好きなボカロPの良さを頑張って言語化するシリーズ 「Neru」編
お久しぶりの、好きなボカロPの良さを頑張って言語化するシリーズ。
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今回紹介するのは、僕の孤独な青春を彩ってくれたボカロP、「Neru」です。
Neruのイメージを、一言で表すなら「退廃的」でしょうか。
つまらない人生、自殺、そういった暗いテーマが、楽曲のあちこちに見られます。
ただ、単に暗いだけというわけではなく、
「まあ、無理したってどうしようもないし、とりあえず今のままでいようぜ」
というような、諦めの先にある明るさというか、空元気のようなギリギリの強さを感じます。
なので彼の曲を聴くと、暗い気分は変わらないのに、自然と
「どうせなら、もうちょっとだけ頑張ってみるか」
という、存在しないはずのやる気がどこからか湧いてくる、不思議な気分になります。
さっそく、個人的に思い入れのある曲を中心に、Neruの魅力に迫っていきましょう。
軽快なロックサウンドと、無機質な歌声
この曲は、比較的初期の楽曲ですが、まさしく退廃的な世界観を表現しています。
エレキギターのカッティングを主体とした、軽快なロックサウンドのはずなのですが、どうしようもなく暗い雰囲気が漂っています。
この理由は、「ボーカロイドの無機質さ」にあると私は考えています。
今更確認する必要もないと思いますが、ボーカロイドは人の声をサンプリングして作った、機械的な音声です。
ただ、ボーカロイドは「調声」と呼ばれる作業を経ることで、イントネーションが自然に近いものとなり、そうした無機質さをあまり感じなくなります。
わかりやすい例としてパッと思いついたのは、この2曲です。
このように、普通はボーカロイドの無機質さをなくすような形で調声が行われるのですが、「FPS」ではむしろ、その無機質さを強調するような調声となっています。
曲は盛り上がっているのに、鏡音レンの歌声は、ほとんど大きさや歌い方が変わっていません。
もちろん、彼本人はそんなこと言っていませんが、
「曲の盛り上がりも、所詮一時的なものに過ぎず、つらい現実の前では自分の感情を置き去りにして虚しく響いているだけ」
というような、強いメッセージを感じました。
歌詞の内容が、理不尽な戦争に向き合う熱い兵士の気持ちを表現しているのに対し、MVの人物は一切表情が変わっていないことも、もはや言葉が完全に効力を失っている様子を感じさせます。
絶望的な退廃から、現代社会の退屈へ
この曲は、彼の代表的な曲の1つですが、ここを境として、初期の重々しい「絶望的な退廃さ」から、ドゥーマー的な「退屈な世界に蔓延する退廃さ」へと変わっていったように感じます。
聴いていただければ分かると思いますが、「脱法ロック」は底抜けに明るい曲です。「FPS」にあった、どうしようもなく暗い感じは一切ありません。
「合法的にキマれるロック」みたいな意味だと思うのですが、ノリノリな曲調や、「Wow Wow Wow・・・」というコーラス、電波っぽいMVなど、何も考えず楽しくなれる要素が詰まっています。
ただ、この曲は彼が今後に発表する曲の材料というか、ダイアモンドを削り出す前の原石のような位置づけにあるのではないかと、私は考えています(原石はあくまでも比喩で、曲のクオリティとは一切関係ありません)。
なので、この曲は深い考察をせず、感じるがままに楽しむのが一番です。
ダメな自分のままで、「い〜やい〜やい〜や」
この曲を聞けば、「脱法ロック」を原石と表現した理由がわかると思います。
「い〜やい〜やい〜や」は、退廃的な雰囲気を残しつつも、「脱法ロック」と比べて、かなり明確なメッセージ性があります。
そのメッセージは
「自分ってほんとダメだよなー。まぁ、だからといって何かするわけじゃないけど」
というものなのですが。
この歌に出てくる人物、相当にダメ人間なんですよね。ただ、ダメな自分に絶望しているわけではなく、それを認めて自虐ネタにしています。
少し歌詞を引用すると、
「ここ最近調子は悪いが いや本気はまだまだ そう言ったのはこれで何度目の台詞だろ」
「腹減ったらやる気がグズった またスマホを弄った ただこうしたベッドで死んだフリをしてる」
というように、共感できることばかりです。
そんなダメな自分をまとめて、「い〜やい〜やい〜や」と気持ちよく歌って許してしまうところに、この曲の良さがあります。
ダメな自分を、余すことなく全部ひけらかしてしまえば、逆に明るくなるというのは、面白い発見ですね。
死にたい気持ちに、そっと寄り添う
こうした初期の「重々しい絶望」と、「現代社会の退廃さ」の両方を持ち合わせているのが、この「学校(というよりそこに通う生徒)」を題材とした楽曲のシリーズです。
「自殺」「自傷行為」「ナイフ」など、かなり生々しいモチーフが登場するのが特徴です。
この曲の歌詞は、かなり観念的です。分かりやすいストーリーや、メッセージはほとんど見当たりません。
全体的な印象としては、どうしようもない絶望的な人生を、ものすごく詩的に表現した、という感じでしょうか。
ナイフ、ビニールテープ、血といった、暴力的な言葉も多く使われています。
輪郭のぼやけたメッセージだからこそ、言葉にできない絶望感みたいなものが、よく伝わってくる感じがします。
こうした暗い感情を、抜け出すべきものとして描くのではなく、カッコいい曲にしてくれるおかげで、そんな自分に酔いしれるというか、絶望に思いっきり浸らせてくれるところが大好きです。
大人からすれば、ただの中二病や、子どもっぽい歌詞にうつるのかもしれませんが、個人的には学生時代の辛い感情に寄り添ってくれる彼の曲には、とても救われました。
曲の紹介だけになってしまいますが、「ハウトゥー世界征服」や「テロル」も大好きな曲で、よく聴いています。
まだまだ語りたい曲はあるのですが、何となく言いたいことは全て言えた気がしたので、ここまでにしておきます。
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