第六回「二人の才女」


2 月も後半にさしかかり、雪かと思ったら異常な暖かさと、季節感が分からなくなるよう
な気候が続いていますね。
さて『光る君へ』について、今回はとっても見所の多い回となっていました。まず、前回
話した「猫」の話が伏線となっていましたね。兼家は左大臣家の人々話している時に猫を追
いかける倫子を目撃します。これがきっかけで道長に対して倫子との結婚を勧めます。後に
倫子は道長の正妻となり、中宮彰子を生むことになるのです。やはり「猫」は物語を大きく
動かす役割をもっていましたね。
第六回のタイトルは「二人の才女」ということで、紫式部と清少納言が相見えた漢詩の会
がとても注目でした。史実の上では紫式部と清少納言に面識があったとは考えられていま
せん。なので、ドラマだからこそ出来た対面だったんですね。もし二人が出会っていたらこ
のようなやりとりがあったのだろうとたらればを考えられるところがドラマの良いところ
かもしれませんね。
漢詩の会では四人が詩を詠みました。①行成「独酌憶微之」(白居易)②斉信「花下自勧
酒」(白居易)③道長「禁中九日 対聞花酒憶風月思」(白居易)④公任「自分の詩を2首組
み合わせたもの」というラインナップです。白居易多いですよね。白居易を調べている人は、
平安時代に日本に与えた影響の強さもなんとなく感じられていると思います。
ここでは道長が選んだ詩に着目してみましょう。
賜 酒 盈 杯 誰 共 持 賜酒杯に盈つれども、誰と共にか持らん
宮 花 満 把 獨 相 思 宮花把に満ちて獨相思ふ
相 思 只 傍 花 邊 立 相思ふて只花邊に傍うて立ち
盡 日 吟 君 詠 菊 詩 盡日君が菊を詠ぜし詩を吟ず。
〈現代語訳〉
天子様から頂戴した酒は杯にいっぱいだが、誰か飲む相手がいるだろうか。宮中の菊花を
手に持って一人で友を思う。花の側に添って立ち、一日中あなたが詠んだ菊の歌を口ずさむ。
他の詠まれた詩も興味があれば是非調べてみてください。
この漢詩の会のあと清少納言節が炸裂していました。清少納言の「あらまひろさんはお疲
れなのかしら」って台詞、結構鋭い言葉に感じました。ネットでは陽キャだと言われますが、
僕が持っていたイメージとは少し違いました。もっときゃぴきゃぴした乙女チックな人な
のかなという印象があったので最初は違和感がありました。過去の人の人物像を作品から
読み取ろうとすると様々な解釈が生まれるんでしょうね。
最後はドラマのラストで道長がまひろに送った和歌についてです。これは『伊勢物語』の
71 段に登場する「ちはやぶる 神のいがきも越えぬべし 恋しき人の 見まくほしさに」とい
う歌です。これは伊勢の斎宮という神に仕える役割を持った女性が、むかし男に恋をしてし
まい、神を囲う垣根など越えてしまおうと読んだ歌です。危険な恋いのにおいがしますね。
では。

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