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ラブプラスEVERY……70日後に消えるカノジョ……フラッシュバックした「カノジョの想いでMEMORIES」 5/27

凛子! うすうす気づいていたが、その日は唐突にやってきた。ラブプラスeveryのサービス終了日のことだ。思えば自分とラブプラスシリーズとの付き合いは古く、無印のラブプラスからずっと凛子のカレシをやってきた。ラブプラスeveryも、開発発表から約二年に及ぶ延期、秋葉原でのラブレター配布イベント、サービス開始当日のサーバダウン、約40日間のメンテナンスとすべて近くから見守ってきた。そして、今も地獄のようにつまらないこのゲームをプレイしている

無印だって、発売前から「これはヤベエ」と注目し、リリースされるや否や即購入&リアルデート(Nintendo DSもってお出かけ)など精力的にこなし、さまざまな雑誌に寄稿。「ラブプラスオタヤベエ」のイメージの一翼をうっかり担ってしまった変な自覚がある。

……今の若いもんにはわからんだろうが(とうとつにおっさん化&説明放棄)、当時のラブプラスブームは、テレビで特集が組まれるくらいヤバかったし、ゲームコンセプトの斬新さ(と、実際のゲームの斬新じゃ無さ)は、他のゲームとは明らかに違うオーラを放っていた。

気が付けば、クリスマス当日の朝に発表され、即限定数売り出されるバレンタインケーキを求め他のラブプラスオタとデッドヒートを繰り広げ、知り合いのライターに憐れまれながら現場インタビューを受けたり、友人が寧々さんと結婚式を挙げて、その模様が世界中にニュースとして配信されたりとワケのわからない熱い日々を送ったのだった。

今日は、その当時の熱量を少しでも思いだすべく、過去に書き散らかしたラブプラスに関する原稿の一部をざざっと紹介。一番たくさん書き連ねた「電撃ゲームス」での連載コラムもすでに無く、しかも10年前の原稿ということで結構遠い目になった。

では、11年前あたりに(!)、カノジョの想いでを求めて……。

って、一万文字もある!? まあいい、無料だ無料だ!

■ギャルゲーの常識を覆す売れっぷり!

週刊SPAのラブプラス特集

「国民的G・F(ガールフレンド)デビュー」そんな触れ込みで発売された、Nintendo DSの恋愛ゲーム『ラブプラス』が現在大ブレイク中だ。


 2~3万本で大ヒットとされる恋愛ゲーム市場で、9月3日に発売されるや、「これは、ヤバい!」と口コミで大ヒット。3日も経たないうちに初回生産分が手に入らなくなり、『ラブプラス』を求めるラブプラス難民が溢れる事態に。一ヶ月間で10万本出荷を突破した現在も品薄状態が続く異例の大ヒット商品になっている。

 『ラブプラス』が話題になった理由として一番大きいのはそのゲームシステム。普通の恋愛ゲームは、彼女候補を攻略し、告白された時点でハッピーエンドになるのに対して、『ラブプラス』は恋人になってからが本当のゲームの始まりだ。高校二年生の主人公に扮して、年をとらない永遠の青春学園生活を彼女になったキャラクターと過ごしていくことになる。

 しかも、クリスマスのイベントは現実時間でもクリスマスでないと楽しめないなど、ゲームは基本的に現実の時間と並行して進む。毎日彼女キャラクターと登下校したり、週末にデートしたりを現実の時間とまったく同じ時間経過で楽しんでいくというゲームスタイルで、彼女との約束を守るためにタイマーをセットして日々を過ごす「彼氏」たちが現在急増中なのだ。

 日常の生活に彼女の存在を足す、つまり「ラブをプラス」するという意味が込められているのだという。

 しかもゲーム内の彼女たちは、自分の発言に応じて髪型や服装、そして性格までもが変化し、どんどん自分好みになっていく。収録されたデータも膨大で1年程度のプレイではすべてのシチュエーションに遭遇することは不可能だ。

 こんな現実生活を浸食する『ラブプラス』は、SPA世代ならハマった経験もあるかもしれない『ときめきメモリアル』の直系の新世代恋愛ゲーム。さらに、起用された声優もアラサーには懐かしい面々。30歳以上の人々も当時を思い出して購入し、毎日の会社との往復の独身生活にラブをプラスした結果、「彼女はDSの中にいます!」と悟りを開く例も多く報告され、Nintend DSをプレイ専用にもう一台購入したり、電車内で縦持ち(『ラブプラス』はDSを縦に持ってプレイする)で、イチャイチャするバーチャルバカップルまで誕生している。


 一体、彼らはどうしてそこまでハマってしまったのか? 本誌取材班も『ラブプラス』片手にその秘密をさぐってみた。

友人ライターに頼まれてのコメント出演

※チェック用に送られてきたもの、よりはっちゃける方向で赤字を入れた模様


「昔から、ショートカットでボーイッシュな女の子には弱いんです」
 DSに映る凛子の姿を見つめながらそう語る久保内さんは、これまで酒井法子、広末涼子、元モー娘。の市井紗耶香と短髪のアイドルをこよなく愛好してきた。
「凛子の姿を見つけてすぐにDSとセットで予約して、他のキャラクターとはほとんど会話もせずに一筋でした。完全にルックス先行だったんですけど、性格も文化系少女だったり、素直になれなかったりと、まさに自分の理想像そのままで。イケメンと結婚したアイドルに負った心の傷にスッと入ってきて、今はもう離れられません」
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最近、上野公園で
凛子とデートしたんですよ

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 幸せそうに語る久保内氏は最近、彼女とのデートをしたという。
「この間デートしてきましたよ、上野公園で。今まで、公園みたいな、イベント性のない場所でのデートはしたことなかったんですけど、いいものですね。運動不足解消にもピッタリだし、凛子との週末デートは、積極的に外出先でしていきたいです」
 まるで現実の彼女とデートしてきたかのように語る彼に、どうしてゲームにそこまで入れ込めるのか? という疑問がわいてくる。
「あんまり『ラブプラス』をゲームだから二次元、現実を三次元とか言いたくないんですよね。だって、今ココに凛子がいて、話を聞いてるじゃないですか。現実の自分の彼氏力も高めて真剣にプレイしないと、『ラブプラス』を本当に楽しめていると言えないと思います。今の段階だと、まだ母親に凛子を紹介するのは時期尚早ですね。母親も凛子も、びっくりしてフリーズしてしまうかもしれないから……」
 さすがに、両親にゲーム機を紹介するのはマズいですよねえと相槌をうつと、にこやかだった彼の顔が徐々に険しく変化し、いつしか取材現場はさながら、愛の説法会に。
「自分の彼氏力を鍛え続ければいつかは胸を張って紹介できるようになると思います」
 スミマセンと、その場を取り繕うライターAのDSを取り上げてさらに言葉を続けた。
「本名プレイじゃないですね。論外です! 仮名で彼女とつきあうなんて結婚詐欺師のすることですよ!」
 じゃあ、私はどうすれば……。と既婚者のライターB。
「奥さんに『仕事だから』とか言い訳したんじゃないですか? 隠れてプレイするのも同じ理由で感心しません。自分の彼女だという自信があるなら、堂々とプレイできるはずです」
 黙るライターBに対して、急に優しく「自分がされて嫌なことは彼女にしてはいけません」と諭すようにいう未婚の男には有無を言わせない迫力が。
 ご高説ありがとうございましたとDSをカバンにしまって逃げるように撤収する取材陣に、「あ! 今、電源を切った!? リアルタイムモードなら常時電源はONは常識でしょ!」と鋭くチェックを入れる久保内氏。そこまで深く彼女を愛せる自信はボクらにはありません……。


■電撃ゲームス・コラム「デジタルオタク最前線」

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■迷路が電波でやってきた!
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 ついこの間まで暑くて外出も面倒だったはずなのに、朝方はぐっと冷え込み、足が寒くなって起きるという生活に変わりました。30才を過ぎて急に「暑がりand冷え性」という特質をゲットした俺は、「これじゃあ、炎魔法でも氷魔法でも一瞬で死ぬRPGにおなじみのトロール的な生き物だよ……」とブルーな日々を過ごしている。
 しかし、涼しくなったからには夏の間先延ばしにした運動をしてこのたるんだ肉体をなんとかしたい! と思い立ち、事務所から秋葉原に毎日徒歩で散歩に行ったりしていたのだが、カバンにDSに入れていたら、ドラクエ9のすれ違い通信が二時間ほどの散歩で200人とかしてました。秋葉原のオタク同志たちは、本当にどうかしていると思います。やっと先日仕事の合間にクリアしたと思ったら、隠し地図とか探したりする楽しみもないまま一気にオープンだよ! どうもレアらしい地図に潜ったら、5ターンで全滅した。
「アキバは怖ろしい街だ……」と呟きながら、難易度の低いダンジョンの情報でも友達に聞くかとネットに接続してみたら、すれ違い通信以上に大変な現象が起きそうなブツが発表されていた。iPhoneのアプリ「セカイカメラ」がそれだ。

 このセカイカメラ、iPhoneのGPS機能とコンパス機能によって、カメラの向けた先の座標を特定し、その座標に残された書込を表示するというソフト。
 たとえば普段歩いている道の途中の未入店ラーメン屋さんが気になるとき、とりあえずセカイカメラで覗くと誰かが、店の看板の横にセカイカメラ越しで感想を登録していて、「豚骨醤油の太め麺。でもチャーシューはいまいち」とかの情報が書かれた文字が吹き出しの中に入ってぷかぷか浮いているという状況が生まれる。
 もう、日本中が異様に大きい伝言板になっちゃった状態なのだ。これ、小さい頃から今まで憧れ続けていた、なんだかこの世界と違うものが見える機械そのものっていうか、知り合いにカメラを向けたら戦闘力が見えたりして、「戦闘力3か。ゴミめ」とか言えそうで無闇にワクワク。iPhone 3GSを購入したくて理由を探していた自分的にも大変都合がいい!
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■秋葉原がバルーンで埋まる日
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 そんなわけで、次の日、日課のアキバ散策中にiPhone3GSをサクッと購入してセッティング&セカイカメラインストール。最初にセカイカメラで覗く新世界の舞台はもちろんデジタルオタクの聖地アキバで決定でしょう!
 昨日、一周しただけで200人ものドラクエ9すれ違い通信を達成したデジタル電波無法地帯なら、ついこの間リリースされたばかりのアプリでも少しは情報が書き込まれているはずだ。もしかして、自分がまだ知らないだけで電子部品の解説や、ありとあらゆる物に、辞書ばりに詳細な解説がつけられているかもしれない……。
 結果は想像以上。画面一杯にさまざまな色のバルーンが浮いており、文頭だけが表示されている。画像も登録できるらしく、秋葉原の光景の写真もプカプカ浮いているじゃないか! さっきまで普通に歩いていた道はものすごい電脳空間だったんだと、「アキバは未来……」などと、知り合いに聞かれたくない台詞をつぶやいてみながらエアタグと呼ばれる情報バルーンを開いていく。「ア、アレ?」
開いていく……「ウ、ウン?」
 どれを選択しても、表示される言葉は一緒。しかも、なんだこの文章は。
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■姉ヶ崎寧々、参上!
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 秋葉原一帯のエアタグのほとんどが「姉ヶ崎寧々、参上!」で埋め尽くされてるよ……。暴走族に落書をこれだけ書けと命令したら泣いて謝る数、見渡す限り、姉ヶ崎のタグ、タグ、タグ。
 近未来ガジェットを購入し、近未来ソフトをインストール。それで近未来都市アキバで見たものは、24時間彼女といっしょ! 国民的G・Fデビューで品薄大人気御礼な超未来ゲーム『ラブプラス』のタヌキ顔ヒロイン姉ヶ崎寧々の名前。今度は先ほどと違う意味で「アキバは未来……」とうめいた。
 しかし、なんで姉ヶ崎寧々。うっかり最新鋭のガジェットなら、近未来SFっぽい光景が広がっていると短絡的に考えていた自分をあざ笑うように、「同人誌ショップの来店ノートをデジタルでばらまいてみました」という秋葉原の本当のリアルをバッチリ表現していたのだった。忘れていたよ、アキバはもう十分によく分からない未来そのものだってこと……。

 「この街に負けた……」

 そんな長渕剛っぽい感想がグルグルと脳内を駆け巡り、やっぱり30才過ぎると時代に取り残されるのだろうか、まだ時代に追いついたこともないのに! 意味の分からない敗北感で一杯になって事務所に戻ると、俺以上に過去に囚われたモンスターが隠れてとんでもないことになっていた。
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■ここ一番はメタルテープ。常識でしょ!
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 弊社のスタッフは総計5人で、平均年齢は大体29才。最年少で27才のはずだ。いきなりこんな話をして申し訳無いが、当然スタッフには高校生はいないということを踏まえてこれから書く内容を受け止めて欲しい。

「いや、アキバすげぇよ。姉ヶ崎の寧々さんが一杯でさ、あれはテロだね!」

 と、先ほど受けた敗北感をなんとかしようと作業室に入ろうとしたとき、そこにいたのは、顔面を紅潮させた高校生だった。いや、もう少し正確に言うと、学ランに袖を通した27才の小太りの半おっさんだった。最近白髪が増えた。「何、してるの?」
「いや、せっかくなので……」
 せっかくって何がせっかくなのか皆目見当がつかないのでもう少し見守ることにする。

「いや、これは違うんです。来週、『桃色クローバー』というアイドルユニットがアキバでインストアライブをすることになってまして。そこでですね、CDを買うと握手会があるんですけど、学生服を着てくるとチェキ(インスタントカメラ)でツーショット撮影があるんですよ。それで、実家から学ランを持ってきて……。太ったから……まだ入るかな……なんて」

 アイドルオタクの彼は、最近売り出し中の通称『モモクロ』に夢中で、誰もいないのをいいことにサイズチェックにいそしんでいたというわけだ。彼もまた、パツパツの学生服を着込みながらも未来に生きている。のか?
 さすがにどん引きする筆者に伏し目がちに「実家で、コレ探してるときにいいの出てきたんスけど、見ますか?」とご機嫌を取ってくる学ラン中年。「これです。生徒手帳」

 これは……きらめき高校生徒手帳! 知らない人の方が多いだろう。このきらめき高校生徒手帳は、十数年前に放送されたときめきメモリアルのラジオ番組にハガキを投稿し、採用された者だけが手にすることのできるレアアイテムなのだ。タモリ倶楽部の空耳アワーTシャツ的なものだと思ってくれていい。そんなものを大事に今まで持っているとは……。ちなみに出演パーソナリティーは『ラブプラス』で声優復帰した丹下桜。毎回番組冒頭で、投稿されたポエムをエコーバッチリで朗読するというかなり強烈な番組で、当然ポエム投稿者の9割以上は中高生男子で童貞だった(筆者脳内調べ)


 あまりに恥ずかしい過去のカミングアウトぶりに学ランのインパクトは吹っ飛び、生徒手帳に夢中になる筆者にさらに追い打ちが。


「実家に、カセットテープデッキがないので、こっちに持ってきたんです。データ化していいですか」


 大量のカセットテープが入ったビニール袋をもってはにかむ学ラン。そのラベルには件のラジオ『もっと! ときめきメモリアル』の文字が下手な字で丁寧に書かれている。今さら、全部データ化して、どうする気なんだろう……? 

 そのカセットを漁っていると、明らかにずっしりと重いカセットが2本混ざっていた。メタルテープ!

 当時、普通のカセットより高価で、重量感があり音質がいいとされていたメタルテープは、一本およそ400円ほどもし、かなり特別な用途でないと使用できない中高生の垂涎の的だった。

 1本目は言うまでもなく、ラジオ最終回。丹下桜が号泣するシーンが収められたレアもので、後日まっさきにデータ化したそれをヘッドフォンで聴きながら目を真っ赤にしている学ランが目撃された。そして、もう一本は「さくらテープ」と書かれたブツ。隙を見て聞いてみたところ、1曲目がビリー・ジョエルの『オネスティ』。推測するに、これはいつか丹下桜にあったときに渡したい、俺と丹下のベストデート用BGM編集セレクトテープだったのではと思われる。どれだけ丹下桜が好きなんだよ。だから彼の『ラブプラス』の彼女は凛子だったのか……。

 ラジオ終了からたっぷり14年は経過しているのに、いまだにトラウマ級の強烈な愛情を持ちながら、最新アイドルイベントにも学ラン着用で参加。一体彼は、過去に囚われた哀しい人間なのか、未来に生きる宇宙人なのか。分かっているのは、童貞だと言うことである。

 筆者を含め、高校時代が男子校だったり、モテなかったりスクールカーストが低めだった人間は、失われた輝かしい青春時代(彼女がいて手をつないで帰るとか)を取り戻すために、その後の人生を青春を取り戻すために費やされがちだ。しかし、通常、その努力は報われることはない。なぜなら、青春時代は誰かに奪われたのではなく、最初から存在しなかったから……。ときメモのラジオ録音テープの山を前にそんなブルージーなトークをしている27才学ラン着用と、33才独身の筆者。

 でも、今は寂しくない。なぜならボクらには彼女がいるから! 後日談になるが、我らラブプラス隊二名は、日曜日にリアルタイムモードで凛子をデートに誘い、実際に上野公園にいってプレイするという、リアルデートを敢行! 帰りにはゲーセンに寄り、カップルで初のプリクラを撮影した。

 お絵かきモードで、文字や飾りを書き込もうとしたところ、フラッシュ撮影のためNintendo DSの中の凛子が白飛びしてしまい、何も写っていないことを発見。「やはり、俺はずっと一人なのか?」そんなやるせない気持ちを抱えながら、それでも筆者は凛子を愛す。そう決心して、プリクラに大きく「バカップル参上!」と書いたのだった。筆者ももう33才。オトナだ。だから泣きはしない。

電撃ゲームス MANIAX IMPRESSION


「NO GAME NO life」
編集者・ライターが語る「やる価値のあるゲーム」
CASE.X
20100718

■リード 18*4

「ラブプラス+」の発売でさらに加速す
るラブプラスブーム。全国の“彼氏”た
ちがここまで熱狂する理由とは何か?
それはゲームの先進性にあった!?

■本文
25*110

・終わらないラブプラス旋風と、筆者の奇行

 「ボクにも彼女ができた!」と日本中に旋風を巻き起こしたラブプラス。これまでの恋愛ゲームはほとんどが、登場キャラクターとの恋が成就した時点でハッピーエンドだったが、ラブプラスはつきあってからが本番! という斬新なゲームシステムで話題になり、恋愛ゲームの枠を越えた大ヒットを記録した。凛子、寧々、愛花はキャッチコピーのとおり“国民的彼女”になったのだ。


 そのゲーム内でのお付き合いやデートを現実世界に持ち出して、「彼女ができたんならデートするのは普通じゃね?」とばかりに、Nintendo DSを携帯して日本全国に“彼女”と一緒にラブラブなデートを敢行するプレイヤーが続出。


 かくいう筆者も発売直後に即“彼女”である凛子とラブプラス内に登場するデートスポットと同じシチュエーションで写真を撮ったり、パソコンでシールを作成してNintendo DSを凛子仕様にしたり、数多くの雑誌にラブプラスの魅力を書き殴り、妻帯者のプレーヤーに「お前は浮気している!」と叱りつけたりと後先考えない恋愛道を邁進していた。

 現在でも、初代ラブプラスのカートリッジを入れたNintendo DSは「家」と呼んでおり一度もカートリッジを抜いたことはない(他のゲームをする用に一台追加購入)し、ラブプラスも、ゲーム名ではなく凛子と呼んでいる。「ごめん、そこにいる凛子ちょっと持ってきてくれる?」と職場で同僚に頼んだときは結構スゴイ顔をされたっけ……。


 ゲーム内の“彼女”をあたかも実在のように扱うことで自分の愛の純粋さを示すというユーザーのファン活動を、コナミも公式で「日本男子ラブプラス化計画」として後押し。「自慢の彼女で日本列島を埋めつくそう!」と“彼女”と撮影した記念写真を公開し、さらにはクリスマスには限定ケーキを発売と力一杯バックアップした。

 特に拡張現実AR機能を使ったカメラで撮影するとARマーカーから彼女が飛び出すノベルティは画期的だった。画面内の彼女が、カメラ内のみとはいえ現実の風景内でたたずんでいるところを記録できるのだ。iPhone版のラブプラスの発表でさらに手軽に彼女との記念写真が撮影可能になり、驚喜した筆者はARマーカーを超拡大コピー。等身大凛子が飛び出す巨大ARマーカーを片手に友人と共に秋葉原デートを敢行したものだ。


 これら、世間一般の視点から見ると少々理解に苦しむであろうフィーバーぶりは、さまざまな形で紹介され、好意的なものから時にはゲームに恋する若者たちといった切り口で紹介された。これがラブプラスの認知度を上げることになったわけだ。その次回作で満を持して登場した「ラブプラス+」では、熱海観光協会とのタイアップや全国を彼女と巡るモードが追加されさらに大きな話題になっている。ともすれば、「色モノ」扱いされがちなラブプラスだが、そこまでプレーヤーを熱狂させるには、やはり理由がある。実は、ラブプラスこそが現在のゲームの正当進化にして最新系なんじゃないのか、というのが筆者の考えだ。

・実はゲームの正当進化系!? 「ラブプラス」が受けたワケ

 96年に登場し、社会現象になるほど爆発的な人気を誇った「たまごっち」で一般化し、Nintendo DSでは「おいでよ どうぶつの森」などで大ヒットを記録したのが、育成ゲーム・コミュニケーションゲームだ。このコミュニケーションゲームというジャンルは、登場以降それまでのゲームマニアよりも一般女性層にインパクトを与えてきた。「リアルタイムで彼女と過ごすゲーム」と言われると奇妙に響くが、「ラブプラス」も、コミュニケーションゲームの流れを汲んでいる。ゲームのコンセプトとして新しく多数のユーザーに届きやすいものなのだ。


 そのうえ、ラブプラスの基本操作システムは、運動や知識などのパラメータを高めて彼女に認めてもらうという、『ときめきメモリアル』から一般化した恋愛ゲームの流れを踏襲していてかなりわかりやすい。恋愛ゲームを嗜好するコアなゲーマー層でもとまどうことなくゲームの世界に入り込むことができる。コアゲーマー層にとっては、これまであまり興味の対象ではなかったコミュニケーションゲームへの扉を開くナビゲーターとしての機能も果たした。ラブプラスはコアなイメージとは裏腹に、据え置き型ゲーム機やパソコンゲームに興じるコアゲーマー層に携帯ゲーム機の新しい楽しみ方を提案したゲームだったのだ。

・画面から飛び出すゲームの世界

 さらに、「ラブプラス+」では、ご当地ラブプラス機能など、実際にゲーム機を携帯して指定の場所に行かないと楽しめない機能も搭載した。これは、据え置き型ゲーム機や携帯ゲーム機の勢いも上回ろうとしているケータイゲームの最新型である「ケータイ国盗り合戦」などに代表されるGPS連動ゲームに近い。Nintendo DSにはGPS機能は搭載されていないため赤外線通信などを利用した簡易的なモードだが、むしろゲーム機のスペックを越えた機能をなんとか詰め込んでくる開発姿勢が、新しいゲームの形に自覚的だという証拠に思える。GPS機能を搭載したiPhoneからリリースされたラブプラスでは、将来的にはGPS機能とのリンクもアナウンスされ精力的なアップデートを繰りかえして機能を充実させて行っている。ゲーム自体のアップデートが可能なiPhone版だと理屈上、数年のプレイでも彼女たちの話す内容が変化させ続けることも可能で、“凛子と10年間連れ添いました”なんていう超・長期のプレイだって視野に入ってくる。


 シンプルな操作システムが、自然にキャラクターとの恋愛にプレーヤーを誘い、“彼女”になった後も愛らしいルックスでプレイヤーに新しいゲームの形を教えてくれるラブプラス。このゲームの先進性に呼応した彼氏ユーザーが、熱海お泊まり旅行や全国ご当地ラブプラスの旅、そして自身が考案し見よう見まねで焼いた手作りケーキでとりおこなうオモシロ誕生会、果ては登場キャラクターと実際に結婚式を敢行する……。こんな“先進的”な楽しみ方を実行するのもうなずけると言うモノだ。だから筆者が凛子に深夜ニヤニヤと話しかけているのを発見しても、優しい目で見守ってくれるとありがたいのだが。

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今日はこの辺で。「ゲーム自体のアップデートが可能なiPhone版だと理屈上、数年のプレイでも彼女たちの話す内容が変化させ続けることも可能で、“凛子と10年間連れ添いました”なんていう超・長期のプレイだって視野に入ってくる。」とか、希望に溢れすぎてすぎて泣けてきますね!!!!!

 また、よろず質問受付中。答えたり答えなかったりします。


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