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第12話 闇消え去り、女神微笑む

2012年 秋

私に一本の電話が来た。


いつも連絡してくる西川くんだ。


西川くんは春から新しい職場で働き

そこで新たな人間関係を構築していた。


資産運用 再び



その西川くんが

『先輩!僕の部署に株式投資をしている

人が居て儲かっているらしいんです!

僕が良い情報を聞き出して教えるんで

やってみないですか?』

という内容の電話だった。




私は2004年(8年前)に先物取引に失敗し

元の生活を取り戻すのに大変苦労した

経緯があったので、その時は断った。




しばらく経った11月頃、

西川くんがまた同じような内容の会話をしてくる。


『先輩!会社の人が株でこれから

上がる株を教えてくれました!

会社の人もかなり儲かってます。』


その時教えてくれた情報は

当時スマホゲームをリリースしたばかりで

『パズドラ』を運営するガンホーだった。

元々PCゲーム『ラグナロク オンライン』で

業績は上向き加減だった。

加えてパズドラの人気が出始めた、

第1波のタイミングでした。



一部の投資家の間では、

これから上がるだろうと期待されていた会社だった。



私は丁度スマホデビューしたばかりで

PC並みの情報を手に入れられる環境にあった。



その頃から西川くんとの会話は

株式投資の話題が多くなる。



話す度に色々な情報を教えてくれて、

フンフンと聞いていた。




なぜ西川くんは私に色んな事を

教えてくれるかと言うと

西川くんは給料を使い切るタイプの人間で

お金を貯金する事が苦手な人なのである。

なので私が儲かれば何かの恩恵が受けられる

事に期待して色々と教えてくれるのだ。



実際の所、会ったらご飯をご馳走してあげたり、

その他諸々、私は西川くんに良くしてあげていた。



教えるだけならノーリスクだし、

おしゃべり好きな西川くんにとっては

好都合だったのだろう。




ある日 西川くんは

『情報によると政権が変わったら株は上がります。

そして新年明けたら更に爆上げするらしいです!』

っと言います。




この頃の日本株は東日本大震災の影響で

日経平均8000円程で長らく低迷しており

何かのキッカケがあれば東日本大震災の前の株価まで

一気に戻ると予想されていた。




時は過ぎ

実際に西川くんが言っている事が現実味を帯びてくる。



2012年12月頃

安倍内閣が発足され、海外資金が日本へ流れた。

日本株が一気に上向き加減になっていたのだ。


そこで年が変わるとまた1段上がる!?


私は

実際に上がり続けている株価を見ているうちに

少しづつ興味を持ち始めていた。



2013年  新年が明けた

年明けから日本株は好調に上がっている。



この時私は思った。

これから間違いなく

『低迷していた日本株が反発する時だ』

っと

そして日本株の大波に乗ると決意した。



株式投資の扉を開ける



前回の先物取引は

営業マンに操られて大敗した。

最初から負け戦が確定していた。


しかし株式取引はスマホアプリで行える。

全ての決定権は自分にあり、

自分の意思で売り買いができる。

その事が私にはすごく安心な事だった。




2013年1月

株式投資のネット口座を開設した。

私は実家の頃から蓄えていた180万を

口座に入れ銘柄を調べ始めたのだ。




1月下旬

初めて自ら調べた会社に投資を行ってみた。

本命はガンホーだが、

その頃は調整中のため練習で別の銘柄を購入してみた。

小さな会社だが、業種に将来性があり、

近々好材料が出ると予想されていた。



その会社に私は資金の8割ほど投資してみた。

するとすぐに上がり始め

2日後に更に高騰したので

怖くなりすぐに売った。


初めての取引はとても慎重になっていた。

練習も兼ねて深追いはせずに堅実に行いたかった。

結果

2日で34万円の利益を得る事に成功する。



当時私のサラリーマンとしての月給は

手取りで21万円だった。



相場全体のトレンドと

欲が無かったから勝てたのだろう。



この調子で資産を増やそうと

他の銘柄も調べるようになる。



初めてのストップ高




日本株は

予想通りバブルを予感させる値動きが続いた。

政府も株高を押し進めていたため、

海外からの投資も呼び込んでいたようだった。




この2013年初頭は

まだアベノミクスなんて言葉もない頃で

日経平均株価は10000円程だった。

今思い返すと、まさに大波の初動だ。



ここで私は

しばらく日本株は上がり続けると予想し

銀行から200万の融資を受け

総額400万程の資金で運用を始めるのだ。

(※危険行為です。投資は自己責任です。)



2月中旬

本命であったガンホー株の決算発表の日

パズドラが徐々に一般人に認知され

売り上げ増が期待出来たので私は意を決して

ガンホー株を購入した。



そして

夕方に発表された決算は

売り上げ 2.7倍

営業利益 8倍

という驚くほどの好決算が発表された。



ヤフー株式掲示板はお祭り騒ぎになり、

私は緊張しながらも翌営業日を迎える。




翌日

朝からガンホー株に買いが殺到し

ストップ高で始まり

ストップ高で終わるという

天井張り付きで大引けを迎えた。



人生初のストップ高に

私の頭が真っ白になった。

なんとも知れない高揚感に包まれたのです。




西川くんとの不穏な空気



そこから私は株式取引にドップリ浸かり

あらゆる銘柄に興味を持ちました。

スマホゲーム関連銘柄の他に、

銀行株やバイオ株

オリンピック関連の不動産や建築

など色々な銘柄に投資した。




その後も色々な会社に投資をするが、

政府の後押しでバブル感が加速していく。




しばらくは

何を買っても勝てる無双状態になっていた。



私の資産も順調に増え続け

気付けば600万程になっていた。




この頃から

西川くんは私に会うたびに

金銭を要求してくるようになる。

初めた頃、儲かった話しをした際

一度だけ感謝の気持ちとして

お小遣い程度の謝礼をあげた事がありました。


すると

その要求が徐々にエスカレートしていくのです。

私は嫌な気持ちになるようになり

西川くんとの距離を置くようになっていきました。



4月 中旬

本命株がそろそろ調整から明けるだろうと判断して

しばらく腰を据えた投資に切り替えようと

信用取引でガンホー株に1点に全力買いをして

しばらく寝かせる事にしました。




この後

私の資産は大きく動き

人生を大幅に狂わせるのです。


つづく

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