見出し画像

エキナカという発明について。

昨今エキナカの賑わいが一段となり、さまざまな用が足せるよう店舗が軒を連ねます。中でも、東京駅はその最たるもので、扱い品目は旅行客、ビジネス客向けのお土産、手土産が中心なのは当然ながら、おっと買い忘れたぞ、という至急ニーズに応える日常着、日用品もあります。時にお目見えする東京駅限定デザイン、東京駅数量限定品には物欲をそそられます。文具などは価格も手頃で持っていればいつか使うだろうと、つまりこれは無駄遣いではないと納得できるため、つい手に取ります。そうして買ったものに限って、未使用のまま引き出しに眠ることになりがち、というのはおそらく、誰しもあるあるなのでしょう。ともあれ、各都市の銘菓、名物、名品と呼ばれるものの本店まで足を運ばずとも概ね駅構内で手に入るのは、利用者にとってはたいへんな使い勝手の向上です。なぜなら仕事や旅行を終え、帰路の新幹線や特急に乗るその直前まで、土産という荷物を運ばずに済むわけですから。さて、エキナカの最大の特長に、無料では入れないことが挙げられます。エキナカを行き交う人たちは全員、電車の乗車券や、駅入場券を購入しています。誰も気づかない、気にしていないかも知れませんが、エキナカという施設は、入場料を払って入る百貨店という新業態なのです。かつて、キオスクで手土産を調達したと相手に知れれば、ああこの人は手早く済ませたな、と思われるフシがありました。しかし東京駅のエキナカのあの店で買ってきたと話すと、わざわざありがとうございます、と、こうなります。これは見事なイメージの転覆です。乗車券、入場券を求められていることを気づかせず、買い物を楽しめる場所に転覆させたのですから、これは商売上の発明とみていいでしょう。さて、エキナカでお馴染みの菓子に東京ばな奈がありますが、この路面店が、以前のわたしの通勤路にありました。落ち着いた商店街立地であること、そして店前で時折、ちょっと嬉しいセールをやっていることはここだけの秘密です。

いいなと思ったら応援しよう!