見出し画像

「技術のその先を見据える」マネーフォワードで新技術が誕生するまで

こんにちは!マネーフォワード広報部の田淵です。

マネーフォワードはこのたび、社内R&D(Research and Development)組織であるMoney Forward Labと協業していた株式会社 BEST PATH RESEARCH(以下「BPR」)へ出資いたしました。

そこで、これまでBPRの代表のEdward Whittaker氏(以下「Edwardさん」)とどのような形で協業していたのか、R&Dからプロダクトの実装までの取り組み、開発への想い、未来の展望まで、Edwardさん、Money Forward Lab(以下「Lab」)所長の北岸さん、AI推進部部長の幸野さんへインタビューで深掘りしてみました。

エンジニアの方だけでなく、「そもそも新技術の開発がどう行われているか気になる!」という方にもおススメの内容となっております!

画像1

プロフィール

Edward Whittaker氏/株式会社BEST PATH RESEARCH 代表取締役
(写真中央)
イギリス出身。ケンブリッジ大学 自動音声認識・言語処理で博士号(PhD)取得。東京大学 非常勤講師。2020年6月にmujinAI株式会社(現BEST PATH RESEARCH)を設立。証憑書類構造分析技術、動画領収書技術においてマネーフォワードと協同で開発を行う。
北岸 郁雄/Money Forward Lab 所長(写真左)
日本電信電話株式会社でロボット制御の研究開発業務に従事後、ヤフー株式会社に入社。技術競争力の基盤作りとして、Yahoo! JAPAN研究所を設立。以来、研究開発マネジメント、関連会社の取締役等の業務を執行。2018年12月にマネーフォワードに入社し、2019年3月Money Forward Lab所長に就任。
幸野 達也/CTO室AI推進部部長(写真右)
大学卒業後、機械メーカで海外営業をしたのち、AI開発企業へエンジニアとして転職。深層学習を使った画像認識プロジェクトに取り組んだ後、2020年12月にマネーフォワードへ入社。AI推進部の機械学習エンジニアとしてプロダクトへの実装を担当する。2021年12月より現職。

3者それぞれの役割について

ーまず初めに、マネーフォワードのR&DにおけるBPRとLab、AI推進部の役割を教えてもらえますか?

画像2

北岸:Labでは技術的に解決しなければいけない課題をプロダクト責任者等からヒアリングしています。その中でさらに優先順位をつけ、R&Dプロジェクトを編成して進めていくのが私の役割です。社内だけで解決できない課題については、社外とも積極的に連携していて、Edwardさんが代表のBPRとの連携もその1つです。

幸野:AI推進部はEdwardさんらのR&D成果をプロダクトに落とし込むところの橋渡しを担当しました。橋渡しといっても単純に右から左へという訳ではありません。Edwardさんたちに作っていただいた技術のなかで、プロダクトに要らないところは削ぎ落したり、使える部分をプロダクトに合わせて変更する必要があります。どうしたらお客さまに最適な技術とサービスを届けられるか考えながら行うようにしています。

Edward氏(以下敬称略):私たちは実際のAIの開発を担当しました。開発した技術はデモアプリを作ったり、動画を撮影したりしてマネーフォワード側に説明しますが、実際プロダクトに必要な技術かどうかというのはプロダクトをよく知っている人に聞かないと分からないことが多いです。なのでAI推進部のように、間に入ってくれる組織があるのは助かります。

北岸:R&Dの結果を事業に導入するのは山あり谷ありで難しさがありますが、Edwardさんはそこを越えた経験を何度もお持ちなので、ポイントが分かっていてとても信頼しています

一緒に仕事をするようになったのは偶然の再会がきっかけ!?

ーそもそも、Edwardさんと北岸さんはどういう繋がりで知り合ったんですか?

北岸:知り合ったのは結構前なんですが、マネーフォワードで一緒に仕事をするようになったのは偶然の再会がきっかけでした

Edward:沖縄の自動販売機の前にいる北岸さんに声をかけました。笑

北岸:当時の私はMaaS(Mobility as a Service)の会社経営に携わっていて、沖縄で自動運転バスとその乗車アプリの実証実験をしていました。Edwardさんはちょうど国際会議で東京から沖縄に来ていて、自動販売機の前で声をかけてくれました。街に似合わないスーツを着ていたので目立っていたんでしょうね。笑 
もちろん偶然の再会だけが理由ではありません。以前から常に技術をいかにしてユーザーの価値に繋げるかを一番に考える方だと思っていたので、沖縄で偶然再会して、こうしてまた一緒にR&Dができて嬉しいです。

Edward:私自身、単なる技術開発だけでは意味が無く、実際に作った技術で人の手間を減らせたり、効率化できて初めて価値が生まれると思っています。マネーフォワードと一緒に開発すれば、私たちが開発したAIのシステムでユーザーやバックオフィス業務を行う方に大きな価値を提供できるのではないかと思いました。

事務作業の手間を減らし、本業に集中できる時間を作る

ー証憑書類構造分析と動画領収書という二つの技術をEdwardさんと開発したということでしたが、まず証憑書類構造分析について聞かせていただけますか?

北岸:証憑書類構造分析はスキャン等によって電子化された証憑書類に記載された情報を構造化して取り出すという技術です。つい先日、『マネーフォワード クラウド債務支払』にこの技術が導入されました。ここでもAI推進部の役割が存分に発揮され、短期間で技術導入することができました。

メールで届いた請求書のPDFをAI-OCRで解析し、「支払先」「支払期日」「請求金額」がクラウド上に自動入力できます。この技術を使ってタイピングの手間を減らし、本業に集中できる時間を増やせれば良いなと思っています。

Edward:データの入力を人力で行うと、どうしてもミスが発生してしまいます。AIの技術を使えば人的なミスも減らすことができます。

画像3

ー動画領収書はどのような技術ですか?

幸野:動画領収書の技術は動画で連続して領収書を読み込み、画像として切り出すことができるというものです。

スクリーンショット 2021-11-09 19.47.41

↑実際にレシートを読み取りしている様子。(白い紙に印刷したレシートでも認識してくれます!)

Edward:動画領収書は最初はAIではなく、伝統的画像処理のアルゴリズムを使って作る予定でした。紙の領収書は4つの角と4つの縁(ふち)があるので、領収書の特徴をある程度パターン化して認識させることができると思ったんです。ただ、領収書といってもシワシワになっていたり、角がちぎれたり折れたりしているものなどがあって、伝統的画像処理のアルゴリズムでは対応できなかったので、最終的にAIに学習させることにしました。

ーAIを使った開発だと、学習させるためにたくさんのサンプルが必要だと思いますが、必要なサンプルはどこから集めてきたんですか?

北岸:学習に必要な証憑書類は、社内に協力を呼びかけて実際に社員が使ったものを集めました

幸野:オフィスビルに入っているスーパーとコンビニのレシートが圧倒的に多かったです。笑 ただ、同じお店のレシートでも長さは違いますし、下にクーポンやお知らせが入っているものなどパターンがたくさんあるので、AIへの学習に使用できて、本当に助かりました。

レシート

↑実際に社員から集めたレシート、領収書(一部)

ーマネーフォワードのTeam Workが発揮されていますね!開発で苦労したことはありましたか?

画像6

幸野:私は2020年の12月に入社して、動画領収書のプロジェクトに途中から参加しました。コロナ渦でテレワークが進んでいたので、事業側とのコミュニケーションが最初は大変でした。でも、Slackで積極的に声をかけるようにしたり、Zoomでのミーティングをためらわずに入れるようにしたら、自然とコミュニケーションが上手くいくようになりました。社内でも自分のことを気にかけてくれる人がいたり、声をかけるとみなさん優しく答えてくれるので、そういった方々に助けてもらいました

北岸:先にお話ししたように、R&Dの結果を事業に導入するのは山あり谷ありで難しさがありますが、幸野さんのコミュニケーション力に助けられています

バックオフィス業務もAIが支援してくれる未来

ー最後にみなさんのこれからの目標を教えていただけますか?

Edward:マネーフォワードとともに技術開発をすることで、これからもバックオフィスの業務効率化に寄与したいと思っています。煩雑な作業から離れて、本業に集中できるような環境を作りたいです。ただ、AI技術にも限界はあります。最終チェックは人間が行うなど、技術と人間を共存させる働き方が理想ですね。

幸野:AI推進部としては、バックオフィス業務の自動化・自律化をエンジニアリングの観点から実現させたいです。具体的には、MLOpsと呼ばれる手法を導入したいと考えています。課題を解決できる技術をプロダクトに実装して終わりではなく、適切にモニタリングして、できるだけ自動化して継続的に改善する仕組みを作りたいです。

また、私個人としては、AI推進部の素晴らしいエンジニアが効率よく開発できる組織を作りたいです。Labをはじめとする他部署との連携や体制の整備、採用強化を行っていきます。

北岸:究極の未来はバックオフィス業務の自動化・自律化です。私達は「Autonomous BackOffice」と呼んでいます。例えば、納品書が届いたときに、納品書に書かれているものが契約通りになっているか自動的に教えてくれたり、「そろそろこれが納品されてくるよ!」と自動で知らせてくれたりして、人間の判断力を補完してくれるようになったら便利ですよね。車の自動運転技術のように、バックオフィス業務においても、認知・判断・操作を機械が徐々に支援し、「思い描いた経営や業務を安心・安全・快適に実行したい」といった願望の実現を目指したいと考えています。

自動化・自律化の進化のプロセスも車の自動運転との類似性を考えています。車のシステムは「手動で運転する」レベル0から、「あらゆる条件下で車の制御をシステムがすべて実施」というレベル5までの6段階に分かれています。バックオフィスの自律化についてもレベルがあると考えており、各レベルを見据えたR&Dを今後も進めていきます

↑「Autonomous BackOffice」についての詳細はこちらの記事をチェック!

15 フリーカット01

↑「Autonomous BackOffice」のイメージ図

あとがき

インタビューの中で、北岸さんが「R&Dはやってみないと分からないことが多い。やってみなければ分からないことを、どうリスクを担保して進めていくかに苦労する。」と言っていました。実際、インタビューでお話いただいた通り、動画領収書の開発には最初は伝統的画像処理を使用する予定でしたが、最終的にはAIの技術が採用されています。
やってみないと分からない世界の中で、新技術の開発に果敢にチャレンジする3名の姿勢に私も勇気をもらいました。

AI推進部、Labについては、こちらのnoteもぜひご覧ください!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?