわりじわりと描いていくSFスリラー的な作品。人類が「ハジメ」を受け入れ、しかしハジメを受け入れられなかった人類によってハジメが殺され、それをトリガーにしてこれまでに植え付けられた「花」が咲いていく。人類社会のままならなさとその結果の自滅を描きながらも、ビジュアルと静かな暴力が描かれ方がとても美しいと感じました。

暴力忍者:
たいへん宗教的な掌編に思いました。どれかといえば起きる事象よりも詩的な文章を楽しみながら追っていく手触りの作品でございます。
 我々の正体が実は◯◯!のような、ミステリ展開かと勝手に思い込んで読んでしまいまして、全然違ったのでたいへん申し訳なく思います。前述の通りに詩情があり、全体が美しい雰囲気で構成されております。
 花が咲いていく場面が特に美しいです。破壊的ではなく包み込むような暴力と申しますか、美しい滅亡もまた暴力……としみじみ致しました。
 知能が高いタコピーという走り書きが私の寸評メモ帳にあり、ちょっと面白かったので記しておきます。重ねてにはなりますが、美しい掌編でございました。

暴力海老:
おお、異星人ものの暴力SFだ(草森さんのに続いて2作目)。
「個」としての暴力、粗暴さを技術で押さえ込み、やがて種として穏やか(と彼らが思う方法で)根絶する。
最もグロテスクな差別や蹂躙は善意でパッキングされてやってくるというのが私の持論なのですが、それを地でいくやつですね。
理不尽さの際立つ構造で、これはスケールこそ大きいものの、立派な暴力でしょう。
頻々と現れる「我々は、平和を愛している」のセンテンスが段々と暴力や差別、取り返しのつかない変化や終焉のニュアンスを帯びてくるのが憎い演出です。
これ結構好きなやつだな。


No.34 『中野くんはいつも正しい』 あかいあとり

暴力JK:中野くんから理不尽な暴力を受け続ける少女の話。「暴力は力だね」良い台詞ですね……。凄惨すぎるいじめを受け続ける主人公が、しかしそれでも思考を止めずに暴力と向き合っているように描かれていて、引き込まれました。そして最後、暴力が反転するその瞬間、力が裏返り伝播する瞬間のカタルシスが非常に読んでいて気持ちよかったです。

暴力忍者:
暴力か愛か、暴力は愛なのか暴力なのかという話と主人公の饒舌な地の文が面白く、最初から最後まで楽しく読めました。
 主人公が義父の気まぐれによる「ペンは剣より強し」を指針にしているところがたいへんいじらしいですね。彼を殴りまくる同級生もわかりやすいガキ大将で、ザマァものとしても楽しめました。
 暴力は力だね! ナイスな結論でございます。テーマの最初の日も、規定の暴力表現も申し分なく、最後の逆転構図も王道的で良かったです。
 全体的に読みやすく、ストレートに面白かったなと思う掌編でございました。

暴力海老:
受けた暴力を暴力で返す。
(主人公に仕返しという意識はないようですが)
暴力はすべてを解決する。
素晴らしい結論ですね。
苛めの陰湿さ、それぞれの家庭環境の荒廃具合が良い感じにウッとなる描かれ方をしていて好感が持てます。
暴力という軸足は確か、その意味で暴力小説としてきちんと成り立ってはいるのですが、ただ主人公が中野くんを殴るに至る動機がよく繋がらなかった。
いきなり「正しくないから殴る」はちょっとハテナになってしまいました。
理不尽なら理不尽方向に吹っ切れていれば、このモヤモヤは無かったのかなと思います。


No.35 『けだものタクシー』 外清内ダク

暴力JK:希死念慮を持ったタクシードライバーが起こす暴走事件を描写した作品。
暴力描写としては、筆致のスピード感や言葉運びなど、理性を失う様が疾走感を以て描かれていました。人生がままならない男の、ままならないが故の暴走は、男に感情移入ができる人にとっては気持ち良いものだったのではないでしょうか。
個人的には最後に「子供を殺さなかった」と自己正当化しながら死んでいくという感情の落とし所が非常に最悪な気持ちにさせられたので、仮にこの感覚が作者の意図したものであったのなら、それは成功していると言えます。

暴力忍者:
前半と後半にざっくりと分けて読むことができ、全く雰囲気の違う暴力を楽しめる作品でございました。
 特に前半部が好きです。タクシー内で嘔吐してしまい、吐瀉物の臭いで満ちた車内を「巨獣の臓物の奥底」と現されている部分がたいへん良いと思いました。
 前半部の鬱屈したダウナー状態から、後半のアッパーな躁状態への転換があまりうまくいっていないかもしれません。私自身が急にアッパーになった変化に驚き、妄想か現実かわからず上手く乗れなかったためです。申し訳ありません……そういう読者もいたという指標にして頂ければと思います。
 躁状態時では、ウキウキ轢死体量産タイムの描写が物凄く良かったです。最後の最後にけだものから人間に戻る変化の虚しさに良い余韻がありました。

暴力海老:
前半の鬱屈とした流れからの大暴走、そして破滅。
このスイッチングの落差がとにかく大きくて、痛快すぎる。
この緩急を文章で表現しきる手腕が凄い。
「タクシーが飛ぶ! 俺は吐く!」は勢いが良すぎてちょっと笑ってしまいました。
とにかく人を轢きまくりきっちりトドメまで刺すところ、暴力としても申し分ないですね。
テーマの初めての日をこういう風に解消するのか……ああもう本当に壊れちゃったんだねえという感がまた良い。
とても良い作品でした。


No.36 『メツブシ・ナイトメア』 鍵崎佐吉

暴力JK:事故物件に引っ越した男が、日夜現れる謎の「眼」を探し、隠し続ける物語。素直に「怖い……」と思いながら読んでいきました。あることをきっかけに眼に怒りをぶつけて潰してしまい、それ以降は現れる眼を潰し続けていくという、次第に主人公が病んでいく様子がとても良かったです。暴力ってのは行使し続けると次第に慣れていくもので、それが主人公の日常に浸食したとき、あの眼がこちらを見ていたというのが、なんとも言えない気持ちにさせられました。

暴力忍者:
こちら、私はたいへん好きな掌編でございます。事故物件の設定が良いですね。はじめに目玉が現れる場所が部屋の天井で、これが最後のオチにも使われており、この伏線回収がすごく良いと感じました。
 主人公の、謎の目が現れても住み続ける気概が好きです。現れる目もアダルトコンテンツを見ている時は目を逸らすなどしており、非常にかわいく感じました。
 この謎の目を潰すことにする流れは非常に暴力的で、暴力表現の多さでもたいへん楽しめました。
 また、謎の怪異と壊れた人間の間に芽生えた、なんらかの絆のようなものも感じ取れ、地獄の繋がりの話と読めなくもない部分が良かったなと思います。かなり面白かったです、好きです。

暴力海老:
目を潰す、といういかにも痛そうな描写が出てくるのが良いですね。
段々と狂っていく様がその手段のエスカレーションにも表れている。
そういう意味では「段階」をきちんと描いている、丁寧な作りの作品だと思います。
ただ嫌な上司が出てきた瞬間、なんというかオチが見えてしまった。
最後のくだりで主人公の見ていた怪異がすべて幻覚であったような示唆がなされるわけですが、ということは主人公の部屋の壁、すごいことになってるんだろうなあ……
ここに本人が気付いていないっぽいところも狂気です。


No.37 『一服、』 @kajiwara

暴力JK:ヤクザになりたかった男と、その男と共に生きたい男の話。ヤクザに入るための仕事を失敗した青年が、友人を守るためにヤクザを敵に回し、最悪な状況の末に行き場のない逃避行が始まる。ヤクザに入るための人殺しは震えて失敗しても、友人を守るための暴力は迷いなく振るえる。爽やかな読み味の青春暴力小説、非常に素晴らしかったです。

暴力忍者:
人を初めて刺したという出だしがテーマ回収も暴力表現も満たしており、期待の高まる冒頭でございます。
 人を刺せるタイプだと思っていたけど、そんなことはなかったという後悔にリアリティがあり、一夫と逸郎のやり取りはブロマンス的でたいへん好みです。
 海でも見に行くかという台詞でスパッと終わるところも良いですね。なんとなく爽やかにも感じられ、良い読後感でした。
 全体に満ちる不穏さと一夫の無邪気なキャラクター性が特に目を引き、友人のためなら暴力を頑張れたという流れがたいへん綺麗な掌編で、面白く読ませて頂きました。
 後から気付いたのですがノキド思い出すなと思っていたらイメソンとしてふられていたため納得致しました。

暴力海老:
幼馴染のふたり組による暴力バディ小説。
ほぼほぼ土壇場なのに「俺、いっちゃんいねぇと、ダメだから」なんて言っちゃう一夫と半端者の逸郎のでこぼこバディが良い。
行く末が破滅まっしぐらなのは火を見るより明らかなのに「海でも見に行くか」じゃあないんだよ。
名作映画ノッキンオンヘブンズドアをなぞるようなセリフではありますが、こちらは諦観かあるいは状況の見えてなさによるもので、また別種の味わいがありますね。
ただヤクザものであれば背景や組織の描写がもう少し欲しかったなと思います。


No.38 『テトリスのL字ブロックで殴りたい』 菊池ノボル

暴力JK:わかる~~~~~~!!(わからない)となりながら読ませていただきました。そうです、私もテトリスプレイヤーです。テトリスをフックにして暴力小説って書けるんですね……。テトリスのL字ブロック1本で突き進む暴力、めちゃくちゃ面白く読ませていただきました。なんですかねこの、納得感というんですかね。上手く言えないんですが、テトリスを実写映画にするとこうなるんだろうなと思います。

暴力忍者:
タイトルが大優勝しております。テトリスのL字ブロックで殴ってみたい人間はそれなりにいると思われますので、共感度も高いです。
 読んでいる間に「そんなわけないだろ!!!」というツッコミが出て、たいへん楽しかったです。L字ブロックでバンバン殺したあとはどうするんだろう? と思っていると、まさかのテトリス方向のお話になって、驚きつつも爆笑致しました。
 死体を四列に並べるとテトリスする、こんなに使いどころのない気付きもございません(褒めています)
 トンチキ暴力と言いますか、こういうのがいいんだよ! という気持ちにさせられる良い掌編でございます。

暴力海老:
すごいタイトルだなと思ったらそのままの中身だった。
いいですね、私もL字ブロック持って殴り散らかしたいものです。
それはそれとして作品ですが、何一つ罪悪感とかしがらみのないトンチキ暴力が突き抜ける爽快感がとても良かったですね。
ただ、冒頭の読者に語り掛ける形から世界レベルの動向になるところ、文体とともに妙な断絶を感じました。
これは個人の好みの範疇になろうかと思いますが、冒頭のパーソナルな語り口で走り切った方がトンチキとの相性は良かったのではないかと思います。


No.39 『おれの華麗なる一日』 フカ

暴力JK:同じ日に起きた二つの暴力事件と、その当事者となった兄弟の物語。暴力につぐ暴力が矢継ぎ早に展開し、兄弟二人、どうしようもないところまで来てしまったという絶望にも思える世界を見せてくれる。要素の噛みあい、暴力の顛末、兄弟の絆と夕暮れの光景。政宗くんの動的な暴力と、荒れ果てた自宅の止まった暴力の対比が、大変美しく感じました。見事な作品でした。

暴力忍者:
政宗くんがたいへん格好良いです。私は暴力の才能のある男が好きでございます!
 はじめから暴力表現が続いていき、それを眺めている主人公の語りが気絶しかかっているからか逆にすこし冷静で、このギャップが良いです。
 また、田島の親父さんの乱入と言葉になっていない言葉が面白く、かなりぶっ飛んだことをし始めるところもたいへん楽しめました。ひゃくてん!!!!! の台詞のところはちょっと笑ってしまったほどです。ぶっ飛んだキャラクター、とても好きです。
 最後の帰宅してからの展開も暴力的で、暴力は暴力を呼ぶ、手を出すと出されるというループの話がすごく心に残りました。落ち着いた魅力のある掌編で、面白かったです。

暴力海老:
理不尽な暴力が暴力によって報復されて、最終的に取り返しのつかないところまで行きついてしまって、主人公は「報復合戦のはじまりはどこなんだろう」と考えるんだけど結論はまるで出てこない。
父親と兄、政宗くんと島田親子、ふたつの暴力合戦における「取り返しのつかない結末」が描かれていますが、確かにそのどちらも明確な「はじまり」は書かれていません。
ただ凄惨な結末だけがそこにある。
暴力を行使する、行使し合うということに対する回答ですよね。
文章に質感や色があるのも凄く良いです。


No.40 『五つ目の化物』 月見 夕

暴力JK:神から卑しい身分として生み出された獣が、神の娘の婿選びの戦いに身を投じる物語。3200字以内で描かれた作品としてめちゃくちゃ完成度が高いと感じました。他を圧倒する獣の暴力と、なりふり構わない神の暴力のぶつかり合いが非常に気持ち良かったです。ある種の異類婚姻譚としてはオチがベタなきらいもありますが、それも暴力小説に花を添えるという意味では良い読後感だったと感じます。

暴力忍者:
まずジャンルの異世界ファンタジーにおっ!と思いました。この大暴力大賞ではあまり見ないジャンルでございます。
 設定がたいへん良いと思いました。雑種(キメラ)のモンスターによる不屈の精神が矜持を感じてかっこよく、暴力表現も人外設定を生かして人間にはできない無惨さがあり、読み応えがありました。
 オチはなんとなく読めるのですが、なんの問題にもなりません。素晴らしいです。なにせ現れた少女が本当に可憐で美しく、なるべくしてなったという納得に満ちております。本当に可憐です。私も可愛い……と笑顔になりました。並外れた美は腕力での暴力と対になる別種の暴力なのではと感じ、その点でもたいへん興味深く読ませて頂きました。
 続きが読みたくなる良い終わり方でございました。とても良い掌篇です。

暴力海老:
暴を振るう怪物が美しい少女によって最後鎮められてしまう、神話そのままのようなお話。
悍ましい姿かたちでルサンチマンの塊のような主人公と、そんな彼に何の躊躇もなく好意を向ける可憐な少女の対比が本作品の華ですね。
ストーリーの背景描写をそつなく描写し、戦闘描写もリキが入った豪華な作品と思います。
一方で、色んなものを書こうとして字数制限に引っかかった結果各描写の密度が薄まったような、少々散漫な印象がありました。


No.41 『はじまりは赤い靴』 野村ロマネス子

暴力JK:靴を手に入れたOLがその暴走のままに周りを破壊していく通勤労働ロードムービー。暴力靴履人(ぼうりょくくつはきんちゅ)でダメだった。現代オフィス勤めの人々の不満を全て蹴散らしていく爽快な暴力小説でした。暴力が始まる切っ掛けが赤い靴というのが美しくていいですね。「靴だけは良いものを履け」とは誰が言ったか分かりませんが、まさにその通りだと思いました。

暴力忍者:
所謂トンチキ小説なのですが、爽快感と疾走感が全文にあってたいへん楽しめました。童話の赤い靴が下敷きの現代赤い靴として、良い換骨奪胎だと思います。
 前述のように、とにかく疾走感があります。暴力表現は赤い靴のダンスによって行われており、優雅さもありました。本文をさっと追っているだけでも楽しいです。
 社内の方々がどんどん薙ぎ倒されていく様子が面白く、相談女になっている新人女性に彼氏をあげる! と綺麗に捨て去るところがとても好きです。
 良いトンチキ掌篇でございました。踊りまくって、世界平和に貢献して欲しいです。

暴力海老:
普段は不本意ながら貧乏くじを引かされてばかりいる「私」が謎めいた靴の力で関わり合う全ての人に暴力を振るいまくる。
前半はひたすら理不尽に通行人を蹴り飛ばし、後半は職場で(恐らく普段言葉にしないまでもモヤモヤを抱えている)同僚や上司や出入りの業者たちをなぎ倒していく。
2度美味しい的な痛快感がたまらない。
文章の端々に散りばめられたツイッタラー御用達のような言い回しの数々が、「今この場を楽しもうぜ」と幾重にも語り掛けてくるようです。
きっと頭を空っぽにして読むのが正しい読み方、いや実際楽しいです。
小粋な快作でした。


No.42 『予告なき暴力の記録』 ムラサキハルカ

暴力JK:ある日突然クラスメイトが教室で起こした事件の顛末を描いた作品。取材記風の作品で、淡々とした描写の中に込められた突然の狂気の気配が妙な恐ろしさを感じさせる。ホラーっぽいテイストも感じつつ、その行動の真意が最後まで明らかにならないというのも気持ち悪くて良いですね。「何故彼は暴力を振るったのか」という答えが読んだ人の数だけ存在しそうな、大変読み応えのある小説でした。

暴力忍者:
ここまでで初めて読む感覚の掌篇でございました。暴力の理由がまるでわからないところが非常に良かったです。タイトルを見るに、ガルシア・マルケスの予告された殺人の記録を意識された面もあるのでしょうか。違ったら申し訳ありません。
 暴力表現はとにかく容赦がなく、子供も大人もバンバン殴られるので、たいへん楽しいです。金属バットを振り回す姿は悪魔のように映ったとクラスメイトは言いますが、そんな子ではない筈だとも言われ……。最後の笑顔を思うに彼は満足だったのでしょう。
 このように、読後色々と考えるところがある掌篇は脳が喜びますね。
 インタビュー形式らしい構成も良かったです。もっと読まれて欲しいと思います。

暴力海老:
ある日何の前触れもなく発生した殺人事件とその終焉が同級生たちの証言によって詳らかにされていく。
どのように殺したのかは映像的に描写されるものの、そこに至る動機はなにひとつ明らかにならない。
鮮烈な暴力と情報の欠落の対比が鮮やかな一作です。
普段は大人しい中学生が金属バット一本で体育会系のクラスメイトをはじめ屈強な体育教師3人すら打ち倒すのいうのは少々説得力に欠ける展開ではありますが、そこを犠牲にして字数を割いた同級生のたちの「事件前の様子」についての証言、事件そのものに何ら関係の無さそうなディティールが良い味を出しています。


No.43 『血と汗と性』 宮塚恵一

暴力JK:匂い立つ性と暴力の気配が非常に艶めかしい、一人の男と二人の女との関係を描いた作品。大変素晴らしかったです。個人的にめちゃくちゃ好きな話でした。暴力の箍が外れた幼馴染みと、自分を便利な性処理の道具としか見ていない女との関係が描かれる。主人公にとってはどちらも別の事柄でありながら、その二つが結びついた時、性と血が混じり合って物語が収束していく。ハードボイルドでありつつ陰惨で、非常に読み応えのある作品でした。

暴力忍者:
案外と少ない、エログロスプラッタの類の掌篇です。首絞めはたしかここまでの投稿作にあったのですが、そこにリョナ要素も追加されており、私は満面の笑顔です。リョナラーでございます。
 短い中に過不足なく展開が詰まっており、宮塚さんのさすがの手腕を感じます。詰まりすぎずあっさりすぎず、たいへん読みやすかったです。
 主人公周りにいる二人の女性の差が面白く、片方は首を絞められるフェチ、もう、片方はほぼモンスターと化している殺人鬼と、どちらも一癖あるところが好きです。
 最後に頭を切り落としての幕切れも、虚しい余韻があってすごく良かったです。地味なところですが、競泳水着で人体切断している設定がかなり好きでした。

暴力海老:
アブノーマル性癖枠。
血と汗の匂いに、性器と分泌液の匂い。
嗅覚の描写に重きを置いているのがフェティッシュさを加速させている感があって良いですね。
嗅覚は五感のうち最も情動に直結しているものといいますから。
だらしなく出た腹肉と競泳水着や、痩せぎすの裸体にタトゥー、タイプは違えど胡乱極まりないふたりの女性との間に構築した歪な人間関係、振るわれる暴力に振るう暴力。
一人称文体の、どちらかと言えば静かな語り口で描写される情報量過多なアブノーマル具合、そして官能と肉感にむせるような一作でした。


No.44 『』 2121

暴力JK:インターネットに漂うエログロ画像を見たことで性癖の歪んだ主人公が、人を殺し、屍姦を行う話。目を背けたくなるような描写の続く非常に陰惨なエロ・グロ・バイオレンス小説でした。非常に高い描写力で主人公の心理と屍姦の様子が描かれており、おぞましいほどです。寸評を書くために2度ほど読み返したのですが、最終的にちょっと薄目になりながら読んでしまいました。エロ・グロから目を背けずに真っ直ぐに書かれた、素晴らしいバイオレンス小説、ありがとうございます。

暴力忍者:
二作続けてのエログロスプラッタでございます。たいへん良いですね。私はリョナラーでございます。
 死姦! この題材選びが好きです。切り裂いた喉に陰茎を押し込み逆口内射精、その後に死後硬直フィニッシュと、死体愛好リョナラーの夢に溢れておりました。もちろん実際にしてはいけませんが、これは大暴力大賞。突き抜けたリョナが受け入れられるところにございます。
 ちょっと素になっていいですか?なりますね。髪型はロングを選ぶところ本当によくわかっている!あのですね、掴みやすくて好きというのが本当によくわかるんですよ。逃げようとしても掴んで引っ張り何本か抜けて掌の中でブチブチ音が鳴るあの感覚を愛しているのだと私にはたいへんよくわかります!ロング!長髪!ありがとうございます!!
 取り乱し、申し訳ございません。最後のなんだか幸せそうな終わり方も良かったです。いいエログロスプラッタの掌篇でございました。

暴力海老:
アブノーマル性癖枠が続いたぜ(歓喜)
性癖の尖り具合とゴア描写が頭ひとつ抜けた一作。
逆口内射精などと言う文字列を私は初めて目にしました、とても怖い。
巡り合った「お相手」が本当に母親なのか或いは主人公の認知が歪んだ結果の誤認なのか判断はつきかねますが、どちらにしても別種のきつさがあるのが良いな。
仮に、というかほぼほぼ母親なんでしょうけれども、彼女が息子の顔を判別できないのもきつくて良い。
官能描写のほぼ全てが死体に係るものであるという点も然り。
本物の一点突破型ですね。


No.45 『南しらのお第三公園』 クニシマ

暴力JK:第二次性徴を迎えた少年が、かつて公園で出会った「おじさん」が暴力から守ってくれたことを思い出す物語。心がえぐられてしまった……。上手くひげ剃りができないことで、自分に父親がいないことを思い、それをきっかけに公園での出来事を思い出す少年。「おじさん」が理不尽な暴力に晒される様、それをただ見ていただけの自分が、父親もおらず、剃刀もうまく扱えない自分と重なっていく。暴力からの「弱さ」の表現が、見事でした。

暴力忍者:
しっとりとした手触りの良い掌篇でございました。全体に流れる雰囲気がなんとも言えず悲しげで、すごく好きな読み味です。
 公園にいたおじさんのくだりが特に印象に残りました。主人公の少年はどこにいても行き場がないように感じていて、そんな語彙はまだないのでしょうが、全身に虚無感が満ちているように思いました。その中で味方になり庇ってくれたおじさんのことを、この先も何度も思い出すのでしょうか。その時だけはずっと公園の中にいるのかしらと、しんみりした気持ちでございます。
 アッパーな暴力の多い作品群の中で、文芸の香りのする本作は、新鮮さもありました。じんわりと心に残る掌篇です。

暴力海老:
手慣れぬ髭剃りで始まり、またそのシーンで終わる。
連想から現実へ至る描写の滑らかさと、そこであえて付けられた緩急が美しい。
このあたり、書き手の手腕が光りますね。
おじさんが致命傷を負うタイミング、ここで一瞬流れる気まずさの空気、さりげなくもものすごく良い一幕です。
ただ欲をいうなれば、そこで止まってしまっていると感じました。
そこから飛び出る暴力が欲しかったと思います。


No.46 『暴力探偵・文和グリヲの栄光と引退』 蛙田アメコ

暴力JK:全ての謎を暴力で解決する探偵とその助手の男性バディ小説。めーちゃくちゃ好きでした。極めて身勝手なことを言わせて頂くと、なんだか波長が合う感じがしました。軽快にテンポ良く、羽根を授かったかのように小気味よく連発される暴力が爽快ですらあります。このバディの掌編だけを集めた本を一冊読んでみたい。そう思わされるほどキャラクターも魅力的でした。

暴力忍者:
タイトルから感じた期待通りの暴力探偵ぶりがたいへん楽しいお話でございます。
 文和のキャラクターがとにかく暴力的で良いですね。ブルドーザーを用意しておけと助手に告げ、因習村の何もかもを薙ぎ倒しているところなど、あまりの無法ぶりに笑ってしまいました。ブルドーザーの運転が出来るのも素晴らしいです。
 そこはかとないブロマンス要素もたいへん好きです。所謂バカミスもというものも多少嗜むため、推理も何もなく、暴力ですべてを解決する強引なところも良かったです。
 オチもなんだか幸せそうでほっこりと致しました。お二人には仲良く暮らしていって欲しいと思います。

暴力海老:
タイトルと探偵の名前からしてああトンチキものか、序盤もああトンチキだなと思っていたらまさかのブロマンス。 いい感じに予想を裏切られる作品でした。 細かいところに突っ込みを入れても始まらないような滅茶苦茶をやっているのに、きちんと芯があって読後感も爽やか。 「読んでいて楽しい・気持ちいい」に全振りした、暴力小説大賞というお祭りの場にまことにしっくりとくる一作ですね。


No.47 『』 筆開紙閉

暴力JK:宗教団体の「兵隊」となった青年が、その勢力拡大のための戦闘に身を投じる物語。非常に尖った設定の抗争もので、宗教vsヤクザという構図がとてもいいですね。宗教団体がめちゃくちゃ強いので実際はヤクザは資金調達のための狩り場みたいなものなんでしょうが、過去の血なまぐさい宗教戦争が現代にアップデートされたような世界観が非常に面白く、世界の続きが気になる物語でした。

暴力忍者:
燕という聖女がいる教団に入った主人公の、最初から最後まで諦観に溢れた語り口がたいへん良かったです。
 細かいところになるのですが、「破顔」に「ニヤニヤ」とルビがふってあるところが好きです。薬の回数でマウントを取られても困る、という一節にはクスッとなりました。文体の雰囲気がとても馴染む心地がしました。
 やっていることはカチコミに、とんでもない薬物に、暴力に次ぐ暴力とかなり激しいにもかかわらず、全体が静かな雰囲気で、そのギャップが味わい深い掌篇でございました。

暴力海老:
怪しげな旧友に謎の宗教団体、ヤバそうなお薬。
これも贅沢な設定を盛ってきた一作ですが、掌編というよりは長編の序盤を抜き出してきたような印象があります。
とはいえ尻切れになっている訳ではなく、続きが読みたいと思わせるだけのパワーがありました。
フルアーマー部隊に怯まず凄むヤクザや銃弾の飛び交う銃撃シーンと、絵面もゴージャス。
空を舞う燕、そして童話になぞらえて新たな寄る辺を思う独白による締めも良いですね。


No.48 『わたしの胎教』 プラナリア

暴力JK:陰惨な状況で、最悪が最悪を呼んだその先で、突如として覚醒する母と胎児が世界に復讐をする話。途中まで「うう……苦しい」となりながら読んでいたのですが、どうやらジェットコースターに乗せられていたらしいと気付いたときには感情の落差に少し笑ってしまいました。非常にシリアスな展開からあっという間にノーベル暴力賞を受賞するまで、楽しく読ませていただきました。

暴力忍者:
しっとりとした暗さで始まり、キル・ビルを胎教のために見ているという冒頭がたいへん好きです。
 投資失敗……旦那からのDV……破綻しかけている夫婦関係……と、暗さににこにこし、流産パンチだいすき! と腰を浮かせたところからの怒涛の展開には本気の笑いが出てしまいました。そう来ると思わんやん! と私の中の関西人がツッコみました、ご了承ください。
 まさかキル・ビル胎教の伏線がこんな回収をされるとは……! この、前半後半の温度差がジェットコースターバイオレンスで面白かったです。
 ノーベル暴力賞受賞おめでとうございますと最後に添えさせて頂きます。クセになる温度差の掌篇でございました。

暴力海老:
前半と後半の落差がえげつない一作。
ストロングチューハイを飲む妊婦に借金まみれの家計、夫のDVと鬱屈したところから一転、ハイテンション&ナンセンスギャグのような暴力の嵐。
「終わってるんよ俺ら」のあたりで「うわ~これしんどいの来るな~」と思っていたんですが……「夫!死ね!」は笑うなと言う方が無理がある。
いや、確かにタランティーノとかロドリゲスはこういう展開好きそうだな。
これが筆者の狙った、本作の味わいなのだと思います。


No.49 『グレートバイオレンス』 立談百景

暴力JK:主催作。自著なので寸評ではないのですが、暴力小説が沢山集まったことが嬉しくなって、その祝福の気持ちで書いた作品です。気持ち良く暴力で走り抜けるようなイメージを目指しました。本大会の閉会テーマソングということで、ひとつお願いします。
みなさま本当にご参加ありがとうございました。

暴力忍者:
最後はやはり我々のボスの作品ですね。素晴らしかったです。一生ついていきます。
 さすがの圧巻の主催作! 最後を飾るに相応しすぎる暴力たっぷりの掌篇で、作品にある疾走感がとにかく気持ち良いです。ロマンシスの要素も……最高! ステゴロバトル最強女と破滅を用意できるガチクズ女の二人にしかわからない関係性……めちゃくちゃ良かったです。二人の間でしか成立しない関係、本当に良いですよね…。
 心中の時に手ぐるぐる巻にするやつ、忍者くんだいすき! そしてちょっと舵を切り過ぎるとトンチキに入ってしまいそうなこの設定で、最後にはエモーショナルを感じさせる手腕は脱帽ものです。しかもハッピーエンドだ!
 めちゃくちゃ良い場面でラストとなり、最高の気分です。来世にも暴力がありますように! 主催お疲れさまでございました。たいへん素晴らしい主催作を読ませて頂きました。

暴力海老:
主催、タチバナさんの作品。
暴力は良い、そのスケールがでかければ猶更。
サブタイトル「大暴力」に相応しい暴力のノンストップエスカレーション、そして華々しく突き抜けるエンディング。
核弾頭ミサイルが出てくるのは「暴力探偵・文和グリヲの栄光と引退」に続いて奇しくも2作目(なんだこの祭り)、どちらもエスカレーションの果て相棒との関係性に落とし込む要素のひとつではあるものの、こちらはよりビビッドに突き抜けています。
(あちらのストンと着地する感じも好きですが)
爽快な一作です。


以上、全作品の寸評となります。
以下は選考評議会の様子となっています。先にも記しましたが「暴力JK」は主催である私、タチバナ。「暴力忍者」は草森ゆきさん。「暴力海老」は南沼さんとなっております。
それではよろしくお願い致します。

選考評議会

暴力JK:こんばんわ〜。ぼちぼち開始しますので、ご準備いただければと思います〜。
暴力海老:こんばんは!準備できております
暴力忍者:きました!
暴力JK:それでは早速、はじめていきましょう!
暴力忍者:よろしくお願いします!!!
暴力海老:はーい!
暴力忍者:やるぞやるぞ
暴力JK:じゃあ早速、大賞推薦三作の発表から参りましょう……それでは一斉に
『われを畏れよ』『握って・掴んで・離さないで』『夜明け前』
暴力海老:『おれの華麗なる一日』『Gratuitous Violenceを忘れない』『けだものタクシー』
暴力忍者:『濾過(シンプルに一番うまい)』『セーラー服とチェーンソー(最初の日の使い方が一番印象に残った)』『五つ目の化け物(なんか最後まで印象に残った)』
暴力JK:見事にバラバラ!
暴力忍者:めっちゃ別れてるw
暴力海老:まじか
暴力JK:今回、正直どれも良くてめちゃくちゃ悩みましたね……
暴力海老:『けだものタクシー』と『握って・掴んで・離さないで』は迷いました
暴力忍者:私もかなり迷いました
暴力海老:タチバナさんは、3作どういう基準で選ばれました? 私は「文章の質感」みたいなところで3作を選びました
暴力忍者:『おれの華麗なる一日』と『われを畏れよ』は候補に入ってました
暴力JK:私は素直に「暴力」の使い方が上手いかどうかという判断基準ですね
暴力海老:草森さんはそれぞれ別の視点から選ばれたと
暴力忍者:私の判断基準は()内の通りです! 構成のうまさに目がいきがちなのはあります
暴力海老:マスクさんのがめっちゃ良いのは間違いない、本当に迷いました
暴力忍者:どうしましょう、タチバナさんの判断にお任せしますが
暴力JK:では他の川系企画を参考にして、自分の候補から一人一作を選出し、その後自分以外の作品に投票する形式にします。では、自分の推薦作品から一作選出をお願いします!
暴力海老:『おれの華麗なる一日』
暴力忍者:『五つ目の化け物』
暴力JK:私は『握って・掴んで・離さないで』。それでは自分以外の作品から一作選ぶとしたらどうでしょうか? 私は『おれの華麗なる一日』
暴力忍者:『おれの華麗なる一日』
暴力海老:『握って・掴んで・離さないで』
暴力JK:それでは「暴力大賞」は『おれの華麗なる一日』とします!
暴力海老:はい!
暴力忍者:はい!!!おめでとうございます!!!!!
暴力海老:めでたい!いい作品だった
暴力忍者:ひゃくてん!!!!!のとこめっちゃ好き
暴力海老:なんか素朴な風景の中の取り返しのつかない暴力みたいなのがすごい良かった
暴力海老:ビビッド
暴力JK:おめでとうございます!!!!!! すばらしい!!!!! レイヤー感の強い作品でしたよね。多層的というか。あとでじっくり語りましょう。金賞は1作の予定でしたが、最終選考がもつれたので『握って・掴んで・離さないで』と『五つ目の化け物』の二つに差し上げるのはどうでしょう?
暴力海老:異論ありません!
暴力忍者:私も異論なしです!!
暴力JK:それでは『握って・掴んで・離さないで』と『五つ目の化け物』の2作品が「暴力金賞」となります。おめでとうございます!!
暴力忍者:おめでとうございます!!
暴力海老:おめでとうございます~!
暴力JK:残りの候補が
『われを畏れよ』
『濾過』
『セーラー服とチェーンソー』
『Gratuitous Violenceを忘れない』
『けだものタクシー』
『夜明け前』
ここから2作の「暴力銀賞」を選び、さらに存在してなかった「暴力銅賞」をつくって4作にしましょうかね。銀賞2作も同様に、自分の選出作以外から投票しますか。
では銀賞選出作をお願いします! 私は『われを畏れよ』
暴力海老:『Gratuitous Violenceを忘れない』
暴力忍者:私は『濾過』で
暴力JK:では自分が選んだ作品以外投票するとしたらどうでしょう
暴力忍者:『Gratuitous Violenceを忘れない』
暴力海老:私は『濾過』ですね
暴力JK:私は『濾過』で。
では『濾過』『Gratuitous Violenceを忘れない』を「暴力銀賞」とさせていただきます!! おめでとうございます!!!!!
暴力海老:おめでとうございます!!
暴力忍者:おめでとうございます!!!
暴力JK:『われを畏れよ』『夜明け前』『セーラー服とチェーンソー』『けだものタクシー』 こちらの4作品は新設の「暴力銅賞」となります! こちらもおめでとうございます!!!!!
暴力海老:めでてえ~!
暴力忍者:おめでとうございます!!! 候補全部賞入り 最高のイベントや!
暴力JK:おめでとうございます!! 決まってよかった〜〜〜〜
暴力海老:嬉しみ
暴力忍者:全部面白かった
暴力JK:それじゃ審査員特別賞も決めておきましょうか。では南沼さんからお願いします
暴力海老:では『パティシエのとっておき』に「グレートエビ賞」!!!!
暴力JK:かっけえ……
暴力忍者:その賞欲しい!
暴力海老:えーお二人は?(なんか恥ずかしくなった)
暴力JK:では草さんもお願いします!
暴力忍者:『解散前夜』でお願いします。読んだ瞬間から決めてました
暴力JK:あれめちゃくちゃよかったな〜〜〜〜〜〜
暴力海老:めちゃエモい
暴力JK:では賞の名前を……
暴力忍者:「激エモ忍者賞」!!!!!
暴力JK:激エモ忍者!! おめでとうございます!
暴力忍者:うお〜〜おめでたい!
暴力海老:めでた!!!
暴力JK:えー、私は誰も選ばなかったら『濾過』か『セーラー服とチェーンソー』かなと思っていたので……どうしようかな…w
暴力忍者:なんとw
暴力海老:あらま
暴力JK:全部にあげてえなあ
暴力忍者:大きな愛……
暴力海老:わかる
暴力JK:ちょっとまってくださいね……お待たせしましたでは『きみたちはぜつぼうをしりたい』に「✊ 暴力✊ JK賞」で!!
暴力忍者:うお〜〜〜!! おめでとうございます!!!
暴力海老:おお~おめでとうございます!
暴力JK:悩んだ〜〜〜〜〜〜〜〜。じゃあ作品の振り返りですが……まず、一旦評議員作品の振り返りから終わらせましょうか
暴力忍者:お二人ともの作品大好き! 超面白かったです。寸評で暴れたので読んでください
暴力JK:お二人の作品、めちゃくちゃ良かったです。頼んで良かった〜〜〜〜と思いました
暴力海老:ありがとうございます!僕もお二人のやつ評議員作品じゃなかったら選出候補に入れてました
暴力忍者:タチバナさんの作品はトリにふさわしい圧巻の主催作で、南沼さんの作品はホンモノの暴力を見せてやるに溢れていてどっちも大好きです
暴力JK:元々、大暴力大会はひとりでやろうかなという気持ちだったんですが、もし評議員を頼めるなら草さんと南沼さんがいいなあと思っていたので、私にとっては非常に贅沢な大会になりました
暴力忍者:照れちゃう お二人ともありがとうございます…🌿
暴力海老:タチバナさんのは盛り上がり方がすごいんだよな。草森さんのはとにかく文章の端々に溢れる美しさがたまらん。
暴力JK:まず草さんの『穴』、めっちゃよかったですね。正直SFだったのは意外に感じました!
暴力海老:ね~。意外性。でもとにかく綺麗なの。講評にも書いたんですが「星が降り、終わった」の一文は美しすぎる
暴力忍者:ありがとうございますありがとう…… 人類を滅亡させたかったんです
暴力JK:ビジュアル表現がめちゃくちゃいいですよね、本当に。素晴らしかった。こう、草さんは人物造形が強すぎる作家、という印象が強かったので、視野の広い暴力が描かれてるのが意外だったんですが、とにかく美しかったですね
暴力忍者:照れがすごい 本当にありがとうございます
暴力JK:暴力小説大会の構想を練っているときに、とある人に「評議員に草さんを入れろ、勝てるわけないから(意訳)」と言われたんですが、やはりそれだけの作品力を感じましたね
暴力忍者:せっかくなのであんまり書かなさそうな暴力を書いて見たところもあり、いい機会を本当にありがとうございました 人類も浮かばれます
暴力海老:浮かんで人類!
暴力JK:いや〜滅びましたね〜。滅びありがとうございます
暴力忍者:rip人類!
暴力JK:今回、SF的な作品も多かったですよね。やはり暴力の行き着く先として、人類滅亡しがちという
暴力海老:核ミサイルものが2本あったのはなんか面白かった
暴力忍者:やはりみんな人類を滅亡させたくなるんですね
暴力JK:現実的に強すぎる兵器があるのが悪い…w
暴力忍者:南沼さんの作品暴力に容赦がなくてめっちゃ好きなんですよね リョナラーなので…。ネズミちゃんのかわゆさがまたいい味わい
暴力海老:ありがとうございます!ギャップを書きたかったので…
暴力JK:『アンデスの歌うネズミたち』すさまじかったですね。ミーハーすぎて読んだ時に「これこれこれこれ〜〜!」ってなりました。
暴力忍者:さすが暴力評議員………!
暴力海老:えへへ
暴力忍者:拷問とかも好きなので、いけ!抉れ!と応援上映みたいになりました
暴力JK:正直ゴア表現の生々しさは投稿作中でも図抜けてると思いましたね。色んなところがヒュンッてなる。暴力表現ってのはこうだ!の正解が評議員から出てくるの、本当に強すぎました
暴力海老:タチバナさんの『グレートバイオレンス』は、路地裏からのエスカレーション具合は、他に類を見ないレベルで凄かったですね。そこで百合感情エンド~みたいな。犠牲がでかいんじゃ
暴力忍者:タチバナさんの作品は本当にもうめっちゃ良かったです あれだけの内容が文字数に収まってるのもすごい
暴力JK:ありがとうございます! 自作はもうほんと、あまりに良すぎる暴力小説が集まった来ていたので「これは祝わなきゃ!!」の気持ちで書きました。
暴力忍者:評議員作がなんとなく傾向ばらけているのいいな〜〜と勝手に思っていました
暴力海老:確かにそうですね!
暴力JK:見事にばらけましたね
暴力忍者:この世には色々な暴力がある……。推しもばらけていたのでそういうアレでもすごく良かった気がします。いろんな作品に賞をつけられたというか
暴力JK:それは私も思いました。本当に全部良かったので
暴力海老:完全にばらけましたからねw
暴力JK:よし、それではここからは受賞作を振り返りますか
暴力海老:はーい!
暴力忍者:お!! やりましょう!!
暴力JK:まず大賞『おれの華麗なる一日』! 改めておめでとうございます〜〜〜〜〜
暴力忍者:おめでとうございます!!!
暴力JK:これはね、すごい作品でしたね
暴力海老:3000字とは思えない密度でした
暴力忍者:どんどん予想外の方向へいく展開ですごかったです。さっきも言ったんですが、ひゃくてん!!!!!がめっちゃ好き
暴力海老:そうそう、展開が読めないんですよね。それなのに細やかな情景の描写は生々しい。官能的なんだ
暴力JK:こう、非常に多層的な構造の小説で、違う出来事が起きているのに、それが「暴力」という世界でまとまってる。静と動の場面の切り替わりがいいですよね
暴力忍者:予想外なんだけどこっちを置いてけぼりにしないんですよね その生々しさのおかげで…
暴力JK:生々しいのに、物語的な痛さが身体的なところでない、というのも強い
暴力海老:暴力がエスカレートしていった結果の取り返しのつかなさ、凄惨さがさらっと描写されているのもまたいい
暴力忍者:いろんな良さに溢れている…… 納得の大賞です
暴力海老:ですです
暴力JK:納得の大賞、すばらしかった!
暴力忍者:改めておめでとうございます!
暴力JK:えー、では続いて金賞の1つめ『握って・掴んで・離さないで』から
暴力忍者:これも良かったな〜〜〜!!!良かったばかりになってしまう
暴力海老:これはね、テーマの絞り方と描写が良い
暴力JK:良かったものが本当に多すぎる。テーマの絞り方、確かに良かったですね
暴力忍者:このメインの二人、これ以外のまともな繋がりがなさそうなところがすごく好きです
暴力海老:ね、絶対この時期だけだもん
暴力忍者:ちょいちょい挟まれる受験生っぽいワードが良いおかしみですよね
暴力海老:僕は細やかな描写なんかに痺れてしまうタイプですが、旅人算とか恐竜図鑑なんかのガジェットが凄く好き。塾に通うあの頃の男子そのままなんですよねえ
暴力JK:講評にも書いたんですが、男の関係の書き方が本当に上手いですよね
暴力忍者:そういう見方をするとめっちゃ栄養素が高かったです 男同士のああいうの大好き。名前のなさそうな関係、興奮しちゃうな……
暴力JK:暴力自体も等身大というか、二人の世界がきちんと出来上がってる感じがいい
暴力海老:お互い何の感情もない純粋な暴力と発散なのに手を繋ぐってどうなん、それいいんですかいいんですか、みたいな興奮の仕方をした
暴力忍者:わかる
暴力JK:あれくらいの年代特有の距離感の近さみたいなのが、そのまま暴力に発展してるという読み方もできるのかもしれない。これ読んだあとにタイトルを振り返ると「離さないで」なんですよね
暴力忍者:いい………… ライオンマスクさんにブロマンス書きませんか?ってそそのかしてこようかな
暴力海老:でも離れちゃうんだよね、もうそう遠くない時期に。その刹那性がすごくいい
暴力忍者:ぐうわかる わかるしか言ってなくてすみません。会いもしないんだろうな感 本当に好き
暴力海老:あー絶対会わないわ
暴力忍者:四十代くらいになってふっと思い出すくらいのやつ
暴力海老:でも連絡先なんて調べもしないの
暴力JK:分かる〜〜〜〜本当に素晴らしかった。……ちょっと男の関係の話をしはじめると止まらなくなると思いますので、そろそろ次にいきますか…w
暴力海老:はーい!
暴力忍者:はい!
暴力JK:金賞2作目『五つ目の化け物』! 月見夕さんの作品
暴力海老:なんというか豪華な作品だった
暴力JK:これはですね、ちょっと暴力小説とは少し離れた評価から入って申し訳ないんですが、パッケージの完成度がやたら高かったですよね
暴力忍者:これだいぶ印象に残ったんですけど、醜さと美しさが対極に置かれてるんだと思うんですけど美しすぎると一周回って暴力になると思ったんですよね その対比として見るとすごいなと感じました
暴力海老:うーん、美しさは確かにそう、美学が詰まってはいるんですが、僕はもうひと暴力欲しかったな、という印象でした。ただ戦闘描写は随一、これは楽しかった
暴力忍者:推したくせに変な言い方なんですけどはじめ推しに入れてなかったんですよね… でもなんか考えているうちにこれはもしかして推した方がいいのでは?と考え始めて 推しました。おれが推さなければ感というか
暴力JK:確かに美醜の対極的な構図が描かれてましたね。世界観から構成から、3200字で納まるものとしての完成度が異様に高いと感じて、ちょっときちんと作品の構成を評価できてないかもしれない。私もこの作品は推すか迷ったのですが、オチを異類婚姻譚的に読んだときにわりとベタだったので、より暴力性の高い方を推した、という感じでした
暴力忍者:きょうじゅの『われを畏れよ』もそうなんですけど、圧倒的暴力が別種の暴力に屈服した瞬間をかなり良いと思ったのかなと今気づきました 遅い
暴力JK:あ〜〜それは分かる気がする。この場合は「美しさ」が暴力になってるという
暴力忍者:あくまで自分の解釈ですが美しさを別種の暴力と捉えた上での推しでした そして盲目の花嫁が可愛すぎた…
暴力JK:化物の方もね、素直さがにじみ出てるんですよね。キャラクター造形もよかった
暴力海老:きょうじゅのはね~、ノンフィクションの一連のストーリーでありながら暴力バラエティの富み方がね、さすがだなと思った。
あ、シームレスに話題を移してしまった、すみません
暴力忍者:きょうじゅはほんと流石なんですよね
暴力JK:ちょっと順番が前後してしまいますが、話題に出たので先に触れますか。銅賞『われを畏れよ』
暴力忍者:はい!
暴力海老:りょです!
暴力JK:これはもうね、すみません、私は好きすぎました
暴力海老:きょうじゅは毎回サブタイトルの付け方がうまい、これだけでごはんおかわりできちゃう
暴力忍者:私もかなり好きでした さっきも触れましたが別種の暴力に尻尾まくところが特に…。きょうじゅは上手いな〜〜!完!!!となるくらい手際がすごい
暴力JK:ちょっと全部がツボすぎるんですが、「動物視点」「実話ベース」「熊害」「暴力」で好きの爆撃が起きてしまった
暴力忍者:タチバナさん特攻詰めだったんだ
暴力海老:生命の営みを暴力と呼べるか、呼べるんだよ。美しいなあ
暴力JK:こういうのが好きって吹聴したことないのにな。OSO18への感情の与え方が見事でしたよね
暴力忍者:人外視点ってところでまずおっ!!となりました
暴力JK:人間から動物への目線って基本的に「行動」しか見て取れないはずなので、そこに与える感情が「行動」と一致しているというのがすごかった。それを説得力を以て描画しているのはさすがと言うほかない。
暴力海老:暴力の構造について書いた作品、これに限らず結構多くて嬉しかったですね
暴力JK:多かったですね。みんなしっかり暴力について考えてくれて嬉しい。
暴力忍者:本当にいろんな暴力がありましたね とても良かった
暴力JK:では流れを戻して銀賞に参りましょうか
暴力忍者:はい!
暴力海老:はーい!
暴力JK:では銀賞1作目『濾過』から
暴力忍者:『濾過』は正直ストレート大賞あるとまで勝手に思ってました。構成がうますぎて
暴力海老:『濾過』はね、一番グロテスクなんだよな。あそこまで全部解体することあるか
暴力忍者:純粋な暴力がしたいっていう思想が終わってラスト一文まで読んでからタイトルを見ると『濾過』だから、最後の不純物も濾過されたんだな…となんとも言えない気持ちになりました
暴力海老:ほぼ無粋の域まで来てる純化
暴力JK:濾過は主催としてめちゃくちゃ悩んだ…! とにかく「暴力」をテーマに、それこそ「構造」について書いた作品として、これ以上のものは中々出ないんじゃないか?というほどの作品だったんですが、「暴力描写」をどう捉えるかというところで主催の葛藤がありました
暴力忍者:暴力描写はそうなんですよね そのものはないので…
暴力海老:ライトな文体だけに僕は怖さがありました
暴力忍者:作者名がそのままキャラ名なのもちょっと怖いのよw
暴力JK:小説としての凄まじさは正直、投稿作の中ではトップだったと思うんですよね。ご本人も仰ってましたが、暴力描写自体が薄い、という。でもこの作品で直接的なバイオレンス描写が出ると、絶対無粋なんですよね。だから「暴力小説大会」の評価基準としてはあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜という。そういう難しさ
暴力海老:それはそうだなあ
暴力忍者:難しいところだ……。作者とは親友と吹聴してる身なので推すの迷うまでありました 身内贔屓じゃないんですよ本当に。私としてはとにかく一番ストレートに面白かった、ということで推した作品です『濾過』
暴力JK:ストレートにおもしろい。本当にそう。
暴力海老:瞳孔の開きまくってやや俯きがちな容疑者の取り調べに応える姿が見えるようなところ、凄みはありますが。う~~~~ん、とにかくすごく「角」の立った作品、という印象ですね。他は平坦なのに、一点だけ突破してる。そこがまた怖い
暴力忍者:わりとヒトコワホラーでしたね
暴力JK:サイコホラーに近い。「暴力」が「テーマ」ならこれが大賞だったと思うんですが、「暴力描写」が「レギュレーション」なので私は三選には最終的に入れなかった、という感じです。あんまり面白かったのでめちゃくちゃ悩んだんですけどね
暴力海老:いや面白かったです
暴力忍者:面白かったです 銀賞おめでとう親友
暴力JK:素晴らしい作品でした。本当にありがとうございます。では続いて銀賞2作目『Gratuitous Violenceを忘れない』
暴力海老:これこれ、これ推しですよ
暴力JK:めちゃくちゃかっこよかったですね〜〜〜〜〜〜〜
暴力海老:かっこよ
暴力忍者:これはもうなんかかっけえ〜〜〜〜!!!!!!って思いました。かっけえ とにかくかっけえ…
暴力海老:手法としては印象派的なやつですよね、そのものでなく辺縁や印象を描写する。ルビ芸っていうんですかね あのルビで違うこと書くというやつ めっちゃ好きです。そのものの描写ではないから字数は圧縮しつつ強烈なニュアンスだけを残す。ものすごく鮮やかでした、華がある
暴力JK:こう、物語としての複雑さはないのに、文章構成や表現で強い印象を与える。真似しようと思っても中々できないですよね、この描写は
暴力忍者:君足さんも超上手いんだよな……という面構えになりました あの感性が欲しい
暴力海老:遅延の繰り返される描写が浮世離れしたスピード感を醸し出してる、すごい
暴力JK:この小説って2300字足らずか
暴力海老:そう! そうなんです!
暴力JK:描写力が高すぎて密度感がすごいですよね
暴力忍者:すげえ……になっちゃった。文字数限界くらいまで食った気しますね
暴力JK:ずっとかっこいい、痺れますね本当に
暴力海老:暴力をテーマにこれするんだ、という驚きもありました。いや暴力なんだけど。芸術点は図抜けてる
暴力JK:芸術点ですね。高すぎる
暴力忍者:全読みした人の印象には絶対残るだろうなという確信があります
暴力JK:印象派的故に語りにくい小説なので「体験してくれ」と言いたくなる
暴力海老:そう、体験型
暴力忍者:わかる とにかく読んでくれ!
暴力JK:自分からは絶対に出てこないものを見せつけられる快感みたいなものがありました本当に。……では、つづいて銅賞にいきますか
暴力海老:はーい
暴力忍者:はい!
暴力JK:『われを畏れよ』は先に触れましたので、まずは『夜明け前』『セーラー服とチェーンソー』から。どちらも真狩海斗さんの作品ですね。銅賞1/2占拠、おめでとうございます!
暴力忍者:おめでたい!!
暴力海老:ほんまや!おめでとうございます
暴力忍者:これどっちも好きです 悩んで『セーラー服とチェーンソー』にしました
暴力海老:『セーラー服とチェーンソー』好き
暴力JK:ちょっと作者が同じなので同時に語ることになりそうですが、ご容赦ください。『セーラー服とチェーンソー』良かったですね〜
暴力忍者:『セーラー服とチェーンソー』は最初の日の使い方が一番好きで推しました
暴力JK:ちょっと悪い意味に取られかねないのでめちゃ褒めだと前置きして言うのですが、『セーラー服とチェーンソー』は主催的に「大暴力小説大会にくる作品の想定解」という趣の作品でした。
暴力海老:わかる、溢れ出るお祭り感
暴力JK:いいですよね、やはりスプラッタ
暴力忍者:わかりますよ あの映画のキャビン的な いろんな化け物大盤振る舞い!みたいな雰囲気がすごい楽しいです
暴力海老:なのにちょっとしっとりした感情が入るとこもいいですよね
暴力JK:最初の日の使い方も本当に良い。多分投稿作の中で一番いい。
暴力忍者:そうなんですよ テーマの使い方が頭一つ抜けてた印象がありました
暴力JK:テーマの回収が本当に良かったですよね。物語の正しく動機になってる。こう、わちゃわちゃしたお祭り感のある小説なんですが、遊びはあっても無駄がないですよね。
暴力海老:軸はしっかりしていて、テーマを上手に回収しつつ、バカバカしいまでの盛り上げ方をして……みたいな、手を広げているのに作品としてうまく纏まってる。……タチバナさんと同じことを言ってしまった
暴力JK:補強していただきありがとうございますw
暴力忍者:構成も大変上手いですよね! 『夜明け前』の方も構成綺麗だなあと思いました
暴力JK:『夜明け前』は、構成が美しかったですね
暴力忍者:さっきから構成厨になってる忍者くん
暴力JK:私も構成厨なのでね…
暴力海老:『夜明け前』は美しさ、みたいなのを表現したかったのかなと思いました。ただ、主人公の人物がちょっとぼやけてる印象が強かったかなあ
暴力忍者:セーラー服がヴィランだとして夜明け前でヒーロー側を書いたんだなと思ったんですが、南沼さんと似た感じで私も夜明け前はメインキャラの曖昧さが気になったところがあります でもどっちも良い暴力だなと思い、セーラーの方を推しました
暴力JK:『夜明け前』は二人称小説というのが人物造形的に難しかったですよね
暴力海老:規模のでかい話は好きなんですが、こと字数制限にかなった描写となると難しいなあと思います
暴力JK:規模のでかい話が私も好きなので、私がこれを選んだのはまさに規模のでかさでしたね。こう、歴史的に物語を書くものはいくつかあったと思うのですが、その中でも構成と運び、大規模な暴力の帰結が「最初の日」に繋がってるのが美しいなと思って三選に入れました
暴力忍者:この作者さんテーマ消化がどちらもシームレスでお上手でした
暴力JK:総じて2作とも構成がめちゃくちゃきちんとしてますよね
暴力海老:構成とテーマ消化、どちらもスマートでした。それは間違いない
暴力忍者:字数は結構みなさん悩んでらっしゃいましたね
暴力海老:字数上限キワキワ、けっこういっぱいありましたもんね
暴力忍者:字数制限内で書き切った部分が『夜明け前』はとてもいいなと思います
暴力JK:字数制限はね、みんなが苦しんでいたので個人的には「正解やったな! がはははは!」と思ってました
暴力海老:www
暴力JK:まあ私も苦しんだんですがw
暴力忍者:短い暴力、サイコー!
暴力JK:ではつづいて、銅賞最後の作品『けだものタクシー』
暴力海老:いや痛快な作品でした。陰鬱な導入からのカタルシス、僕は素直にひゃっほいしました。たーのしー!
暴力忍者:私こちら寸評に指摘書いてしまったので会議でも白状するんですが、後半部分に乗れなかったんですよ… 現実なのか妄想なのかわからなくて何かの伏線かな?って最後まで疑ってしまいました…。なので読み方が良くなかったと素直に反省しています…
暴力JK:私もすみませんこれ、作品自体に瑕疵はないということを前置きするんですが、ちょっとオチが個人的に受け入れがたいものでありまして……。暴力描写としてはですね、非常に疾走感がありましたし、現実・非現実感が曖昧な感じも含めて楽しめるところだったかなと思います。やはり文章も上手ですよね
暴力忍者:エビさんとは逆で前半の陰鬱部分がかなり好きな作品です とにかく鬱なのが伝わってきました 後半も改めて切り離して読むと暴走具合が楽しかったです!
暴力海老:僕はテーマの回収としてはこの作品が一番好きまであります。もう戻ってこれない壊れ方しちゃった感がとても良い
暴力JK:正直、オチの部分が個人的には「これはちょっと…」となったんですが、そこも含めて作者がこちらの感情をコントロールしているとしたら、凄まじいですよね
暴力海老:確かに驚くほど他人事ではありますね
暴力忍者:うっかりノリ損ねた私の勝手な事情以外だと躁と鬱の差を書かれるのもお上手で、好きな比喩表現もあった良い作品でした 嘔吐とかも好きなので嘔吐加点があります
暴力海老:後半の疾走感、とても良いです
暴力JK:心を乱されるのは良作。文章や描写は一級品ですよね。とにかく疾走感がある。こう、「車の暴走事故」って反感を買いやすいニュースだと思うんですが、だからこそ創作でやる意義があると感じました
暴力忍者:後戻りできない疾走、良い味わいでした
暴力JK:では続いて評議員賞作品について触れていきましょう。グレートエビ賞『パティシエのとっておき』から!
暴力海老:はーい、私の推し! デザートとデザートイーグルの駄洒落から始まる銃撃戦
暴力JK:これも良かったですね。私もかなり好きでした。掌編としての完成度が高い
暴力忍者:これもいいですよね〜!短い中に三視点入ってるのもすごい
暴力海老:そう、視点の切り替えとか情報の乗せ方が上手いから短いのにVシネ一本観たような満足感があるんですよね
暴力JK:ドラマの思わせ方がすごく上手ですよね。感情の乗せ方も
暴力忍者:かっこよく出てきた一人目がわりとあっさり逝っちゃうところも好きでした あっ死んだ!?と思ってからの怒涛の展開
暴力JK:これ最初の視点で1000文字か。字数の使い方がうまいな〜
暴力海老:ヤクザものは他にもありましたけど、これが頭一つ抜けた上手さだった。読んでてものすごく楽しい一作でした
暴力忍者:葦原が実は女性というのもヤクザものといえば男ばっかという固定観念があったので意外に感じて印象に残りましたね とても上手い
暴力海老:あ、僕は逆にそこが分からなかったかな。そのサプライズなんなの、みたいな。そこで減点してしまった記憶があります
暴力忍者:なるほど なくてもいいといえばそれはそうかもしれない…? 私はあれなんですよ 長髪だったじゃないですか だから長髪男性!で反応してあっ女性だ…で印象に残ってたのかもしれない
暴力JK:そこ、私は意外性も感じず、すっと受け入れたな…w
暴力海老:いやでもとぼけたタイトルといい凄く良い味の作品と思います
暴力忍者:いい作品ですよね!好きです
暴力JK:いやとても良い作品でした。めちゃくちゃ面白かったです
暴力海老:説明的な長台詞がそのまんまヤクザ映画のそれだから、おかげで違和感なく字数を抑制できてるんですよね、すごい
暴力JK:「ヤクザものの文脈」をうまく利用できてましたね。掌編を書くときの参考になる。
ではそろそろ次の作品。激エモ忍者賞『解散前夜』!
暴力忍者:これはね 最高です
暴力JK:いやー、よかった
暴力海老:思い切りエモーショナル方面に寄せた一作ですね、これも良い
暴力忍者:最初から最後まで私の大好きな名前のない関係というものが書かれていました 好きなところしかなく 絶対に私のものにすると読んだ時から思っていました。とにかくエモい! すっごい良い匂いの作品というか、読めば読むほど味のする無二の関係が印象的で本当に好きな作品です。エモ〜〜〜い!で感想を終わらせたいくらいです
暴力海老:何というか、時間が止まった中での独白、みたいなこの文章の質感がすごいな
暴力JK:相方の視点が入らないのがね、すごく良い。台無しにした方の視点で進むのが
暴力忍者:あと個人的に芸人コンビというのが特攻でした
暴力海老:絶対に長続きしない関係、良い
暴力JK:感想言おうとすると「エモすぎ」が出てきてしまう
暴力忍者:もうダメなんだろうな……とわかるところも……こう……エモい!!!! ……ずっとエモいって言ってますね 激エモ賞だからいいか……w
暴力JK:この作品の「暴力」についての評価は講評に書いたのですが、それも良かったんですよね。私は大賞候補としても悩んでました
暴力忍者:私も候補入れはちょっと悩んだんですが、上記にも書いた通り自分のものにしたくなりました 個人賞考えた時にこれしか出てこなかったまであったので…
暴力海老:うーん、僕はテーマがもっと何か別のものだったら推してたかなと思います。暴力として突き抜けたものが他に沢山あったので
暴力JK:そこなんですよね。選出の難しさ。しかし良い作品だった『解散前夜』。読み返したくなる
暴力忍者:選出は見事にばらけましたしね 本当にいいエモさのいい作品です 草食エモーショナル賞なら大賞でした
暴力JK:エモ全振り小説大賞、やっていただきたい…w
暴力忍者:www 適当ぶっこいてすみませんw
暴力JK:では次にいきましょうか。✊ 暴力✊ JK賞『きみたちはぜつぼうをしりたい』!
暴力海老:暴力太郎!
暴力JK:最高でしたね〜〜〜〜
暴力忍者:かなり初期の投稿作ですよね 読んでる間ずっと楽しかったです!
暴力海老:こんなんわろてまうやろ枠
暴力忍者:コメディに振った作品もかなり多かったですよね
暴力海老:そうそう、コメディ枠がいっぱいありましたね。読んでて笑っちゃう作品は沢山あった
暴力JK:『きみたちはぜつぼうをしりたい』は勢いがすごすぎる。筆致が暴力的すぎる、ということで選ばせていただきました
暴力海老:勢いは凄いのに言葉遊びが丁寧というか
暴力忍者:文章はもう安定のうまさ さすがです
暴力JK:この作品の好きなところはかなり多いんですが、読み進めていくにつれて暴力の具体描写が全部言葉としての「暴力」だけになっていくんですよね
暴力海老:最後の方ほぼ概念化してましたからね。おお、エスカレーションしてゆく……という感慨があった
暴力忍者:暴力ができなくなって悲しむナイフ使いが可愛い雑魚で、可愛かったです
暴力海老:ナイフぺろぺろ舐めてそうなモブくん
暴力JK:こう、めちゃくちゃなのにロジカルでね、「暴力」がどんどんゲシュタルト崩壊してきて、バイオレンスを「小説でやる」ということに意義があるような作品だったと思います。
暴力海老:なるほど
暴力忍者:暴力そのものの話をしている感じだったのが初期投稿作なのもあって印象に残りました。スピード感も良かったな〜〜〜!!
暴力JK:というわけでね、評議員賞はこんなところかなと
暴力海老:はーい!
暴力忍者:はい!いやあどれもいい作品です
暴力JK:素晴らしかった
暴力海老:総じてお祭り感がありました
暴力忍者:作品じゃなくて評議員側の話なんですが、けっこう意見がばらけている感じが面白いというか会議の甲斐を感じて興味深く思っています
暴力海老:それはありますね。いっこも被らないんだもん
暴力忍者:こんなに被らないとは思っていなかったまであります
暴力JK:確かに、ここまでバラけるとは思ってませんでした
暴力忍者:同じこと言ってしまった!
暴力JK:評価してる作品の大枠はそこそこ同じだったように思うんですが、「決定打」の決め方が全然違いましたね
暴力海老:ですね、どの軸を重視するかがそれぞれ違った感じ
暴力忍者:う〜〜ん面白い 寸評もばらけてそうで楽しみです
暴力JK:傑作が多かったというのもある
暴力忍者:本当にそうですね! 『きみたちはぜつぼうをしりたい』の話の時にも触れましたがスプラッタコメディ的なギャグ方面も豊富で、どれか大賞に推すか悩んだりもしました
暴力JK:ここからはちょっと他作品の話もなるべくしておきたいんですが、真っ先に触れておきたい作品がありまして
暴力忍者:はい!
暴力海老:
暴力JK:多分今回の一番の問題作だと思うんですが……『おいでよ動物マージャンの森』
暴力忍者:www
暴力海老:あれか!
暴力忍者:あまりにもタイムラインなのよ
暴力海老:いつメンなんだわ
(※編集注:『おいでよ動物マージャンの森』は評議員3名の知人・友人の雀士たちをモデルにした作品になっています)
暴力JK:私、マジで麻雀がわからなくてですね、麻雀的暴力小説の評価として、お二人はどう読んだのかなというw
暴力忍者:ああ〜〜〜なるほど!
暴力JK:小説としては面白く読めたんですけど、麻雀がわからないという
暴力忍者:豪運による運だけ麻雀自体に関しては○すぞ!!!と常日頃思うので、あれは暴力に発展してもおかしくないです 個人的には
暴力海老:正直ゲラゲラ笑いながら読みました。轟運麻雀は暴力、というのはそれはそうですが。……同じこと言っちゃった
暴力忍者:w やっぱそうですよね!
暴力JK:じゃあやっぱり暴力小説なんだw
暴力海老:人物モデルを知らない人でも楽しめるとは思いますが、やはり内輪ならではの楽しさが勝る、という感じですかね。
総合的、フラットな視点でいえば、楽しいがもうひと暴力ほしいという印象でした
暴力JK:いや、きちんと暴力小説として成り立っていると言うことがわかったのでよかったですw
暴力忍者:w ちゃんと暴力でしたよ!エビさんの仰るように楽屋オチという楽しさがある小説でした それはそれとしてあれの猿と狐は出禁にして欲しいです
暴力海老:みんな思ってるんだなあ。因みにわたしもそういう麻雀を打たれると「暴力だ!」といって泣きます
暴力忍者:私はタイムラインで暴れ散らかして気を使わせてしまったことがあります。
心は一つ
暴力JK:おもしろすぎる。……では他作品も。何か語りたい作品はありましたか?
暴力海老:ロマンを詰め込んでくるノワール作品は大体刺さりましたね
暴力忍者:ノワール、ハードボイルド良かったですよね… 狐さんの『デイブレイク』とかすごい好きでした
暴力海老:『いつか来るその日に』『裏切者たち』
暴力忍者:その二つも好き! 特に『裏切り者たち』、読みたいハードボイルドもうきた!という喜びを感じました
暴力海老:『デイブレイク』の落ちぶれ兄貴がマジで好きなんだ
暴力忍者:『デイブレイク』の方なんですけど、男同士の湿度のある師弟じみた関係性がすごい食い出がありました。落ちぶれ兄貴本当にいい 転落ぶりがエッチまであります
暴力JK:『デイブレイク』はマジで「このヤクザものが読みたかった」感がありました。ヤクザはヤクザに一番容赦がないですからね
暴力忍者:狐さんには申し訳ないながら、かなりいやらしい目で読んでしまいました!
暴力JK:いやらしい目w
暴力海老:すけべ!
暴力忍者:すごい良い湿度だからつい…w
暴力JK:私の第一印象「草さん好きそうだな」でしたw
暴力忍者:www
暴力海老:拷問も生々しくていいし、タイトルに繋がるラストもカッコいい
暴力JK:しっかり生々しいし、前後で同じシーンを描くことで関係の反転を描くのも美しかったですよね。小説として読んでて気持ちよかった
暴力忍者:3200文字におさめるための場面選びすごくお上手ですよね
暴力海老:苛烈さを受け継ぐこと、ある種の諦観、時間を経た立場の対比……みたいに、短いのにいろんな味が詰まってるんですよ、この作品。とてもいい
暴力JK:良いヤクザだった。ヤクザは良くないか。良い悪いヤクザだった
暴力忍者:とても良かったです 性的な意味でも
暴力JK:一方で『裏切り者たち』は海外の裏社会的な作品
暴力忍者:『裏切り者たち』の方はこれだよこれ!!と言いたくなる海外ハードボイルドの雰囲気がムンムンで、読んでてめちゃくちゃ楽しかったです
暴力JK:今回、ガンアクションを取り入れた作品の中で随一の仕上がりだったのではないでしょうか
暴力海老:ロマンが詰まってますよねえ。それに場面転換というかカメラの切り替えが上手い、気持ちいい
暴力忍者:ガンアクションめっちゃすごいですよね 作者さんTwitterフォローさせていただいてるんですが、銃器にものすごくお詳しいんですよ
暴力海老:確かにめっちゃ詳しいですよね!
暴力JK:作品を成立させつつ、銃の描写も惜しまない。非常に巧みな作品
暴力忍者:ショートフィルム見たような読後感ですごく気持ちよかった
暴力海老:掌編としての完成度はとても高いと思いました
暴力忍者:単純に私が銃器好きなのもあり、ほんとに楽しい作品だったな〜〜 勝手にやったピックアップにも入れました 確か
暴力JK:他に気になった作品はありますか?
暴力海老:あ、一番「それどうなん」と思ったのは紫陽さんの『パンチャーGOTO』でして。今あげた流れとは一切関係ないんですが、義手でオナニーするところが一番引きました
暴力JK:『パンチャーGOTO』は一番槍でしたね
暴力忍者:義手オナニーしてたっけ!?と思って確認しちゃったw
暴力JK:私も…w 受け入れすぎているのかもしれない、そういう描写を
暴力海老:一番槍としてのクオリティは凄く高かったけどもそこが一番ヒュンとなった。なんて恐ろしいことをするんだ
暴力JK:あ、そういう「どうなん」なんですねw
暴力忍者:この義手でオナニーしたら下半身ナーフになっちゃう…w
暴力海老:草森さんは気になったやつありますか?
暴力忍者:気になったやつというか、私は講評を書くときにまず読んで簡単なメモだけを残して後から清書、みたいな書き方をするんですが、そのメモに「知能の高いタコピー」とだけ走り書きしてあったのが灰崎さんの『我々』でした。クソメモすぎて覚えているというしょうもない話ですみません…w
暴力JK:知能の高いタコピー、たしかに…w
暴力忍者:話題に登っていない作品だと『メツブシナイトメア』がかなり好きでした ホラー枠。アダルトコンテンツ視聴時は目を逸らしてるところがとても可愛い怪異
暴力海老:良いホラーでしたね
暴力JK:『我々』は外界からの侵略という意味で、SFスリラー的な良さがありました。『メツブシナイトメア』も良かったですね。意外とホラー系が少なかったので印象に残りました
暴力海老:確かにホラーは少なかった
暴力忍者:そうそう、ホラーが案外すくなくて あってもスプラッタ方面というか。わりと人間による暴力の方が多かったですよね
暴力海老:暴力がテーマとなるとそうならざるを得ないように思います
暴力JK:『メツブシナイトメア』は、身の回りの小さい怪異的な異変が、暴力によって別の日常に接続されるところが好きでしたね。
暴力海老:痛そうな描写がいっぱいあるところ、好きです
暴力忍者:『メツブシナイトメア』、怪異と人間に絆みたいなものが見えなくもない……と思って斜めの興奮の仕方をしてしまいました
暴力JK:読み方がBLの人すぎるw
暴力忍者:何にでも関係性を見ようとする悪癖!
暴力JK:こう、明確にBLではなくても、男の関係を書いたものも多かったですよね。『一服、』とか好きだったな
暴力忍者:多かったですね!!!!!クソデカボイスになってしまう。最高の企画です
暴力海老:そうそれ、『一服、』良いブロマンスだった
暴力忍者:『一服、』も良かったな〜〜〜!!!
暴力海老:どうしようもないやつらのどうしようもない終わり方は大好き
暴力JK:「破滅的な状況になっていく」のが癖なのを最近自覚しはじめました
暴力忍者:すっごい良いブロマンスです どんどんダメになっていくエンド、大好き
暴力海老:見苦しさマシマシのノッキンオンヘブンズドアだった
暴力忍者:『暴力探偵・文和グリヲの栄光と引退』もブロマンスだったな…と自分の寸評見返しながら思い出しています
暴力JK:暴力探偵! あれ本当に好き
暴力忍者:あれ後から名前がぶん殴りになってるって気づきましたw
暴力海老:文和グリヲか。もうひとつの核ミサイル作品
暴力忍者:そうそれです 文和グリヲ
暴力JK:核ミサイル枠
暴力忍者:暴力はすべてを解決する…!を探偵がやっている話 読みながらずっと笑ってました
暴力JK:コメディとしての完成度が高かった。一冊読みたい
暴力海老:そっちのエンドに行くんだー、という嬉しい驚き
暴力忍者:なんか幸せそうでしたよね 探偵助手も私の特攻なのでありがたいです
暴力JK:他のコメディ枠でいうと『生物兵器と殺し屋さん』『屠れサメロス』『テトリスのL字ブロックで殴りたい』『はじまりは赤い靴』『わたしの胎教』あたりですかね
暴力海老:どれもエンタメ極振りのやつですね、大好物
暴力忍者:『屠れサメロス』もだいぶ笑いましたw
暴力JK:全部勢いが最高だった
暴力海老:『テトリスのL字ブロックで殴りたい』も良かったな~!
暴力忍者:『テトリスのL字ブロックで殴りたい』、多分一番笑ったというか 死体並べたら消えるところで全力のツッコミが出ました なんでだよwwwって
暴力JK:『テトリスのL字ブロックで殴りたい』、共感しちゃったな〜〜〜〜〜〜〜
暴力海老:あのワンアイデアで突っ切る勢いが凄く好きな作品でした。後からタイトルが575であることに気付いた
暴力忍者:本当だ575だ!?
暴力JK:本当だ…w 『屠れサメロス』はもうタイトルがズルすぎるんですよね
暴力忍者:『屠れサメロス』、タイトルでもう笑わせにきてる
暴力JK:転売屋を私の代わりに成敗してくれてありがたかった
暴力海老:『生物兵器と殺し屋さん』も良い。名前で遊ぶ系、楽しいですよね
暴力忍者:『生物兵器と殺し屋さん』も良かったですよね!名前のルビ本気で笑いました ころしやあさしんwww
暴力JK:『生物兵器と殺し屋さん』、今回コメディの中でも「コメディ作品自体が持つ暴力性」に触れていた唯一の作品だったと思うので、その点もすごくよかったですね
暴力忍者:ギャグってそれは死ぬやろwな暴力でも普通に生きてたりするのがありますもんね
暴力海老:「この演出を大げさにすると確かにそうなるなあ」みたいな新鮮な驚きがありました
暴力JK:ヒロインが生物兵器、示唆的だ…w 『はじまりは赤い靴』も痛快なコメディでしたね。労働者賛歌。プロレタリアバイオレンス
暴力忍者:あれも面白かったですね!スピーディで楽しかった
暴力海老:インターネットギャグがいつまでも連なってて楽しい奴だ。めちゃくちゃ痛快でした
暴力忍者:社内の人間片っ端からぶん殴って行きたくなる経験ある人も多いと思うので、爽快感のある暴力でした
暴力JK:『わたしの胎教』はね、最初辛い話かと思ってたら、いつの間にかジェットコースターに乗せられてた
暴力海老:わかる
暴力忍者:わかる。まさかの展開でガチ笑い出ちゃった
暴力海老:読み終わってからなぜタグにタランティーノが入ってるか分かりました
暴力JK:一回混乱したw
暴力忍者:キルビル観てるの回収されると思わんのよw
暴力海老:「死ね!夫!」は何をどうやったらそんなセリフ出てくるのか分からん、大好きです
暴力JK:コメディ作品全般、今回特にお祭り感があり、盛り上げて頂いて本当にありがたかったです。全部面白かった
暴力忍者:面白かったですね〜〜!!
暴力海老:エンタメ大好きなのでとても楽しめました
暴力忍者:エンタメから文芸の匂いのするものから色々楽しめる良いお祭りでしたね…
暴力海老:いやあ、ほんとうに良いお祭りだった
暴力JK:全部に何かしらあげたいくらいある
暴力忍者:全作優勝
暴力海老:ほんとだよ
暴力JK:うーん、どうしようかな、まだ触れたい作品も多いですが
暴力海老:気になった作品があるならお聞きしたいです
暴力忍者:ぜひぜひ!
暴力JK:私『終末創世革新歓喜』が最高に好きで、これも最後まで選出候補に入ってたんですよね
暴力忍者:あの読む麻薬感、めっちゃ好きです。な、何を読んでるんだ俺は…?になる
暴力JK:あの内容で光景が浮かぶ、というのが本当にすごかった
暴力海老:混迷の極まり方半端ないやつだ。序盤の絵が大好きなんですよね
暴力忍者:私高速マイムマイム好きです
暴力海老:あんなめちゃくちゃなのに、なんというか構成はしっかりしてるんだよな
暴力JK:今回、終末的作品もいくつかある中で、最もビジュアル的だったのが凄く良かったですね〜〜
暴力忍者:内容はカオスなのにちゃんと読み進むんですよね そこがまたすごかった
暴力JK:文章力がすごすぎる
暴力海老:文章力といえば『壊れた彼氏とゴッドハンドの孫』も凄かったな
暴力JK:あれもすごかった。ジュージさん
暴力海老:さすがの一言
暴力忍者:安定のジュージさん あれもコメディさもありつつオチはちょっとしんみりするというすごい話
暴力海老:なんでそこですんってなるのってなる
暴力JK:そういう意味でちょいホラーテイストもある
暴力忍者:ホラーっぽさもまたいい味わい…
暴力海老:でも読み終わってサブタイトル読んでもう一回笑いました
暴力忍者:タイトルも初めは何…?と思うんですけどその通りの話なんですよね
暴力JK:これどこから発想が出たんだろうな…
暴力忍者:ジュージさんはいつもどっから出たんだ…?という話を書かれる印象です。ゴッドハンドなのはジュージさん本人なのかもしれない…
暴力JK:それをあのペースで投稿してますからね、本当にどうなってる
暴力海老:それが一番の謎っすね…
暴力忍者:進捗怪異、進捗ジャンキーと呼ばれるだけありますね
暴力JK:ジュージさんの作品もある意味男女関係の作品でしたが、そういう作品も多かったですよね。『アイアムユア』『愛情転生奇譚』『血と汗と性』『歪』『PEACE OUT』あたりですかね
暴力海老:『血と汗と性』は良い
暴力忍者:『血と汗と性』 いいですよね エログロ方面というか
暴力海老:実は嗅覚描写が癖なんですよね。官能に訴えるところが。この作品はとても官能的だった。
暴力JK:匂い立つ作品でしたよね
暴力忍者:『歪』もなんですが、私はシンプルにリョナラーなので死体解体や迫真の殺人描写などがかなりヘキに効きました いい薬です
暴力JK:『歪』は迫真でしたね
暴力海老:『歪』はゴアゴアだった
暴力忍者:『歪』ね ロングヘアの女性を選ぶところ 本当によくわかると思いました
暴力JK:嫌な共感…w
暴力海老:負けたぜ、と思ってしまった
暴力忍者:『解散前夜』が何かの賞になったら『歪』を個人賞にしようと思ってたほどです
暴力海老:私もリョナラのケがあるので『血と汗と性』、『歪』と続いたのはとても嬉しかったです
暴力忍者:『血と汗と性』は二人の女性の違いの描写も好きでした
暴力海老:それ~。どっちも違ってどっちもヤバくていい。二度美味しいんだ
暴力忍者:やばい女、いいですよね……
暴力JK:やばい女の贅沢盛り。『アイアムユア』はその点でいうと非常に読みやすい純愛ものでしたね。カジュアル首締め
暴力忍者:『アイアムユア』、首絞め一本でいきたいという気概を感じる作品でした
暴力JK:読後感が爽やかでよかった
暴力海老:少し物足りなさはありましたが、綺麗な作品ですよね
暴力忍者:読みやすくて良かったです 暴力自体がわからないという方もいらっしゃったので、そういう方の指標にもなったんじゃないかなと
暴力JK:対して『愛情転生奇譚』も別種の純愛
暴力忍者:『愛情転生奇譚』も面白かったですね!死ぬたびにだんだんげんきになるところ好きです
暴力JK:そうそう、元気になっていくのがいい。最後のオチも好きでしたね
暴力海老:良いどんでん返しでした。振るった暴力が返ってくる、これは暴力物の醍醐味ですね
暴力忍者:うんうん 暴力が返ってくる 醍醐味です
暴力JK:しかもその理由が「愛情を思い出して貰うため」というこれまでの展開がきちんと反映されてるのが良かった
暴力忍者:テンポよく進んですごく読みやすかったのも良かったです
暴力海老:こう、もう少し迫真に迫った描写があれば推してたな
暴力JK:『PEACE OUT』はある意味男女ものでもありましたが、『いつか来るその日に』『シティ・オブ・ゴッド』と同じ「親を殺された子供が拾われる話」。どれも別種の切なさがあって良かったですね…
暴力忍者:話のテンプレートとして親を殺されて拾われるという構成自体がかなり好きです
暴力海老:『PEACE OUT』はアクションと湿度高めの感情が盛り盛りで好き
暴力JK:どれも好きでしたが『いつか来るその日に』の描写が美しくて大好きでしたね。何度か読み返した
暴力海老:『いつか来るその日に』にも良い
暴力忍者:どれも良かったですね! 『PEACE OUT』のバトル重視の構成もすごく楽しかったです
暴力JK:『PEACE OUT』はアクションがかっこよかったですね
暴力忍者:『いつか来るその日に』は拾った側の男性が普通のおじさんなところがいい味わいでした
暴力海老:ディスペルの人物描写、個人的にものすごく好きです
暴力忍者:BL読みの癖なのかなんとなくハンサムな感じで想像したら全然そんなんじゃないってすぐ明示されて、そのギャップもあってかなり印象的です いい人物造形だ…
暴力JK:『シティ・オブ・ゴッド』は導く大人がいなかったというのがね、辛かった
暴力海老:変態神父の存在感が凄くないですかあれ
暴力忍者:めっちゃわかります 神父やばい。肉体に十字架掘るのはやばい
暴力JK:変態神父、存在感が本当にすごい
暴力忍者:そこまで出てくるわけじゃないのに変態神父の印象が本当に強いんですよね リョナラーの私もドン引きのヤバさ
暴力海老:悪徳が跋扈する町の中で神父だけ悪徳レベルが個人で突き抜けてる
暴力JK:やばさの象徴ですからね
暴力海老:ヤバ神父、せっかくだからもう少し掘り下げて欲しかったな……
暴力忍者:ヤバ神父スピンオフ、読んでみたいですね…w 最ヤバキャラ賞があるならこの神父だろうな…まであります
暴力海老:暴力探偵とかに迫るクラスのキャラなんだよな
暴力JK:町の設定的にも、話を広げられそうですよね。治安激悪町
暴力忍者:暴力探偵、ヤバ神父、競泳水着死体解体女、ヤバキャラたち
暴力JK:子供繋がりで言うと『花が咲く』『真っ赤なザクロ』『中野くんはいつも正しい』『予告なき暴力の記録』『南しらのお第三公園』がティーンの暴力への遭遇を書いた作品ですかね
暴力忍者:全体的に文芸の雰囲気を感じる作品群ですね
暴力JK:『真っ赤なざくろ』『中野くんはいつも正しい』はいじめの復讐を書いた作品
暴力忍者:私『予告なき暴力の記録』、かなり好きなんですよね いまだに解釈を考えているところあります
暴力海老:『予告なき暴力の記録』は僕も印象に残りました
暴力JK:『予告なき暴力の記録』も面白かったですね〜。ルポというか、取材記的な作品。色んな解釈が考えられる。そういう意味で「バット」というキーアイテムの使い方が好きでした
暴力忍者:結局なんでそんなことしたのかという部分がわからないからこそ色々考えるんだろうなと思います タイトル的に、ガルシアマルケスの予告された殺人の記録に影響受けたのかな?とか。淡々としたルポ形式なのも好きだったな〜
暴力海老:四島の心情が一切描写されないスタイルだから、解釈は幾通りもできますね。僕は解釈なしで、あれを丸まま飲み込んだときの空虚感を味わうのが良いように思います
暴力JK:考え続けることができる、という意味で非常に文芸好みする作品でした
暴力忍者:文芸好み的には『花が咲く』と『南しらのお第三公園』もめちゃくちゃいい文芸でしたね
暴力JK:どちらも素晴らしかったですね。心がえぐられてしまう
暴力海老:いいですね! どっちもいい味わいの作品でした
暴力忍者:いい…………で感想を終わらせたい 余韻の中にずっといたい
暴力海老:どちらも喪失感が良い
暴力JK:ちょっとあんまり語りすぎたくない作品ですよね
暴力忍者:そうなんですよね〜 もう戻らないなんらか、何回読んでも心に残る 『花が咲く』は作者のぺるさんが「最初の日」のテーマを見てなかったって仰ってましたっけ
暴力JK:仰ってましたw
暴力海老:そうですね、普通に読んでました。申告なきゃ気付かなかった
暴力忍者:私も言われなかったら気づきませんでしたw
暴力JK:奇跡的にテーマ回収ができているという
暴力忍者:良かったね、ぺるさん!
暴力海老:このどん底感、いいよなあ、しみじみ
暴力JK:是非読んでいただきたい
暴力忍者:どっちもとりあえず読んで!という風情です
暴力JK:『真っ赤なザクロ』『中野くんはいつも正しい』はいじめの復讐を書いた作品でしたね
暴力忍者:『真っ赤なザクロ』、展開がまさかでした そう来るんだ!?という驚きがありました
暴力JK:『真っ赤なザクロ』は、いわゆる「中学生が抱きがちな妄想」を正しく形にした作品でしたね
暴力海老:覆面集団の目的が何一つ分からなくて好き、ザ・理不尽
暴力JK:こう、力を得てもヒーローになれないというところが、妄想の先を描いていた感じがして好きでしたね
暴力忍者:『けだものタクシー』の時もそうだったんですけど、え!?という展開に弱いみたいで、ザクロの方も展開に取り残されてしまったところがあります。勝手に現代ドラマだと思い込んでいた私が悪いのですが!
暴力JK:確かにちょっと唐突感はありましたね。唐突感自体が味でもあるのですが
暴力忍者:でもバンバンみんな死んでいくところはやったれやったれ!という楽しさもあり、面白かったです
暴力海老:どちらの作品も苛めが良い感じにきつくて好印象です。『中野くんはいつも正しい』は家庭環境もきつくて、尚ヨシ!
暴力JK:『中野くんはいつも正しい』は、暴力が返ってくる、というカタルシスが良かった
暴力忍者:中野くんの方もいじめ描写が迫真で読み応えがありました
暴力JK:主人公の俯瞰的な視点がまたキツさを増す
暴力忍者:主人公がわりと饒舌な地の文で喋るので悲壮感はさほどなかったのが読みやすそうで良かったです
暴力海老:ただ中野くんを殴るに至る動機がちょっと腑に落ちなかったかなあという印象です。こう、スイングが弱い。暴力そのものとしてはかなり高レベル(レベル?)ではありますが
暴力JK:私はいじめ自体が「狭い世界」での話だから、割と気にならなかったかな? 狭い世界では些細なことが巨大なものになったりするので
暴力忍者:動機自体を忘れていて、ということは良いとも悪いとも思わなかったみたいです あくまでも私はですが…
暴力海老:いじめ繋がりでいえば、『川田くん』もその枠っぽいかな
暴力JK:『川田くん』も確かに
暴力海老:『川田くん』も中々迫力のある造形でしたね
暴力忍者:川田くん、クソ上司へのぶん殴りでナイスゥ!の声が出ました
暴力JK:『川田くん』は積極的にいじめというか、ヘイトを稼ぎに行ってるw 妙な気持ちよさのある作品でしたね。これもブロマンス的な趣がある
暴力忍者:やはり男同士の話が多くてこれには忍者くんもニッコリ
暴力海老:なんか妙なリアリティを感じて、そこに迫力を観た気がします。良かった
暴力忍者:テーマ回収も良かったですよね
暴力海老:「明日につながる」という形のテーマ回収が爽やかな読後感を生んでますね
暴力JK:川田くんの「目が綺麗」というのが本当にいいんですよね
暴力海老:あ、そうそう、その目が綺麗なところがかえって「暴力の化身」感あるんだよな
暴力忍者:暴力の化身 いい言葉
暴力JK:川田くんは確かに暴力の化身という言葉が似合う。これもかなり早い段階で投稿された良作でした。男同士、で言えば『犯罪とは、例外なく革命である』も男の関係を描いてましたかね
暴力忍者:男の関係だけ抜いてくると、めっちゃ好きでした
暴力海老:どうしようもないろくでなしどもの話ですね、良きです
暴力JK:そこに挟まる女がどうやら私だったんですが…w
暴力忍者:突っ込んでいいのかわかんなくて寸評で見ないふりしてしまいました…w これが傍観者の立場…?とゲンドウポーズになってしまった
暴力JK:作品としては、ろくでなしを描いてて良かったですね。「革命」という言葉を使うのが、ろくでなしの矮小さを出してていい
暴力海老:それ絶対革命でもなんでもないんだよな…
暴力忍者:ほんとずっとろくでなしでしたね そこが好きです
暴力海老:テーマどこで回収してるんだろうと思ったら初体験の日ってことなんですね、気付いてさすがにうわ~ってなりました
暴力忍者:コメントに……困る……!
暴力海老:なかなか最低で良かったです、まさしく暴力
暴力JK:そう思います。ろくでなしの男という感じで言うと、『この世界からの追放。』の主人公もろくでなし枠という感じでしたかね
暴力海老:あ、この作品結構好きでした
暴力JK:ろくでなしが故にきつめのループを繰り返させられるという
暴力忍者:これいいですよね! 徹頭徹尾自業自得という感じで
暴力海老:そうそう、何かの教訓話みたいな
暴力JK:異世界転生+ループもののルールをうまく使ったお話で、面白かったですね
暴力海老:暴力に頼らないような暮らし方をしないとループからは脱出できないとか、そういうお話なのかなと思いました
暴力JK:どうやったら脱出できるんだろう……みたいな話を加えると長編にしても面白くなりそう
暴力忍者:サトウさんは普段Twitterで140文字SSをたくさん書かれていて、その構成のうまさがすごくて、掌編になっても生きてるな〜!!!と思いました
暴力JK:サトウさんの140文字小説、すごいですよね。私も一時期書いてたことがあったんですが、あんなコンスタントに思いつくのがすごい
暴力海老:主人公の胡乱ぶりが絶対暴力まみれの人生を送りそうで良い。あと女神との腹の探り合いみたいな会話も好きです
暴力忍者:女神もいいキャラですよね 主人公のことめっちゃ嫌いそう
暴力海老:絶対嫌い!間違いない!
暴力JK:魔王側もなんかありそうな感じがするのも想像が膨らんでいい
暴力海老:そうそう、結構想像の余地のある作品で、そこもまた良さだと思います
暴力忍者:虚無のループで良かったです、面白かった
暴力JK:サトウさんのもう1作『それは=ではない』も良い作品でした。こっちはいわゆる終末もの
暴力忍者:二作投稿された方が案外少なかった気がするんですが、そのうちのお一人ですよね どっちも違う雰囲気の暴力小説でした
暴力海老:何というか、バランスの取れた綺麗な作品を書く人だなという印象です
暴力JK:この作品は構成が好きでしたね〜
暴力忍者:構成のうまさが光ってましたね!
暴力JK:「最初の日」の回収も良かった
暴力海老:構成はとても上手いですね。ちょうど半分のあたりでくるっと世界がひっくり返る。
ただこちらは他の解釈の余地があまりないというか、そういう意味ではこの世界からの追放。の方が好きですね。
話は少し戻っちゃいますが、『この世界からの追放。』の主人公、本当に暴力を呼吸してる感じでそこも好きなんですよ
暴力忍者:暴力が生活の一部な感じいいですよね。『それは=ではない』の方はなんとなく食べ足りないという印象があったんですけど、その食べ足りなさがこの世界〜の方にはあった気がします
暴力JK:たしかに、『この世界からの追放。』が印象で話を想像させながら広げるのに対して、『それは=ではない』は構成自体の面白さで見せるタイプの作品でしたね。キャラクターの魅力は『この世界からの追放。』の方が高かった。とは言え、2作とも完成度が高く、非常に面白い作品でした。
暴力海老:面白かったです!本当に掌編がうまい
暴力忍者:構成の美しさを見習いたい…!
暴力JK:終末もの繋がりでいうと、『【急募】三分以内に世界を救う方法』も終末ものの作品でした。
暴力海老:なんというか、設定が豪華な作品でしたね
暴力忍者:こちらはキャラがとにかく強いと思いました キャラが濃い!
暴力JK:キャラクター、世界観の設定など魅力の多い作品だったと思います。あと数少ない百合枠
暴力海老:僕の好きポイントは鬼が成長の過程で男女どちらかの外性器を損なう必要があるみたいな設定です。すんごい痛そうで良い
暴力忍者:中編〜長編にできそうなポテンシャルがありますよね
暴力JK:3200字だとちょっと少なかったかな? もう少し戦闘が見たかった
暴力海老:そうですね、ちょっと尺の取り方がもったいない感がありました
暴力忍者:死ぬと思わなかったキャラが死んでエエ!?と思ったところがすごい楽しかったです。鬼の設定も面白いですよね!それだけにやはり文字数の足りなさは感じます
暴力海老:何だか長編化が前提の作品なのかな、みたいな感じはありますよね
暴力JK:独立して読める内容ですが、別作からの派生作品ということなので、「群像劇の一部」的な読み方が必要なのかもしれないとは思いました。あと全然関係ないんですが、台詞にがっつり絵文字が使われていて「あ、私も今度それやってみよう」と思いましたね
暴力忍者:あの絵文字、絶妙に癪に触って(褒め言葉です)すごい良かったです
暴力JK:そうそう、「侵略者感」があって良いですよね
暴力海老:そういえばこれも関係ないんですが、段落の区切りに絵文字使う作品多かったですね、なんだこのブーム
暴力JK:段落・章立ての区切りに絵文字を使うのは、池袋ウエストゲートパークみたいで「デジタルがやっと追いついた」と思いました
暴力忍者:次のなんらかの自主企画は本格的な絵文字ブームがきているかもしれない
暴力海老:いいですね、文学の可能性だ!
暴力JK:楽しそうや……。えー話を戻しまして。ちょっと他作品と関連させて話を繋げるタイミングを逃したんですが、最後に2作『燕』『ぼく一人の力で君に勝たないとドラえもんが安心して未来に帰れないんだ』。一番短いタイトルの一つと、一番長いタイトル
暴力海老:『燕』も長編の初っ端、というような印象の作品でした。続きが読みたい
暴力JK:『燕』も設定が豪華でしたよね。かなり面白かった。世界観がめちゃくちゃいい
暴力忍者:『燕』、エビさんのおっしゃるように序章の雰囲気がありました
暴力海老:謎の宗教団体とヤクザの銃撃戦、絵面が豪華
暴力JK:宗教団体 VS ヤクザ おもしろくならないはずがなく……
暴力海老:「なんぼのもんじゃい」みたいに凄むモブヤクザがまた良い味をだしておった……
暴力JK:あの「THEヤクザ」感、めっちゃいい
暴力忍者:モブヤクザ、これこれ〜!と思いたくなるヤクザ感に溢れていて私も好きです。内容はかなり暴力だけど文体の感じが静かで、そのギャップにすごく惹かれました
暴力JK:文体が静謐ですよね。かなり激しい世界ですが、空気感の静けさがある
暴力海老:文章の雰囲気もね、めっちゃ良いです。複数の組織とか思惑とかパワーバランスをごちゃごちゃさせたら本当に超大作になりそう
暴力JK:あの感じだと他の宗教団体とか絡めても絶対に面白いですからね。
長編にしてSF系の文学賞とかでも通用しそう
暴力海老:そうなんですよ。続き書いてくれないかな
暴力忍者:続き読んでみたいですね!
暴力JK:えー、では最後『ぼく一人の力で君に勝たないとドラえもんが安心して未来に帰れないんだ』
暴力忍者:きょうじゅの二作目ですね
暴力JK:最もかわいらしい暴力が描かれた作品でした
暴力海老:優しいトーンのお話でしたね
暴力忍者:一作目のわれを畏れよの後に読んじゃうと暴力度的には少なめなんですが、最後には可愛い!となって読み終われてほっこりしました。暴力大会には珍しい読み味
暴力海老:暴力としてはちょっと物足りないかなという印象でした
暴力JK:物語自体は非常に良いお話だったんですが、暴力小説としてはちょっと小規模ではありましたね
暴力忍者:そうなんですよね〜〜でもこれの暴力を増やすと多分違う…でも暴力は足りない…と悩みがループしました
暴力JK:これ『われを畏れよ』からほとんど間を置かずに投稿されていて、そういうギャップはありました
暴力海老:たしかに、ギャップはすごい!
暴力忍者:優しい世界だったので、暴力暴力また暴力!のなかで読むには休憩所みたいになってくれていたなと思いました
暴力JK:今回、多分「世界自体が暴力的」な感覚の作品が多かったので、そういう意味での暴力感がないのは逆に新鮮でした。「世界の残酷さ」みたいなものは少しありますが。『どうぶつ麻雀の森』も暴力感のない世界ではありましたが…w
暴力海老:いや、あれは暴力です!
暴力忍者:麻雀は麻雀自体が暴力なんで!
暴力JK:麻雀って暴力なんだw
暴力忍者:打てばわかります 世界を憎むためには麻雀を打てば早い
暴力海老:WWW
暴力JK:こわいよ〜〜〜〜〜!!!!
暴力海老:話は戻って、きょうじゅの2作目はhideの『HURRY GO ROUND』がイメソンらしいんですが、この小説ってその曲にはめちゃめちゃマッチしてるんですよね。優しくてドラマチックな曲。そこは僕も解釈一致~~~みたいなオタク顔になってしまったんですが、それでもやっぱ暴力小説とは言えないんじゃないかなあ……みたいな評価です。
暴力忍者:私曲は調べなかったので今そうなんだ!と目から鱗でした
暴力JK:そうそう、『HURRY GO ROUND』とめちゃくちゃあってる。どっちかと言えば別に実施されていたイメソン企画(※編集注:小説にイメージソングを付ける、という企画が同時期に開催されていた)の方と合ってた感じかもしれないですね
暴力海老:確かに!
暴力忍者:あ〜〜〜なるほど……
暴力JK:暴力小説としてどう読むか、という感じは私は講評に書いたんですが、「弱い暴力」を唯一書いた作品だった点と、それが物語の必要に作用している点、そしてタイトルの『さよならドラえもん』の引用の点から「これは暴力小説である」と読みました
暴力海老:おお、なるほど
暴力JK:『さよならドラえもん』で、のび太はドラえもんを安心させるために、暴力でそれを証明するという手段を選ぶんですよね。そういう示唆があるのが面白かった。
暴力忍者:読み込みが深い……! これちゃんと読めてないの、私のhideとドラえもんへの解像度が低すぎた可能性あります
暴力JK:私が深読みしすぎてる可能性もあります……w
暴力忍者:解像度低く読んでも可愛いな〜幸せに暮らしてくれ〜!となったので、暴力抜きにして良い現代ドラマだったと思います
暴力JK:良い作品でした! ……はい、これでひとまず評議会は終了です。結局全作品に何らか触れることになりましたね。お二人ともありがとうございます。締めに入りますか
暴力海老:はーい!
暴力忍者:はい!
暴力JK:もう少し小規模な企画を想定したものでしたが、蓋を開けると49作もの暴力小説が集まり、素晴らしいお祭りになりました!
暴力JK:最高でしたね〜〜
暴力忍者:いろんな暴力が読めて楽しかったです! 暴力、サイコー!
暴力海老:いや、面白い作品が沢山あってとても楽しめました
暴力JK:3200文字という厳しい字数制限の中、傑作が集まり、世の中には本当に素晴らしい暴力作家が沢山いるのだと思うと胸が熱くなりますね
暴力忍者:みんなこれからも暴力を書いてほしいです ブロマンスも。ブロマンスはただの私の欲望でした すみません
暴力JK:暴力とブロマンスはロマンシスより相性がいいから仕方がない
暴力忍者:実際そうだったなと数々の暴力作品を読んで改めて思った次第です
暴力海老:色んな暴力を摂取出来てとても満足
暴力JK:暴力小説は滋養強壮によく効きます
暴力忍者:健康になりました
暴力海老:お肌のつやが違うわ
暴力JK:それでは次回、第二回があればまた是非みなさんにご参加いただけると嬉しいです
暴力海老:本当にね、お祭り!という感じでした
暴力忍者:楽しいお祭りでした!!!
暴力JK:それではまた暴力で会いましょう!!暴力!✊
暴力海老:暴力!
暴力忍者:うお〜〜〜!!!暴力!!!
暴力JK:《完》

結びに

この度は「第一回 大暴力小説大会」にご参加いただき、誠にありがとうございました! 主催者の個人的な都合により結果発表が遅くなった点は、大変ご迷惑をおかけしました。
皆様のおかげで、素晴らしい大会にすることができ、感謝に堪えません。
「第一回」と銘打ったのは大会継続への祈りでしたが、次回もこの調子で皆様の暴力が集う大会にできればと思います。
全ての暴力に祝福を!
それでは次の大会でお会いしましょう。暴力!✊

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