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Black midi-“Marlene Dietrich” from “Cavalcade” 和訳

Under soft lights
柔らかな光の中
With a taped back face
テープで引きつった顔で*1
Our soft spoken queen
俺たちの穏やかな女王が
Takes her place on the stage
ステージに立っている

As the big curtains open
巨大なカーテンが開き
The last troops run in quick
最後尾の観客が押し寄せる
For the one and only Marlene Dietrich
目的はただひとつ、マレーネ・ディートリヒ*2

She whispers Demurely 'from The Blue Angel'
彼女は上品に囁く、「嘆きの天使」*3の中で
The song we all know
誰もが知る歌
The one that we've paid for
俺たちはこのために来たんだ

Fills the hall tight
ホールを満杯にして
And pulls at our hearts
俺たちの心をひきつける
And puts in her place
そして夢中にさせる
The girl she once was in that suit of '33
あるとき、1933年、彼女はスーツに身を包み*4
Soundtracked by disapproving commentary
猛反発に囲まれていた

And my shuddering neighbour
そして臆病な隣人は
Turns and roughly rouses me
振り向いて乱暴に俺を起こす
He says, 'While a kiss on the lips may not make a frog a prince
そいつは言う、「唇にキスしたってカエルは王子様になりゃしないが
An orgasm renders any queen a witch: metamorphosis exists!'
絶頂するとどんな女王も魔女になる…変態(メタモルフォーゼ)は現実だ!」


Damn all us idiots
ああ俺らは馬鹿なんだ
Damn us till death
死ぬまで馬鹿なんだよ
Relentlessly trying to untie our knots of
容赦なく俺らは繋ぎとめられて
Rivers and roads that defy all sense
川や道があらゆる感覚を奪う

But her hands loosen all
でもな、あの手が俺らを解き放ってくれる
And her voice brings you youth
あの声が若さを与えてくれる
Her cheeks cradle the holy breath
あの頬から神聖な吐息が漏れる
That pumps the lungs of her Mackie Messer, ooh
その吐息でメッキー・メッサ―*5の肺が膨らむんだ
And she beats the heart of her Mackie Messer, ooh
そしてメッキー・メッサ―の胸を撃つんだ
And she walks the stage with her Mackie Messer, ooh
そしてメッキー・メッサ―とともに舞台に上がり
And she makes us smile with her Mackie Messer, ooh
メッキー・メッサ―とともに笑うんだ

*1 taped back face:医療用テープによって顔の皮膚を引っ張り上げて顔貌を若く見せる「クロイドン・フェイスリフト(Croydon facelift)のこと。マレーネはこの手法のパイオニアであった。
*2 Marlene Dietrich:マレーネ・ディートリヒ(1901-1992)、ドイツの女優・歌手。孤を大きく描く「ディートリヒ風メイク」は現在でもメイクアップ手法のひとつとされている。
*3 The Blue Angel:「嘆きの天使(原題Der blaue Engel)」1930年に公開されたドイツ映画。ドイツ国内において最初期のトーキー映画であり、マレーネの銀幕デビュー作でもある。
*4 マレーネは女性でありながら「モロッコ」(1930年公開)で男性用タキシードを着用、論争を呼んでいた。1933年には、マレーネがフランス旅行においてズボンを着用していたことで逮捕の危機となったこともあった(当時フランスでは女性がズボンをはくことは違法であった)。
*5 Mackie Messer:メッキー・メッサ―(ブレヒト「三文オペラ」の登場人物)。盗賊団のボスであり、作中で若い娘ポリーと結婚する。1930年にマレーネは「三文オペラ」にポリー役として出演している。

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往年の大女優がテーマの楽曲。ジャンルレスでまさに「21世紀の音楽」を奏でるBlack midiがマレーネ・ディートリヒを扱うのは意外な接点のように感じますね。


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