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いつかの海辺にてー湊村 奇譚ー

 物寂しい、漁村だった。

ひっくり返った船の脇に、千切れた網や割れた木の板が転がっている。

ここはどこだろう。

辺りを見渡すと、湊村と看板があった。

知らない村だ。なぜ私はここにいる?

縁もゆかりもない村にぽつねんと立っている理由を考え、私は「あっ」と声をあげた。



 夜、父がお客を連れて帰ってきた。

ざっとみて、百人前後。当然、生きている人間ではない。

お客は総じてボロを纏い、裸足の者までいる。

垢じみた足や手は、古木の枝のように細かった。

 父は、よくこの手のお客を連れて帰ってくる。

うんざりしたが、先に夕飯の支度をしなければならない。

お客を無視し、私は手早く夕飯をこしらえた。

「ねぇ。今日の夕飯さ…。」

食卓に着いた母が、何かを言いかける。

「ごめん。美味しくなかった?」

「ううん。味はいいよ。でも、なんていうか…。」

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