見出し画像

好きなボカロPの良さを頑張って言語化するシリーズ 「ナユタン星人」編

 このシリーズは、大して音楽の知識を持っていない私が、お気に入りのボカロPの良さを、頑張って文章に起こすというものです。

※シリーズと書いていますが、続くかどうかは未定です。


ナユタン星人の魅力

特徴的なMV

さて、記念すべき第一回目に取り上げるのは「ナユタン星人」。

単色の背景にほとんど1枚だけのイラスト、画面いっぱいの歌詞という、一度見たら忘れられないMVが特徴的な、超有名ボカロPです。

音楽50%、映像50%といっても過言ではないぐらい、曲以上にMVのクオリティが重視されるボカロ界隈。

そこに、あえてシンプルな映像表現を用いることで、キャッチ—さと個性を持たせるという彼のアイデアは、今考えても画期的だったと思います。

実際、サムネイルを見ればナユタン星人の曲だと一発でわかりますし、(一部を除いて)楽曲から映像まで一人で作るという、離れ業もやってのけています。

これは、ナユタン星人が最初に発表した楽曲です。

今の楽曲と比較して、少しテンポが遅いことに時代を感じます。

MVを見ていただければわかりますが、歌詞を除けばサビの反転以外全く映像に動きがなく、本当に必要最低限、といった感じです。

後の作品では、反転のパターンを変えたり、サビにちょっとした動きやミニキャラを加えるなどして、バリエーションを持たせています。

こうした足し算的なアレンジができるのも、シンプルなMVだからこそ、といった感じですね。

楽器の構成

そうした映像も魅力的ですが、注目したいのはやはり楽曲の内容です。

彼の楽曲は、ギター1~2本、ベース、ドラム、キーボード(+パーカッション)という、比較的王道な構成となっています。

基本的な楽器の役割として、ギターで印象的なリフ(特徴的なフレーズ)やメロディを弾き、キーボードが宇宙っぽい音+盛り上げ、ドラムが基本的なビートを刻み、意外とベースの動きが多く、メロディアスなラインやオクターブ奏法で、曲に複雑さを与えています。

イメージとしては、軽音部で演奏されそうな曲といった感じで、数種類のフレーズを組み合わせ、ところどころアレンジを加えることで楽曲は作られています(ただ、実際に演奏するのはかなり難しいと思います)。

MVもそうですが、こうしたシンプルでキャッチ—な部分を崩さず、程よいアレンジを加えているからこそ、「ナユタン星人」というキャラクターが際立っているのでしょう。

キーボードやパーカッションを入れることで、がっつりバンドサウンドというわけでもなく、電子音バリバリというわけでもない、バランスのとれた構成となっているのもポイントです(初音ミクが機械的な声なので、それを考えるとバンドと電子音が半分ずつ、といった感じです)。

サビはどこ?特殊すぎる曲構成

さて、このようなシンプルさを持つナ楽曲だからこそ、目立っているのが曲の構成です。

代表曲である「エイリアンエイリアン」や、「モア!ジャンプ!モア!」などは、かなり王道の構成ですが、もう一つの代表曲である「太陽系デスコ」は、よく聞くと奇妙な構成をしています。

2番までの構成を書いてみると、

頭サビ→間奏→Aメロ(×2)→Bメロ→サビ→サビ2→間奏2

といった感じになります。

頭サビ(あの一等星の~)→間奏(オーッ・オ・オー!~)→Aメロ(ランバダ ルンバ ふたり~)→Bメロ(星が舞っちゃって~)→サビ(あの一等星の~)→サビ2(オー・オ・オー!~)→間奏2(ナーナナナーナ~)

※歌詞付き

ここで注意してほしいのは、間奏にもボーカルが入っており、曲の一番盛り上がるポイントが間奏部分(特に間奏2)であるという点です。

曲の冒頭は、少し前から言われている、「ボーカルを途切れさせない(楽器だけになると、飛ばされたりブラウザバックされたりするため)」という手法で説明できますが、間奏が盛り上がりだと考えると、後半は3種類のサビが続いていることになります。

サビ2と間奏のメロディは、ほとんど同じですが、サビ2では「星間線を絆いで」「あなたに届け」といった歌詞が挿入されているので、サビと間奏の中間、といった扱いになっています。

本来だと間奏だったはずのサビ2が、歌詞が入ることによって歌の中に組み込まれ、その代わりに挿入された間奏が最も盛り上がる部分になるという、書いていてもよく分からなくなってくるほどの複雑さです。

さらに、2番ではAメロが大胆にアレンジされるので、ほとんど別の曲になっています。

可能な限りボーカルを詰め込むことで、曲の半分以上がサビという、異質な曲調となっているのです。

「この曲のサビはどこからどこまで?」と聞かれたときに、大半の人は答えに窮すると思いますが、その原因はこうした盛り上がり部分の多さにあります。

曲構成の独特さについて、なんとなく理解していただけたでしょうか。

ちなみに、最新曲である「エスパーエスパー」も、かなり複雑な構成をしています。良ければ、曲の構成を考えながら聞いてみてください。

知っておけば通ぶれる、定番の曲進行

順番としては逆ですが、ここでナユタン星人の定番の構成についても、触れておくことにします。

この曲の構成は、

(頭サビ)→イントロ→Aメロ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Aメロ´→Bメロ´→ラスサビ→アウトロ

となっています。

頭サビ(トゥットゥルルットゥ~)→イントロ→Aメロ(銀河の隅で~)→間奏→Aメロ(遠くの宇宙で~)→Bメロ(あー あなたに逢いたいな~)→サビ(トゥットゥルルットゥ~)→間奏→Aメロ´(声を辿って何光年だ~)→Bメロ´(あー それでも逢いたいな)→ラスサビ(トゥットゥルルットゥ~)→アウトロ

※歌詞付き

注目するところは、冒頭にサビの一部分が入っていること、1回目のサビ前までに楽器だけのパートが2回あること、2番ではAメロやBメロがアレンジされていること(それぞれAメロ´、Bメロ´と表記)です。

初期の楽曲だと、Bメロが短い間奏に変わっていたり、太陽系ディスコのように、2番のAメロが大きく変わっていたりすることもあります。Aメロが大きく変わる場合、大抵ラップ調になっています。

こうした曲作りからは、サビ以外の部分も大事にしているということと、ボカロでは珍しく、歌の入っていないイントロや間奏に重きを置いている、ということがわかります。

ナユタン星人の楽曲は、個人的にサビだけじゃなく、楽曲全体でパッケージとして聞きたくなります。だからこそ、少々面倒だったとしても、曲の構成から楽曲の魅力を紐解こうとしているのです。

この曲もそうですが、他のアーティストやコンテンツに提供するいわゆる書き下ろし楽曲では、ほとんど同じ構成となっています。

これらの楽曲は、一般的な曲の構成とほとんど同じなので、詳しくは書きませんが、唯一特徴的なのは、落ちサビが必ずと言っていいほど登場することです。

さらに、その落ちサビは絶対に「ギター、ベースとボーカルのみ→ドラムが追加(→ラスサビ)」という流れになっています(エスパーエスパーでは、キーボードが少し入っていましたが)。

この曲は最後に転調していますが、書き下ろし楽曲では、転調することはかなり珍しいです。

ですが、普段の楽曲では転調が多く用いられているので、色々な意味で「モア!ジャンプ!モア!」は、ナユタン星人のエッセンスが詰まった曲だと思います。

ポイントだけを簡単にまとめると、

1. 楽器だけのパートも大切にしていること
2. 多くの楽曲に落ちサビがあること
3. 転調がよく見られること
4. パッケージとして聞くべき楽曲であること

が、ナユタン星人の楽曲の特徴となります。

まとめ

さて、今回はナユタン星人の良さについて語ってみました。

思ったより曲構成の話が長くなってしまい、歌詞について触れることなどはできませんでしたが、個人的なナユタン星人観を話すことができたと思っています。

DTMはかなり自由度が高いため、色々な音色を使ったり、早口で歌わせてみたりするなど、一種のアイデア合戦になっている、という側面があります。

だからこそ、曲全体の流れを大切にし、電子音楽とポップソングが調和したナユタン星人の楽曲は、彼が初期から活動していたということも含めて、ボカロの一つの流れとして頭に入れておくべきでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?