会いたくないけど死んでほしくない人

およそ22年間、祖父母と同じ家で暮らしていたが、その存在は近いようでとても遠く、顔を合わせるととても気まずかった。幼少期の頃は、祖父の晩酌の鍋を一緒に食べたり、畑のモンシロチョウを1匹捕まえるごとに100円もらう契約をしたり、それで何千円も稼いだりしていた。だから険悪な仲というわけではない。ただ、なんとなくずっと気まずい。大学生になってからは、命の短い老人にやさしくしなくては後味がわるいと思い、誕生日のたびに西武や伊勢丹(デパートの方がそれ感があるから)でプレゼントを買って渡していた。でもそのうち意味がないような気がしてきて(祖父にあげたひまわりが翌日に枯れているのを見たせいかもしれない)、やめてしまった。卒業間際になると、もう埼玉を出て北海道に行く準備をしていたので、いつもよりも気さくに話せる感じがした。でも今さら懐けるわけもなく、うつ病になり、仕事を辞めた今では送金だけの繋がり。ときどき祖父から「困り事はありませんか。口座番号は変わっていませんか」と連絡がくる。そういう文面を見ては複雑な気分になり、さらに憂うつになる。彼らのことを考えれば、時間がある今、故郷に戻っていろいろと手助けをしたり、話したりしたいと思う。ただ本当の自分は絶対にそれをしたくないと考えている。だから何もしてあげられない。今までの関係性で、急に困っていることなんて打ち明けられないし、元気なふりもできないし、かといって何も言わないでいるのは良心の呵責。このまま彼らが死んでみろ、それはとても悲しい。不甲斐ない。何もいいことがない。ただ送金は嬉しい。お金はあればあるだけいいから。でも、それも複雑。わかるでしょう。あ〜、お金。つらいときにはお金だけ。

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